補助金・助成金の基本

2019/11/19

補助金・助成金は資金調達の手段のひとつ

みなさんも「補助金」や「助成金」という言葉を耳にしたことはあると思います。しかし、

  • 「どんな種類があるのか」
  • 「どこからもらえるのか」
  • 「どうすればもらえるのか」
  • 「返さなくてもいいって本当?」

など、疑問や不安を抱く方も多いことでしょう。本ページがそのような疑問や不安を解消する助けになればと思います。

どのような分野のビジネスでも事業を推進していくには、資金が必要です。「そのための資金をどこから調達してくるのか」という問いに対して、金融機関から融資を受けたり、投資家やベンチャーキャピタルから出資を受けたり、近年ではクラウドファンディングによる資金調達も行われていますが、補助金・助成金も資金調達手段のひとつであるといえます。

補助金・助成金にも様々な名称がある

補助金・助成金を簡単に表現すれば、「国や地方公共団体の政策目標にそった事業などを行う場合、国や地方公共団体などから支給される、返済する必要のない資金(利益が出ると返済する条件のものもあります)」ということができます。

「補助金」「助成金」「給付金」「交付金」「奨励金」など名称は様々ですが、ほぼ同じ性格のものと考えていただいてよいでしょう。ちなみに、英語では「Subsidy」や「Grant」といいます。

種類はどれくらいあるか

補助金・助成金の交付は、経済産業省や厚生労働省など国の各省庁やその関連機関、各地方自治体、民間の財団法人など多くの機関で実施しており、その数も軽く3,000件を超え、一般に知られていないものも数多くあります。

また補助金・助成金の特徴として、

  • 「それぞれに目的があり」
  • 「時代の潮流を反映する制度である」

という点があります。それぞれの目的(役割)や時代の流れにそって、導入期(予算措置)→成長期(予算拡大)→成熟期(予算継続)→衰退期(予算縮小・廃止)というライフサイクルがあるのです。そのため、今年度はあった制度が来年度も存続しているとは限りませんので、こまめな情報収集が必要です。

実施機関別の特徴(国の省庁別)

ここでは簡単に実施機関別の特徴を説明します。中小企業向けの補助金・助成金を交付する事業を行っている代表的な省庁としては経済産業省(及び中小企業庁)と厚生労働省があります。

経済産業省の補助金は、伝統産業からクールジャパン、IoT、ロボットまで多岐にわたる経済産業分野における研究開発や新市場創出、地域振興、設備投資など内容を対象とし、

  • 「事業の新規性、市場性などが審査基準となることが多い」
  • 「1件あたりの交付額は大きい」
  • 「平均すると受給率(支給件数÷申請件数)は20%くらい」
  • 「申請期間が限定されている」

ことが特徴といえます。簡単に言えば、金額は大きいがもらえる確率は高くないということです。

次に、厚生労働省ですが、労働条件の整備を中心に、国民の保健医療、福祉、生活衛生、労働安全衛生等の分野における研究開発を対象とした補助金制度があります。一般的な労働関連の助成金の特徴は以下のようになります。

  • 「従業員の雇用や能力開発、雇用環境整備などが対象」
  • 「雇用保険の適用事業主になることが前提条件」
  • 「厚生労働省の定めた条件を満たす労働者を雇用しなければならない」
  • 「申請のための条件は細かいが、その条件をクリアすれば、ほぼ100%助成金が受給できる」
  • 「ほぼ年間を通じて申請可能なものが多い」
  • 「申請窓口が多岐にわたる」

つまり、手間はかかるが、かなりの確率でもらえるということです。

上記2省の他、総務省ではIoT利活用や無線システムなど情報通信技術関連の補助事業が。農林水産省では農林水産業などの第1次産業だけでなく、食の安全や食品流通など第2次産業、第3次産業を対象とした制度があります。国土交通省では運輸・建設関連の技術開発に加え、宿泊施設向けなど観光関連の補助金。また、文部科学省では基礎から応用までのあらゆる学術研究を対象とした科学技術研究費がありますし、文化庁による映画・アニメ人材育成やスポーツ庁によるアスリート支援事業に関する補助金があります。

国以外にも実施機関がある

国以外にも都道府県や市区町村などの地方公共団体でも独自の助成金事業を実施しているところがあります。これらは、地域振興や地域特有の問題解決が目的であることが多くなっています。

1件あたりの補助金額は数万円~数千万円までさまざまですが、対象者がその地域内に限られているため競争率が比較的低くなるというのが特徴です。展示会への出展費用補助や特許など知的財産権取得費用の補助を行っているところも増えています。直接資金が交付されるというよりも、インキュベーション施設への入居や専門家派遣事業(専門家に低価格または無料で相談できる制度)のように間接的な補助事業もあり、身近なものが多いのも特徴といえます。

さらに、民間の財団法人や社団法人等でも多くの補助金・助成金事業を実施しています。これらは、財団の設立目的に沿った内容のものを対象としており、研究開発などを対象としたものもありますが、たとえば福祉や国際交流などを対象とし、事業者だけでなくNPOやボランティア団体、個人でも対象となるものが多いのが特徴です。また近年の手法として、国の補助事業の事務局を民間の団体に委託するという手法が多く使われています。

著者:那須 藤生(中小企業診断士・一級販売士)

総合商社等で中国・アジアビジネス担当、現地法人設立、海外新規事業推進に携わる。1999年有限会社ピー・エムスリーを設立、代表取締役に就任後、補助金・助成金、公的融資等資金調達支援、組織・人材関連、医療福祉介護、流通業・飲食業関連コンサルティングの他、累計1000人以上の起業・創業を支援。東京都中小企業振興公社専門相談員、川崎市経済局金融課創業支援融資診断員、ダイヤモンド社公認インストラクター、金融財政事情研究会講師などとして活動。

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