個人事業主やフリーランス・自営業も使いやすい補助金・助成金とは?
2023-03-01更新
2023/03/15
補助金・助成金とは、国や地方自治体の政策目標に沿った事業を、事業者が行う場合に支給されます。補助金・助成金の多くは返済する必要がないこともあり、スモールビジネス事業者には魅力的な制度です。
設備投資や事業拡大などのために資金調達を考えているスモールビジネス事業者にとって、補助金と助成金がどう違うのか、どちらがスモールビジネスにとって獲得しやすいのか、気になるところではないでしょうか。
この記事では、補助金・助成金の特徴や、補助金・助成金の違いの他、活用時のメリット・注意点などを解説します。
補助金とは、国の政策目標に沿った事業を行う個人事業主や法人などに支給するお金であり、スモールビジネス事業者にとって心強いサポートをしてくれる制度です。ここでは、国の補助金の目的や管轄などについて解説します。
国は、個人事業主・フリーランスを含む中小企業の活性化を目的とした補助金を交付しています。伝統産業支援からクールジャパン振興、IoT・ロボット開発までの幅広い事業者が、経済産業分野における研究開発や新市場創出、地域振興、設備投資などを行うための資金の一部を補助しているのです。
国の補助金は、主にスモールビジネスを含む中小企業が対象とされています。補助金の申請や支給を管理するのは経済産業省や、経済産業省が管轄する独立行政法人、外局である中小企業庁などです。経済産業省の他にも、各省庁や自治体、民間団体などによるさまざまな種類の補助金があります。
経済産業省の補助金の財源は、補正予算を含む国の予算です。つまり、経済産業省の補助金には、税金が使われているのです。
経済産業省の補助金はビジネスの活性化を目的としており、新たな事業や研究開発に交付されるものが多く、支給金額は高めに設定されています。事業内容・規模などにより異なりますが、数百万円以上から数億円というケースもあります。
経済産業省の補助金は、事業実施の際にかかった経費の一部が補助されます。経済産業省の補助金でも多種多様なため一概にはいえませんが、助成金に比べると適用範囲は広いといえます。具体的には、広告宣伝費や機械設備費、人件費、外注費などが対象です。
経済産業省の補助金の多くは、申請期間が限られています。公募期間はおおむね1週間~1か月程度です。補助金制度の公募が始まったら、できるだけ早く申請の準備を進める必要があります。予算がなくなると年度の途中で受付けを中止することがあるからです。
助成金とは、主に法人が国の政策目標に沿って労働環境改善などに取り組む場合に支給されるお金です。助成金の目的や管轄などについて解説します。
国は、事業者の労働環境改善や雇用対策を目的に、助成金を支給しています。具体的には、雇用の維持や新規・中途雇用、人材育成、Uターン・Iターン・Jターン雇用、障害者の定着支援の他、就業規則改善や介護・育児休暇の取得などのための費用も助成しています。
国の助成金は雇用に関連する支援のため、利用できるのは従業員を雇用している雇用保険の適用事業主に限られます。個人事業主でも従業員を雇用しているケースはありますが、その場合、原則的に家族は従業員扱いになりません。
個人事業主でも使いやすい補助金・助成金についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
一般的に労働環境改善や雇用対策を目的とした助成金は、厚生労働省が管轄しているものを指します。助成金の主な支給元・申請先は、厚生労働省が管轄する都道府県労働局です。
厚生労働省の助成金の主な財源は、事業者が支払う雇用保険の保険料です。一部の税金も使われています。
助成金として支給される金額は、制度ごとに異なります。雇用や能力開発のために支給されるという性質から、おおむね数十万円、多くても100万円程度です。
厚生労働省の助成金の対象となる諸経費は、賃金や労務管理・人事評価の他、規則や契約書作成・締結に関する費用、外部講師への謝金のような教育訓練に関する費用、生産性向上のための機械設備費などです。事業に必要となる経費が幅広く対象となる補助金に比べると、対象範囲は狭いといえます。
厚生労働省の助成金の多くは、一年を通して受け付けています。ただし、補助金と同様に予算がなくなり、年度の途中で受付けを中止するものもあるので注意が必要です。
補助金と助成金は事業者の雇用環境の整備や新規事業のサポートなど、いずれも国の政策に沿った活動に対してお金を支給されますが、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。
