商工会議所・商工会の支援は非会員でも受けられる?

小規模事業者持続化補助金は個人事業主も対象!2023年度申請方法を解説

2023/08/23

「小規模事業者持続化補助金」とは、持続的な経営に向けた計画を立て、販路拡大や生産性向上に取り組む小規模事業者(個人事業主を含む)に対し、経費の一部が補助されるものです。この補助金は、地域の商工会議所や商工会の支援が必要ですが、非会員では申請できないと思っている事業者の方もいるのではないでしょうか?
この記事では、小規模事業者持続化補助金の特徴や対象となる事業・事業者・経費のほか、補助金申請から受給までの流れなどについて解説します。

小規模事業者持続化補助金は売上アップのための経費の一部をサポートする補助金

小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者が販路拡大や生産性向上に取り組む場合に受けられる補助金です。

この補助金の特徴は、事業者が事業計画書を作成したうえで、地域の商工会議所・商工会で指導を受け、事業支援計画を策定してもらうことにあります。計画にもとづいて販路拡大や業務効率化などに取り組むことが、補助金を受ける条件となっているのです。
なお、仮に補助金の採択を受けて真摯に事業に取り組んだものの、売上アップにはつながらなかったとしても、ペナルティはありません。

小規模事業者持続化補助金を申請するメリット

小規模事業者持続化補助金を申請して採択を受けると、どのような効果があるのでしょうか。ここでは、小規模事業者持続化補助金を申請するメリットをご紹介します。

販路開拓や新商品開発時の金銭面の負担が軽減できる

事業者が新たに販路を開拓したり、新商品を開発したりする場合には、相応のコストがかかります。
小規模事業者持続化補助金は、そのコスト(経費)の3分の2程度(50万円または200万円が上限)が補助されるため、持続的経営に向けた販路拡大や生産性向上に取り組みやすくなるのがメリットです。

自社の経営計画を見直す機会になる

事業者が小規模事業者持続化補助金を申請する際には、経営計画書などを提出する必要があります。この経営計画書には、経営方針や顧客ニーズ、市場動向のほか、自社の強みや今後のプランなどを記載する必要があるのです。補助金を申請するための経営計画書作成は、自社の経営を見直す良い機会となるでしょう。

相談員からアドバイスが受けられる

補助金申請に関する書類作成については、「難しそう」とか「一人で作れる自信がない」といったような不安を抱く事業者は少なくないかもしれません。
小規模事業者持続化補助金は、商工会議所や商工会の助言を受けて申請する必要があります。これは、言い換えれば、商工会議所や商工会から経営計画書作成に関するアドバイスが受けられることを意味しているのです。
一人で作成することに比べて、第三者の目線を通し、補助金を受けるための要件を満たしているか、不備がないかといったポイントを確認してもらえるのは実に心強いといえるでしょう。

小規模事業者持続化補助金の特徴

小規模事業者持続化補助金には、スモールビジネス事業者にとって申請しやすい補助金です。ここでは、小規模事業者持続化補助金の特徴を解説します。

商工会議所や商工会の会員・非会員を問わず申請できる

小規模事業者持続化補助金は、商工会議所や商工会の助言を受けて申請するため、「会員になっていないから受けられない」と思っている事業者も少なくありません。しかし、商工会議所や商工会の非会員であっても、申請可能です。

非会員の場合は、まず、自身が事業を行っている地域(事業拠点)を管轄している商工会議所または商工会を調べてみてください。商工会議所や商工会によって書類の様式が異なりますので、事前に電話で問い合わせることが大切です。

商工会議所や商工会についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

会計ソフトを購入しても補助金が受けられる場合がある

小規模事業者持続化補助金は、販路開拓だけでなく、生産性向上への取り組みも支援されます。業務効率化のために会計ソフトを購入した場合なども、補助対象になる可能性があるのです。

受付締切日が年に3回程度ある

2023年度の小規模事業者持続化補助金は、2月、6月、9月に申請受付締切日が設けられています。補助金の金額などが見直される可能性はあるものの、小規模事業者持続化補助金そのものは、来年度以降も継続される見込みです。

