設備投資の基礎知識(2)

~設備資金の申し込み方法と審査ポイント~

2022/02/08

設備資金は、企業が事業の維持・拡大をするための設備を購入するためのものですが、これを調達するためには、金融機関に借り入れを申し込むことが考えられます。今回は、金融機関に設備資金を申し込む方法と、その審査のポイントについて解説していきます。

設備資金申込方法

設備資金は最初にかかるお金も大きくなりがちですので、その際に金融機関に借り入れを申し込み、その購入代金を支払うことが考えられます。

一方、金融機関の側に立つと、設備投資をした結果その設備を利用して利益や生産性などを上げ、結果として将来の売上代金の回収金額から返済してもらうことになります。

ただし金融機関は実際のビジネスの内容は分かりませんし、書類でしかその設備投資について判断ができません。よって金融機関へ設備資金の申し込みをする場合、設備投資の内容をまず理解してもらう必要があります。

金融機関へ申し込みをする際の必要書類は以下の通りです。

  • その設備投資するものの見積書
  • その設備投資をしてどのような効果があげられるかの予算計画書
  • 過去の決算書や試算表、資金繰り表といった資料

見積書はその設備に対する見積書となりますが、金融機関に説明するうえでは、その具体的な使用内容なども説明すると良いでしょう。また金額が大きくなればその価格の妥当性を示すうえで、相見積もりなども取得しておくと金融機関への説明時にスムーズです。もちろんその設備の決定に際しては価格だけでなく、その性能や仕様も重要となるでしょうから、価格の高い設備投資の場合はしっかりと目的やその効果を説明しておきたいです。

次に予算計画書について、金融機関は「実際に設備投資して結果どうなるのか」という点を気にかけます。そこで予算計画を示し、どの時点からどのくらいの利益を生むのかなどを示すと良いでしょう。

最後に過去の決算書や試算表、資金繰り表といった資料について、金融機関は「実際に融資した資金が返済できるのか」という点を見ています。これは運転資金でも同様です。仮に設備投資の結果が出なくても、返済できる返済源を示すと良いでしょう。返済源については、次の「金融機関の審査のポイント」で触れます。

金融機関の審査のポイント

金融機関では、その設備の導入に妥当性があると考え、その必要書類がそろった段階で実際の審査に入ります。その際、金融機関はどこを見て、その設備資金の融資を決定するのでしょうか。

まず過去の決算書から「その設備投資が過大でないか」「財務全体を見てその設備投資や設備投資金額が妥当なのか」という視点で見ます。その点がクリアされている場合に、改めて以下の点をチェックします。

  • 融資資金の使途と必要性
  • 返済源
  • 返済期間

以下で、それぞれの点について説明していきます。

融資資金の使途と必要性

融資資金の使途について、使い道を明確にすることが必要です。具体的には「何に使うのか」「具体的なその設備の内容」となります。融資の必要性については「なぜ設備投資が必要なのか」「売上増加に伴うものか」「何か問題を解決するためのものか」などです。

返済源

金融機関は「融資された資金を今後の利益を元にどのように返済していくか」について、つまり返済源をチェックします。これが捻出できないと、会社にとってどんなに設備投資が良い施策であったとしても、金融機関の設備資金融資は難しくなります。

その算出方法は、以下の通りです。

(経常利益+減価償却費)>借入金年間返済額合計(元金・利息)

例えば現在の経常利益が500万円、減価償却費が今回の設備投資で100万円、設備投資を申し込んで返済する元金・利息の合計が400万円とすると、以下のようになります。

500万円+100万円=600万円>400万円

前期並みの利益が出せれば、設備資金の融資申し込みは審査のテーブルに乗りますね。

また、その設備投資に伴い確実に売上増加が見込める(契約書・発注書などがある)場合は、それによる経常利益増加も考慮して考えます。例えば既に発注書をもらっていて経常利益で100万円の増加が見込まれ、かつ継続的な取引が見込まれるのであれば、その予想利益を加味することが出できるため、以下のようになります。

500万円+増加予測100万円+100万円=700万円>400万円

もし既に設備資金の融資を受けている場合であれば、既に発生している減価償却費や融資の元金・利息の年間返済額に上乗せして、以下のように算出します。

予測経常利益+予測減価償却=予測返済源>予測変換返済額

ここでは経常利益を使用しており、これが基本的な考え方となります。キャッシュフローという観点で「税引き後当期利益」を使用して算出する場合もあります。

返済期間

返済期間については、特に注意が必要です。金融機関における設備資金の融資の返済期間は、その設備の減価償却の償還年数以内であることが原則です。

例えば、償却期間10年の機械設備に対する設備資金の融資を20年の返済期間で申し込むことはできません。その設備自体の償却期間の期間内となります。また設備資金でも機械設備ではなく車両などであれば、10年より返済期間はもっと短くなりますね。

金融機関では、以下の計算式によって申し込みされる設備資金の融資期間をチェックしています。

償還年数=要利益償還債務÷返済源(税引後利益+減価償却費)

要利益償還債務とは、返済中の長期借入金や過去の設備に関する未払金、今回の設備資金の合計です。例えば、要利益償還債務の合計が5,000万円、返済源が500万円とすると、5,000万円÷500万円となり償還年数は10年となります。この場合、仮に今回設備投資する機械設備の耐用年数が15年であっても、金融機関は返済期間を最長10年として返済源を計算して支払い能力をチェックしますので、注意しましょう。

融資実行後の翌期の決算書への注意

設備資金で融資を受けた場合は特に、翌期の決算書に注意します。金融機関では、その設備が貸借対照表の固定資産に計上されているかどうかのチェックをします。

ほとんどの設備は減価償却されますので「減価償却費」が発生するはずであり、これが計上されているかどうかの確認も同時に実施します。

融資実行後、運転資金などですと、その融資した資金がどう使われているのかをほとんどチェックしていないケースが多いのですが、設備資金についてはチェックします。

その際、設備資金の融資を受けた後に固定資産などに計上されていない場合、合理的でかつ明確な説明がなければ、金融機関の信頼を失うこともあり得ますので注意が必要です。

著者:星 武志(経営コンサルタント)

株式会社アスタリスク代表取締役。金融機関、コンサルタント企業、IT企業を経て、2000年代表取締役就任。IT企業、不動産業、商社等の経営戦略、財務戦略、管理会計支援等 を行う。
これまで、銀行等の金融機関の研修・講演講師を70行庫以上務める。主な著書は「渉外マンの現場力/近代セールス社」金融商品取引法・各種業法に基づく「金融商品セールス対応話法集/銀行研修社」等でありその他金融機関向け、雑誌連載実績等多数。

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