中小企業が銀行融資を受ける方法は?
融資の種類や銀行融資以外の方法
銀行融資の審査に通るためにできることも解説

2023/08/23

銀行融資は、銀行が事業者に対して、事業に必要なお金を貸し出すもの。しかし、「スモールビジネスを含むまだ成長段階の中小企業は、銀行融資の審査にはなかなか通らない」と思っている事業者の方も、少なからずいると思われます。
とはいえ、事業の成長のために、資金調達が必要になることもあるはずです。どのようにしたら銀行融資の審査に通るようになるのでしょうか。もし審査に通らなかったときの、銀行融資以外の資金調達手段は…?
この記事では、銀行融資の種類や特徴の他、中小企業が銀行融資の審査に通るにはどうしたらいいのかを解説します。

銀行融資とは銀行が事業に必要なお金を貸し出すこと

銀行融資とは、銀行が事業者に対して、事業に必要なお金を貸し出す融資です。
この記事における銀行とは、「預金の受入れ」「資金の貸出し(融資)」「為替取引」などを行う金融機関のことであり、具体的には都市銀行(メガバンク)や地方銀行、第二地方銀行のほか、ネット銀行、信用金庫・信用組合などを指します。

ちなみに信用金庫や信用組合は、銀行と似た性質であり、銀行と実質的に同じ業務を行っていますが、銀行に比べて地域への密着度が高く、根拠法も別です。ただし、この記事では事業資金の貸出しを行っている民間金融機関として、信用金庫・信用組合も含めてご説明します。

銀行融資では使途に見合った資金を借りられる

銀行融資は、返済計画と返済能力に問題がなければ、使徒に見合った額の資金を借り入れることが可能です。ただし資金を借りれば、借入元本とそれにかかる利子を返済していく必要があります。

銀行融資では経営介入されない

株式を発行して資金調達をすると株主から経営に介入されるケースがあります。一方で銀行融資では、約定どおりに返済をしていれば、基本的に経営介入されることはありません。

銀行融資の種類

銀行融資には、大きく分けて3つの種類があります。ここでは、3つの銀行融資の内容と特徴を押さえておきましょう。

プロパー融資

信用保証協会を介在させず、銀行が事業者に直接融資するのが「プロパー融資」です。プロパー融資は貸し付けた資金を回収できないリスクを銀行が負うため、信用保証付き融資より審査が厳しくなります。信用力や担保力、成長性がないと借りられないのが一般的です。

信用保証協会の保証付き融資

信用保証協会とは、中小企業の資金調達のための公的機関です。信用保証協会の保証を得て、銀行が融資を行う融資を「信用保証付き融資」といいます。
仮に返済が滞ったときには、借主の事業者に代わって信用保証協会が代位弁済をするため、銀行にとっては資金を回収できないリスクが減り、審査のハードルが下がる仕組みです。
この信用保証付き融資を利用したい事業者は同協会の審査を受ける必要がありますが、銀行のプロパー審査よりは利用しやすいといえます。なお、借入の際には、同協会に信用保証料を支払うことになります。

信用保証付き融資についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

融資の申請手続き(3)信用保証付き融資

オンライン融資(ビジネスローン)

「オンライン融資」は、事業者が財務状況や経営状態などのデータを銀行に送信すると、AIなどで一定自動的に審査を行い、迅速に融資を行う仕組みです。申込から融資開始までオンラインで完結するのがポイントで、都市銀行を含む一部銀行で実施されており、「ビジネスローン」と呼ばれているものもあります。

オンライン融資は非対面で手続きが完了するため、日頃からきちんとした経理・財務管理などをしている中小企業であれば、スピーディに融資を受けられる可能性が高くなるでしょう。抵抗感を持つ事業者も少なからずいますが、急ぎの資金が必要な際にはおすすめです。

オンライン融資についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

オンライン融資

中小企業が銀行のプロパー融資の審査に通りにくい理由

中小企業が銀行のプロパー融資を受けるのは難しいといわれていますが、それはなぜなのでしょうか。ここでは、プロパー融資の審査に通りにくい理由を解説します。

信用力が低い

銀行融資を受けた事業者は、金利を含めた元本を返済する必要があります。しかし、銀行から「返済能力がある」と認められなければ、そもそも融資を受けることはできません。中小企業に限らず、信用力が低い企業は、プロパー融資を受けにくいのです。