スモールビジネス事業者にも申請しやすい

補助金の中には、大掛かりな設備投資を対象とするものもありますが、小規模事業者持続化補助金は、幅広い経費が対象となっており、比較的、申請しやすい補助金といえます。
「創業枠」などは、創業したてのスモールビジネス事業者でも申請可能です。また、2023年は一定の条件を満たせば、「インボイス特例」で補助金額に50万円が上乗せされる支援措置を受けることもできます。

小規模事業者持続化補助金の補助率と補助上限

小規模事業者持続化補助金には5つの枠があり、いずれか1つを選んで申請します。各枠の補助率・補助上限などの違いは下記のとおりです。

小規模事業者持続化補助金の種類と内容

種類 補助率 補助上限 内容
通常枠 3分の2 50万円 作成した経営計画にもとづき、商工会議所や商工会の支援を受けながら行う販路開拓などの取り組みを支援する。
賃金引上げ枠 200万円 販路開拓の取り組みにより、地域の最低賃金の時間給より30円以上多い賃金(時間給)を支払う場合に受けられる。
卒業枠 販路開拓の取り組みに加え、雇用を増やし、一定を超える従業員数で事業拡大する場合に受けられる。
後継者支援枠 販路開拓の取り組みに加え、中小企業庁が開催する「アトツギ甲子園」においてファイナリスト・準ファイナリストに選ばれた小規模事業者が受けられる。
創業枠 産業競争力強化法にもとづき各市区町村が行っている「特定創業支援等事業」の支援を受け、販路開拓に取り組む事業創業者が受けられる。
  • 「賃金引上げ枠」の補助率のみ、赤字事業者の場合は4分の3に引き上げ。

なお、各枠ともに、「免税事業者」から「適格請求書発行事業者」へ転換する小規模事業者に対しては、「インボイス特例」として補助上限額に50万円が上乗せされます。
2021年9月30日~2023年9月30日の課税期間中に免税事業者であり、「適格請求書発行事業者」登録が確認できることが条件です。

小規模事業者持続化補助金の各枠の特徴

小規模事業者持続化補助金の「通常枠」以外の4つの枠は、補助金の上限額が高いのが特徴です。
「上限額が高いので、その分、審査のハードルが高いのではないか」と構える事業者もいるかもしれません。しかし、国の政策に沿った内容だからこそ上限額が高く設定されているのであり、国として支援したい意向が強く現れているともいえます。

例えば「創業枠」は、市区町村が行うセミナーの受講などで「特定創業支援等事業」の証明書が必要になりますが、同事業により、法人設立時の登録免許税が半額になるといったメリットがあります。
ただし、「卒業枠」については従業員の採用がうまくいかず、要件を満たすことができなかった場合は補助金が一切受けられないので注意が必要です。通常枠で申請すれば最高50万円の補助が受けられたのに、卒業枠で申請したために補助金がゼロという結果にもなりかねないのです。

小規模事業者持続化補助金の対象事業者

小規模事業者持続化補助金の受給対象となるのは、下記の表の条件を満たした法人や個人事業主です。医療法人や協同組合などは、小規模事業者対象に含まれません。

小規模事業者持続化補助金の対象となる法人の条件

業種 常時使用する従業員数
宿泊業・娯楽業以外の商業・サービス業 5人以下
宿泊業・娯楽業 20人以下
製造業その他(上記以外のすべての業種)

「常時使用する従業員」には、役員や個人事業主本人、派遣社員、一定条件を満たすパートタイム労働者は含まないので注意が必要です。

これから行う取り組みによって業種が変わる場合には、変換後の業種の従業員数で申請することも可能です。例として、これまでは販売業だけだったのが、商品を加工し販売するようになったケースです。この場合は「商業→製造業」となるので、従業員数20人以下で受給対象になります。

ほかにも、「資本金・出資金が5億円以上の法人に直接・間接的に100%株式保有されていないこと」や「直近過去3年分の各年・各事業年度の課税所得年平均額が15億円を超えていないこと」などの条件があります。

小規模事業者持続化補助金の対象経費

小規模事業者持続化補助金は、どのような経費が補助対象になるのでしょうか。ここでは、対象となる経費科目と活用事例について具体的に解説します。

使用目的が補助事業遂行に必要と明確に特定できる経費が対象

小規模事業者持続化補助金の補助対象となるのは、販路開拓や生産性向上のために行う事業に関わるものです。そして、補助金を申請し、審査を通り、補助金が交付されることが決まってから発生した経費が対象になります。交付決定前に発注や支払い、納品があった場合、その経費は原則として補助対象になりません。
小規模事業者持続化補助金の対象経費科目と活用事例は、下記のとおりです。

