データ融資は市民権を得られるか

~市民権を得たネット融資、住宅ローンとの比較~

2024/01/09

資金調達の新しい選択肢として注目される会計データ融資ですが、そもそも融資という信用を前提とした取引をオンラインで行うとはどのような仕組みなのでしょうか。いざ検討を考えたときに会計データ融資がどのような仕組みかを知っていることは利用時の安心感に繋がります。この記事では、ネット経由での利用が一般化した住宅ローンと比較する形で会計データ融資の仕組みと可能性について解説します。

融資取引の特性 ~一般的な取引との違い~

例えばスーパーで買い物をする場合には店舗に出向き陳列されている中から希望する商品を選び購入するように、一般的なサービス・商品は、選択肢から希望するものを選び、そのサービス、商品に対する対価を支払うことで取引が成約します。一方で、銀行などとの融資取引では、銀行から「返済能力がある」と認められ信用されてはじめて融資を受けるかどうかの検討ができることとなります。つまり、融資取引は顧客が選び、かつ金融機関から選ばれなければ取引が成立しないという特性があります。

市民権を得たネット融資 ~住宅ローンの例~

そのような特性を持つ融資の中で、一般的なサービスに近い感覚で利用できる融資サービスの代表的な例として、住宅ローンがあります。かつては、市中金融機関が独占していた住宅ローンですが、現在は、ネット経由の住宅ローンが市場を席捲しつつあります。債務者がローンを払えなくなった場合に、住宅、土地という担保の売却により、資金の回収が可能な融資商品であること、不動産評価、借り手個人の信用情報、勤め先の確認等、定型的な審査方法で、デフォルトリスクをコントロールすることが可能であるという、金融機関にとって採算の確保がしやすいビジネスモデルであることが参入障壁を低くし、ネット銀行の参入を促していると考えられます。さらに、店舗インフラや営業担当を抱えないネット銀行には、市中金融機関と比べ、コスト優位性があるため、金利勝負がしやすい商材であると言えます。住宅ローン自体の商品性には、団信生命保険の疾病カバー範囲等の付帯サービスの工夫は見られるものの大きな差はなく、借り手にとっては保証料、事務手数料を加えた合計金利総額が安ければ安いほど、メリットがある商材になっています。
住宅ローンは、今や「ネットで選ぶべき融資」になっていると言えるでしょう。

日本における事業資金の融資

インターネット上で比較し申し込みができるようになった住宅ローンに比して、事業資金の融資はどうでしょうか。住宅ローンほどの低利ではないですが、日本の事業者向け融資は日本政策金融公庫等、公的金融機関の国策として用意された低利な制度融資の影響や、メガバンクから信用組合まで様々な形態の金融機関がひしめくオーバーバンキングの影響から、顧客のクレジットの高低にかかわらず0.5%~3.0%程度と国際的に見ても非常に低金利の市場が形成されています。さらに、事業者の信用の高低で区分し俯瞰した場合、信用力が一定程度高い顧客については、多くの金融機関が日参して融資提案を行うため、借り手優位の状況にあると言えます。つまり、優良な財務内容の事業者は、様々なオファーの中から融資条件の良い金融機関を選べる状況と言えます。一方、信用力が低い顧客、スタートアップ企業などアーリーステージの事業者については、金融機関から多くのオファーがある状況にはなく、オファーがあったとしても、保証協会保証付きの制度融資等の商品に限られ、制度融資以外に条件の良い融資を選ぶことは難しい状況のようです。

ネットで選ぶ事業者向け融資 ~データ融資の例~

データ融資とは、口座情報等のデータを金融機関に提供し、オンライン上で手続きを完結できる融資です。現在の事業性融資の状況の中で、事業者向けデータ融資においても、住宅ローンと同様に市民権を得て行くのかというと、現段階では、店舗インフラや営業担当を抱える金融機関の提供する融資がデータ融資に置き換わっているとは言い難い状況です。その理由として、事業者向け融資の多くは、無担保商品であり、住宅ローンのように不動産担保による資金回収は望めないこと、住宅ローンの審査と比べて審査方法も格段に複雑であり、代表者の信用評価、実態の財務内容評価、キャッユフロー評価、取引先評価と実に多面的に調査をしなければ、事業性融資のデフォルトリスクをコントロールすることは難しいことが考えられます。金融機関の採算確保の観点で言えば、伝統的に与信ノウハウを積み上げて来た市中金融機関と同列にデータ融資が普及することは非常に難易度が高いと言えます。また、コントロール出来ない可能性のあるデフォルトリスクは、データ融資の金利にリスクバッファとして上乗せをせざる得ず、日本の一般的な事業者が許容できる金利水準からはやや乖離した商品性が、データ融資の主流となっています。多くの金融機関が、データ融資を提供しつつあるものの、その高金利の商品性がゆえに事業者にとっては、選ぶとしても消極的選択の範囲に留まると言えます。

会計データ融資の可能性

かかる状況下、データ融資でありながら、会計データを用いることで一般的な金融機関の融資と比して遜色ない商品性を打ち出す金融機関が出てきています。会計データの特徴として、事業者の活動を365日連続的かつ網羅的に蓄積されていること、評価の対象となる会計情報が決算書と比べて圧倒的に細かい粒度で記録されていることがあげられます。従って、従来、市中金融機関の審査担当者が、一つ一つ行っていた事業者の信用を測るための多面的なチェックを、会計データ融資の場合はその細かい情報をもとにAIを使って瞬時に行うことで、伝統的な金融機関が積み上げて来た与信ノウハウに追い付く審査精度を実現することが可能といえます。その精度を反映した具体的な例として、融資上限30百万円、最長融資期間3年、最低金利0.5%の商品提供が始まっています。金融機関の会計データへの理解が深まるにつれ、データ融資は、事業者から積極的に選ばれる商品性を帯びてきたと言えるでしょう。その他、会計データ融資の特徴として、会計期として12カ月の会計データあれば、アーリーステージの事業者も手軽に申し込むことができます。また、事業そのものが評価の対象になるため、経営者個人の信用情報の提供も不要であり、連帯保証も必要もありません。
この記事をお読み頂いている事業者様にとって、これらの会計データ融資は満足できる融資条件が提示できるかもしれませんし、そうでないかもしれません。しかし、オンラインで人と会うことなく申し込みが完結する点では住宅ローンと同様ですので、金融機関との融資取引に満足されていない場合は、一度、融資条件を確認されてみてはいかがでしょうか。データ融資は、会計データという新たな情報で進化を始めています。

なお、資金調達ナビ「資金調達手段を検索」から各種資金調達手段を検索いただけます。会計データ融資は ”弥生製品データ利用” を詳細条件に追加し絞り込みください。

著作:アルトア株式会社(英語名:Altoa, Inc.)

弥生株式会社の子会社。2017年より与信モデル・融資支援サービス(LaaS)の開発・提供サポート事業を展開。事業者の事業活動全体が時系列で連続的に記録されている会計データの特徴を活かし、事業者が日々入力している会計データを用いて申し込みできるオンライン融資サービスの普及により、中小企業事業者が本業に専念できる環境の実現を目指す。

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