事業承継ファイナンス(4)

~民間金融機関の事業承継支援~

2022/05/20

事業承継に関する融資支援は、民間金融機関(銀行、信金、信組など)も実施しています。大手金融機関と地域金融機関ではソリューションが異なりますが、事業者としては、取引先の金融機関及び日本政策金融公庫などを巻き込みながら事業承継融資の手続きを進めていく必要があります。ここでは、民間金融機関が実施している事業承継支援について解説します。

民間金融機関の事業承継支援

民間金融機関の事業承継支援は、都市銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合などでその取り組み方法や対応などが異なります。

大手金融機関(都銀、地銀)は、投融資ファイナンスは当然のこと、総合的なコンサルティングやM&A、事業再編など、事業者の状況に応じたオーダーメードによる提案などを行っています。よって、ある程度の規模のある企業を対象にしているといえるでしょう。

それに対して、信用金庫や信用組合などの中小地域金融機関は、大手金融機関と同じような支援スキームを組むことは非常に困難です。そのために、日本政策金融公庫や信用保証協会、外部の専門家、地方自治体、金融機関同士でのネットワークなどと連携しながら支援をするケースが多いと思われます。

事業承継ファイナンス(3)」にて案内した東京都の「地域金融機関による事業承継促進事業」なども地域金融機関と自治体の連携の一つです。信用金庫、信用組合などを中心に全45金融機関の連携にて実施されている支援事業になります。

ある地域金融機関の取り組みについて

下記の融資制度は、ある信用金庫で実施されている事業承継に関する融資制度の概要になります。

<参考>信用金庫の事業承継融資イメージ

概要
対象者 当金庫の会員または会員資格を有する法人、個人事業主および個人
資金使途 株式取得・納税資金、設備購入、退職金支払資金など事業承継やM&Aに必要な運転・設備資金
融資限度額 100万円以上、3億円以内
返済期間
  • 運転資金:6ヶ月以上7年以内(据置1年以内)
  • 設備資金:6ヶ月以上10年以内(据置1年以内)
  • 不動産購入資金の場合、20年以内(据置1年以内)
利率
  • 原則、期間5年以内は固定金利または変動金利
  • 期間5年超は変動金利または固定金利選択型(3年、5年)
  • 融資利率は当金庫所定の審査により決定
保証人・担保 審査による

株式取得・納税資金、不動産購入、設備購入、退職金支払資金など事業承継やM&Aに必要な幅広い資金を対象としており、融資限度額も3億円となっています。信用金庫としては大きな融資額となっていますので、実際のところ、この融資限度額を実行するのは困難なケースが多いかもしれません。

よって、信用金庫や信用組合などの中小地域金融機関を利用する場合、日本政策金融公庫との協調融資や事業承継関連の保証制度なども活用しながら支援するケースが多くなると思われます。

日本公庫との連携支援(協調融資など)

事業承継ファイナンス(2)」においても説明しましたが、日本政策金融公庫は「事業承継・集約・活性化支援資金」による融資支援を実施しており、信用金庫や信用組合などの地域金融機関との協調融資なども積極的に行っています。

基本的には、日本政策金融公庫の「事業承継・集約・活性化支援資金」を活用し、協調融資を行うケースが多くなります(下記、事例1)。また、事業承継に向けた取り組みの一環として、生産体制の強化、新工場の増築を支援したケース(下記事例2)、後継者不在である企業の株式取得資金について協調融資を実施したケース(下記事例3)など、多くの民間金融機関が日本政策金融公庫と事業承継に関する協調融資を実施しています。

信用保証協会との連携

信用金庫や信用組合などの中小地域金融機関は、単独のプロパー融資のみでの支援が困難なため、日本政策金融公庫との協調融資支援や信用保証協会の信用保証制度を活用しながら事業承継支援を実施しています。「事業承継ファイナンス(3)」にて説明しましたが、多くの事業承継関連の信用保証制度が用意されています。また各自治体においても事業承継関連の制度融資が用意されていますので、それらの制度を活用しながら融資支援をする場合も多いと思われます。

民間金融機関に事業承継に関する融資相談をする際の注意点

民間金融機関に事業承継の相談をする場合、大手金融機関は多くのソリューションを持っていますので、幅広く対応できる場合もあると思われます。信用金庫や信用組合をメインバンクに持つ小規模・中小事業者の場合、常日頃から担当者とのコミュニケーションを図って、将来の事業承継について話題にすることも重要になります。取引先の金融機関に対して積極的な情報提供をするように心がけてください。

また、同時に日本政策金融公庫にも相談をするなどして、積極的に協調支援を促すシーン作りも大切になります。顧問税理士や外部専門家などに相談しながら、着実に事業承継を進めて、資金調達のタイミングを図るようにしてください。

著者:吉田 学(財務・資金調達コンサルタント)

株式会社MBSコンサルティング代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。
主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。

また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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