民間金融機関の資本性劣後ローンとその事例をわかりやすく解説

2022/04/28

ここでは民間金融機関の「新型コロナ対策のための資本性劣後ローン」について解説いたします。なお金融庁においては、2011年11月の公表以来、資本性借入金という表現を使用していますが、資本性劣後ローンと同意です。

コロナ禍対策の一環として活用される、民間金融機関の資本性劣後ローン

日本政策金融公庫や商工組合中央金庫などの政府系金融機関は、新型コロナ対策のための資本性劣後ローンに力を入れていることは「日本政策金融公庫の新型コロナ対策のための資本性劣後ローン(1)~内容~」で説明した通りですが、民間の金融機関においても資本性劣後ローンを実施することはできます。

しかしながら、やはりその実施には困難が伴い、二の足を踏む中小の地域金融機関も少なくありません。一般的には大手地方銀行などが地元の優良企業支援に活用したり、地元の老舗企業の再生支援に活用したりする、というケースが多いように思われます。

2020年以降、新型コロナウィルス感染症の拡大により、民間金融機関でも資本性劣後ローンが注目され、事業者のコロナ禍支援の一環として活用されるケースも出てきました。実際、政府・金融庁からも金融機関が新型コロナ対策として、資本性劣後ローンを積極的に活用できるように監督指針の改定なども行われています。

民間金融機関の資本性劣後ローンの基本的な要件

政府系金融機関においては資本性劣後ローンの制度概要について、ホームページ 新しいウィンドウで開くなどで明確に公表されていますが、多くの民間金融機関においては、特に制度として公表されていません。必要に応じて、その都度設計されて支援するケースがほとんどです。

民間金融機関が資本性劣後ローンを実施する場合には、以下の基本的要件を設定しなければなりません。

基本的な要件

内容
償還条件
  • 5年超
  • 期限一括償還
金利設定
  • 原則として業績連動型
  • 債務者が厳しい状況にある期間は、これに応じて金利負担が抑えられるようなしくみが講じられていること
劣後性
  • 法的破綻時の劣後性が確保されていること
  • または、少なくとも法的破綻に至るまでの間において、他の債権に先んじて回収されないしくみが備わっていること

また金融庁からは、2011年11月時点にて「資本性借入金の積極的活用について」というリーフレットも配布されており、相当以前から推進していることが分かります。

実際には、事業者側から民間金融機関に対して資本性劣後ローンを打診しても、その金融機関に支援実績が乏しい場合は困難だと思われます。よって資本性劣後ローンを利用する際には、日本政策金融公庫の活用を前提として、民間金融機関には協調支援の打診をするというのが近道なのかもしれません。

ワタミ株式会社の資本性劣後ローンの事例

コロナ禍における、民間金融機関による資本性劣後ローンの事例としては「ワタミ株式会社が横浜銀行から2020年9月末に横浜銀行から30億円を劣後ローンで調達。横浜銀行がコロナ後はじめて実施する資本性ローンの第1号に選ばれた。」という報道が話題になりました。

実際のところ、民間金融機関が資本性劣後ローンを実施するには、ある程度の事業規模のある事業者向けになってしまうでしょう。まだまだ信用金庫や信用組合などの金融機関が地元の小規模事業者向けに、積極的に資本性劣後ローンで支援するのは困難だと思われます。

資本性劣後ローンを活用したいと考えている方は、まずは日本政策金融公庫の利用を検討するのがよいでしょう。

日本政策金融公庫の資本性劣後ローンについては、こちらに詳しく解説がありますので参考にしてください。

著者:吉田 学(財務・資金調達コンサルタント)

株式会社MBSコンサルティング代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。
主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。

また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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