融資・借り入れってなに? まずはこちらをチェック
2024-07-26更新
2022/04/19
金融機関のビジネスマッチングは販売先や仕入先、ビジネスパートナーを、それぞれの金融機関の取引先から探して結び付けてくれる、中小企業が利用しやすい代表的なサービスです。近年では、複数の金融機関が連携してビジネスマッチングサービスを行っているケースもあります。
ここでは売上拡大やコストダウンを図るために、金融機関にビジネスマッチングを依頼・打診する際のポイントを、それぞれ具体的に説明します。
新規販路開拓をするのはどんな業種でも大変ですので、ビジネスマッチングで売上拡大にチャレンジしたいところです。具体的にその利用について説明します。
企業が金融機関に売上拡大のビジネスマッチングを依頼・打診する場合のポイントは「具体的に依頼すること」です。金融機関は決算書やお金の流れをつかんでいても、それぞれの企業の事業内容を正確にはとらえていないケースも多々あるからです。よって、売上拡大のために「どのような業種や事業内容を持つ企業を望んでいるのか」を具体的に整理して依頼することからスタートします。
企業が売上拡大を検討する場合、売上構成の基本公式は一般的に「売上=客数×単価」となりますので、客数を増やすのか単価をあげるのかの施策を行うことになります。
その視点で売上拡大のための施策から依頼内容を整理すると、以下のようになります。
No. | 大目的 | 中目的 | 依頼・打診する内容 |
---|---|---|---|
1 | 客数を増やす | 新たな販売チャネルや販売代理店や販売パートナー | 具体的に〇〇のチャネルを持つ企業、販売代理店を持つ企業などの紹介 |
2 | 新規事業・新商品を検討 | これまで取引のなかった業界、異なる販路を持つ企業などの紹介 | |
3 | 広告代理店 | 宣伝広告を実施する企業、顧客の流出防止施策を企画する企業などの紹介 | |
4 | 単価を増やす | 既存事業・商品へのセット販売や付加価値追加 | 既存事業・商品へのセット販売や付加価値を生める新規事業・新商品を検討する企業、タイアップ企業などの紹介 |
上記以外にも、新規事業進出のためのFC展開企業紹介、代理店網構築のためのパートナー企業紹介、地場ブランド産品を開発するための産学共同事業として大学の紹介など、さまざまな要望があるでしょう。
売上拡大のマッチングを依頼・打診する際に注意すべき点は、具体的に「依頼・打診する内容」を要望として金融機関に伝え理解してもらうことです。
例えば、販路拡大の場合、次のような要望の伝え方があります。
「自社のクラウドサービスの販路拡大のために、1都3県で携帯ショップを展開している企業で、30店舗以上あり、月々のスマートフォン販売総数が千台以上ある企業だとありがたいのですが」
「出版業界は出版部数の低迷で困っているはずなので、当社の電子書籍システムや電子マニュアルシステムはニーズがあると思います。出版物や受託物の電子化に課題がある企業であれば、ありがたいのですが」
「当社商品は海外の通信会社と直接契約なので、通信料も安価に提供できます。営業マンや配達員などの人員の多い業界では、通信料の削減が課題と思いますので、そのような企業ですと、ニーズが合うと思うのですが」
上記のような課題をきちんとキャッチしている金融機関、担当者は少ないと思います。具体的に金融機関に「マッチング先のイメージ」を持ってもらうことが重要です。
また業界の垣根を超えて、これまで取引のなかった業界の企業とのマッチングもあり得ます。例えばこれまで地元農産物を仕入れ食品加工し、卸売業を通じて販売していた企業が、地元ホテルやレストランへ「安心安全な地元食材の提供」として、卸売業を通さずこれまでにない新たな販路を拡大するケースなどです。
次に、コストダウンを図るための、ビジネスマッチングの依頼・打診方法について説明します。
コストダウンを図るためのビジネスマッチングは、売上拡大に比べ、自社から相手企業に仕事を依頼することになるため候補企業が比較的見つかりやすいです。
コストダウンを図るための施策から依頼内容を整理すると、以下のようになります。
No. | 大目的 | 中目的 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 変動費を削減する | 仕入コスト削減 | 新たな仕入先企業などの紹介
|
2 | 物流費(配送費・倉庫代など)削減 | ||
3 | 生産・技術などの業務提携 | ||
4 | 変動費全体のコスト削減・合理化 | 各種アウトソーシングニーズに対し、サービス提供者などの紹介 | |
5 | 固定費を削減する | 地代家賃 | 新たな不動産業者などの紹介 |
6 | 通信費 | 新たな通信事業者の紹介(契約の見直しなどを含む) |
比較的早いタイミングで経営に大きな影響があるのは、No.1の「仕入コスト削減」です。仕入先企業を選択する際には、しっかりと選択しないと「品質が悪かった」「納期に問題が出た」「不良品が多く、検品に時間がかかる」などのトラブル発生で、かえってコスト高になりかねません。
そこで、その製品・商品の品質や安定供給の有無、過去の実績などを含めチェックします。最初は小口取引で様子を見ながら、タイミングを見計らって取引を拡大するなど段階的な検討が必要となるでしょう。
特に、直接材(その製品を直接構成するもの)の仕入れは、その製品・商品の品質に影響するため、一層注意が必要です。一方、間接材(その製品の部品、工具、器具、備品など)は、コスト重視で取引をしても良いでしょう。
例えば眼鏡を製造するケースで、直接材にあたるのはフレームやレンズ、間接材にあたるのはフレームを止めるネジと言えばイメージしやすいのではないでしょうか。
仕入先のビジネスマッチングでは、単なる仕入先などの紹介以外にも、技術の異なる企業のマッチングなどが検討できます。
例えば、A社の製造工程で不良品がでていて廃棄するしかなかった場合に、B社の技術があれば解決できたとします。A社からすれば不良品によって発生していたロスがなくなり、かつ、新たに売上を獲得できるかもしれません。
こうしたことを金融機関が考え提案することは、金融機関ではそれぞれの業界事情、製品や商品、技術などがわからないために難しいです。そこで技術の異なる企業とのマッチングを依頼する場合には、双方がWin-Winの関係となるために具体的に、企業サイドからそのイメージ(企業像や内容)を伝えることが重要です。
株式会社アスタリスク代表取締役。金融機関、コンサルタント企業、IT企業を経て、2000年代表取締役就任。IT企業、不動産業、商社等の経営戦略、財務戦略、管理会計支援等
を行う。
これまで、銀行等の金融機関の研修・講演講師を70行庫以上務める。主な著書は「渉外マンの現場力/近代セールス社」金融商品取引法・各種業法に基づく「金融商品セールス対応話法集/銀行研修社」等でありその他金融機関向け、雑誌連載実績等多数。
タグ: