事業承継ファイナンス(5)

~事業承継関連の補助金~

2022/05/20

事業承継ファイナンス(2)~(4)においては、事業承継に関する「融資」について解説してきましたが、ここでは「補助金」について解説いたします。事業承継に関する補助金制度については、国が実施するものもあれば、地方自治体が実施する制度もあります。全国の自治体が必ずしも実施しているわけではありませんが、利用できる補助金制度があれば、是非とも検討してください。なお、本文で取り上げている「事業承継・引継ぎ補助金」については、令和3年度当初予算を参考にしています。今後の公募に関しては、内容などが改訂されることもありますので、ご了承ください。

事業承継関連の補助金について

事業承継に係る補助金は、主に経済産業省(中小企業庁)が実施しています。また各自治体においても独自の補助金制度を実施しているところもあります。

資金調達手段を検索」にて、「課題・資金使途」に「事業承継を行いたい」を設定して、絞り込み検索を行うことができますので、ご活用ください。また、地元自治体のホームページなどで確認するようにしてください。

現在(2022年4月時点)のところ、経済産業省(中小企業庁)は「事業承継・引継ぎ補助金」を実施しています。直近の採択状況などは以下のようになっています。

事業承継・引継ぎ補助金の採択状況

審査結果
令和3年度当初予算

<令和3年11月19日公表>

  • 経営革新:申請136件、採択75件(採択率55.1%)
  • 専門家活用:申請270件、採択236件(採択率87.4%)
令和2年度第3次補正予算(2次公募)

<令和3年9月9日公表>

  • 経営革新:申請375件、採択187件(採択率49.9%)
  • 専門家活用:申請420件、採択330件(採択率78.6%)
令和2年度第3次補正予算(1次公募)

<令和3年8月16日公表>

  • 経営革新:申請335件、採択167件(採択率49.9%)
  • 専門家活用:申請412件、採択346件(採択率84%)

上記の結果通り、「経営革新」においては約50%前後、「専門家活用」においては約80%前後という驚異的な結果となっています。要件等に該当する事業者の方は、是非とも利用して下さい。

事業承継・引継ぎ補助金の概要

事業承継・引継ぎ補助金とは、事業再編、事業統合を含む事業承継を契機として経営革新等を行う中小企業・小規模事業者に対して、その取組に要する経費の一部を補助する制度です。事業再編、事業統合に伴う経営資源の引継ぎに要する経費の一部を補助することにより、事業承継、事業再編・事業統合を促進することを目的とした補助金制度になります。

本補助金制度は、「経営革新」「専門家活用」「廃業・再チャレンジ」の3種類が用意されています。さらに、「経営革新」には、「創業支援型(Ⅰ型)」「経営者交代型(Ⅱ型)」、「M&A型(Ⅲ型)」の3種類があります。また、「専門家活用」には、「買い手支援型(Ⅰ型)」と「売り手支援型(Ⅱ型)」の2種類があります。なお、類型ごとに補助上限額等は異なります。

構成イメージ

類型
事業承継・引継ぎ補助金 経営革新 創業支援型(Ⅰ型)
経営者交代型(Ⅱ型)
M&A型(Ⅲ型)
専門家活用 買い手支援型(Ⅰ型)
売り手支援型(Ⅱ型)
廃業・再チャレンジ 廃業・再チャレンジ

事業承継・引継ぎ補助金【経営革新】の概要

事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)の「創業支援型(Ⅰ型)」は「廃業を予定している者等から経営資源を引き継いでの創業する者」、「経営者交代型(Ⅱ型)」は「事業承継を契機として、経営革新等に取り組む者」、「M&A型(Ⅲ型)」は「事業再編・事業統合等を契機として、経営革新等に取り組む者」が対象となっています。

補助率、補助上限額、対象経費等は以下のようになっています。

<補助上限額、補助率等> ※令和 3年補正予算

類型 補助率 補助上限額
創業支援型(Ⅰ型) 補助対象経費の3分の2以内 600万円以内
経営者交代型(Ⅱ型)
M&A型(Ⅲ型)

