SDGs・ESGファイナンスとは

2022/08/18

これから先も、この地球で安定した暮らしを続けるために、現在地球規模で課題とされている事象解決のために達成すべき目標「SDGs」が設定され、世界中で取り組みが進められています。

また、持続可能な世界実現のために重要とされる環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)という3つの観点「ESG」も注目を集めています。

今回はSDGs、そして環境問題や社会問題改善のために活動する企業への資金調達として注目されている、SDGs・ESGファイナンスについて解説します。

SDGsとは

SDGs(Sustainable Development Goals)とは「持続可能な開発目標」を意味しており、2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標のことをいいます。

SDGs は、2001年に策定された「ミレニアム開発目標(MDGs)」の後継として、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されているものです。17の目標169のターゲット達成により、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。

17の目標

1 貧困をなくそう 2 飢餓をゼロに 3 すべての人に健康と福祉を 4 質の高い教育をみんなに 5 ジェンダー平等を実現しよう 6 安全な水とトイレを世界中に 7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに 8 働きがいも経済成長も 9 産業と技術革新の基盤をつくろう 10 人や国の不平等をなくそう 11 住み続けられるまちづくりを 12 つくる責任つかう責任 13 気候変動に具体的な対策を 14 海の豊かさを守ろう 15 陸の豊かさも守ろう 16 平和と公正をすべての人に 17 パートナーシップで目標を達成しよう

SDGsは「社会、経済、環境」の3側面から捉えることのできる17のゴールを統合的に解決しながら、持続可能なより良い未来を築くことを目標としています。またSDGsは発展途上国のみならず、先進国自身が取り組む普遍的なものであり、日本も積極的に取り組んでいます。

日本におけるSDGsへの取り組み

日本においては、2016年5月にSDGs推進本部を設置し「SDGs推進円卓会議」での議論を経て、今後の日本の取り組み指針となる「SDGs実施指針」を決定しました。

SDGs実施指針では、日本の「SDGsのモデル」の確立に向けた取り組みの柱として、SDGsの17のゴールと169のターゲットのうち、8分野を特に注力すべき優先課題として掲げています。また、優先課題に基づく具体的な政策として「SDGsアクションプラン2022」 新しいウィンドウで開くを取りまとめています。

優先課題8分野

  • 1.
    あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現
  • 2.
    健康長寿の達成
  • 3.
    成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション
  • 4.
    持続可能で強靭な国土と質の高いインフラの整備
  • 5.
    省・再生可能エネルギー、防災・気候変動対策、循環型社会
  • 6.
    生物多様性、森林、海洋等の環境の保全
  • 7.
    平和と安全・安心社会の実現
  • 8.
    SDGs実施推進の体制と手段

出典:経済産業省「SDGs」 新しいウィンドウで開く

産業界においては、これらの優先分野を踏まえ経済産業省などが中心になってSDGsに積極的に取り組んでいます。省エネ・再エネの推進、代替素材の開発・転換などのイノベーション支援、2025年関西・大阪万博の運営・開催を通じたSDGsの推進、企業経営へのSDGsの取り組み支援、中小企業などに対する海外展開支援などが具体例として挙げられます。

また、経済産業省は2019年5月31日に、「企業がいかにSDGs経営に取り組むべきか」「投資家はどのような視座でそのような取り組みを評価するのか」などについて整理した「SDGs経営ガイド」を取りまとめました。

参考

ESG、カーボンニュートラル、サステナブル・サスティナビリティとは

SDGsを理解するうえで、似たような主旨の用語「ESG」「カーボンニュートラル」「サステナブル」を理解する必要があります。

ちなみにSDGs・ESGファイナンスの制度名称では、これらの用語を使用している場合も少なくありません。例えば「SDGs〇〇融資」「SDGs〇〇私募債」や「ESG〇〇融資」「サスティナビリティ〇〇融資」などの名称が使われているとイメージしてください。

ESG

ESGとは「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字をとった用語です。近年、投資の際に重視すべき要素としてESGの視点から企業の持続可能性を評価することが重視されるようになり、ESG投資と呼ばれます。

SDGsとESGは、さまざまな問題を解決するための目標・考え方という点では共通しています。SDGsは国などの単位で取り組んでいるのに対し、ESGは企業や投資家などが取り組んでいるという点で異なるといわれています。

カーボンニュートラル

カーボンニュートラルとは「温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」という意味です。例えば、SDGsの17の目標に「7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに」と「13 気候変動に具体的な対策を」があります。これらは「カーボンニュートラル」とかかわりがあります。「カーボンニュートラル」は、SDGsを達成するためには重要なテーマの1つだといえるでしょう。

サステナブル、サステナビリティ

サステナブル(Sustainable)とは「持続可能な」、サステナビリティ(sustainability)とは「持続可能性」または「持続することができる」という意味です。現在、世界共通目標として取り組み始めているのが「サステナブルな社会」の実現です。企業がサステナビリティに取り組む方向性としては、SDGsとESGの2つがあるという見方もできます。

これらの用語を押さえたうえで「SDGs・ESGファイナンス」について解説します。

SDGs・ESGファイナンスとは

SDGsを実現させるために世界各国ばかりでなく、企業もそれぞれ行動しています。その企業活動などを支えるのが「SDGs・ESGファイナンス」です。SDGs・ESGファイナンスとは、金融機関などが、地球環境・社会問題の解決に向けた企業活動を金融面から支援するものです。

SDGs・ESGファイナンスに取り組む金融機関は、企業に向けて主に融資や信用保証、私募債などの形式で支援しています。企業にとっては、資金調達以外にも「サスティナビリティな経営を整備することによる企業価値の向上」「SDGs、ESG行動の発信による社会的信用の獲得」「SDGs、ESGによる金融機関との信頼関係の強化」などのメリットが考えられます。

また環境省では、SDGsの活用によって広がる可能性として「企業イメージの向上」「社会の課題への対応」「生存戦略になる」「新たな事業機会の創出」の4つのメリットを挙げています。

なお、中小企業のSDGsへの取り組みは「2021年版 小規模企業白書」にて紹介されていますので、参考にしてください。

著者:吉田 学(財務・資金調達コンサルタント)

株式会社MBSコンサルティング代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。
主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。

また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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