自治体の中小企業支援の活用

2022/04/19

自治体である都道府県や市区町村は、中小企業・小規模事業者を支援するべく毎年予算を組み、さまざまな支援策を用意していますが、実際にこれらの支援策の存在を知っている中小企業はほんの一握りで、活用する者はさらに少ないのが現状でしょう。ここでは自治体が実施する中小企業支援策について説明していきます。

自治体の中小企業支援策の全体像

まず、自治体の中小企業支援策の全体像について見ていきます。

自治体は国と連携して、中小企業の支援対象に対して一体的な支援をし、互いに補完し合うような内容の支援策を実施しています。行政機関同士がお互いを意識しながら支援策を立案し実施していますので、両者の支援策は似ているものが多く、どちらの支援策を利用すればいいのか迷う場合もあります。

中小企業にとっては国の支援策を利用するより、それぞれの自治体でその地域特性にあった支援策を利用する方が向いていることもあります。将来的には国の支援策の活用を見据えたうえで、それに到達できるように、まずは都道府県や市町村などの支援策を利用することを検討すると良いでしょう。

自治体の情報は、各自治体の商工振興課や産業労働部金融課などホームページに掲載されている場合が多いです。自ら情報を収集するほか、取引のある金融機関や商工会議所などから情報収集することもできます。

自治体の中小企業向け施策の情報には、主に以下のようなものがあります。

融資情報 中小企業向けの融資
助成金情報 中小企業向けの助成
経営情報 経営支援、創業支援、地域産業の活性化、技術力の向上、知的財産保護・デザイン活用支援など、中小企業向けの支援策
中小企業調査・統計

自治体の融資支援

一般的に、自治体には金融機関で融資を受けるより低金利で長期の融資があります。その内容は自治体によって異なりますが、ここでは代表的なものをいくつか挙げます。

中小企業制度融資

中小企業制度融資は、都道府県と信用保証協会と指定金融機関の三者協調のうえに成り立っている融資制度で、地域内の中小企業者が金融機関から融資を受けやすくするための制度です。その種類により、金利や返済期間が異なります。

この融資を受けるには、信用保証協会の保証が必要です。信用保証協会は、経営者の人物、資金使途、返済能力などを総合的に判断して保証の諾否や保証金額を決定します。

創業資金

多くの地方自治体で、創業資金の融資を受ける際の低金利・無担保・利子相当額の一部または全額の補助などの制度を整えています。

また、地域金融機関(信用金庫・信用組合など)を通じた低金利・無担保の融資と、経営サポートを組み合わせた「創業サポート事業」を展開する自治体もあります。自治体がより信用金庫・信用組合などと連携することで有利な条件での融資を実行しています。

事業承継時の金融支援措置

先代経営者の死亡または退任により後継者が事業承継する場合に、多額の資金を必要とするケースがあることから、都道府県知事の認定を受けると、日本政策金融公庫法などの金融支援措置を受けることができます。

利子補給

利子補給は企業の利子負担を軽減するため、利子の支払いの一部を自治体が補助するものです。景気低迷などの大きなできごとがあった場合に、中小企業を支援する措置の一環です。自体体に申請して認定書をもらい、金融機関に融資を申し込む際に提出します。

クラウドファンディング

融資とはやや異なりますが「クラウドファンディング」という資金調達に対する支援を行っている自治体もあります。自治体が指定するクラウドファンディング事業者を利用し資金調達した場合、その利用に伴う手数料の一部を助成するものです。

クラウドファンディングの詳細については「注目の資金調達方法『クラウドファンディング』の概要や種類、その具体的な進め方」に説明を掲載していますので、ご確認ください。

これにより、さまざまな属性の方(例えば、主婦・学生・高齢者など)による創業や、営利のみを目的としないソーシャルビジネスなどへの挑戦を促進することを目的としています。

自治体による起業・創業支援

自治体は、起業家の支援に力を入れている場合が多いです。自治体がこれに力を入れる理由として「企業の誘致は最も経済効果が高い」ことが挙げられます。

企業が設立されると、それに伴う雇用が生まれます。つまり、地域雇用の促進につながるのです。さらにその企業が地元に根付けば、新しい企業が次々と生まれ育っていくという流れが構築され、地方創生の基礎となります。実際に、創業支援などの支援策によりV字回復できた自治体もあります。

起業家の支援では、自治体の制度ならではのメリットがあります。代表的なものは「融資情報」で挙げた「創業資金」です。

その他、特色のある支援を行う自治体もあります。自治体ごとに異なりますが、いずれにしても創業支援については各自治体とも積極的に支援していますので、情報確認をすると良いでしょう。

具体的には、以下のようなものがあります。

女性・若者・シニア創業サポート

女性・若者・シニア世代の創業について、セミナー受講や個別相談、融資相談、融資前の事業計画アドバイスなどが受けられます。単に「融資の申し込み」までではなく「融資後の経営サポート」も可能で、定期的な「事業計画のブラッシュアップ」、事業の継続発展のためのアドバイスを行う「経営アドバイス」「決算書作成アドバイス」などが受けられます。

起業家育成資金

起業家育成資金は「これから開業したい」「廃業経験があり再び事業を開始したい」「資格や勤務経験を活かして開業したい」などのニーズに対して、創業期に必要な資金を支援するものです。

この資金の支援を受けることで、ビジネスプラン・コンペティション(ビジネスプランの「斬新さ」や「実現可能性」を競い合うコンテスト)の実施、起業家交流会の開催、起業家応援イベントなどの情報も活用できます。

創業支援事業

創業時に必要となる経費の一部を、助成してくれる事業です。
創業する方を対象としたもので、自治体のセミナーを受講したり、自治体のビジネスプランコンテストで受賞を受けると補助金が支給されたりするなどの特典があります

自治体独自の助成金・補助金

自治体には、その地域の特性や事情によって自治体独自の助成金や補助金があります。その年度ごとの予算により変わりますので、自治体のホームページで確認すると良いでしょう。

助成金・補助金の知識のついては「補助金・助成金の基本」をご確認ください。
また「資金調達手段を検索」から、補助金・助成金・融資などを一括して検索することができますので、ご活用ください。

著者:星 武志(経営コンサルタント)

株式会社アスタリスク代表取締役。金融機関、コンサルタント企業、IT企業を経て、2000年代表取締役就任。IT企業、不動産業、商社等の経営戦略、財務戦略、管理会計支援等 を行う。
これまで、銀行等の金融機関の研修・講演講師を70行庫以上務める。主な著書は「渉外マンの現場力/近代セールス社」金融商品取引法・各種業法に基づく「金融商品セールス対応話法集/銀行研修社」等でありその他金融機関向け、雑誌連載実績等多数。

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