資金繰り表の作成手順を知ろう

2021/11/17

会社の適切な資金繰りを知るために必要な資金繰り表作成は、企業経営において大変重要なポイントとなります。

資金繰り表は、弥生会計などの会計ソフトを利用して作る方法のほかに、会計ソフトを使用せず作成する方法もあります。

今回は、弥生会計を利用する場合しない場合両方の資金繰り表作成方法について、いそざき税理士事務所の代表である磯崎 宏司さんに、解説していただきます。

弥生会計を利用しない資金繰り表の入力方法

弥生会計などの会計ソフトがなくても、Excelなどを使うことで資金繰り表を作ることができます。

下準備として、ご自身で「残高試算表」を用意し、それをベースにExcelなどで作成した資金繰り表の該当項目に入力していく必要があります。

会計ソフトを持っていない場合の具体的な入力手順は、下記「弥生会計を利用した資金繰り表の入力方法」中の手順2.「現預金」の入力以降の手順を参考に入力してみてください。

弥生会計を利用した資金繰り表の入力方法

弥生会計スタンダードと弥生会計オンラインの各種項目を確認して、資金繰り表へ入力する方法を紹介します。なお「弥生会計 プロフェッショナル」と「弥生会計 ネットワーク」であれば、製品から資金繰り表を簡単に作成できます。

弥生会計の入力方法にもよりますが、それぞれの参照すべき箇所は以下の通りです。

弥生会計スタンダード

集計 残高試算表(月次・期間)

対象月単月を指定

弥生会計オンライン

レポート・帳簿 残高試算表

月指定より作成する単月を指定

分類 勘定科目
売上
  • 売掛金
  • 売上高
  • 前受金
仕入
  • 買掛金
  • 仕入高
  • 前渡金
人件費
  • 給与手当(+役員報酬)
  • 未払費用など
諸経費
設備投資(重要度低め)
  • 有形固定資産
  • 無形固定資産
  • 投資その他の資産など
借入金増加
  • 短期借入金
  • 長期借入金
借入金返済
  • 短期借入金
  • 長期借入金

では、実際に弥生会計の画面を見ながら説明します。

手順1.下準備

弥生会計スタンダードの場合「集計」の「残高試算表(月次・期間)」を開きましょう。

弥生会計オンラインの場合は「レポート・帳簿」の「残高試算表」という書類を確認してください。

弥生会計の入力実績を参考に、2月の資金繰り表の実績を入力していきます。

手順2.「現預金」の入力

残高試算表の月次・期間を開き「期間」の2月を単月でクリックしましょう。貸借対照表の一番上の項目である「普通預金」を確認します。ここは前月からそのまま繰り越されてきているため、入力する必要はありません。預金残高は1,172万円がスタートになります。

まず、欄外に月末の残高を1,164万円と「現預金」という箇所に入力して、今の金額と差額がいくらあるか確認します。

この方法を使うと、売上、買掛、人件費、諸経費といった経費をそれぞれ計算する手間を省略できます。

手順3.「売掛金の回収」「買掛金支払」の入力

次にお金を使う項目ですが、貸借対照表の「売掛金」という項目の「当月貸方」の「450万円」を、資金繰り表の「売掛金の回収」へ入力しましょう。もちろん売掛金を使わず、直接売り上げという項目で管理する場合もあると思いますが、その場合は売上の当月貸方の数字を入れることになります。

また、仕入れの支払を今回は「買掛金」という形で設定しているため「買掛金」の「当月借方」の「300万円」を、資金繰り表の「買掛金支払」へ入力しましょう。

手順4.「長期借入金返済」の入力

銀行の借入の返済は「固定負債」の「長期借入金」の「当月借方」で「20万円」となっているため、資金繰り表の財務収支にある「長期借入金返済」へ20万円と入力します。

一般的な資金繰り表では「財務収入」と「財務支出」という形で、借入金の入金と支払いを別の項目にすることが多く、両方ともプラスの値で入力します。しかし、いちいち集計していると書類が煩雑になるため、ここはマイナスの入力というシンプルな方法をおすすめします。

入力に使う貸借対照表の項目は、以上となります。

手順5.「人件費」「支払利息等」の入力

続いて、損益計算書から必要な情報を入力します。

損益計算書から、まず「販売管理費」の「給料手当」の「当月借方」の金額である「100万円」を資金繰り表の「人件費」に入力しましょう。

次は支払い利息で「営業外費用」の「支払利息」の「当月借方」である「1万5,000円」を、資金繰り表の「支払利息等」へ入力します。

手順6.「諸経費」の入力

最後に、諸経費を入力しましょう。現段階ではブランクになっていますが、理屈上は預金残高が1,164万円になるはずです。

そこで「途中段階の預金残高(翌月繰越)-実際の月末残高(現預金)」という計算ができるようにエクセルのシートを設定してください。そうすることで、差額が36万5,000円ということがわかります。

この金額を諸経費入力することで、1,164万円という数字が一致するため、これで2月分の資金繰り表が完成です。今回入力した数字は

  • 「売掛金の回収」
  • 「買掛金支払」
  • 「長期借入金返済」
  • 「人件費」
  • 「支払利息」
  • 「諸経費」

の6項目となりました。

手順7.イレギュラー項目の入力

ここに、設備投資などイレギュラーな項目について、3月分として入力していきましょう。

車両購入

設備投資で車を購入したと仮定した場合、「有形固定資産」の「車両運搬具」の「当月借方」項目を確認します。ここも通常はプラスで入力するところですが、シンプルに「マイナス150万円」と資金繰り表へ入力します。

納税

納税は「未払法人税等」と「未払消費税等」を支払ったということで、「当月借方」の合計「150万円」を資金繰り表の「納税」へ入力します。

借入金の返済

借入金の返済は前月同様「20万円」と入力します。
また、3月は「固定負債」の「長期借入金」の「当月貸方」に「300万円」と表記されています。

これは、3月は300万円の追加融資を受けたということになりますから、資金繰り表の「長期借入金」へ入力します。

このように、イレギュラーな項目が出た場合も、賃借対照表を参照しながら入力していけば、資金繰り表を作成することができます。

著者:磯崎 宏司(いそざき税理士事務所代表)

税理士(2013年登録)。1980年、千葉県生まれ。高千穂大学大学院経営学研究科修士課程修了。ノンバンク営業3年、税理士事務所勤務10年を経て、2017年開業。
ノンバンク営業時に審査部と折衝した経験をもとに創業融資支援を始めとした融資支援を得意とする。創業融資累計調達額9億円超。その中で資金繰り表の重要性に気づき重視をしている。資金繰り表を月次試算表に組み込み、毎月更新をして報告をすることを基本サービスとしている。

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