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2024-04-05更新
2021/07/21
住宅ローンを組んだときに設定される抵当権。普段はあまり意識しませんが、住宅ローンを完済すると、登記から抹消することが必要になります。抵当権が残っていると個人だけではなく事業をしている場合でも、融資の審査に進めないことがあります。抵当権の抹消手続きはどのように行えばよいのか解説します。
多くの人は、住宅を購入するときに、金融機関から住宅ローンを組んで購入することになります。住宅ローンは金額も大きく、返済期間も数十年と長期間に渡ることが多いため、金融機関からすれば途中で返済がされなくなるというリスクを抱えています。住宅ローンを組むにあたっては、収入状況などの審査をクリアして初めて借りることができますが、それでも返済不能となるリスクを完全に消すことはできません。
そこで、もし住宅ローンを組んだ人が返済できなくなったら、その住宅や土地を金融機関が売って、その売却代金を住宅ローンの返済に充てることになります。この権利が「抵当権」です。金融機関からすれば、最終的には抵当権を行使すればよいという担保があるから住宅ローンを契約することができるわけです。
抵当権は、金融機関とお金の借り手の間で締結する契約ですので、契約の当事者間では契約すれば有効になります。同様に、住宅ローンを完済すれば、当事者間では抵当権も消滅します。
しかし、この抵当権が登記上残っていると、住宅ローンを貸した金融機関以外の第三者から見れば、まだ住宅ローンが残っているように見えてしまいます。そこで、本当に抵当権が消滅していることを第三者に主張するには、抵当権を登記上抹消する手続きを行う必要があります。住宅ローンを完済しても、自動的に抵当権の登記も消えるわけではないのです。
創業融資に限らずですが、融資を受けるときに、不動産を担保に入れるように求められることがあります。その際に、抵当権の登記が残っていると、審査の段階で抹消が必要になります。特にシニア起業などの場合、事業をスタートしようとした際に住宅ローンを完済していることがありえます。いくら完済していることが事実でも、抵当権の登記が残っていると、それを第三者には主張できないのです。完済しているなら、抵当権の登記も抹消できるはずだということです。
抵当権は、登記された順番に優先権があります。先に登記された抵当権が残っていると、そちらが優先されてしまうのです。だからこそ、消滅しているのであれば、抵当権の登記も抹消しておくことが重要になります。
融資以外にも抵当権が残っていることで生じる問題があります。例えば、不動産を売却するとき、抵当権が残ったままの不動産は売却することが困難です。せっかく買った不動産が、前の持ち主が売却後にローンを返せなくなって競売にかけられるなんてことになりかねないからです。持ち主が変わっても、抵当権の効力がなくなるわけではないのです。
抵当権の登記を抹消する期限が法律などで定められているわけではないのですが、元になるローンが消滅したら、速やかに抹消すべきです。特に時間が経過するほどに抵当権の抹消が面倒になることがあります。例えば金融機関から受け取った抵当権抹消用の書類を紛失したり、金融機関が合併したりすれば、抵当権の抹消をするために、余分な手間や登記が増えてしまいます。
住宅ローンを完済して、抵当権が抹消できる状態になると、住宅ローンを組んだ金融機関から、抵当権抹消のための書類が郵送されてきます。住宅を購入したときは、銀行や不動産会社が指定した司法書士が登記手続きを行います。所有権の登記や抵当権の登記が間違いなく行われることは取引において非常に重要な部分なので、登記の専門家である司法書士が行うのです。
しかし、抵当権抹消については、住宅ローンを受けた人の責任においておこなう必要があります。不動産を購入したときと異なり、抵当権の抹消の登記は自分でおこなうこともできますし、司法書士に依頼することもできます。自分で抵当権抹消登記手続きをする方法について見ていきましょう。
自分で抵当権抹消登記手続きをする場合、次のような流れになります。
抵当権を抹消する登記を自分でおこなう場合には、まず書類を揃えることが必要です。通常であれば、住宅ローンを完済すれば、金融機関から抵当権の抹消のための書類のセットが自宅に郵送されてきます。それを使って抵当権の抹消登記を申請することになります。
もし、住宅ローンを完済したのに抵当権抹消の書類が届かない場合には、住宅ローンを組んだ金融機関の支店などに問い合わせてみましょう。
金融機関から受領する書類は主に以下の3つがあります。
金融機関によって、「抵当権解除証書」という書類だったり、抵当権を設定したときの書類に抵当権を解除した旨のスタンプが押されたものだったりと、抵当権を設定した時期や、金融機関によって取り扱いがさまざまです。いずれにしても金融機関が発行した、抵当権を解除したことが分かる書類が該当します。
