経営者保証ガイドラインの活用(3) 経営者保証を外すための3つの対応と交渉ポイント

2022/02/22

「経営者保証なしで融資を受けたい」「経営者保証を解除したい」という場合に「経営者としては、どのような対応をすればよいのか」について、「経営者保証に関するガイドライン(以下、ガイドライン)」では主に「3つの対応」が示されています。経営者はこの3つの対応に則して、経営・財務管理を整える必要があります。この3つの対応、さらに経営者が経営者保証を外すための金融機関との交渉ポイントについて説明いたします。

債務者と保証人(経営者)がやるべき3つの対策

ガイドラインでは「主たる債務者、保証人(経営者のこと)」が実施するべき対応策として、以下の3つが示されています。

主たる債務者及び保証人における3つの対応【4項(1)】
  • 1.
    法人と経営者との関係の明確な区分・分離
  • 2.
    財務基盤の強化
  • 3.
    財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保

この3つの対応は「経営者保証なしで融資を受けたい」「経営者保証を解除したい」という場合のあらゆるシーン(新規融資、既存融資、事業承継時)に共通した対応になります。この3つの対応が大前提になることを忘れないでください。

以下、それぞれ説明いたします。

法人と個人(経営者)との関係の明確な区分・分離

ガイドラインでは「主たる債務者は、法人の業務、経理、資産所有等に関して、法人・個人の一体性の解消に努めること」が求められています。

正確には「主たる債務者は、法人の業務、経理、資産所有等に関し、法人と経営者の関係を明確に区分・分離し、法人と経営者の間の資金のやりとり(役員報酬・賞与、配当、オーナーへの貸付などを言う)を、社会通念上適切な範囲を超えないものとする体制を整備するなど、適切な運用を図ることを通じて、法人個人の一体性の解消に努める」と書かれています。

具体例は、以下の通りです。

「法人と経営者との関係の明確な区分・分離」の一例
  • 経営者が本社・工場・営業車等の資産を所有している場合、個人所有とはせずに、法人所有とする。
  • 自宅が店舗を兼ねている、自家用車が営業車を兼ねているなど、明確な分離が困難な場合においては、法人から経営者に適切な賃料を支払う。
  • 事業上、必要性のない法人から経営者への貸付は行わない。
  • 個人消費の飲食代などについては、法人経理処理としない。

また、このような対応をするために「会計参与の設置」「外部を含めた監査体制の確立」経理の透明性向上手段としては「中小企業の会計に関する基本要領」などによる計算書類の作成などを行うことが考えられます。

「中小企業の会計に関する基本要領」などによる計算書類の作成は、外部の顧問税理士などへの専門家に依頼すると、「法人と経営者との関係の明確な区分・分離」を客観的に示すことにもつながります。

なおこうした整備・運用の状況については、ガイドラインに「外部専門家(公認会計士、税理士等)による検証を実施し、その結果を対象債権者(金融機関等)に適切に開示することが望ましい」と書かれています。

財務基盤の強化

経営者保証に関するガイドラインでは「経営者個人の資産に頼らずに、法人のみの資産や収益力で、借入金の返済をすることができる財務状況である」ことが求められています。

正確には「経営者保証は主たる債務者の信用力を補完する手段のひとつとして機能している一面があるが、経営者保証を提供しない場合においても事業に必要な資金を円滑に調達するために、主たる債務者は、財務状況及び経営成績の改善を通じた返済能力の向上等により信用力を強化する」と書かれています。

具体的には、以下のような状況が考えられます。

「財務基盤の強化」の一例
  • 業績が堅調で十分な利益(キャッシュフロー)を確保しており、内部留保も十分であること
  • 業績はやや不安定ではあるものの、業況の下振れリスクを勘案しても、内部留保が潤沢で借入金全額の返済が可能と判断し得ること
  • 内部留保は潤沢とは言えないものの、好業績が続いており、今後も借入を順調に返済し得るだけの利益(キャッシュフロー)を確保する可能性が高いこと

なおガイドラインやQ&Aにおいては、具体的に目標とするべき財務指標などの基準は示されていません。しかしながら上記の財務状況を確保するためには、自己資金比率や債務償還年数などの財務指標について、一定のレベルを維持することも重要になります。具体的な基準については、相談窓口や外部専門家などに相談をしながら目標値を定めることをお勧めいたします。

財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保

ガイドラインでは「金融機関に対して、必要な情報の開示・説明」、また「取引先金融機関と密にコミュニケーションを図り、財務状況などについて報告(情報公開)する」ことが求められています。

正確には「主たる債務者は、資産負債の状況(経営者のものを含む)、事業計画や業績見通し及びその進捗状況等に関する対象債権者からの情報開示の要請に対して、正確かつ、ていねいに信頼性の高い情報を開示・説明することにより、経営の透明性を確保する」と書かれています。

具体的には、以下のような情報です。

「財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保」の一例
  • 貸借対照表、損益計算書の提出のみでなく、これら決算書上の各勘定明細(資産・負債明細、売上原価・販管費明細等)の提出
  • 期中の財務状況を確認するため、年に1回の本決算の報告のみでなく、試算表・資金繰り表等の定期的な報告

なお開示情報の信頼性の向上のためにも、外部専門家による情報の検証を行い、その検証結果と合わせた開示が望ましい、と書かれています。また開示・説明した後に、事業計画・業績見通しなどに変動が生じた場合には、自発的に報告するなど適時適切に情報開示する必要があります。

経営者保証を外す際の交渉ポイント

経営者保証を外すためにまず経営者がやるべきことは「主たる債務者及び保証人における3つの対応」に則して、経営・財務内容を整え、必要に応じて改善していくことです。

「経営者保証なしの融資」「経営者保証の解除」に関して、業績の良い企業においては、さほど難しい交渉ではないのかもしれません。金融機関としては、業績が良くて今後も取引を継続していきたいと思える事業者であれば、やはり経営者保証の解除に関しても積極的に対応する傾向があります。

「業績が良くない事業者が経営者保証の解除などができるか」については、その時点では無理でも将来的には無理ではありません。特に近い将来、事業承継などを検討されている経営者においては、計画的にガイドライン(主たる債務者及び保証人における3つの対応)に沿った経営・財務状況の改善を図っていくべきです。

業績の良い事業者と良くない事業者のイメージ

状況
業績の良い事業者
  • 黒字である(増収増益)
  • 積極的に融資提案を受けている
  • 事業性評価融資などの提案を受けている
  • 債務者区分が「正常先」である

など

業績の良くない事業者
  • 赤字である
  • 資本の欠損、債務超過である
  • 積極的に融資提案をしてもらっていない
  • 債務者区分が「正常先」ではない

など

現状、業績が良くない事業者の場合は、専門家などのアドバイスを受けながらガイドラインに基づく3か年・5か年計画や10か年計画などを策定して、取引先の金融機関にも報告することをお勧めいたします。

取引先金融機関に対して「現状は無理でも、事業計画に基づいて経営・財務改善をしていくので、○年後の事業承継時においては、経営者保証を解除することを検討してほしい」というように主張されても良いと思われます。

著者:吉田 学(財務・資金調達コンサルタント)

株式会社MBSコンサルティング代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。
主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。

また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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