保全(担保)などが乏しい

銀行は、融資先から返済金が回収できなくなったとき、代わりの手段で回収します。それが「保全」といわれるものです。
具体的には不動産や預金などの担保を指します。しかし、中小企業では担保となる不動産や預金などを持っていないことが多く、その点も長期借入などの際、プロパー融資を受けにくい理由の1つといえるでしょう。

担保付融資についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

不動産担保付融資による資金調達

メインバンクが貸していない

銀行は、事業者と一番取引をしている銀行(メインバンク)の動向を重視します。一般論として、業績が悪化し、メインバンクに追加融資を断られた場合、それまで取引のない他の銀行に相談しても、経営状況や保全状況などの理由によって融資を受けることは難しいといえます。

ただし、小規模だった事業者が成長過程において信用保証付き融資の返済実績を積んでいれば、メインバンクやそれ以外の銀行からプロパー融資が受けられる可能性が高くなります。

中小企業が銀行のプロパー融資を受けるためにできること

いくつかの条件が整えば、中小企業が銀行からのプロパー融資を受けられる可能性が高くなります。ここでは、どのようなことをすればプロパー融資が受けられるようになるのか、具体的に解説します。

増収増益を達成する

銀行融資を受けるには、売上と利益がともに増える「増収増益」を達成することがポイントです。売上が順調に伸び、利益も増えているという状況は、経営が安定的に行われていることを示す証拠だからです。
なお、税金を抑えるために無理な節税をして赤字にする事業者もあります。しかし、そのような行為は、銀行融資を受けるためにはマイナス方向に作用するので注意してください。

返済の実績を作る

公的融資や信用保証付き融資で借入をして、きちんと返済した実績があれば、その実績は銀行からの評価対象になります。「借金はしない方がいい」と考える中小企業やスモールビジネス事業者は少なくありませんが、成長のために資金が必要になるときもあります。いざ融資を受けようと思っても、過去に借入・返済実績がないと審査に時間がかかったり、融資が受けられなかったりすることもあるので注意が必要です。
借金をマイナスと捉えず、将来の信用獲得のためにも融資を得て、きちんと返済する実績を作りましょう。

顧問税理士のサポートを得る

事業を成長させるためにプロパー融資を利用したいと考えている事業者は、顧問税理士をつけて、税務に関する書類の作成や、いつでも相談できるようにしておくことが望ましいといえます。銀行融資を受けるには、決算書や資金繰り表など、さまざまな財務諸表を準備する必要があるからです。
また、書類に不備があると、銀行融資の審査においてはマイナスになることが多々あります。そのためにも、顧問税理士のサポートを得ておきたいところです。

なお、弥生では融資など、資金調達をお考えの方にピッタリの税理士・会計事務所をご紹介しています。

資金調達ナビ|専門家に相談

自己資本比率を増やす

自己資本とは、企業が持つ資金のうち、経営者が出した資本や利益を積み立てた利益剰余金のように返済の必要がない資金を指します。総資本(事業で使えるお金の合計)のうち、自己資本が占める割合が「自己資本比率」です。
自己資本比率が高いと、安定性や健全性が高く、倒産しにくいと考えられます。したがって、利益を上げて内部留保を増やすとともに、個人の財産を充てて増資したりすることによって、自己資本比率を高めましょう。安定性、健全性に対する評価アップにつながり、プロパー融資が得やすくなります。

自己資本についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

自己資本とは?他人資本との違いや勘定科目をわかりやすく解説

資金繰り表で経常収支項目をプラスにする

プロパー融資を受けるための必要書類に、支払い、入金といったお金の流れを管理する「資金繰り表」があります。この資金繰り表の項目にある「経常収支」を、プラスにすることが重要です。
売上金や売掛金といった経常収入と、仕入代金や家賃、光熱費などの経常支出のバランスを示すのが経常収支となります。経常収支は、銀行が融資判断するうえで重要なポイントといえるでしょう。

資金繰りについてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

資金繰りとは?会社の資金繰りが悪化する原因や資金繰り表の作成方法

事業計画書を作成する

銀行の審査で事業の健全性を示すために重要なのが「事業計画書」です。事業計画書には、今後どのように事業を運営していくのか、どう収益を上げるか、借入金を返済できるかなど、具体的な行動を記します。
今後の経営を考えたり、事業の可能性を見極めたりするきっかけにもなるので、一度専門家の力を借りて作成してみてください。

中小企業が銀行のプロパー融資以外で融資を得る方法

中小企業が仮に銀行のプロパー融資を受けられなくても、利用できる資金調達の方法があります。ここでは、スモールビジネスにとって優先順位の高いものから順にご紹介します。

