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2024-04-05更新
~オンライン融資の変遷と会計データ融資~
2023/09/05
オンライン融資とは、「オンライン上(インターネット上)ですべての手続きが完結する融資サービス」のことをいいます。従来の融資は決算書の提出や面談など対面でのやり取りを前提としていましたが、データの活用と分析技術(AI)の発展により、オンライン上で申し込み手続きから詳細な情報に基づく正確な審査をより速く行えることが特徴です。
2023年現在、オンライン融資は一般的な事業性融資の水準に近づく商品性が金融機関各社から提示されるようになっており、オンライン融資のなかでも会計データを活用した会計データ融資は、資金調達の新たな選択肢として注目されています。対面とオンラインの両方のメリットを同時に実現しようとする動きもみられるなか、オンライン融資の歴史と最新の動向をゼロから解説します。
FinTech(金融とテクノロジーの融合)はデジタル化の進展とともに世界的に認知されるようになり、事業者向けオンライン融資はまず米国・中国で利用が進みました。
米国では、2008年リーマンショックからの金融危機が銀行以外の貸し手にとって追い風になり、OnDeckとKabbageというFinTech事業者2社が同ビジネスをけん引する形で拡大。中国では、多数のインターネットユーザーを有している一方で、金融政策に起因して中小・零細企業の資金調達需要が満たされていない状況があり、インターネット金融が爆発的に普及。オンライン融資の市場規模は2016年の時点で、中国が2,317億ドル(約25.5兆円、1ドル=110円換算、以下同)、米国が313億ドル(約3.4兆円)という市場規模とみられていました。(複数の調査レポートを集計して導いたオンライン融資の市場規模(出展:アルトア))
しかし、米国では新型コロナウイルスの感染拡大に伴う景気悪化を受け、2020年7月に個人や中小企業向けにオンライン融資を提供する米国のEnova InternationalがOnDeck買収を発表。2020年10月には、米クレジットカード大手のアメリカン・エキスプレス(アメックス)がKabbageの買収を完了するなど、2020年3月以降、ビジネス規模の縮小を余儀なくされています。なお、中国ではコロナ禍でもデジタル銀行がオンライン融資を実現し累計4,600万社の中小零細企業と個人事業者にサービスを提供したなど、引き続き堅調にマーケットが形成されている状況がうかがえる情報があります。
中小企業庁のスマートSME研究会討議用資料(2019年作成) では、「中小企業の資金調達について、会計データや金融機関の預金口座取引情報等を元に、短期・小口の融資を迅速に行うサービス(データレンディング)が広がりつつある。」とされています。2017年発表の経済産業省 FinTechビジョン は、目指すべきFinTech社会の姿として資金調達の未来に期待を滲ませるものでした。当時、オンライン融資は、≪短期・少額・高金利≫という商品性を特徴としていました。新興企業を中心とした≪短期・少額・高金利≫のニーズに応える形で成功した米国・中国のモデルを輸入した経緯が、日本のオンライン融資黎明期におけるイメージ形成に影響を及ぼしたと推測されます。
そのような中でコロナ禍となり、2020年6月にマネーフォワードが、法人向けオンライン融資ビジネスから撤退すると表明、2023年3月にはみずほ銀行も法人向けオンライン融資(みずほスマートビジネスローン)をサービス終了しています。新型コロナ対応として事業者の資金ニーズが政府主導で満たされたことがきっかけとされていますが、そもそもオーバーバンキングで超低金利環境が続く日本の特殊な環境において、消費者ローンに近い≪短期・少額・高金利≫の商品を試験的に展開したことが、撤退を選択させた背景だったと推測されます。実際、日本の融資取引の大部分は低金利の融資で飽和状態であり、そのような商品性は実需と一致しなかったのでしょう。
一方で金融機関において変革の波は避けられない状況にあります。低金利環境が続く中で、貸出ビジネスが低収益化していることに加え、金融業種以外による融資サービスへの新規参入・連携が相次いでいることから、コスト削減がより一層必要で、店舗数・営業人員の削減、そのための各種業務の効率化は喫緊の課題となっているためです。今、オンライン融資は、提供各社が本気度を問われ、事業モデルを模索・選別していく時代になったと言えるでしょう。
2023年現在、オンライン融資を継続している企業の一部からは、一般的な事業性融資の水準に近づく商品性が提示されるようになっています。具体的には、融資金額は最大3,000万円、金利は0.9%~、融資期間は最大36か月など、各社が特色を打ち出してきています。(下表)その積極的な商品性を支えるのは、企業実態を正確に伝えるデータとAI審査。なかでも、アルトアでは会計データを分析し、さらに独自の基準を加えた審査エンジンを提供しています。その高い審査精度によりリスクコントロールに成功していることが、≪短期・少額・高金利≫ではない商品性でのサービス提供を後押ししているといえるでしょう。
提供金融機関 | サービス名 | 審査情報 | 融資額 | 金利幅 | 融資期間 |
---|---|---|---|---|---|
三菱UFJ銀行 | Biz LENDING | 入出金データなど | 50万~1,000万円 | 15%未満 | 6か月以内 |
りそな銀行 | Speed on! | 預金口座情報または会計データ | 100万~1,000万円 | 年1.0~9.0%(変動金利) | 1~36か月以内 |
住信SBI銀行 | dayta | お客さまの日々の取引データ | 50万~3,000万円 | お客さま毎にお知らせ | 最長13か月未満 |
GMOあおぞらネット銀行 | あんしんワイド | 入出金明細情報など | 100万~1,000万円 | 年0.9~14.0%(固定金利) | 契約開始日から1年後の応当日の前月末日 |
福岡銀行 | フィンディ | 入出金情報または会計情報 | 100万~1,000万円 | 年2.0~14.0%(固定金利) | 1~36か月以内 |
横浜銀行 | ビジネスコネクトローン | 入出金情報 | 50万~500万円 | 年2.0~14.0% | 2~13か月以内 |
PayPay銀行 | 法人向け ビジネスローン | 原則書類不要 | 10万~1,000万円 | 年1.8~13.8%(変動金利) | 返済期間の指定なし |
目まぐるしく変遷しているオンライン融資ですが、さらに最新の動向として、対面とオンラインの両方のメリットを同時に実現しようとする動きもあります。対面で会うからこそ期待される安心・情報提供の役割・地域や顧客毎の多様なニーズに応えていく姿勢は維持しつつ、オンライン取引の良さ、事業者・金融機関双方において旧来型取引の不便さを克服し利便性を追求するというハイブリッド型の仕組みです。
今、事業者にとって、利用価値のある商品を時間と手間「だけ」を減らす形で利用できる融資の未来が近くなってきました。金融機関とどのように付き合い、関係性や伝え方、見せ方の工夫だけではなく、事業実態そのものである会計データをいかに活用してメリットを勝ち取っていくか。新しい動きに注目しつつ、ご自身の事業にあったご利用の方法について、ご検討を始めてみてはいかがでしょうか。
なお、資金調達ナビの『資金調達手段を検索』から各種資金調達手段を検索いただけます。会計データ融資は「弥生製品データ利用」を詳細条件に追加し絞り込みください。
※弥生は2024年10月に独自に開発した審査システムを金融機関へ提供するグループ会社、アルトア株式会社を吸収合併しました
弥生株式会社の子会社。2017年より与信モデル・融資支援サービス(LaaS)の開発・提供サポート事業を展開。事業者の事業活動全体が時系列で連続的に記録されている会計データの特徴を活かし、事業者が日々入力している会計データを用いて申し込みできる融資サービスの普及により、中小企業事業者が本業に専念できる環境の実現を目指す。
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