続いては、経済産業省の補助金と厚生労働省の助成金について、違いを整理します。
国の補助金は、主に経済産業省の管轄です。一方、国の助成金は、多くが厚生労働省の管轄となっています。また、事業者の新規事業や研究開発など、ビジネスを支援する経済産業省の補助金と、事業者の雇用や従業員の労働環境整備・改善を支援する厚生労働省の助成金は、どちらも返済不要なお金といえども目的が大きく異なります。
厚生労働省の助成金と経済産業省の補助金を比べると、支給額としては助成金より補助金の方が多いといえます。ただし、その他の省庁や自治体の補助金・助成金制度を含めると、一概に補助金の方が多いとは言い切れないこともあります。
経済産業省の補助金は、定められた要件を満たしたうえで、審査で選ばれた事業者だけに支給されます。つまり、要件を満たしていても補助金が受けられないケースがあるのです。また、審査では、項目ごとの配点が決まっていますが、補助金によってはスモールビジネス事業者が、事業規模の大きな企業より加点されるケースもあります。
厚生労働省の助成金では、助成金ごとに設けられた一定要件を満たしていれば、必ず支給されるのが特徴です。とはいえ、従業員との雇用契約があることや出退勤時間の管理をもとに残業代などが計算されていることなど、労働関係の法令を遵守している必要があります。
経済産業省の補助金は、一定期間のみ受け付けています。一方、厚生労働省の助成金は、基本的に通年受け付けているといった違いがあります。
給付金とは、国や自治体が個人や事業者などに向けて支給するものです。補助金・助成金との明確な区分はありませんが、補助金・助成金が主にビジネスを営む事業者を対象としているのに対し、給付金は個人を対象としたものが多いのが特徴です。
例えば「持続化給付金」は事業者を対象としていますが、「失業等給付」や「育児休業給付金」「介護休業給付金」などは個人向けです。給付金は、基本的には一定要件を満たせば支給されます。
ただし、給付金と名付けられた制度の中にも、要件を満たしたうえで採択が必要など、補助金に近い性質のものもあります。情報収集時にはくれぐれも名称だけで判断せず、内容をしっかり確認するようにしてください。
補助金・助成金を活用する際には、どのような点に気を付けるべきなのでしょうか。ここでは、補助金・助成金を活用する際の注意点を解説します。
補助金・助成金は、いずれも事業の着手前には支給されず、事業実施後に支給される「精算払い(後払い)」です。補助金・助成金の申請をして支給が決定した後、自分たちで費用を準備して事業を行い、後日、費用の一部について支給を受けることになります。補助金・助成金が支給されるまでの「つなぎ資金」を自己資金で補えない場合は、短期的な借り入れなども検討すべきでしょう。
補助金・助成金は、補助金の対象事業について実施期間を定めるのが一般的です。注意したいのは、補助金・助成金が支給されるのは、その事業の実施期間内に支出した諸経費のみであること。実施期間から1日でもずれて発生した諸経費は、補助金の支給対象とはなりません。
つまり、お金が必要となるような設備投資などに着手できるのは、補助金・助成金を申請し、採択・交付決定を受け、事業の実施期間が決まってからとなります。スモールビジネス事業者は、こういった細かな決まりにおいて勘違いや認識漏れなどによるミスが起きがちなので、注意したいところです。
補助金・助成金ともに、事業者が申請してから実際にお金が支給されるまでにはかなりの時間がかかります。助成金は申請先(各都道府県労働局やハローワーク)にもよりますが、申請から受給まで6~8か月程度はかかりますし、助成金によっては約1年かかることもあります。
補助金についても、かかった諸経費について根拠となる資料を提出し、事業実施の期間を経て検査を受け、問題がなければ補助金支給が確定するため、事業終了後、目安として約2~3か月は見ておく必要があるのです。
国から支給される補助金・助成金は、国民の税金や事業者の雇用保険料を財源としているため、共に申請前や支給後の法令違反は禁物です。
経済産業省の補助金は、不正受給すると補助金適正化法にふれることになります。発覚すると交付後であっても決定取り消しや補助金の返還を求められ、最悪の場合、詐欺罪で刑事告発、逮捕に至ることもあります。
厚生労働省の助成金は労働環境の整備を目的としているため、「当該事業者が労働関係の法令を遵守していること」が前提です。下記に該当すると、助成金を受給できません。
この他、助成金によって別途禁止事項があります。例えば、厚生労働省が非正規雇用労働者の雇用条件改善のために設けた「キャリアアップ助成金」の場合、半年以内に事業者都合で労働者を解雇していると受給できません。
