新規事業立ち上げに使える補助金・助成金9選

一覧でわかりやすく解説

2024/04/05

新規事業立ち上げには多額の資金が必要となるため、補助金・助成金を活用したいと考えている方も多いのではないでしょうか。補助金・助成金の中には新規事業立ち上げに利用できるものもあります。本記事では新規事業立ち上げに使える9種類の補助金・助成金、使うべき理由、注意点などについて解説します。新規事業立ち上げに補助金・助成金を活用したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

新規事業立ち上げに使える補助金・助成金9選

2024年3月4日時点、新規事業立ち上げに使える主な補助金・助成金は、次の9種類です。

  • IT導入補助金
  • 地域創造的起業補助金
  • 小規模事業者持続化補助金
  • 事業再構築補助金
  • 事業承継・引継ぎ補助金
  • 人材開発支援助成金
  • ものづくり補助金
  • キャリアアップ助成金
  • トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

各補助金・助成金は制度の目的・内容が違うため、違いを理解した上で利用できるか確認する必要があります。各補助金・助成金の内容を解説しますので、自分に合ったものなのか確認してみてください。

IT導入補助金

2024年3月4日時点、IT導入補助金とは経営課題の解決に必要なITツール導入を支援する補助金です。IT導入補助金には、次のような枠が設けられています。

枠名 補助率 補助額
通常枠 1/2以内 1プロセス以上:5万円~150万円
4プロセス以上:150万円~450万円
インボイス枠
(インボイス対応類型)
3/4以内:中小企業
4/5以内:小規模事業者
  • インボイス制度に対応した会計・受発注・決済ソフト
50万円
  • 会計・受発注・決済のうち1機能以上を有することが機能要件
インボイス枠
(電子取引類型)
2/3以内:中小企業・小規模事業者 350万円
セキュリティ対策推進枠 1/2以内 5万円~100万円
複数社連携IT導入枠 1/2以内
  • 基盤導入経費:PC・タブレット等の場合
10万円 × グループ構成員数

地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業補助金

2024年3月4日時点、地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業補助金とは、地域の中小企業などが地域内外と連携し、地域・社会課題を複数地域で一体的に解決しようとする事業に対しての補助金です。地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業補助金の対象経費や補助額などは、次の表のとおりです。

実証地域数 対象経費例 補助率 補助額
5地域以上 人件費・旅費・機械装置費・賃料・システム開発費など
  • 10地域以上・15地域以上のみ委託費も対象
2/3 100万円~300万円
10地域以上 2/3:中小企業
1/2:中小企業以外の地域未来牽引企業等
100万円~4,000万円
15地域以上 1/2

小規模事業者持続化補助金

2024年3月4日時点、小規模事業者持続化補助金とは小規模事業者が制度変更などに対応するため、経営計画を作成して行う事業への補助金です。小規模事業者持続化補助金の補助率、補助額などは、次の表のとおりです。

枠名 補助率 補助額 インボイス特例
通常枠 2/3 50万円 50万円
  • 一定条件を満たす場合、左記補助額に上乗せ
卒業枠 200万円
後継者支援枠
創業枠
賃金引上げ枠 2/3
  • 赤字事業者は3/4

詳しくは「小規模事業者持続化補助金は個人事業主も対象!2023年度申請方法を解説」を参照ください。

事業再構築補助金

2024年3月4日時点、事業再構築補助金とは、新市場進出や事業・業種転換、事業再編などの取り組みを通じた規模の拡大などのための補助金です。補助率や補助額は、次の表のとおりです。

枠名 補助率 補助額
最低賃金枠 3/4 1,500万円
物価高騰対策・回復再生応援枠 2/3
  • 一定条件を満たした場合3/4に引上げ
3,000万円
産業構造転換枠 2/3 7,000万円
成長枠 1/2
  • 一定条件を満たした場合2/3に引上げ
7,000万円
グリーン成長枠 エントリー 8,000万円:中小起業
1億円:中堅企業
スタンダード 1億円:中小企業
1.5億円:中堅企業
サプライチェーン強靱化枠 1/2 5億円