小規模事業者持続化補助金の対象となる経費科目と活用事例

対象経費科目 活用事例
機械装置等費 補助事業の遂行に必要な製造装置の購入費など
広報費 新しいサービスを紹介するチラシ作成や配布、看板の設置など
Webサイト関連費 WebサイトやECサイトなどの構築、更新、改修、開発、運用にかかる経費
展示会等出典費 展示会や商談会の出展料など
旅費 展示会等への往復交通費など、販路開拓のための旅費
開発費 新商品の試作品開発などに伴う経費
資料購入費 補助事業に関連する資料・図書費
雑役務費 補助事業のために臨時的に雇用したアルバイト・派遣社員費用
借料 機器・設備のリース・レンタル料(所有権移転を伴わないもの)
設備処分費 新サービスを行うためのスペース確保を目的としたもの
委託・外注費 店舗改装など自社では困難な業務の第三者への依頼(契約必須)

補助金を受けるには、「補助事業のために必要な経費である」と明確に特定できることが条件となっているため、対象経費の証拠書類を提出する必要があります。証拠書類とは、見積書、発注書、契約書、納品書、請求書、領収書などで、経費科目ごとに必要な証拠書類は異なるので注意してください。

実際のところ、Webサイト関連費で申請するケースが多いですが、注意したいのは、Webサイト関連費のみでの申請が認められていないこと。また、Webサイト関連費は、補助金総額の4分の1が上限です。これは、単にWebサイトを立ち上げるだけでは、販路拡大の効果が得られるかが微妙なのが理由です。どのような客層をターゲットとして設定し、そのためにどういったWebサイトを立ち上げ、何を訴えるのかといった戦略を立て、その他の補助対象経費もバランス良く含めましょう。
なお、設備処分費も補助金総額の2分の1が上限であり、単体申請はできません。

補助対象にならない経費と申請しにくい経費

販路拡大や生産性向上を目的に「パソコンの最新機種への買い替え、台数増加」や「車やオートバイの買い替え」などを検討しがちです。しかし、これらは汎用性が高く、販路拡大などの目的以外にも広く使用できそうなものなので、補助対象にならないことに注意しましょう。

また、旅費は証拠書類をそろえるのに手間がかかるという難点があります。資料購入費もすぐに必要な場合が多いものですが、申請して審査に通るまで買うのを待つ必要があるため、使いにくさを感じるかもしれません。

小規模事業者持続化補助金を申請するために必要なもの

小規模事業者持続化補助金申請のためには、次のような書類を準備する必要があります。詳細は補助金事務局Webサイトにある、「応募時提出資料・様式集」で確認しましょう。

事業者が申請するために準備必須の書類

  • 小規模事業者持続化補助金事業に係る申請書(様式1)
  • 経営計画書兼補助事業計画書1(様式2)
  • 補助事業計画書2(様式3)
  • 確定申告書あるいは開業届の写し(個人事業主の場合)
  • 貸借対照表・損益計算書(法人の場合)

小規模事業者持続化補助金の特徴は、商工会議所や商工会が介在することです。
申請時には、「経営計画書兼補助事業計画書1(様式2)」などを作成して商工会議所・商工会に提出し、内容を確認してもらうとともに、「事業支援計画書(様式4)」を発行してもらう必要があります。

2023年度の小規模事業者持続化補助金の申請方法

小規模事業者持続化補助金を申請し、補助金を受けるまでの方法と流れは2023年度の場合、下記のとおりです。基本的に申請は、事業者自身が行います。

小規模事業者持続化補助金申請から受給までの流れ(2023年度)