経済産業省の補助金では、事業対象となる期間が終了した後、事業の報告書や振込票の控えなど、支払証憑類を提出し、その内容が承認されて、初めて支給となります。これらの提出書類がきちんと作成されていない、あるいは目的以外の諸経費が含まれているといった場合、補助金の支給が受けられないこともあります。
国の補助金・助成金の財源は税金や雇用保険料のため、正しく使われているかチェックを受けることがあります。ですから、これらを受給した事業者は、会計検査院などの検査が入る可能性があることを念頭に置くべきでしょう。
諸経費の支出がルールに沿ったもので、適切な事務処理をしていれば問題ないのですが、不正と疑われる行為があると会計検査院などから指摘が入るかもしれません。検査の有無にかかわらず、正確な事務処理を行いましょう。なお、資料や帳票類は5年間の保存が必須です。
国の補助金・助成金は多種多様で、その数は3,000件を超えるとされています。スモールビジネス事業者に使いやすい補助金・助成金を、下記にまとめました(2023年1月現在)。
スモールビジネス事業者でも使いやすい補助金(2022年度予算分)
名称 | 内容 |
---|---|
IT導入補助金 (サービス等生産性向上IT導入支援事業) |
事業者が抱える業務上の課題やニーズに合ったITツールを導入する際、その経費の一部を補う。業務効率化のために導入されるソフトウェア製品やクラウドサービスの他、ITツール導入にあたってのサポート・設定費用やパソコン・タブレットも補助対象になるのが特徴。 |
持続化補助金 (小規模事業者持続化補助金) |
スモールビジネス事業者の持続的な経営に関する取り組みを支援。申請にあたっては自社の経営を見直した経営計画を作成したうえで、販路開拓や生産性向上の取り組みを行う。 |
事業承継・引継ぎ補助金 | 事業承継のタイミングで新しい取り組みや合併・買収(M&A)、再編などを行う事業者を支援。経営革新事業、専門家活用事業、廃業・再チャレンジ事業の3種類がある。 |
スモールビジネス事業者でも使いやすい助成金(2022年度予算分)
名称 | 内容 |
---|---|
雇用調整助成金 | 事業活動の縮小を余儀なくされた場合、従業員に支払う休業手当などの一部を助成する。コロナ禍によく活用されていた。 |
キャリアアップ助成金 | 有期労働者、短時間労働者、派遣労働者など非正規雇用の労働者のキャリアアップを促進するため、正社員化や処遇改善を行った事業主に費用を助成する。 |
人材開発支援助成金 | 職業能力の向上のために利用できる助成金。正社員の職業能力、キャリアアップを図り生産性の向上などを支援する。 |
働き方改革推進支援助成金 | 働き方改革への取り組みを支援する。労働時間短縮・年休促進支援コースなどがある。 |
業務改善助成金 | 設備導入や賃金引き上げなどによる業務改善を図る中小規模の事業者に助成。業務改善によって事業者の生産性向上を後押しし、従業員の賃金の引き上げを図ることが目的。 |
なお、弥生の「資金調達ナビ」内で検索すると、補助金・助成金に関する情報が得られます。
国が行う補助金・助成金制度の場合、管轄や目的の違いはありますが、一概に定義できない面があります。ただし、申請側であるスモールビジネス事業者にとっては、その違いは決して重要なものではありません。
助成金と名が付いていても、内容は補助金に近いものもありますので、名称で判断せずその内容をしっかりと確認する必要があります。チェックしたいのは、どのようなケースにおいて利用できるのか、申請期間はいつか、要件はどのようなものか、要件を満たせば必ず支給されるのか、それとも採択が必要なのかといったことです。
また、補助金・助成金共に、基本的には国などが事業者を支援するための制度です。うまく利用することで、新たな事業への取り組みにかかる負担が大幅に軽減できたり、従業員の雇用を安定させて士気を高められたりする効果が期待できます。補助金・助成金に関する情報をしっかりと集めて、上手に活用しましょう。
補助金・助成金についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
税理士・特定社会保険労務士・中小企業診断士・特定行政書士・CFP(R)の複数の資格を活用してワンストップで課題を解決できるユナイテッド・アドバイザーズグループを主宰。補助金・助成金等の支援では、着手金無しの業務報酬後払制により支援を行っており、成果にコミットした支援を行っている。
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