詳しくは「事業再構築補助金の概要や応募条件、公募スケジュール、申請方法などを解説」を参照ください。

事業承継・引継ぎ補助金

2024年3月4日時点、事業承継・引継ぎ補助金とは事業承継や事業再編、事業統合に伴う経営資源の引継ぎを行う中小企業などへの補助金です。補助率・補助額などは、次の表のとおりです。

枠名 補助率 補助上限
経営革新枠 小規模企業者
営業利益率低下
赤字
再生事業者等
上記のいずれかに該当
1/2以内:賃上げ実施した場合
2/3以内:賃上げ実施しない場合
600万円:賃上げ実施しない場合
800万円:賃上げ実施する場合
上記以外 1/2以内
専門家活用枠 買い手支援類型 2/3以内 50万円~600万円
売り手支援類型 1/2以内
  • 一定条件を満たした場合は2/3以内に引上げ
廃業・再チャレンジ枠 再チャレンジ申請 2/3以内 50万円~600万円
併用申請 1/2以内
  • 一定条件を満たした場合は2/3以内に引上げ

人材開発支援助成金

2024年3月4日時点、人材開発支援助成金とは事業主が雇用する労働者に対し、職務に関連した知識・技能を習得させるための訓練経費や訓練期間中の賃金への助成金です。主なコースの補助額は次の表のとおりです。

コース名 支給額 支給限度額
10時間以100時間未満 100時間以上200時間未満 200時間以上
特定訓練コース 新しいウィンドウで開く 資金助成 1時間あたり760円 15万円 30万円 50万円
経費助成 45%
OJT実施助成 1時間あたり665円
一般訓練コース 新しいウィンドウで開く 賃金助成 380円 7万円 15万円 20万円
訓練助成 30%
教育訓練休暇等付与コース 新しいウィンドウで開く 教育訓練休暇制度 30万円 -
長期教育訓練休暇制度 20万円
教育訓練短時間勤務等制度
事業展開等リスキリング支援コース 新しいウィンドウで開く 資金助成 960円 30万円 40万円 50万円
経費助成 75%

ものづくり補助金

2024年3月4日時点、ものづくり補助金とは中小企業や小規模事業者などが取り組むサービス開発や試作品開発、生産プロセスの改善を行うための補助金です。補助率や補助額は、次の表のとおりです。

枠名 補助率 補助額
省力化(オーダーメイド)枠 1/2以内:中小企業
2/3以内:小規模事業者
750万円~8,000万円
製品・サービス高付加価値化枠 通常類型 1/2以内:中小企業
2/3以内:小規模事業者
750万円~1,250万円
成長分野進出類型 2/3 1,000万円~2,500万円
グローバル枠 1/2以内:中小企業
2/3以内:小規模事業者
3,000万円

詳しくは「ものづくり補助金とは? 対象と申請要件、補助率や採択のポイント」を参照ください。

キャリアアップ助成金

2024年3月4日時点、キャリアアップ助成金とは有期雇用労働者や短時間労働者などの非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化など取り組みをした事業主に対しての助成金です。コースや支給額は次の表のとおりです。

コース名 支給額
正社員化コース 80万円:有期雇用労働者
40万円:無期雇用労働者
賃金規定等改定コース 5万円:3%以上5%未満
6.5万円:5%以上
賃金規定等共通化コース 60万円
賞与・退職金制度導入コース 40万円:賞与または退職金制度を導入
56.8万円:賞与と退職金制度を同時に導入
短時間労働者労働時間延長コース 23.7万円:3時間以上延長

詳しくは「キャリアアップ助成金とは?条件や金額、正社員化コース申請の流れ」を参照ください。

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

2024年3月4日時点、トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)とは、職業経験の不足などから就職が困難な求職者などを無期雇用契約へ移行することを前提として、一定期間試行雇用を行う事業主に対する助成金です。助成額は、次のとおりです。