STEP 手順 実施担当
1 補助金事務局のWebサイトで内容を確認 事業者
2

補助金事務局のWebサイトで申請書書式をダウンロード

ダウンロード書類

  • 持続化補助金事業に係る申請書(様式1)
  • 経営計画書兼補助事業計画書1(様式2)
  • 補助事業計画書2(様式3)
事業者
3 申請書を作成 事業者
4 管轄の商工会議所・商工会を予約 事業者
5 管轄の商工会議所・商工会に経営計画書兼補助事業計画書1(様式2)、補助事業計画書2(様式3)を提出し、事業支援計画書(様式4)を発行申込 事業者
6 内容確認 商工会議所・商工会
7 事業支援計画書(様式4)を発行 商工会議所・商工会
8 必要書類一式を小規模事業者持続化補助金事務局に電子申請または郵送 事業者
9 申請内容の審査 小規模事業者持続化補助金事務局
10 採択・交付決定連絡 小規模事業者持続化補助金事務局
11 補助事業を実施 事業者
12 実績報告書の提出 事業者
13 確定検査・補助金額の決定 小規模事業者持続化補助金事務局
14 補助金の請求 事業者
15 補助金の入金 小規模事業者持続化補助金事務局
16 事業効果および賃金引き上げなどの状況報告 事業者

申請のために自身で書類をそろえるには、早ければ1日、慣れないと1週間程度は見ておきたいところです。
商工会議所・商工会は請締切が近づくと予約が取れない可能性もあります。申請することを決めたらすぐに予約を取り、書類の準備を始めてください。遅くとも申請締切日の3~4週間前には準備を開始しましょう。
なお、申請受付締切後、審査結果がわかるまでには2~3か月程度かかります。

補助金の審査を通りやすくするためのポイント

補助金の審査を通るためには、どのような点に気を付けたらいいのでしょうか。ここでは、小規模事業者持続化補助金の審査を通りやすくするためのポイントを解説します。

経営計画書はわかりやすく書く

経営計画書などの書類は、審査側の立場に立って、わかりやすく書くようにしてください。業種・職種特有の専門用語を使うのであれば、その解説も必要です。図表や写真を積極的に入れるのもいいでしょう。

販路拡大や生産性向上を目的とした補助金なので、その記述があることは必須条件です。補助金を受けて、補助事業を行うことでどのような成果が期待できるか、なるべく具体的に、根拠を明らかにして記載してください。特に売上目標については、「何%アップ」と書くより「◯◯◯円増える」と金額で記載します。

加点要素があれば忘れずにチェックする

小規模事業者持続化補助金の「公募要領」には、どのような事業が対象になるかといったことが、詳細に記載されています。
補助金は、要件を満たせば漏れなく受けられるわけではありません。要件を満たしたうえで、より高い効果が期待できる事業者を優先的に採択しているのです。

その審査においては「重点政策加点」と「政策加点」があり、それぞれ1種類、合計2種類を選択可能です。
重点政策加点では、例えば赤字の事業者が賃金引上げ枠を申請する場合に加点されます。また、政策加点は、過疎地域の地域経済の発展につながる取り組みを行う事業者なども加点対象です。
該当する事業者は、申請書類の経営計画書兼補助事業計画書1(様式2)の「加点の付与を希望する」欄に忘れずにチェックを入れてください。

補助金・助成金を受給するためのポイントについてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

小規模事業者持続化補助金で、初めての補助金申請に挑戦してみよう

小規模事業者持続化補助金の目的は、あくまで販路拡大や生産性向上を実現させることにあります。決して「補助金を受ける」ことが目的ではないので、しっかりと経営計画を立て、専門家に相談をすることで経営のプラス材料にしていきたいところです。

補助金というと、「手続きが面倒で難しそう」と考えがちですが、1回申請し、一通りの経験を積んで成功体験を得れば、別の補助金・助成金にも格段に挑戦しやすくなります。
小規模事業者持続化補助金の申請は、他の補助金の申請に比べて難しくありませんし、大きな設備投資が条件になっていたりしないのも特徴です。小規模事業者持続化補助金で、初めての補助金申請に取り組んでみてはいかがでしょうか。

補助金・助成金に必要な基礎知識についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

監修者:西内 孝文

税理士・特定社会保険労務士・中小企業診断士・特定行政書士・CFP(R)の複数の資格を活用してワンストップで課題を解決できるユナイテッド・アドバイザーズグループを主宰。補助金・助成金等の支援では、着手金なしの業務報酬後払制により支援を行っており、成果にコミットした支援を行っている。

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