信用金庫・信用組合とは?銀行との違いや役割を解説

2021/12/01

金融機関として最もよく知られているのが銀行ですが、そのほかにも「信用金庫」や「信用組合」があります。これらは銀行と何が違うのでしょうか。

この記事では、信用金庫と信用組合の役割や機能について説明します。中小企業や個人事業主が事業を進める上で利用する金融機関として、機能や役割をしっかりと理解しておきましょう。

POINT

  • 銀行、信用金庫、信用組合の大きな違いは「目的と役割」
  • 信用金庫、信用組合は「地域に根ざした小規模事業者向けの金融機関」
  • 小規模事業者は信用金庫、信用組合による融資や事業者支援を活用することで、より有利にビジネスを展開できる可能性がある

「信用金庫」「信用組合」とは何か

まず信用金庫と信用組合、それぞれの役割や利用できるのはどんな人なのかについて見ていきましょう。

信用金庫は、規模が大きめの協同組織

信用金庫は、特定の地域で居住・就労する人々による協同組織です。中小企業向けの金融機関の中でも規模が大きく、銀行に近い機能を有しています。目的は利用者・会員同士の互助であり、地域に根付いたサービスを行うことや、地域の人々に貢献することを重視しています。

なお、この記事でご紹介する金融機関はすべてなんらかの法律に基づいて運営されています。信用金庫の場合は「信用金庫法」という法律が該当します。

信用金庫で預金と融資を受けられる対象は、以下のとおりです。

預金と融資が可能な範囲

預金…誰でも可能であり、「特定の地域で居住・就労する人々」に限らない

融資…原則として会員のみ(一部例外あり)

信用組合は、規模が小さめの協同組合

信用組合も特定の地域で居住・就労する人々による組織です。ですが、中小企業向けの金融機関の中でも規模は小さく、より組合としての機能(組合員の互助)を重視した金融機関です。そのため、「特定の地域」は信用金庫より限定されています。

信用組合は、中小企業等協同組合法・協同組合による金融事業に関する法律(協金法)に基づいて運営されます。

信用組合で預金と融資を受けられる対象は、以下のとおりです。

預金と融資が可能な範囲

預金…原則として組合員のみ(ただし、総預金の20%までは組合員外預金が可能)

融資…原則として組合員のみ(一部例外あり)。

個人事業主が融資の相談をするなら、まずは信用組合へ

第一に、信用金庫と信用組合はどちらも組織が成立する根拠となる法律が異なり、会員の資格や預金・融資が可能な人も違います。

預金の受け入れ対象

信用金庫:誰でも

信用組合:組合員のみ

融資の対象

信用金庫:原則として会員のみ

信用組合:原則として組合員のみ

預金だけ見ると、誰でも受け入れている信用金庫のほうが利用しやすいです。一方、融資はどちらも会員や組合員として所属する人が対象となり、資格の条件は以下の通りです。

会員・組合員資格の条件

信用金庫=金庫の営業エリアに居住・就労する人々
従業員300人以下または資本金9億円以下の事業者

信用組合=組合の指定する地域に居住・就労する人々
(ただし、この「地域」は信用金庫よりも限定されている点は注意)
従業員300人以下または資本金3億円以下の事業者

  • 卸売業 100人または1億円
  • 小売業 50人または5千万円
  • サービス業 100人または5千万円

資本金の制限を見ると、より多くの小規模事業者や個人事業主が利用しやすいのは制限が少ない信用金庫のように思います。

ここで視点を変えて、信用金庫・信用組合それぞれの役割から考えましょう。先に述べたように、信用金庫は特定の地域で居住・就労する人々による「協同組織」であり、信用組合は、信用金庫よりも「より限定的な範囲において」同じような役割を果たしています。

したがって、「まずは自分が居住・就労する地域の信用組合に融資を依頼し、より大きな資金が必要になったら信用金庫に融資を依頼する」という流れのほうが、それぞれの組織の役割に合った利用の順序だと言えるでしょう。

ここまでをまとめると、信用金庫・信用組合は次のように表現できます。

信用金庫:比較的広い営業エリアで中小規模の事業者を助ける

信用組合:信用金庫と比較するとより限定的なエリアで、信用金庫のターゲットよりも小規模な事業者を助ける

また、融資の条件を基準に考えると、次のように相談先を決めると良いでしょう。

資本金3億~9億の事業者:まず信用金庫へ相談してみる
それ以下の規模の事業者、個人事業主:まず信用組合へ相談してみる

ただし、地域による違いもあるため、資金確保のチャンスを増やすためには両方の金融機関に問い合わせましょう。

信用金庫・信用組合と銀行の最たる違いは「目的が互助か営利か」

信用金庫・信用組合と銀行の違いについても把握しておきましょう。

銀行は、営利目的の法人

銀行は、株式会社(営利法人)として経営される金融機関です。資金の借り入れ・貸付によって国民経済の発展に寄与することを目的としています。「銀行法」という法律に基づき設立・運営され、預金・融資ともに制限はありません。

同じ金融機関ではあるのですが、信用金庫や信用組合とは次のポイントが異なります。

  • 組織としての成り立ちと目的
  • 根拠となる法律
  • 預金・融資先の制限(最も大きな違いは「営業エリア」)