助成額 1人あたり月額4万円
  • 対象労働者が母子家庭の母等もしくは父子家庭の父の場合は月額最大5万円

新規事業に補助金・助成金を使うべき理由

新規事業に補助・助成金を使うべき理由は、次のとおりです。

  • 補助金・助成金は返済しなくてもいい
  • 受給実績が増えると融資審査に有利になる
  • 事業計画を立案することで事業内容を見直せる

新規事業に補助・助成金を使うべき理由は多く、どれも経営者にとって大きなメリットです。事業をスムーズに始めるためにも、メリットを理解して補助金・助成金を活用していきましょう。なお、補助金・助成金のメリットについては「補助金・助成金のメリット・デメリット」で詳しく解説していますので参考にしてみてください。

補助金・助成金は返済しなくてもいい

新規事業立ち上げに補助金・助成金を使うべき理由は、ほとんどのケースで補助金・助成金を返済しなくてもいいからです。事業資金は、一般的に銀行やベンチャーファイナンスからの借入で補います。しかし、銀行などの金融機関から借入すると、返済しなければなりません。しかも、返済期間は住宅ローンと違い5年〜7年と短く、借入金には利息が付されます。新規事業立ち上げ時は安定した収入を得にくいため、返済の必要がない資金を利用できるのは大きなメリットです。

受給実績が増えると融資審査に有利になる

補助金・助成金の受給実績が増えると、融資審査に有利になります。補助金・助成金を受給するには事業計画の立案をし、申請に必要な書類を作成し審査に通過しなければなりません。審査に通過したという事実は、事業計画の正確さや書類作成技術の高さを証明してくれるため、企業としての信頼度が高まります。企業の信頼度が高いほど融資審査に有利となり、事業発展のスピードを早めていくことが可能です。

事業計画を立案することで事業内容を見直せる

補助金・助成金申請をするにあたり、事業内容を見直せます。補助金・助成金の審査に通過するには、綿密な事業計画の立案が必要です。事業計画を立案するときにはさまざまな課題が発見され、今までの事業内容が正しい方針だったのか見直せます。事業企画をブラッシュアップさせていくことにより、企業の成長速度も上がっていきます。

新規事業に補助金・助成金を使う際の注意点

新規事業に補助金・助成金を使う際の注意点は、次のとおりです。

  • 提出書類の準備に時間がかかる
  • 公募されず変更・廃止されるケースもある
  • 必ず受給できるとは限らない

新規事業立ち上げ時、補助金・助成金を使うべき理由は多いものの注意点もあります。補助金・助成金の利用を検討する前には、補助金・助成金を使う際の注意点を把握しておきましょう。

提出書類の準備に時間がかかる

補助金・助成金を受給するには、多くの書類を準備しなければならず手間がかかります。書類を作成するには、事業計画の立案から始める必要があり時間もかかります。とくに補助金を申請する場合は他の企業と競争になるため、優れた事業計画や書類作成が必要です。時には事業計画の立案のためにコンサルティング会社に相談したり、書類作成を税理士に依頼したりする必要もあります。第三者を巻き込んでの話になると、より一層手間と時間がかかるということを認識しておかなければなりません。

公募されず変更・廃止されるケースもある

補助金・助成金は毎年公募されるわけではなく、変更・廃止されるケースもあります。また、補助金・助成金には予算や目標があり、常に公募しているものではありません。とくに補助金は予算や応募人数が埋まってしまうと、申請期間中でも募集を締め切ってしまうため注意が必要です。補助金・助成金を利用しようと考えているのであれば、早めに申請する準備を開始して応募しましょう。

必ず受給できるとは限らない

補助金・助成金には審査があり、必ず受給できるとは限りません。専門家に書類作成を依頼し費用がかかっても通過するとは限らず、費用倒れになるケースがあります。また、複数の補助金・助成金の審査に通過したとしても、通過したすべての補助金・助成金を利用できないこともあります。同一の経費に対する補助金・助成金の場合は、片方しか利用できないという選択制になるケースもあるため注意しましょう。

補助金と助成金の違い

補助金と助成金は似た言葉ですが、厳密には違う意味を持っています。新規事業立ち上げに補助金か助成金のどちらを活用するのか検討する際は、両者の違いを理解しておく必要があります。簡単に補助金と助成金の違いを解説しますので、違いを詳しく知りたい人は「補助金と助成金の違いは?それぞれの特徴や活用時の注意点を解説」を参照ください。