金融機関が抵当権の設定を行った際に法務局から交付を受けた12桁の文字列(登記識別情報)が記載された書類です。抵当権抹消の際にこの文字列を登記申請書と合わせて法務局に提供することで、抵当権の抹消の意思を確認しています。本来抵当権を設定した金融機関しか知らないはずの登記識別情報を知っているということは、抵当権が消滅して金融機関から登記識別情報を受け取ったということが法務局にも分かるのです。
ちなみに、2005年の不動産登記法の改正前は、登記識別情報の代わりに、「登記済証」という書類が発行されていました。この書類もまた金融機関に交付されるもので、抵当権抹消の登記の際に法務局に提出することで、抵当権が消滅したことを法務局にて判断しています。
登記は、本来であれば金融機関と住宅ローンを借りていた者が共同で申請することが原則です。とはいえ、抵当権の登記を抹消することでメリットがあるのは住宅ローンを借りていた人です。そのため、金融機関は抵当権抹消の登記申請をおこなうことを、住宅ローンの借り手(または依頼を受けた司法書士)に任せる旨の委任状を抵当権抹消の書類の一つとして発行します。通常は、だれに委任するのか空欄になった状態で渡されます。そこで、自分で登記するなら自分の名前、司法書士に依頼するならその司法書士の名前を記入します。
住宅ローンの完済を証する書類や委任状は、万が一紛失しても金融機関にお願いして再発行してもらえます。しかし、2)の登記識別情報通知書(または登記済証)は法務局が発行するもので、紛失してしまうと再発行はしてもらえません。紛失した状態でも抵当権抹消の手続きはできますが、法務局から金融機関に本当に抵当権抹消をしてよいか照会がいったり(事前通知といいます)、本来は不要な金融機関の印鑑証明書が必要になったりと、金融機関に余計な手間がかかってしまいます。
不動産の所在を管轄する法務局を調べます。インターネットで簡単に調べることが可能です。
抵当権抹消のための必要書類は、全て金融機関が揃えてくれます。しかし、抵当権抹消をするには、それらの書類を提出するだけでは足りません。
法務局には抵当権抹消登記申請書という書類を作成する必要があります。この登記申請書をもとに法務局は抵当権抹消の登記を行います。
登記申請書の様式は、法務局のホームページでも公開されていますので、参考にするとよいでしょう。
登記申請書や、金融機関から受け取った抵当権抹消の登記用の書類が揃ったら、法務局に登記申請を行います。
登記申請は、管轄の法務局の窓口でもできますし、郵送でも提出できます。オンラインでも提出することができますが、常に登記の申請を行っている司法書士でもない限り扱いが難しいかもしれません。自分でおこなう場合には、通常は紙での申請(窓口提出または郵送提出)になるでしょう。
登記の書類を提出して、内容に問題がなければ法務局から登記完了証が交付されます。交付については、法務局窓口で受領することもできますし、登記申請の際に返信用の封筒や切手を申請書類と合わせて法務局に渡すことで、郵送での交付もしてもらえます。郵送の場合は、書留などの記録が残るものである必要があります。どちらの方法がよいか、登記申請書に記載します。
登記完了証は、法務局で提出した登記申請書の通りの登記が完了したことを証する書面です。抵当権が抹消された登記事項証明書については、別途法務局で自ら取得する必要があります。
司法書士に抵当権抹消の登記を依頼する場合には、上記の手続きを全て司法書士に任せることができます。金融機関から受領した抵当権抹消の書類を司法書士に渡すだけで、あとは手続きをやってもらえるので、時間がなかったり、面倒だったりする場合には依頼するとよいでしょう。
司法書士は自分で選ぶこともできますし、つてがなければ金融機関が紹介してくれます。抵当権の抹消は、どの司法書士が行っても結果は同じです。費用ややり取りのしやすさなどをもとに決めればよいでしょう。
費用は通常であれば2~3万円程度が相場です。昔の抵当権を抹消する場合などで、金融機関が合併しているなどして、別の登記も必要になるような際にはもう少し費用がかかるかもしれません。
抵当権抹消は、住宅ローンを組んだときのように金融機関などがリードしてくれるわけではなく、自ら進んで動く必要があります。いずれやるべきことであれば早めに済ませるようにしましょう。
抵当権抹消の手続きは住宅ローン完済と一連の手続きであり、セットです。住宅ローンを完済して、抵当権抹消用の書類を受領したら、すぐに動くことをオススメします。もし新たに借り入れをする場合や売却する段階で急いで抹消するよりも、あらかじめ抹消を済ませておいたほうが心にも余裕ができるでしょう。
税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。
2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。
著書『はじめてでもわかる 簿記と経理の仕事 ’21~’22年版』
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