【人材開発支援助成金】リスキリングに活用できる助成金

2023/03/29

リスキリングという言葉をご存じでしょうか。近年のデジタル化で新しい職業が生まれたり、仕事の進め方が大幅に変わったりしています。そのため会社としても、スキルの大幅な変化に適応するために、社員に必要なスキルを積極的に獲得させる必要性が高まっています。この点、政府としても人への投資を強化し、今後5年間で1兆円もの予算を投じるという方針が既に決定されています。
なかでも「人材開発支援助成金」は、新規事業の立ち上げなどの事業展開に伴い、雇用する労働者に対して、新たな分野で必要となる知識及び技能を習得させるための訓練を計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成してくれます。たとえ人材採用が難しい場合でも、国の支援を受けながら有利に人材の育成が可能です。

人材開発支援助成金 ~事業展開等リスキリング支援コース~

この助成金は、新事業へのチャレンジや、企業内のDX化、グリーン・カーボンニュートラル化を進めるにあたり、関連する業務に従事させる上で必要となる専門的な知識及び技能を習得させるための業務を離れたOFF-JTでの訓練が助成対象になります。ただし、最低でも10時間以上の訓練が必要になりますのでご注意ください。
座学での訓練だけでなく、近年増えているWeb会議システム等を活用した同時双方向型の訓練も対象になりますので、比較的使いやすくなっています。
中小企業の場合だと、訓練に必要な経費の75%が補助され、通常の労働時間中に行う訓練の場合は、さらに1人あたり時給960円の助成があります。経費の助成は訓練時間に応じて1人あたり30万円(10時間から100時間未満)~50万円(200時間以上)が上限になりますが、1事業所1年度あたり最大1億円まで助成してもらえる大きな助成金です。

新たな訓練形態へも対応しています

近年では、eラーニングによる訓練や、通信制での訓練、さらには定額サービスによる訓練も増えてきていますが、管理システムで訓練の進捗管理が行えることや、質疑応答ができるなどの一定の要件を満たせば助成対象になります。ただし、受講時間中は労働時間になるため給料の支払が必要になる点と、1人あたり時給960円の助成がない点が注意点です。

手続きの流れ

社内で職業能力開発推進者の専任、事業内職業能力開発計画の策定後、「訓練実施計画届」を訓練開始日の1ヶ月前までに労働局へ提出する必要があります。訓練の対象者を明確にして訓練カリキュラムや必要な経費などを決定してからでないと提出ができませんので、訓練機関との早めの打ち合わせが重要です。また、提出済の計画の変更がある場合は変更届が必要になりますのでご注意ください。
訓練実施後は各種証明書類などを取りまとめて支給申請を行う必要があります。後でまとめて訓練の報告書を作成しようとすると、訓練の内容を思い出すのに時間がかかったりしてしまいますので、訓練のたびごとに報告書をまとめておくのが肝要です。訓練修了日の翌日から2ヶ月以内に申請しないと助成金が出なくなってしまうので、期日の管理がとても重要です。

いかがでしたでしょうか。書類が面倒に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、一度申請の流れを押さえてしまえば、非常に効果的に活用できる助成金です。なお、助成金の申請代理ができるのは社会保険労務士か社会保険労務士法人になりますので、誤ってそれ以外の方に依頼してしまう事の無いようにご注意ください。

著者:西内 孝文(にしうち たかふみ)

税理士・特定社会保険労務士・中小企業診断士・特定行政書士・CFP(R)の複数の資格を活用してワンストップで課題を解決できるユナイテッド・アドバイザーズグループを主宰。補助金・助成金等の支援では、着手金無しの業務報酬後払制により支援を行っており、成果にコミットした支援を行っている。