エクイティファイナンスとは?
2023-06-22更新
日本のSNSユーザーが企画した雑貨などの商品を、中国の生産ネットワークでスピーディーに生産、日本の顧客に販売する株式会社rainboww(レインボウ)。同社が運営する女性向けECサイト「GAACAL(ガーカル)」が、近年注目を集めています。代表取締役CEOである朱 静儀(しゅ せいぎ)さんは、起業家でありながら一児の母という顔を持ち、このユニークな事業を立ち上げました。
今回は、株式会社rainbowwの企業・サービス概要やビジネスモデル、これまでの資金調達などについてお話を伺いました。
弊社、株式会社rainboww(レインボウ)のメインのターゲットは、20代から30代の女性です。
日本マーケットでは、アクティブなSNSユーザーが約1億人程度いるにもかかわらず、他国に比べるとほとんど収益化ができていない点が課題となっています。また、近年日本においては女性の社会進出が進んでいますが、子育てや介護問題などの影響により、満足に働けていない女性は非常に多いのが現状です。
そこで弊社では、以下のようなミッションを掲げています。
「諦める」から「挑戦する」人生へ。
時間や場所に囚われない働き方を創出します。
弊社が提供しているサービスが、スマホを活用してノーリスクでものづくり販売ができる「GAACAL」です。一般のユーザーが利用するのは「GAACAL store(ガーカル ストア)」 と呼ばれる、ユーザー参加型のECサービスで、ユーザーの声をしっかり反映した商品を開発して販売しています。
GAACALのコンセプトは「オン/オフ両方を大事にしたい『頑張り屋女子』のためのブランド」です。Instagramのフォロワー数が現在12,9万人で、月間PV数が約160万、会員数が16万人ほどとなっています。
2023年の2月には、今までやってきたことをサービスとして自動化できる「GAACAL MAKER(ガーカルメーカー)」も限定リリースです。さらに、3月には「GAACAL SPACE(ガーカル スペース)」という、コンテンツ作りや販売などができる実店舗も展開します。
GAACALで商品を作る場合は、まずSNSユーザーが「こういう商品を作りたい」という企画を考え、それに対してフォロワーさんなどをはじめとした応援者を募集します。商品化が決定したら中国にある弊社の工場で商品を作り、GAACAL storeだけでなく、Amazonや家電量販店などでも販売する流れです。
独自の超高速D2C型商品開発プロセスが、弊社の強みです。D2Cとは「Direct To Consumer」の略語で、製造者が直接消費者と取り引きするビジネスモデルをさします。
日本企業の場合、一般的には企画を日本で行い、日本か海外の工場でサンプルを作成後、商品を生産し、写真を撮影してから販売するケースが一般的です。そのため商品の企画から販売まで、少なくとも半年程度の期間が必要でしょう。また、在庫を多く抱えるため、リスクもあります。
弊社が行っている商品開発プロセスは、商品の企画と分析だけ日本のチームで行い、それ以外のサンプル作成や商品作成、販売ページの作成までをすべて中国のチームで行う点が特徴です。企画から販売までに必要な期間は最短で1週間です。
また、商品の受注に応じて生産数を適宜調整するしくみになっているため、基本的に在庫はゼロで運用しています。
弊社が目指しているのは「個人のシェア力×弊社の製造力」で、市場としては2兆円以上と考えています。
弊社が大切にしているもう1つのポイントは、SNSの動きに合わせて24時間以内に広告予算や生産量を調節することです。小ロットで商品を生産可能なためリスクが少ないことはもちろん、売れる商品を大量に生産してヒット商品を生み出し、収益の最大化を目指します。
GAACALで扱っている商品は、アクセサリー、手帳、バッグなど、ビジネスシーンで活躍できるアイテムが中心です。
GAACALに登録したユーザーのメリットは、家電量販店やモール型の店舗でも商品を販売できることでしょう。SNS経由で個人発信するブランドでは、こうした実店舗における商品販売は、調整が難しいと思います。GAACALという1つのブランドの中に、多くのSNSユーザーがプロデュースする形をとることによって、さまざまな販路を使えるのが弊社の強みです。
ユーザーが自ら拡散するしくみを利用できることも、GAACALの大きな特徴だといえるでしょう。さらに、個人ブランドではどうしても品質を維持できなかったり、商品の単価が高くなったりすることも多くなります。しかし弊社が商品開発を行うことにより、小ロットだけでなく大きなロットで生産することも可能になるため、インスタントに作れ、かつ金額も安価に抑えることが可能です。
現在は小物を中心に販売していますが、将来的には家電やインテリアなどの商品も扱おうと計画しています。
弊社の創業メンバーは、全員日本での留学経験があります。当時、私はスマホアプリのエンジニアをしていて、もう1人の創業メンバーである戴(だい)が商品のバイヤーを担当していました。
2016年ごろの中国は経済成長が著しい時期で、私は現地でレンタルファッションの事業を展開していました。しかし妊娠して息子が誕生し、事業の継続を断念することになったのです。
現在、私は日本在住ですが、戴は上海在住です。レンタルファッション事業で中国に工場ネットワークを持っていました。この中国の工場の生産力と私の日本国内のマーケティング分析力を活かして何かできないかということで、現在の事業を起業することになりました。
