エクイティファイナンスとは?
2023-06-22更新
2020/03/24(2021/9/1更新)
「会社」の資金調達の手段として「資本を増やす」という手法があります。今回は会社設立時における資本金の考え方を例に、資本による調達の概略をお伝えします。
資本金について見ていく前に、会社という制度について確認しましょう。
会社を作り事業を行うには、その元手となる資金を出す人を集めなければなりません。
株式会社を例に説明しますと、その出資者のことを「株主」と言います。株主は会社の所有者(オーナー)ですが、オーナーは会社の経営を行う必要は必ずしもありません。会社の経営を行える者と会社経営のための資金を用意できる者は必ずしも一致しないからです。
会社の経営者を「取締役」、その代表を「代表取締役」と言います。
一般的に中小企業においては、実質的に「株主」と「取締役」が一致しているケースがほとんどですが、株式会社では、制度上は分離された存在なのです。
反面、合同・合資・合名会社では、所有者と経営者は同じとなります。
会社を設立する際に必要となる資金を資本金といいます。
会社の設立をしようとする人は、設立時に元手となる資本金を用意しなければなりません。これは、設立しようとする人が一人で全額用意することもできますし、他の人をつのり、お金をだしてもらうこともできます。この際にお金をだした人が株式会社における「株主」となるのです。
ただし、法律上は資本金0円でも会社は設立できます。しかしながら、元手が0円では事業をするのは難しいですよね。
それでは、資本金はいくら用意すればよいのでしょうか?
これは、基本的に設立時における必要資金を計算し、以下のように逆算して求めます。
設立時に必要な資金-借入金により調達できる金額=資本金
なお、設立時に必要な資金は、以下のようなものが考えられます。
これらの資金は会社の事業内容や規模により異なりますので、事前に必要となる資金を見積もり、上記算式に当てはめて確認しましょう。
上記のような見積もりによる計算結果は、個々の会社の状況により結果が異なりますが、社会的な信用も考慮する必要があります。
これには、会社の「責任の範囲」が関係します。ここでいう責任とは、債務の返済義務です。株式会社は「有限責任」を負います。有限責任とは、会社に損失が出てしまった際に負う返済義務に限度があるということを指します。
つまり、株式会社の出資者は、会社の抱えた負債について出資した金額以上に返済義務を負わなくても良いのです。金融機関での借り入れの際に会社の代表者による個人保証が求められるのは、こうした事情があるからです。
これに対し、無限責任を負う合名会社、合資会社という会社もあります。これらの会社では、債務者は出資者個人の財産にまでその責任を追及できます。
このようなことから、大手企業などでは取引開始前に「信用調査」を行うことがあります。これは、事前に会社の登記情報などを調べ、取引を開始することに問題がないかを確認する作業です。このときに、取引高に対し、資本金が十分に積まれていない会社は問題ありの会社に分類されてしまう可能性があるのです。
昔の制度の名残もあり、一般的に300万円から1,000万円程度の資本金があると社会的信用がある会社とみなされます。
しかし、社会的信用のために資本金をやみくもに大きくすればよいというわけではありません。というのも、資本金の額に応じて課税される税金の金額が異なるからです。
主に設立時に考慮に入れる税目は、法人住民税と消費税です。
所得の多寡にかかわらず、資本金や従業数により一定額が課税される部分
資本金等の額 | 道府県分 | 市町村分 | |
---|---|---|---|
均等割額 | 市内従業員数 | 均等割額 | |
1,000万円以下 | 20,000円 | 50人以下 | 50,000円 |
50人超 | 120,000円 | ||
1,000万円超 | 50,000円 | 50人以下 | 130,000円 |
50人超 | 150,000円 |
資本金の額1,000万円以上 | 設立初年度より課税事業者 |
---|---|
資本金の額1,000万円未満 | 設立初年度は免税事業者 ※ |
2つの税金の基準によると、1,000万円ちょうどの場合、法人住民税均等割は最低額での課税になりますが、消費税は設立初年度に免税事業者となりません。そのため、税金を考慮すると、小さな会社は1,000万円未満の資本金が望ましいといえます。
また、創業にあたってのお金を用意するのに、自己資金だけでは足りず、創業融資などの「借り入れ」で調達するケースもあります。しかし、その創業融資を受ける際も資本金がどの程度あるのかにより、借入限度額が変わってきます。
一般に、創業融資においては、自己資金の2倍が借入限度額とされると言われています。すなわち、1,000万円調達したいのであれば、資本金として500万円は用意しておく必要があるということです。
このように、設立時に資本金をいくらにするのかは、事業活動をスムーズに軌道に乗せるために重要な問題です。資本金の仕組みや社会的な判断基準を理解し、資本戦略を練っていきましょう。
早稲田大学 社会科学部,青山学院大学 会計プロフェッション研究科卒。
大学在学中から地元会計事務所に勤務し、その後、都内税理士法人、大手税理士受験対策校講師、大手企業経理部に勤務したのち2010年に小島孝子税理士事務所を設立。会計事務所、経理職員向け税務・経理に関するセミナー多数担当。
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