日本政策金融公庫を利用する

中小企業にとって最も利用しやすい融資制度が、日本政策金融公庫による融資です。日本政策金融公庫の融資制度で小規模事業者を対象とした「国民生活事業」には、主に次のような種類があります。

一般貸付
日本政策金融公庫の融資制度で代表的なのが「一般貸付」です。一般貸付は、ほとんどの業種の事業者が利用できます。運転資金と設備資金では融資限度額が4,800万円で、返済期間は運転資金で5年以内(特に必要な場合は7年以内、利息のみを支払う据置期間は1年以内)、設備資金は同10年以内(利息のみを支払う据置期間は2年以内)となっています。
新企業育成貸付
事業を始めてから7年以内の事業者は、「新企業育成貸付」が利用可能です。「新規開業資金」や「女性、若者/シニア起業家支援資金」といった制度が用意されています。
セーフティネット貸付
「セーフティネット貸付」は、売上減少のように経営状況が悪化している事業者向けの融資です。
具体的には、社会的・経済的環境の変化によって一時的に売上が減少した場合、回復や発展が見込まれる中小企業を対象とした「経営環境変化対応資金」のほか、「金融環境変化対応資金」「取引企業倒産対応資金」があります。

日本政策金融公庫には、このほか「災害貸付」「マル経融資(小規模事業者経営改善資金)」「IT活用促進資金」など、50以上の融資制度があります。どのような制度が利用できるか、日本政策金融公庫に相談するといいでしょう。

日本政策金融公庫についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

日本政策金融公庫について知る 日本政策金融公庫とは(1)

自治体制度融資を利用する

各都道府県や市区町村と、金融機関、信用保証協会が協業して行っている「自治体制度融資」も、日本政策金融公庫と並んで優先順位が高い融資制度です。
自治体制度融資は、中小企業に対して、事業に必要な資金を円滑に調達することを目的としています。内容は自治体によって異なりますが、主に自治体が金利を補給することで、金利が抑えられています。

自治体制度融資についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

制度融資について知る 制度融資とは(1)

補助金や助成金を利用する

中小企業における資金調達の方法に、補助金や助成金の獲得もあります。厳密には金融機関からの融資ではありませんが、原則として返済不要なのは魅力的です。
ただし、基本的には後払いであることに注意してください。

補助金・助成金についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

補助金・助成金の基本

スタートアップ創出促進保証を利用する

2023年3月から始まった「スタートアップ創出促進保証」は、事業を始めるとき、信用保証協会が保証することで、最大3,500万円まで無担保・無保証で銀行融資が受けられる制度です。経営者が保証人になる必要がないのが最大のメリットです。
なお、対象になるのは、事業を始める事業者または開業後5年以内の事業者で、利用には一定の保証料がかかります。

銀行以外のビジネスローン(カードローン)を利用する

ビジネスローンは、事業資金専用のローンです。銀行や信販会社、クレジットカード会社、消費者金融業者が取り扱っています。なお、「ビジネスローン」の名称・定義や融資限度額、金利は各社で異なります。
審査は通りやすいためすぐに資金が得られますが、金利が高いので注意が必要です。

銀行からの融資を受けて事業を成長させよう

銀行融資の中でも、信用保証付き融資は中小企業でも比較的借りやすいものです。スムースに銀行融資を受けるには、事業規模に応じて最適な金融機関を選び、日々のコミュニケーションを図っておくことが重要です。日々、本業で忙しくなりがちなスモールビジネス事業者や中小企業は、顧問税理士とどんな金融機関と取引するかを相談したり、信用を高めるための書類作成を支援してもらったりするようにしましょう。

もし、「融資が受けられない」「審査を待っていられない」という場合でも、いわゆる「ヤミ金」や悪質なファクタリングを利用してはいけません。とはいえ、中小企業やスモールビジネスを営む事業主は、シビアな局面で孤独になりがちで、冷静な判断ができなくなることもあるでしょう。まずは顧問税理士や親しい経営者に相談するなど、冷静になってそのほかの方法を考えるようにしてください。

成長を目指すにあたって、資金調達はとても重要なもの。成長が加速するほど銀行から融資を受ける必要性は高くなります。また、成長したいと懸命にがんばっている事業者を応援する銀行も多く存在します。
銀行を味方につけて、いっしょに成長していくスタンスを持つことをおすすめします。

資金調達に必要な基礎知識についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

資金調達の知識

著者:吉田 学(財務・資金調達コンサルタント)

株式会社MBSコンサルティング代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。

また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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