私たちが最も大事にしているのが、中国の柔軟な製造ネットワークを活かし日本の高品質な商品を創出することです。また、そこにSNSを掛け合わせ、相乗効果を高めることが期待できます。
まず、創業時からお話しすると、rainbowwは1回目の事業ではないため、自己資金が800万円ほど手元にある状態でのスタートとなりました。なおかつ事前にテストも行っていたため「おそらくこのビジネスモデルで成功できるだろう」という見込みを持って、創業しました。
そのため自己資金と金融機関からの借入だけで起業し、いわゆるVC(Venture Capital)などからの調達は行っていません。最終的にIPO(株式公開)を目指すことを当初から決めていたため、資金調達についても事前に計画したうえで創業しています。
新宿区で創業する際、区の創業支援センターに問い合わせて、どのような資料があれば借入をできるのか、株の分配や決算方法などについても確認しました。1回目の借入は、1期目の決算が出たタイミングで、決算資料を持って日本政策金融公庫から借入しています。
1回目のデットファイナンスがしやすい方法をあらかじめ聞いたうえで創業したので、そこに合わせて一期目の売上や資料を準備でき、必ず借りられるという確信があったためです。
事前に確認した数字を達成できる自信はあったので、目標に合わせた売上と事業展開のストーリーを作りました。2期目までは日本政策金融公庫やメガバンクから借入をしましたが3期目に入ると、サービス運営におけるプロセスをある程度自動化できていたことに加え、新型コロナウイルス感染症の影響が事業的にはプラスに作用し、売上が毎月上がる状態が続きました。しかし、運転資金が間に合わない状態となったため、新たな資金調達の手段を探す必要があったのです。
弊社のビジネスモデルは、先に商品を製造する必要があるため、毎月の運転資金が必要です。そのため、銀行の入出金の履歴だけで融資申請ができ、急に資金が必要になったときにも融資をしてもらえる住信SBIネット銀行のdayta を活用できたことは、非常にありがたかったです。申し込んだ翌日に、お金が本当に振り込まれていたので驚きました。おかげさまで工場を止めずに済みました。
そもそも住信SBIネット銀行は、手数料が安かったことが理由で使用していました。また普段から営業メールをいただいており、弊社の場合いくら借りられるのかということ、最短で当日に振り込まれること、申請のための新規の資料作成がいらないとことなどは把握していました。そのため「いざという時には活用しよう」とずっと考えていたのです。審査もすばやく、申請資料も不要ですぐにお金が振り込まれるのは、daytaの魅力だと思います。
金融機関からの借入額は、基本的に必要運転資金の3か月分という金額設定です。そのため、それを証明できる試算書や決算書がない場合には、調達ができません。つまり、急成長している渦中にある場合、必要な資料が準備できないわけです。
その結果、運転資金が不足することもありました。運転資金が不足すると事業を展開するうえでも、あまり大胆なことはできなくなります。借入では、あまり大きな金額を調達できないことが課題でした。
一方、VCから調達を行う際には、ピッチの準備や競合の調査など、事業以外の部分に多くのリソースが取られることが懸念でした。ただ、改めて事業や市場を見直すことにより、新しいアイデアが生まれることもあり、無駄だったとは思いません。
借入で調達したものは運転資金として、主に広告費と商品の仕入れ資金、サイト運営(商品企画)として活用しています。
ちなみに弊社は、入金をメガバンク、出金の際にはネットバンクも活用して資金管理をしています。
弊社はSNSユーザーの商品作成力を活用した「企画・製造・販売・インフラ提供」というサービスを提供しているので、今後は既存のECサイトにおける商品作りはもちろん、実店舗で実際にユーザーが商品に触れたり、イベントでコミュニケーションを取れたりするような展開を想定しています。また、商品を日本だけでなく海外にも販売できる物流も提供できますし、日本のブランドを世界に発信することも可能です。日本人のコンテンツ制作力を活かしブランドの価値を高め、全世界に発信するしくみを作っていきたいと思っています。
各都道府県や国が運営している無料で相談できるサービスはたくさんあります。何かを始める前には一度相談してみてください。しっかりと調査して創業前から活用しましょう。
起業は、冒険と似ています。しかし、ビジネスモデルや資金調達などについて、アドバイスを聞き情報収集しながら、自分で地図を作ることによって進むべき道が見えてきます。絶望せず、前向きに頑張ってもらえれば何よりです。
私が日々考えているのは、何事にもメリット・デメリットなど両面性があるということです。私はかつて留学生だった女性で、中国人であり、日本で起業しているのですが、同じような方は少ないと思います。さらに、出産・子育てをしながら創業するという、非常にユニークな経験もしているため、このポジションをいかに強みに変えていくかという点を常に意識していますね。女性であることも、自身の年齢も含め、すべてが個性であると認識した結果、同じような悩みを持つSNSユーザーの特徴を活かしたビジネスを生むことができました。
早稲田大学教育学部数学科卒業。学生時代にスマホゲームアプリを開発販売し、2016年上海型尚信息科技有限公司を設立、CTOに就任。2019年rainbowwを設立し、代表取締役社長に就任。1児の母。趣味は歌。
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