会計データ融資の特長と使い方

~金融機関を取り巻く環境変化を受けて~

2023/09/28

事業を継続するうえで、金融機関と良好な関係を築くことは資金調達や事業の拡大に重要です。一方で、近年、金融機関では店舗の統廃合や窓口の縮小、デジタル化といった事業者に直接的に影響のある変化が起こっています。また、既存取引のある金融機関との効率的な資金調達手段や、新規金融機関とのお取引開始として、会計データを活用した融資が評価されつつある現状もあります。この記事では、事業者が最近の環境変化に対応するために、会計データ融資の特長と使い方について解説します。

金融機関との望ましい関係 ~資金繰りを見据えて ~

事業を継続するうえで資金は非常に重要なものです。そのため、資金繰りを支援してくれる金融機関とは、良好な関係を築いておきたいところ。金融機関と良好な関係を築いておくことで、必要な時にスムーズに良い条件で資金調達ができたり、金融機関が持つ情報や顧客などをうまく活用して、業績拡大に図ることが可能になります。
事業者が金融機関と良好な関係を築くには、金融機関に自社の情報を開示し、自社の内容を理解してもらうとともに、現状の課題改善や将来の事業の見通しなど、広く話をすることがよいでしょう。長いお付き合いをする前提で話をすることで、金融機関の望むことや想いも理解することができるはずです。

金融機関を取り巻く環境変化

一方、金融機関では近年、店舗統廃合や窓口縮小が進んでおり、事業者からは接点の減少が懸念されています。全国銀行協会によると、2001年3月末時点で15,301店あったメガバンクや地方銀行、信託銀行などの店舗は、2022年3月末で13,665店となり、約1割減っています。企業の資金需要が旺盛で高金利が続いていた頃は、新規出店が貸出金や収益の拡大につながっていましたが、最近は低金利が定着し、貸出しても大きな収益を得られず、充実した店舗網がかえって重荷となっていること、デジタル化の進展や人口減少で来店者が減っていることが店舗削減の要因といえます。
金融機関としては運営コストの重たい店舗網の見直しが急務となる一方、単純な店舗の削減や統廃合は地元企業や住民といった利用者の利便性を損なうことになりかねないとして、削減や統廃合で浮いた経費をデジタル化など地域経済に資する金融サービスづくりに回せるかが重要といわれています。一部の地方銀行では、法人向け融資で人工知能(AI)を活用し審査から実行までオンラインで完結できるようにしたり、インターネット専業の銀行を立ち上げたりする動きもあります。低金利の長期化や少子高齢化により、貸出など従来の金融ビジネスでは収益を稼ぎにくくなっていることから、人員をコンサルティング業務などの顧客の課題を解決する新たな事業に振り分け、収益化を図るなどの模索も見られます。

事業者としてどう対応すべきか ~広がる会計データの活用~

事業者からは、金融機関の支店の廃止や店舗網の縮小を受け、借入に関して複数の金融機関から選ぶ立場であったこれまでから、金融機関に選ばれる立場に変わっていくのではといった懸念の声が聞こえています。
このような環境変化が今後ますます進む可能性を考え、いつでも自ら望むときに金融機関の担当者と直接会うことが難しくなった場合に事業者としてどのようなコミュニケーションを取るのがよいか考えておくとよいでしょう。また、これまで取引のなかった金融機関と新たに関係を持ちたい場合にも、いかに効率よく自社の状況を伝えるかが大切になります。
近年、既存取引のある金融機関との効率的な資金調達手段や、新規金融機関とのお取引開始方法として、会計データを活用した融資が評価されつつあります。会計データ融資とは、オンライン上で手続きが完了するオンライン融資のなかでも、会計データを活用して審査を行う融資サービスのことをいいます。従来の事業性融資は、決算書の提出や面談でのヒヤリングが一般的で、対面で金融機関の担当者にお会いし、一定の時間を要するものでした。会計データ融資は既にあるデータをオンラインから提出するだけと事業者・金融機関の双方にとって手間が少なく、これまで取引のなかった金融機関に対しても関係性を築く前から事業内容や成長性、財務状況を詳細に伝えることができる点が活用の広がっているポイントのようです。

会計データ融資の特長と使い方

会計データ融資は既にある会計データをオンラインから提出するだけと利便性の高さが特長といえますが、資金繰りを支援してくれる金融機関と良好な関係を築きお付き合いを継続する重要性を考えて、その使い分けをイメージしておくと良いでしょう。

≪会計データ融資の特長≫

特長 実現できる理由
会計データ以外の資料準備や面談が不要 会計データが事業の詳細を記録しているため
設立後1年以上経過していれば申し込み可能
曜日を選ばず24時間いつでもオンラインから申し込み可能 人工知能(AI)による審査のため
融資条件(金利・金額)を簡単に確認可能
担保、保証が不要 会計データにより精緻な分析ができるため
様々な商品性(金利・金額・期間)で提供

従来の融資申し込みは説明書類の作成から対面での説明や審査と、労力と時間がかかるのが一般的ですが、会計データを活用した融資は会計データ以外の準備は必要なく、迅速かつスムーズな審査となります。
会計データ融資で必要なデータ期間は、2~3期分の決算書の提出が必要な従来の融資と比較して短く、設立後1年以上経過していれば融資の申し込みがいただけるようです。また、決算期の途中でも直近までの期間で審査が行われ、事業の状況が好転した際に再度審査申し込みをすると提示条件が変わる可能性もあるとのこと。
金融機関の支店が遠かったり、平日日中に時間が取れない多忙な経営者にとって、時間や場所を気にせずオンラインから申し込みを行い、融資条件を確認できる手段を知っていると、いざというとき心強いでしょう。融資条件の確認の簡単さを踏まえて常日頃からどれくらい借入が可能かを知っておく、担当者と関係性を構築する前に非対面から手続きできる特長を活かして新たな金融機関との取引を模索する場合の選択肢としてみる、といった使い方も考えられます。信用実績が乏しく担保を持ってないケースがほとんどといわれるスタートアップ企業も、積極的な活用を検討してもよいかもしれません。
会計データを利用した融資商品は、金額や期間は限定されるものの、対面融資に劣らない商品性で提供する金融機関も出てきていること、手続きの簡便さやスピード感のあることから、変化の激しい経営環境に適応するための選択肢の1つとなりうるでしょう。

なお、資金調達ナビ「資金調達手段を検索」から各種資金調達手段を検索いただけます。会計データ融資は ”弥生製品データ利用” を詳細条件に追加し絞り込みください。

※弥生は2024年10月に独自に開発した審査システムを金融機関へ提供するグループ会社、アルトア株式会社を吸収合併しました

著作:アルトア株式会社(英語名:Altoa, Inc.)

弥生株式会社の子会社。2017年より与信モデル・融資支援サービス(LaaS)の開発・提供サポート事業を展開。事業者の事業活動全体が時系列で連続的に記録されている会計データの特徴を活かし、事業者が日々入力している会計データを用いて申し込みできるオンライン融資サービスの普及により、中小企業事業者が本業に専念できる環境の実現を目指す。

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