知らないと怖い補助金活用の落とし穴
2023/04/05
補助金を活用できて非常に助かったという中小企業の方も多いかと思います。返済不要のまとまった金額のお金が入金されてきますので、思い切って新事業に取り組むきっかけになったとか、他の競合企業に対して競争力が高まったというようなうれしい声を頂くのと同時に、安易に飛びついてしまったがゆえに大変な思いをされている方も一部いらっしゃいます。せっかく皆さんの為に準備されている補助金を有効に活用するためにも、どのような落とし穴があるのかを事前に確認しておきましょう。
入金までかなりの時間を要します
補助金は、先にお金がもらえるわけではなく、採択・交付決定された事業計画に従って、自ら費用を全額支出したうえで、振込控などの各種証明資料を添付のうえ実績報告を行う事で補助金を請求するという流れになっています。しかもかなり細かい審査がありますので、その審査にクリアしてはじめて補助金が振り込まれてきます。件数が多い補助金につきましては審査に長期間を要する事も多く、自己資金が少ない場合は事前に借入などを申し込んでおかないと、実際に補助金を受ける事ができなくなってしまいます。また、原則として交付決定通知書が出る前に発注や支払をしてしまうと、補助対象外になりますので注意が必要です。
事業計画はご自身でしっかりと考える必要があります
専門家に事業計画や申請を丸投げしたり、事業計画の作成代行を依頼したりするのはやめましょう。補助金はかかった経費の一部が補助されるだけですので、新しい事業でしっかりと売上と利益を出すことができなければ結果としてお金が減ってしまいます。また、採択されなければ意味がないからと実現不可能な計画にしてしまうと、実績報告が難しくなるばかりか、たとえ補助金が交付されたとしても、その後大きな損失や事業が傾くことに繋がってしまう事があり得ます。そもそも事業計画の作成代行のような形骸化した支援は禁止されており、通報窓口まで準備されていますので、認定支援機関や支援者の方と一緒に実現可能な事業計画を練り上げ、しっかりと事業を軌道に乗せていく事を第一に考えましょう。
補助金をもらった後の義務も要注意
補助金が入金になって安心するのはわかりますが、例えば補助金で購入した50万円以上の資産を勝手に他の目的に転用したり、売却したりすることは禁止されています。また、一部の補助金については、その後の賃上げや付加価値アップが必須要件になっており、達成できなかった場合は補助金の一部の返還を求められるものもあります。また、場合によっては、申請した事業で多額の利益が出た場合に、補助金の一部の返還が必要になるものもあります。当然このような補助金は、数年間にわたって報告を求められますので、継続してしっかりとした報告ができるように準備しておくことが重要です。
また、補助金を受け取った際に、雑収入などとして法人税や所得税の課税対象になることも多いため、税金面での対策も重要です。資産の取得に対して支出された補助金については圧縮記帳という税務対策が認められることもありますので、早めに顧問税理士に相談しておくことが重要です。せっかく頂いた補助金は有効活用して頂くのが良いと思いますので、ついうっかり返還を求められることのないようにご注意ください。また5年間関係資料の保存も義務づけられていますのでご注意ください。
いかがでしたでしょうか。しっかりと活用すれば、競合に対しても競争力強化に繋がり、大きな利益に繋がり得る補助金ですが、自分事としてしっかりと対策を考えておかないと、ついつい落とし穴にはまってしまう事があります。多くの補助金は基本的なルールが似ていますので、一度しっかりと受給する事ができれば、その後事業計画の作成や資料整理も慣れてきますので、何回も別の補助金にチャレンジして受給することも可能になります。補助金の制度趣旨に従ってしっかりと有効活用して頂くよう、よろしくお願いします。
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著者:西内 孝文(にしうち たかふみ)
税理士・特定社会保険労務士・中小企業診断士・特定行政書士・CFP(R)の複数の資格を活用してワンストップで課題を解決できるユナイテッド・アドバイザーズグループを主宰。補助金・助成金等の支援では、着手金無しの業務報酬後払制により支援を行っており、成果にコミットした支援を行っている。