日本政策金融公庫について知る

日本政策金融公庫とは(2)

2021/02/19(2021/9/15更新)

小規模事業者が主に利用するのは「国民生活事業」になります。それではどういう融資制度があるのでしょうか?国民生活事業には、融資の種類だけでも50種類ほど用意されています。多くの事業者の皆さんが利用しやすい基本的な制度について説明いたします。

国民生活事業の融資制度について

国民生活事業の融資制度の体系は、主に以下のように分類されています。

主な融資制度

カテゴリー 主な制度名称
一般貸付 一般貸付新しいウィンドウで開く
セーフティネット貸付 経営環境変化対応資金新しいウィンドウで開くなど
新企業育成貸付 新規開業資金新しいウィンドウで開く女性、若者/シニア起業家支援資金新しいウィンドウで開く再挑戦支援資金新しいウィンドウで開く中小企業経営力強化資金新しいウィンドウで開くなど
企業活力強化貸付 IT活用促進資金新しいウィンドウで開く海外展開・事業再編資金新しいウィンドウで開くソーシャルビジネス支援資金新しいウィンドウで開く事業承継・集約・活性化支援資金新しいウィンドウで開くなど
環境・エネルギー対策貸付 社会環境対応施設整備資金新しいウィンドウで開くなど
企業再生貸付 企業再建資金新しいウィンドウで開く
その他の融資制度 災害貸付新しいウィンドウで開くマル経融資新しいウィンドウで開く新型コロナウイルス感染症特別貸付新しいウィンドウで開くなど
生活衛生貸付 一般貸付新しいウィンドウで開く生活衛生貸付新しいウィンドウで開くなど
国の教育ローン
恩給・共済年金担保融資
国の教育ローン新しいウィンドウで開く恩給・共済年金担保融資新しいウィンドウで開く

最も代表的な制度は「一般貸付」です。また、売上が減少するなど業況が悪化している事業者向けには「セーフティネット貸付」、創業される方向けには「新企業育成貸付」、生活衛生事業者(飲食、理美容など)向けに「生活衛生貸付」など、およそ50前後の融資制度があります。

50以上の融資制度を全て理解することは非常に困難です。事業者の皆さまにおかれましては、先ずは基本的な制度については理解しておいてください。そして、その他の制度については、日本政策金融公庫にその都度、相談されることをお勧めします。

代表的な融資制度:一般貸付について

一般貸付とは、ほとんどの業種の事業者が利用することができます。しかしながら、「業種や経営内容等によっては利用できない場合もある」とされています。

一般貸付

資金のお使いみち 運転資金 設備資金 特定設備資金
融資限度額 4,800万円 7,200万円
ご返済期間 5年以内(特に必要な場合7年以内)
〈うち据置期間1年以内〉
10年以内
〈うち据置期間2年以内〉
20年以内
〈うち据置期間2年以内〉
利率(年) 基準利率新しいウィンドウで開く
お使いみち、ご返済期間または担保の有無によって異なる利率が適用されます。
担保・保証人 お客さまのご希望を伺いながらご相談させていただきます。

出典

融資限度額が4,800万円となっていますが、どのような事業者でも満額の融資を受けることができるということではありません。日本公庫は、申請事業者の事業規模や業績、事業計画など総合的な判断していますので、ご注意ください。

具体的な融資制度:新創業融資制度について

新創業融資制度とは、「新たに事業を始める方や事業を開始して間もない事業者を対象とした無担保・無保証人で利用することのできる制度です。たとえ創業“後”でも事業開始後税務申告を2期終えていなければ対象になります。とても有難い制度です。

新創業融資制度

ご利用いただける方

次のすべての要件に該当する方

  • 1.
    対象者の要件
    新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方
  • 2.
    自己資金の要件
    新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できる方
    ただし、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」等に該当する場合は、本要件を満たすものとします。
資金のお使いみち 新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金
融資限度額 3,000万円(うち運転資金1,500万円)
ご返済期間 各融資制度に定めるご返済期間以内
利率(年) こちらをご覧ください。新しいウィンドウで開く
担保・保証人

原則不要

  • 原則、無担保無保証人の融資制度であり、代表者個人には責任が及ばないものとなっております。法人のお客さまがご希望される場合は、代表者が連帯保証人となることも可能です。その場合は利率が0.1%低減されます。

「ご利用いただける方」を読んでみますと、少々難解に思われるかもしれませんが、これから創業される方のほとんどが対象になります。ポイントは自己資金の要件がある点です。

自己資金の要件として、「新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できる方」となっています。しかしながら、これも一定の要件をクリアすれば「本要件を満たす」となっていますので、大きく要件が緩和されているのが分かります。また何といっても「無担保・無保証人」の制度であるということが最大のメリットです。

代表的な融資制度:中小企業経営力強化資金について

中小企業経営力強化資金とは、認定経営革新等支援機関の指導や助言を受けて、新事業分野の開拓等を行う事業者や、「中小企業の会計に関する基本要領」・「中小企業の会計に関する指針」に従った会計処理を行う事業者を対象とした制度です。

中小企業経営力強化資金

ご利用いただける方

次の1または2に該当する方

  • 1.
    次のすべてに該当する方
    • (1)
      経営革新または異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓等により市場の創出・開拓(新規開業を行う場合を含む)を行おうとする方
    • (2)
      自ら事業計画の策定を行い、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けている方
  • 2.
    次のすべてに該当する方
    • (1)
      「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用している方または適用する予定である方
    • (2)
      事業計画書を策定する方
資金のお使いみち 「ご利用いただける方」に該当する方が、事業計画の実施のために必要とする設備資金および運転資金
融資限度額 7,200万円(うち運転資金4,800万円)
ご返済期間 設備資金 20年以内〈うち据置期間2年以内〉
運転資金 7年以内〈うち据置期間2年以内〉
利率(年)

