資本金とは

2020/03/24(2021/9/1更新)

「会社」の資金調達の手段として「資本を増やす」という手法があります。今回は会社設立時における資本金の考え方を例に、資本による調達の概略をお伝えします。

会社とは?

資本金について見ていく前に、会社という制度について確認しましょう。

会社を作り事業を行うには、その元手となる資金を出す人を集めなければなりません。

株式会社を例に説明しますと、その出資者のことを「株主」と言います。株主は会社の所有者(オーナー)ですが、オーナーは会社の経営を行う必要は必ずしもありません。会社の経営を行える者と会社経営のための資金を用意できる者は必ずしも一致しないからです。
会社の経営者を「取締役」、その代表を「代表取締役」と言います。

一般的に中小企業においては、実質的に「株主」と「取締役」が一致しているケースがほとんどですが、株式会社では、制度上は分離された存在なのです。
反面、合同・合資・合名会社では、所有者と経営者は同じとなります。

会社の設立と資本金

会社を設立する際に必要となる資金を資本金といいます。

会社の設立をしようとする人は、設立時に元手となる資本金を用意しなければなりません。これは、設立しようとする人が一人で全額用意することもできますし、他の人をつのり、お金をだしてもらうこともできます。この際にお金をだした人が株式会社における「株主」となるのです。

ただし、法律上は資本金0円でも会社は設立できます。しかしながら、元手が0円では事業をするのは難しいですよね。

資本金はいくら必要なのか

それでは、資本金はいくら用意すればよいのでしょうか?

これは、基本的に設立時における必要資金を計算し、以下のように逆算して求めます。

設立時に必要な資金-借入金により調達できる金額=資本金

なお、設立時に必要な資金は、以下のようなものが考えられます。

《設立時に必要な資金》

  • 1.
    店舗や事務所などの契約に関する資金
    敷金、礼金、保証料、保険料、前家賃などの不動産賃借に関する初期費用など
  • 2.
    物件の改装費用
    事務所や店舗の内装費用、パーテーションなどの設置費用、消防法などの法令による改修工事費用など
  • 3.
    備品や消耗品の購入費用
    オフィスの机、いす、パソコン、コピー機などの事務機器、事務用品など
  • 4.
    売上が現金化されるまでの運転資金
    仕入債務や家賃、光熱費などの運転資金で請求した売上が現金化されるまでの期間のもの(業種によっても違いますが、計画上おおむね2~3ヶ月分が一般的です。できれば6ヶ月分あることが望ましいです)

これらの資金は会社の事業内容や規模により異なりますので、事前に必要となる資金を見積もり、上記算式に当てはめて確認しましょう。

社会的信用も必要

上記のような見積もりによる計算結果は、個々の会社の状況により結果が異なりますが、社会的な信用も考慮する必要があります。

これには、会社の「責任の範囲」が関係します。ここでいう責任とは、債務の返済義務です。株式会社は「有限責任」を負います。有限責任とは、会社に損失が出てしまった際に負う返済義務に限度があるということを指します。

つまり、株式会社の出資者は、会社の抱えた負債について出資した金額以上に返済義務を負わなくても良いのです。金融機関での借り入れの際に会社の代表者による個人保証が求められるのは、こうした事情があるからです。

これに対し、無限責任を負う合名会社、合資会社という会社もあります。これらの会社では、債務者は出資者個人の財産にまでその責任を追及できます。

このようなことから、大手企業などでは取引開始前に「信用調査」を行うことがあります。これは、事前に会社の登記情報などを調べ、取引を開始することに問題がないかを確認する作業です。このときに、取引高に対し、資本金が十分に積まれていない会社は問題ありの会社に分類されてしまう可能性があるのです。

昔の制度の名残もあり、一般的に300万円から1,000万円程度の資本金があると社会的信用がある会社とみなされます。

税金から考える資本金の額

しかし、社会的信用のために資本金をやみくもに大きくすればよいというわけではありません。というのも、資本金の額に応じて課税される税金の金額が異なるからです。

主に設立時に考慮に入れる税目は、法人住民税と消費税です。

法人住民税均等割額

所得の多寡にかかわらず、資本金や従業数により一定額が課税される部分

資本金等の額 道府県分 市町村分
均等割額 市内従業員数 均等割額
1,000万円以下 20,000円 50人以下 50,000円
50人超 120,000円
1,000万円超 50,000円 50人以下 130,000円
50人超 150,000円

消費税

資本金の額1,000万円以上 設立初年度より課税事業者
資本金の額1,000万円未満 設立初年度は免税事業者
  • 売上高など他の基準による場合を除く

2つの税金の基準によると、1,000万円ちょうどの場合、法人住民税均等割は最低額での課税になりますが、消費税は設立初年度に免税事業者となりません。そのため、税金を考慮すると、小さな会社は1,000万円未満の資本金が望ましいといえます。

創業融資と資本金

また、創業にあたってのお金を用意するのに、自己資金だけでは足りず、創業融資などの「借り入れ」で調達するケースもあります。しかし、その創業融資を受ける際も資本金がどの程度あるのかにより、借入限度額が変わってきます。

一般に、創業融資においては、自己資金の2倍が借入限度額とされると言われています。すなわち、1,000万円調達したいのであれば、資本金として500万円は用意しておく必要があるということです。

このように、設立時に資本金をいくらにするのかは、事業活動をスムーズに軌道に乗せるために重要な問題です。資本金の仕組みや社会的な判断基準を理解し、資本戦略を練っていきましょう。

著者:小島 孝子(税理士)

早稲田大学 社会科学部,青山学院大学 会計プロフェッション研究科卒。
大学在学中から地元会計事務所に勤務し、その後、都内税理士法人、大手税理士受験対策校講師、大手企業経理部に勤務したのち2010年に小島孝子税理士事務所を設立。会計事務所、経理職員向け税務・経理に関するセミナー多数担当。

著書

  • 簿記試験合格者のための初めての経理実務(税務経理協会)
  • 税理士試験計算プラクティス消費税法解法の極意(中央経済社)
  • 3年後に必ず差が出る20代から知っておきたい経理の教科書(翔泳社)
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