金融機関の種別について(2) まだまだある金融機関! どのように使い分ければいいの?

2021/11/10

金融機関の種別について(1)では、どういう金融機関があるのか?について列挙して、小規模・中小事業者が主に利用している政府系金融機関や銀行、信金、信組などについて説明いたしました。しかしながら、それ以外にも数多くの金融機関があります。
ここでは、ノンバンク、JA,JF、労働金庫など、知っているようであまりよく知られていない金融機関について簡潔に説明いたします。

ノンバンクって? 銀行とは何が違うの?

1)ノンバンクとは?

ノンバンク(貸金業)とは、その名の通り、バンク(銀行)ではない金融会社のことをいいます(広義の金融機関)。一般的には「預金業務を行わずに融資などを行う金融機関(金融会社)」などと定義されています。また、ノンバンクというと消費者金融のイメージが強いと思われますが、信販会社、クレジットカード会社、リース会社などもノンバンクです。また、近年、AIを使ったオンラインレンディングなどを実施するノンバンクも増えています。なお、広義においては、ソーシャルレンディングなども含まれるという解釈もあります。

ノンバンクが行っている資金調達スキーム

  • (1)
    無担保融資/連帯保証付き融資
  • (2)
    不動産担保融資(土地・建物などを担保)
  • (3)
    ABL・動産担保融資(売掛債権・在庫、機械、車などを担保)
  • (4)
    手形割引(取引先から受け取った手形を期日前に現金化)
  • (5)
    その他、担保融資(有価証券、保証金など)
  • (6)
    ファクタリング、カードローンなど
  • (7)
    AI審査によるオンラインレンディング

現在は一昔前のような積極的な“無担保”ローンは、一部のノンバンクを除いてほとんど行われていません。現在のところ、不動産担保融資などの“有担保”型の融資を行っているノンバンクが多くなっています。

2)ノンバンクと闇金融

事業者の中には、闇金とノンバンクを混同している方がいますが、両者は明確に異なります。闇金は、貸金業法に基づく登録を受けておらず、違法に貸金業を営む業者のことをいいます。ノンバンク(貸金業者)は、財務局又は都道府県に登録しています。闇金の中には、違法な超高金利で貸付けたり、精神的に追い詰めるような過剰な取立てを行う悪徳業者もいます。闇金から資金を借りるようなことは絶対にしないようにしてください。

なお、ノンバンクの事業融資を利用する際は、ひと先ずは顧問税理士などの専門家の意見を聞くことをお勧めします。また、利用するにしてもノンバンクからの借入に過度に依存しないことです。やはり、銀行などと比べると金利が高いです。一つの目安として借入総額の10%以内には押さえるように検討してください。

農業協同組合、漁業協同組合って何?

1)農業協同組合とは?

農業協同組合(農協)とは、相互扶助の精神のもとに農家の営農と生活を守り高め、よりよい社会を築くことを目的に組織された協同組合であり、農業協同組合法に基づく法人のことをいいます。JA(Japan Agricultural Cooperatives)という名称は、「農業協同組合」の英語表記の頭文字をとってつけられたニックネームになります。

JAバンクでは組合員などから貯金等を預かり、それを原資として組合員などに貸し出しを行っています。原則として、組合員ではない一般事業者が資金を借りることはできません。よって、JAバンクを利用したことのない方が資金を借りる場合、組合員になれば借入できる可能性はあります。

2)漁業協同組合とは?

漁業協同組合とは、相互扶助、助け合いの精神のもと水産資源を守り育てながら、漁業生産活動を行っている漁業者によって組織された共同組合であり、漁業協同組合法に基づく法人ことをいいます。略称は漁協(ぎょきょう)、またはJF(ジェイエフ、Japan Fisheries cooperative)で、北海道では慣習的に漁組(ぎょくみ)と呼ぶれています。

漁業協同組合では、農業協同組合と同様に信用業務(JFマリンバンク)などを実施していますが、組合員を対象としていますので、基本的には、一般事業者が資金を借りることはできません。

その他の金融機関などについて

これまで紹介してきた金融機関、金融会社など以外にも、ゆうちょ銀行、労働金庫、福祉医療機構(WAM)、保険会社などがあります。一般事業者はどこまで利用することができるのでしょうか。

1)ゆうちょ銀行

ゆうちょ銀行とは、2007年10月に誕生した日本郵政グループの銀行のことをいいます。親会社である日本郵政株式会社を中心として、郵便・物流事業、金融窓口事業、国際物流事業、銀行業、生命保険業などについて、全国規模で実施しています。

ゆうちょ銀行においては、銀行や信用金庫、信用組合などのように、一般事業者向けの事業資金の貸付業務は行っていません。法人向け業務としては、法人口座の開設、入金確認支援、入出金事務などの支援となっています。

現時点においては、事業性資金の貸付を行っていませんが、ゆうちょ銀行による法人への融資業務については、常に話題に上がっており、近い将来どうなるか分かりませんので、注目しておきましょう!

2)労働金庫について

労働金庫とは、預金の受け入れ、資金の移動や貸し出し(融資、ローン)、手形の発行などを行う金融機関の一つです。基本的には労働組合(労組)や生活協同組合(生協)などの会員が出資して運営されています。一般事業者向けの金融機関ではありませんが、NPO法人専用の融資制度である「ろうきんNPO事業サポートローン」を取り扱っています。

3)福祉医療機構(WAM)について

独立行政法人福祉医療機構とは、福祉の増進と医療の普及向上を目的として設立された独立行政法人です。病院、診療所、老健施設、社会福祉法人への貸付などを行っています。よって、一般事業者向けの金融機関ではありませんので、利用する機会はほとんどないと思われます。

4)生命・損害保険会社について

保険会社は事業者向けに貸付業務などを主に行う金融機関ではありませんが、契約者貸付制度を実施しています。また、共済においても同様の契約者貸付制度があります。契約者貸付とは、資金が必要なときなどに、解約返還金の一定範囲内で貸付する制度のことをいいます。事業者の方は、加入している個人・法人保険に関する契約者貸付について、調べておくことをお勧めいたします。

著者:吉田 学(財務・資金調達コンサルタント)

株式会社MBSコンサルティング代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。
主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。

また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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