補助率に関しては、補助額の内400万円超~600万円の部分の補助率は2分の1となっています。補助上限額に関しては、要件の一つである生産性向上要件を満たさない場合は400万円以内、また廃業費用に関する上乗せ額は150万円以内となっています。

対象となる経費は、人件費、外注費、委託費、設備費、謝金、旅費、廃棄費用など(廃業登記費、在庫処分費、解体費、原状回復費等)となっています。

事業承継・引継ぎ補助金【専門家活用】の概要

事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)の買い手支援型(Ⅰ型)は「M&A(事業再編・事業統合等)に伴う経営資源の引継ぎを行う予定の中小企業者等」、売り手交代型(Ⅱ型)は「M&A(事業再編・事業統合等)に伴い自社が有する経営資源を譲り渡す予定の中小企業者等」などが対象となっています。

補助率、補助上限額、対象経費等は以下のようになっています。

<補助上限額、補助率等> ※令和 3年補正予算

類型 補助率 補助上限額
買い手支援型(Ⅰ型) 補助対象経費の3分の2以内 600万円以内
売り手支援型(Ⅱ型)

補助上限額について、補助事業期間内に経営資源の引継ぎが実現しなかった場合(補助対象事業においてクロージングしなかった場合)は、補助上限額(300万円以内)の変更となります。また、廃業費の補助上限額は150万円となります。廃業費に関しては、関連する経営資源の引継ぎが補助事業期間内に実現しなかった場合は補助対象外となりますので注意してください。

次に、対象となる経費については、謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料、表明保証保険料、廃棄費用等(廃業登記費、在庫処分費、解体費、原状回復費等)となっています。主に、M&A(事業再編・事業統合等)時の専門家活用に係る費用(ファイナンシャルアドバイザーや仲介に係る費用、デューデリジェンス、セカンドオピニオン等)やM&A(事業再編・事業統合等)に伴う経営資源の引継ぎを行うための経費が対象となっています。専門家の費用については、補助事業期間内に契約及び支払った経費が対象になります。

事業承継・引継ぎ補助金【廃業・再チャレンジ事業】の概要

「廃業・再チャンレンジ事業」は、中小企業・小規模事業者が再チャレンジを目的として既存事業を廃業する際の費用の一部を補助するものであり、以下の行動を伴う廃業を対象としています。

対象となる廃業・再チャレンジ

  • 1.
    事業承継またはM&Aで事業を譲り受けた後の廃業
  • 2.
    M&Aで事業を譲り受けた際の廃業
  • 3.
    M&Aで事業を譲り渡した際の廃業
  • 4.
    M&Aで事業を譲り渡せなかった廃業・再チャレンジ

補助率、補助上限額、対象経費等は以下のようになっています。

<補助上限額、補助率等> ※令和 3年補正予算

類型 補助率 補助上限額
廃業・再チャレンジ 補助対象経費の3分の2以内 150万円以内

対象となる経費については、廃棄費用等(廃業支援費、在庫処分費、解体費、原状回復費、リース解約日、移転・移設費用等)となっています。主に、事業承継・M&Aに伴って一部事業の廃業を行う場合やM&Aが成約せずに廃業せざるを得ず、再チャレンジに取り組もうとする場合などに伴い発生する経費(原状回復費・在庫処分費等)が対象となっています。

なお、「廃業・再チャレンジ事業」は、「経営革新事業」「専門家活用事業」と併用することができます。

令和3年度補正「事業承継・引継ぎ補助金」について

2022年3月31日に令和3年度補正「事業承継・引継ぎ補助金」の公募要領等が公表されました。詳細については、以下の「令和3年度補正事業承継・引継ぎ補助金」事務局のホームページからご確認ください。

また、その後の公募(令和4年度当初予算分など)に関しては、以下の事務局ホームページから確認するようにしてください。また、過去に実施された事業承継・引継ぎ補助金の詳細や各種資料などについても掲載されていますので、ぜひ参考にしてください。

著者:吉田 学(財務・資金調達コンサルタント)

株式会社MBSコンサルティング代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。
主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。

また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

資金調達ナビをシェアする
  • LⅠNE
  • Facebook
  • Twitter
  • はてなブックマーク
  • Pocket