協調融資とは?中小事業者が活用する際のメリット・デメリット
2023-06-26更新
2022/10/07
小規模・中小事業者が少額融資(300万円以下)で資金を調達する際には、スピーディーに調達したいという要望が高いと思います。公的融資はどうしても審査等に時間がかかってしまいますが、時間を縮めるポイント、コツがあります。少額の調達に適している公的融資制度やそのポイントについて解説します。
日本政策金融公庫(国民生活事業)は、創業者や小規模事業者などを対象として融資を行っています。ちなみに、国民生活事業のコロナ禍以前の1先あたりの平均融資残高は700万円前後と比較的小口の融資が主体です。また、全体の約7割が800万円以下の融資となっています。少額融資を調達するのに適している金融機関だといえるでしょう。
実際に国民生活事業にて、100万円前後の融資を申請しても問題ありません。小規模事業者においてはそういったケースも珍しくありません。
融資制度としては、「一般貸付」「マル経融資(小規模事業者経営改善資金)」などがあります。また、創業融資の対象になる方は、「新創業融資制度」「新規開業資金」「女性、若者/シニア起業家支援資金」などの活用も可能と思われます。
一般貸付とマル経融資(小規模事業者経営改善資金)の概要について説明いたします。
概要 | |
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資金使途 | 運転資金、設備資金 |
融資限度額 | 4,800万円 |
返済期間 | 運転資金:5年以内(特に必要な場合7年以内)〈うち据置期間1年以内〉 設備資金:10年以内〈うち据置期間2年以内〉 |
利率 | 基準利率 返済期間または担保の有無によって異なる利率が適用されます。 |
担保・保証人 | 応相談 |
出典
一般貸付は、ほとんどの業種の事業者が利用することができます。また、その他、要件に合致すれば、「無担保・無保証人」「貸付利率特例制度(低利率)」などの制度が併用できる場合がありますので、小規模事業者にとってありがたい資金調達手段です。
概要 | |
---|---|
資金使途 | 運転資金、設備資金 |
融資限度額 | 2,000万円 |
返済期間 | 運転資金:7年以内〈うち据置期間1年以内〉 設備資金:10年以内〈うち据置期間2年以内〉 |
利率 | 特別利率F
|
担保・保証人 | 必要なし |
出典
マル経融資(小規模事業者経営改善資金)は、利用する際に、商工会議所、商工会等の推薦が必要になる無担保・無保証人の制度です。特に商工会等の会員になっている事業者の方には本制度の利用をお勧めいたします。マル経融資には「商工会等の経営・金融指導を受けて事業改善に取り組んでいる」といった要件がありますので、詳細は、各商工会等の窓口にご相談ください。
日本政策金融公庫から少額融資をスムーズに受ける最大のコツは、一度融資を受けたら完済する前に追加融資を小口で継続することです。いったん完済してしまって何年も経過してから融資を申し込むと「新規」の扱いになり、審査などに相当の時間を要する場合が少なくありません。しかしながら、「継続」すれば、審査はスピーディーに進捗する場合もあります。よって、常に「借りておく」状態を継続することが重要になります。
たとえば、創業時に日本政策金融公庫から創業融資を受けている方は、その返済が終わりきらないうちに追加で少額融資等を申し込むとスムーズに借りることができる場合もあります。また、日本政策金融公庫と取引のない事業者の方は、業績が安定しているときに少額でも借りておくとよいかもしれません。
信用保証付き融資は、「信用保証協会の制度」「都道府県の制度融資」「市区町村の制度融資」など、多くの種類があります。
全国共通の保証制度として「小口保証制度」があり、これに準じた制度を各自治体にて実施しているのが実態です。本制度は、保証割合が100%ですので、貸し倒れても信用保証協会が100%の保証をしてくれます。よって、金融機関にとって、とても有難い制度なのです。
概要 | |
---|---|
対象者 | 従業員20人以下(商業、サービス業の場合は5人以下) |
保証限度額 | 2,000万円 |
保証割合 | 100% |
保証料 | 各協会所定の料率 |
担保・保証人 | 無担保・無保証人 |
出典
また、各自治体には、融資限度額1,000万円以下の融資制度があります。保証料や金利の補助なども実施しているところもありますので、ぜひ、「資金調達手段を検索」で検索したり、地元自治体のホームページで検索してみてください。
参考までに「東京都港区」には、以下のような少額融資制度があります。
制度名 | 資金使途 | 融資限度額 | 返済期間 |
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短期 | 運転・設備 | 400万円 | 1年以内 |
小口零細保証B | 運転・設備 | 500万円 | 5年以内 |
小口チャレンジ支援 | 運転・設備 | 1,000万円 | 7年以内 |
信用保証付き融資はとても制度の数が多いので、自社にとってどの制度が最適なのか、悩ましいところです。よって、取引先の金融機関や顧問税理士に相談することをおすすめします。金融機関に相談する際は、できれば、都市銀行や大手地方銀行ではなく、特に小口の信用保証制度に詳しい「信用金庫、信用組合」などに相談することがおすすめです。
さらに、取引先の金融機関には定期的に決算報告や業績報告等をしておきましょう。そして、近い将来に追加で小口融資を受ける可能性がある、ということを事前に担当者に説明しておくことも重要です。密にコミュニケーションを重ねることによって、いざ小口資金が必要!という際に、スムーズに借りることができるようになる可能性があります。
なお、信用保証付き融資においても、やはり完済する前に継続して追加融資を受けて、コツコツと返済実績を作ることが大切です。金融機関とのコミュニケーションと実績作りが、追加融資をスムーズに受ける最大のポイントだといえるでしょう。
小規模事業者の場合は、いったん融資を完済してしまうと、その後、何年も融資を受けないというケースも少なくありません。そして、急に小口資金が必要になり、金融機関に駆け込むというケースが発生します。繰り返しになりますが、その際は、ほぼ「新規」扱いとなり、ゼロから審査をすることになり、時間を要することになります。
実際、2020年の春から開始された新型コロナウイルス関連の融資を受ける際に、多くの小規模事業者が経験したのではないでしょうか。
借入がない多くの小規模事業者は、まずは「金融機関探し」から始まり、面談までに時間を要してしまい、コロナ関連の融資を受けるまでに何か月もかかってしまった。というケースが多発しました。
もし、継続して取引をしていれば、金融機関から「すぐにコロナ融資の手続きをしましょう」と提案をもらい、スムーズに融資を受けることができたかもしれません。実際、「面談」などを省略して即手続きに入ることができたケースがほとんどでした。
「借りたいときにだけ借りればよい」という考え方を完全否定はしませんが、いざ必要な時にスムーズに少額融資を受けるために、「常に金融機関から融資を継続して実績を作っておく」という考え方も決して間違いではないといえるでしょう。
株式会社MBSコンサルティング代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。
主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。
また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。
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