補助金とは

補助金とは審査に通過すれば受給でき、予算が決められている金銭です。件数や抽選などで利用ができるかどうか決まるものもあります。補助金の目的や管轄などは次の表のとおりです。

目的 生産性向上や給与アップなど
管轄 経済産業省
中小企業庁
自治体
民間団体 など
財源 税金
支給額の目安 数百万円以上
諸経費の適用範囲 広い
公募期間の目安 1週間~1ヶ月など

助成金とは

助成金とは一定条件を満たせば受給できる金銭です。補助金と違い予算はなく、募集期間は比較的長く取られています。助成金の目的や管轄などは次の表のとおりです。

目的 労働者環境改善や人材育成など
管轄 厚生労働省 など
財源 雇用保険料
支給額 数十万円
諸経費の適用範囲 狭い
公募期間の目安 長期間

補助金・助成金の申請の流れ

補助金・助成金の申請の流れは、次のとおりです。

  • 1.
    補助金・助成金の内容を確認する
  • 2.
    補助金・助成金に申請する
  • 3.
    交付決定される
  • 4.
    事業計画の内容どおりに事業を開始する
  • 5.
    補助金が交付される

1.補助金・助成金の内容を確認する

補助金・助成金を申請する際には、まずどのような補助金・助成金があるのか調査し、内容を確認します。補助金・助成金によって申請可能な条件が異なり、受給できる金額も異なります。

2.補助金・助成金に申請する

利用できる補助金・助成金を確認したら、申請の準備を開始します。申請には多くの書類を準備しなければならず時間を要します。申請期間が限られている補助金・助成金もあるため、早めに準備を開始しなければなりません。なお、補助金・助成金の申請方法はほとんどのケースで電子申請であり、利用するには「GビズIDプライム」を取得し自身で操作・申請する必要があります。

3.交付決定される

申請を済ますと、助成金事務局や委員会の審査が開始されます。審査期間は各補助金・助成金で異なり、審査に数ヶ月かかるものもあります。審査に通過すると書類が届くため、書類に必要事項を記載した上で返送しましょう。

4.事業計画の内容どおりに事業を開始する

補助金・助成金の交付が決定されたら、事業計画のどおりに事業を開始します。補助金・助成金によっては中間検査があることもあります。補助金・助成金は対象となる経費の領収書・書類が必要であるため、必ず保管しておきましょう。

5.補助金が交付される

事業が終わり必要な書類を提出したら、補助金・助成金が交付されます。なお、補助金・助成金の申請の流れについては「補助金・助成金の申請から受給までの流れ」で詳しく解説しています。申請の流れを詳しく知りたい人は、参照ください。

新規で事業を立ち上げる際には補助金・助成金の利用を検討しよう

新規事業立ち上げ時には、誰しもが多くの資金を準備して事業を開始したいと考えるはずです。資金を準備する必要があるなら、金融機関からの借入だけでなく、補助金・助成金の活用を検討しましょう。補助金・助成金は金融機関からの借入と違い、ほとんどのケースで返済は必要ありません。そして、補助金・助成金の受給実績は金融機関の融資審査に有利に働くため、今後の事業展開のスピードを早めてくれます。

自社にあった補助金・助成金を検索する際には、毎月最新更新される常時3,000件以上の補助金・助成金・融資情報からかんたんに検索できる資金調達ナビの検索機能をご活用ください。

西内 孝文(にしうち たかふみ)

税理士・特定社会保険労務士・中小企業診断士・特定行政書士・CFP(R)の複数の資格を活用してワンストップで課題を解決できるユナイテッド・アドバイザーズグループを主宰。補助金・助成金等の支援では、着手金無しの業務報酬後払制により支援を行っており、成果にコミットした支援を行っている。

事務所HP:https://www.united-advisers.com/ 新しいウィンドウで開く
YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@yarisugizeirishi 新しいウィンドウで開く

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