基準利率
ただし、「ご利用いただける方」の1に該当する方であって、次のすべてに当てはまる方は[特別利率A] 新しいウィンドウで開く

  • (1)
    「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用している方または適用する予定である方
  • (2)
    「当面6ヵ月程度の資金繰り予定表」及び「部門別収支状況表」を含んだ事業計画書を策定している方
担保・保証人 お客さまのご希望を伺いながらご相談させていただきます。
融資条件など
  • ご利用いただける方に該当される方は、「策定した事業計画期間内において、年1回以上、事業計画進捗状況を公庫に報告すること。」がご利用者の要件です。
  • 上記ご利用者の要件を満たさなくなったことが判明した場合、期限の利益を喪失することになり、繰上償還となります。

この制度の特徴は、「認定経営革新等支援機関の指導や助言を受けて」という点です。認定経営革新等支援機関とは、いわゆる「認定支援機関」のことです。なお、認定支援機関には、主に「税理士」が登録しています。よって顧問税理士がこの認定支援機関になっていれば、基本的には本制度を利用することができます。また、顧問税理士が認定支援機関になっていなくても、他の士業(中小企業診断士や行政書士など)や民間コンサルタントの中には登録されている専門家もいますので、そういう方に相談すれば基本的には申請可能です。

代表的な融資制度:マル経融資(小規模事業者経営改善資金)について

マル経融資(小規模事業者経営改善資金)とは、商工会議所や商工会などの経営指導を受けている小規模事業者の商工業者が、経営改善に必要な資金を無担保・無保証人で利用できる制度です。

マル経融資(小規模事業者経営改善資金)

資金のお使いみち 運転資金 設備資金
融資限度額 2,000万円
ご返済期間(うち据置期間) 7年以内(1年以内) 10年以内(2年以内)
利率(年) 特別利率F新しいウィンドウで開く
保証人・担保
  • 保証人、担保は不要です。
  • ご利用にあたっては商工会議所会頭、商工会会長等の推薦が必要です。

マル経融資の最大の特徴は、新創業融資制度と同様、「無担保・無保証人」制度という点です。本当に有難い制度だといえるでしょう。また、本制度は、商工会議所や商工会などが窓口となって実施している制度ですので、「会員」を対象としているように思われていますが、「会員以外でも利用できる」とされています。しかしながら、そうはいうものの、やはり商工会議所や商工会が優先になるという見方もあります。

その他、是非知っておいて欲しい制度について

その他、詳細に理解する必要はありませんが、是非知っておいて欲しい制度を一覧にいたしました。

セーフティネット貸付

制度名 対象者 融資限度額 融資期間(据置期間)
経営環境変化対応資金 売上が減少するなど業況が悪化している方 4,800万円 設備資金:15年以内(3年以内)
運転資金:8年以内(3年以内)
金融環境変化対応資金 取引金融機関の経営破たんなどにより、資金繰りに困難を来している方 別枠4,000万円 設備資金:15年以内(3年以内)
運転資金:8年以内(3年以内)
取引企業倒産対応資金 取引企業などの倒産により経営に困難を来している方 別枠3,000万円 運転資金:8年以内(3年以内)

新企業育成貸付(一部)

制度名 対象者 融資限度額 融資期間(据置期間)
新規開業資金 新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方 7,200万円(うち運転資金4,800万円) 設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金:7年以内(2年以内)
女性、若者/シニア起業家支援資金 女性または35歳未満か55歳以上の方であって、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方 7,200万円(うち運転資金4,800万円) 設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金: 7年以内(2年以内)
再挑戦支援資金
(再チャレンジ支援融資)
廃業歴等のある方など一定の要件に該当する方で、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方 7,200万円(うち運転資金4,800万円) 設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金:7年以内(2年以内)

企業活力強化貸付(一部)

制度名 対象者 融資限度額 融資期間(据置期間)
IT活用促進資金 情報化投資を行う方 7,200万円(うち運転資金4,800万円) 設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金:7年以内(2年以内)
海外展開・事業再編資金 海外展開を図る方など 7,200万円(うち運転資金4,800万円) 設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金:7年以内(2年以内)
ソーシャルビジネス支援資金 社会的課題の解決を目的とする事業を営む方など 別枠7,200万円(うち運転資金4,800万円) 設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金:7年以内(2年以内)
事業承継・集約・活性化支援資金 事業を承継する方など 7,200万円(うち運転資金4,800万円) 設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金:7年以内。ただし、既往の公庫融資の借換を含む場合、8年以内(2年以内)

さらに、「災害貸付」「東日本大震災復興特別貸付」「平成28年熊本地震特別貸付」「平成30年7月豪雨特別貸付」「令和元年台風第19号等特別貸付」「新型コロナウイルス感染症特別貸付」「新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付(新型コロナ対策資本性劣後ローン)」「令和2年7月豪雨特別貸付」というような制度も用意されています。国家に甚大な災害が発生した場合に、このような制度が新設されます。

また、「経営者保証免除特例制度」「設備資金貸付利率特例制度」のような、優遇制度も実施しています。

著者:吉田 学(財務・資金調達コンサルタント)

株式会社MBSコンサルティング代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。
主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。

また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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