信用金庫・信用組合が特定の地域で暮らす人(or 組合員)の互助を目的とするのに対し、銀行は営利目的の法人です。信用金庫や信用組合が利用者を「会員」「組合員」などと呼ぶのに対し、銀行がそのような呼び方をしないのは、上記の目的の違いに基づくものです。

信用金庫・信用組合、銀行の違いを一覧表にしました。

区分 信用金庫 信用組合 銀行
根拠法 信用金庫法 中小企業等協同組合法
協同組合による金融事業に関する法律(協金法)
銀行法
設立目的 国民大衆のために金融の円滑を図り、その貯蓄の増強に資する 組合員の相互扶助を目的とし、組合員の経済的地位の向上を図る 国民経済の健全な発展に資する
組織 会員の出資による協同組織の非営利法人 組合員の出資による協同組織の非営利法人 株式会社組織の営利法人
会員(組合員)資格

(地区内において)

地区内に住所または居所を有する者
地区内に事業所を有する者地区内において勤労に従事する者
地区内に事業所を有する者の役員
地区内に転居することが確実と見込まれる者

事業者の場合
従業員300人以下または資本金9億円以下の事業者

(地区内において)

地区内に住所または居所を有する者
地区内において事業を行う小規模の事業者地区内において勤労に従事する者
地区内において事業を行う小規模の事業者の役員

事業者の場合
従業員300人以下または資本金3億円以下の事業者(卸売業は100人または1億円、小売業は50人または5千万円、サービス業は100人または5千万円)

なし
業務範囲(預金・貸出金) 預金は制限なし
融資は原則として会員を対象とするが、制限つきで会員外貸出もできる(卒業生金融あり)
預金は原則として組合員を対象とするが、総預金額の20%まで員外預金が認められる
融資は原則として組合員を対象とするが、制限つきで組合員でないものに貸出ができる(卒業生金融なし)
制限なし

引用元:一般社団法人全国信用金庫協会「信用金庫と銀行・信用組合との違い」新しいウィンドウで開く

信用金庫・信用組合の役割は「特定地域の中小企業・個人事業主を長期的に支援すること」

信用金庫・信用組合は、「地域に根ざした小さな金融機関」であり、中小企業や個人事業主を支援する役割を持っています。長期的視野に立った融資・相談に乗ってくれるのが特徴です。

銀行は営利目的ですから、信用金庫・信用組合とはそもそもの目的・役割が異なります。利益が出る前提で動かざるを得ず、大企業との取引が多いのも当然のことです。

起業したばかりの人、「銀行融資を得るには信用が足りないのではないか」と心配な人、地域に根ざしたビジネスを行いたい人は、まずは信用金庫・信用組合に相談しましょう。

信用金庫・信用組合から融資を受ける流れ

信用金庫・信用組合から融資を受けたいときは、自分の住所がある地域、あるいは事業を営む地域を営業エリアとする信用金庫・信用組合に、利用者自ら申し込みを行う必要があります。

融資は以下のように「保証付融資」「プロパー融資」の2種類があります。プロパー融資とは、信用保証協会の保証なしに、完全に自己の責任のみで受ける融資のことです。

・信用金庫・信用組合が行う融資の形式

保証付融資:信用金庫(組合)の審査に加えて信用保証協会の審査が必要

プロパー融資:信用金庫(組合)の審査のみ

多くの場合、「保証付融資」から検討するよう勧められるでしょう。審査に必要な書類は申し込んだ信用金庫(組合)からの指示に従って用意します。

信用金庫・信用組合を利用するメリットとデメリット

信用金庫・信用組合は銀行と比べると小規模事業者などの利用者に寄り添った融資をしてくれる傾向があります。この点は大きなメリットでしょう。

デメリットとして、銀行に比べると金利がやや高めであることが挙げられます。しかし、会員に対する金利優遇などを設定しているケースもあるので、まずは条件を確認しましょう。また、融資を受けられる金額の上限が低いため、注意が必要です。

不明点や疑問点があれば、事前に税理士など融資やお金の専門家に相談してみることをお勧めします。

信用金庫・信用組合の社会的意義

信用金庫・信用組合は、資金的なサポートだけでなく、経営変革のアイデア提供や地域に根ざしたネットワークによる商流展開の支援なども行っています。つまり、中小企業や個人事業主の悩みをサポートするという重要な役割を果たしているのです。

具体的な支援策の事例を紹介します。

つながろうプロジェクト新しいウィンドウで開く

テイクアウト・デリバリーを開始した飲食店が、サービス開始の旨を信用金庫のネットワークを通じて告知することができるサービス。2021年5月現在、1,652店舗の情報を見ることができます。

小規模事業者は、信用金庫・信用組合の特性を理解し上手に活用しよう

信用金庫・信用組合は、普段から利用することがない方は馴染みがなく、縁遠く感じるかもしれませんが、実際には小規模事業についての理解も深く、よい相談相手となってくれる可能性が高いのです。

信用金庫・信用組合のホームページには、必ず事業者向けの問い合わせ窓口(フォームおよび電話番号)が用意されています。まずは、資金調達をと考える起業検討者や個人事業主、小規模事業経営者は、連絡だけでもしてみてください。1人では思いつかなかった解決策を提案してもらえるかもしれません。

著者:倉持 鎮子

ライティングスタジオ・シーラカンストークス新しいウィンドウで開く代表/ライター/ディレクター/マーケター。

美容、育児・教育問題、PTA関連、科学、不動産、保険、採用に関する記事を執筆。

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