【事業承継・引継ぎ補助金】これから起業するなら事業譲渡を受けて起業すると補助金が使えます

2022/12/01

年々経営者の平均年齢が上がってきており、コロナ禍だけでなく円安・物価高と苦しい状況が続いています。政府もこのままでは中小企業が大量に廃業するおそれがあるため、「事業承継・引継ぎ補助金」で事業承継の支援を行っています。もともと経営者の代替わりやM&Aで使える補助金ではありますが、「経営革新事業」で、後継者に困っている方の事業を引き継いで起業する場合にも使える事はあまり知られていません。実はこのような起業の支援も大量廃業を防ぐという意味で重要な支援対象になっているのです。また、最近ではM&Aの支援サイトを通じて事業を引き継ぐ事も一般化してきています。

申請できる方の要件

この補助金は、以前あった創業補助金のように、単に起業するだけでは申請することができず、「2017年4月1日から2023年7月31日まで」に、事業承継の取り組みを行う必要があります。よく見ると過去や将来の日付を含む期間ですので、既に事業承継が完了している方や、これから事業を引き継ぐ予定の方でも申請ができるという、実はとても使いやすい設計になっています。とはいえ、さすがに単なる不動産物件や設備だけの引継ぎや、フランチャイズへの加盟、単なる個人事業の法人化などは支援対象に含まれませんので、顧客や従業員などを含めて実質的な「事業」を引き継ぐかどうかが重要な判断基準です。
国内で事業の譲渡を受けて、青色申告にて個人事業の開業や法人設立を行う必要があります。また、以下のいずれか1つを満たす必要があります。

  • 地域の雇用の創出や地域からの積極的な仕入れなどの一定の地域貢献を行う事業であること
  • 小規模事業者であること
  • 直近決算で営業利益又は経常利益が赤字
  • コロナ以前と比べて売上が減少していること

これから起業する場合は、地域への貢献が全くないということも考えにくいですし、小規模事業者に該当することも多いかと思いますので、あまり問題はないかと思います。

新たに行う事業について

事業の引継を受けた後、以前の事業をそのまま続けるのではジリ貧になりやすく、あまり国が支援する意味がありません。そこで引き継いだ経営資源を活用した新たな取り組みを行う事が必要になります。具体的には下記のいずれから該当する取り組みにかかる経費が補助されることになります。

①デジタル化に資する事業
DXに資する革新的な製品・サービスの開発やデジタル技術を活用した生産プロセスやサービス提供方法の改善などを含む取り組みで、DX推進指標の自己診断やSECURITY ACTIONの一つ星以上を取得するもの
②グリーン化に資する事業
温室効果ガス排出削減に資する革新的な製品・サービスの開発や炭素生産性向上を伴う生産プロセスやサービス提供方法の改善を行う取り組みで、炭素生産性年平均1%以上向上させる計画など
③事業再構築に資する事業
新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換に該当する取り組みを行う計画であること。定義は事業再構築補助金や事業再構築指針と同じです。

どのような経費が補助されるか

補助される経費の幅は非常に広く、下記のとおりです。

  • 人件費
  • 店舗等借入費
  • 設備費
  • 原材料費
  • 産業財産権等関連経費
  • 謝金
  • 旅費
  • マーケティング調査費
  • 広報費
  • 会場借料費
  • 外注費
  • 委託費

特に、人件費や店舗等借入費については他の補助金と比べても珍しく、新事業にかかわる従業員(社員・パート)の給料・賞与や、新事業に必要な店舗・事務所・駐車場の賃借料まで補助対象になります。このあたりの経費は補助金がなかったとしても元々毎月かかる経費の事が多く、非常に助かります。その他、設備費で機械装置や店舗の工事・備品を補助対象にしたり、外注費でWEBサイトの制作やWEB広告の外注を行ったりする方も多いです。
この補助金ではかかった経費の2/3を最大600万円まで補助してもらう事が可能です。ただし、あまりに少額な申請は審査の手間もかかりますので、補助金換算額で100万円以上から申請可能です。また、補助金400万円を超えた部分の補助金を使う場合は、付加価値(営業利益+人件費+減価償却費)の伸び率が年率3%以上の向上を含む計画になっていることが必要で、補助率は1/2に下がります。加えて引き継いだ不採算店舗を廃業する場合などは原状回復に必要な廃業費を150万円まで上乗せして受給する事も可能です。

申請方法の注意点

電子申請での受付になりますので、事前にGビズIDプライムの取得が必要です。また、認定支援機関の確認書も必要になりますので、早めに依頼しておくことも必要です。
補助対象経費は交付決定後に支出し、必要な証明資料を添付して実績報告を行います。その後事務局の審査後問題なければ補助金が支給されるという流れになりますので、必要な資金調達も事前に検討しておく必要があります。
事業承継・引継ぎ補助金は令和3年度補正予算のものと、既に公募が終了した令和4年度予算のものの2つがあり、今回は前者の説明となっています。令和3年度補正予算のものは2022年11月24日までの3次公募の他、2023年2月上旬までの4次公募も予定されていますので、まだ間に合います。要件に該当する方は是非ご検討ください。

著者:西内 孝文(にしうち たかふみ)

税理士・特定社会保険労務士・中小企業診断士・特定行政書士・CFP(R)の複数の資格を活用してワンストップで課題を解決できるユナイテッド・アドバイザーズグループを主宰。補助金・助成金等の支援では、着手金無しの業務報酬後払制により支援を行っており、成果にコミットした支援を行っている。

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