中小企業が銀行融資を受ける方法は?融資の種類や銀行融資以外の方法
2023-08-23更新
2021/03/31
コロナ禍を機に利用が広がっているクラウドファンディング。事業収入が減少した個人の店舗やフリーランスはクラウドファンディングで資金調達ができるのか、気になっている方も多いでしょう。
今回お話をうかがったのは、大手クラウドファンディング会社「CAMPFIRE」広報の加賀美実里さん。個人事業主が活用する上でのメリットや成功例、withコロナ時代の活用方法、初めて利用する方向けのアドバイスなどをお伺いしました。
2011年創業の国内最大のクラウドファンディング「CAMPFIRE」。サービス開始から現在までに40,000件以上のプロジェクトを掲載し、支援者数は延べ330万人以上、流通金額は290億円。購入型クラウドファンディング以外にも寄付型・融資型・株式型を展開。
――新型コロナウイルスの影響でクラウドファンディングへの注目が集まっているように思えますが、実際に利用は拡大しているのでしょうか?
加賀美実里さん(以下・加賀美):はい。コロナ禍をきっかけに「今すぐ必要なお金があるなら、クラウドファンディングという効果的な手段で資金調達ができる」という認識が口コミなどを通して広がり、よりたくさんの方々に知ってもらえるようになりました。
――このコロナ禍において実際に利用しているのは、どのような人が多いですか? コロナ禍で初めて利用するという方も増えたのでしょうか?
加賀美:そうですね。コロナ関連のプロジェクトのうち、約4割が飲食業の方です。個人の店舗はもちろん、大企業のチェーン店や農家さんなども増えています。また、宿泊施設やイベント会場を運営されている方などにも、新しい資金調達の手段として利用され始めました。
コロナ禍での休業要請対象であったり、イベント中止や実店舗への来店が難しい場合、用意していた食材や販売商材をどうにかしたいと考えます。そのとき、ゼロからネットショップを作って商品を販売するより、クラウドファンディングで支援者に商品を提供する形の方が短時間でスタートできて、リスクが少ないというメリットがあります。コロナ禍以降にプロジェクトを実施した方の約8割が初めて挑戦されるということでした。
――初めて挑戦する人は不安がありそうですが…
加賀美:CAMPFIREでは、プロジェクトごとにキュレーターと呼ばれる担当がつき、さまざまなことを相談できます。ちなみにキュレーターは、入社前に異業種にいた方が多く、ジャンルごとにある程度詳しい担当者がいるため、初めてプロジェクトを立ち上げる方も相談しやすいかなと思います。例えば音楽関係のプロジェクトなら、実際にバンドを組んで活動していた者や、レコード会社に勤めていた者などです。
――コロナ禍をきっかけに飲食業のプロジェクトがかなり増えたそうですが、飲食業のプロジェクトをサポートされるキュレーターさんたちはものすごく忙しかったのでしょうか……?
加賀美:皆さん死に物狂いだったはずです(苦笑)。ただ、本当に偶然なのですが、「2020年は飲食の領域を伸ばしていこう」という計画を立てていました。そのため、なんとか耐えられたところはありますね。
また、飲食店の方々は、「ぐるなび」や「ホットペッパー」などの飲食店検索サイトを活用していて、Webに慣れている方が多い業種です。そのため、クラウドファンディングが初めてでも総じてスムーズなやり取りができたことも、大量のプロジェクトを実施できた要因だと思います。
――CAMPFIREさんでは、クラウドファンディング初挑戦の方への支援のほかにもコロナ禍の影響を受けた方の事業や活動継続のために、プログラムを実施されているそうですね。
加賀美:はい。当社では2020年2月28日から、「新型コロナウイルスサポートプログラム」を展開しています。もともとサービス手数料12%、決済手数料5%で、合計17%かかるところを、コロナの影響を受けた事業者さんにはサービス手数料を無料にして、決済手数料の5%のみでプロジェクトが実施できるようになりました。
――コロナ禍で経営に大きな支障をきたしていた事業者さんにとって、手数料がかからないのは、かなり大きいメリットですね。
加賀美:「新型コロナウイルスサポートプログラム」は、7月にいったん終了しましたが、2020年9月10日(木)12:00から2020年11月10日(火)AM11:59:59までフォームからエントリーできます。
当社としましても、コロナ禍の影響を受けてしまった方に、1円でも多くお金をお届けしたいという気持ちがありますので、ぜひこの機会を活用していただきたいですね。
――ここからは、この機会にクラウドファンディングを活用してみたいというスモールビジネスの事業者さんに向けて、仕組みや成功のコツについてうかがっていきます。クラウドファンディングには、購入型・寄付型・融資型・株式型などのタイプがありますが、違いはどのようなところでしょうか。
加賀美:それぞれのタイプの特徴や違いを簡単に説明します。
購入型 | リターンになるのは、製品や体験など、実際のサービスや品物。個人・法人問わず誰でも利用可能で、始めやすいのが特徴です。 |
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寄付型 | 原則としてリターンはなし。税制控除対象の団体やNPOなど、実施できる事業者や団体に一定の条件があります。 |
融資型(貸付型) | リターンは主に金利。金融機関からの借り入れと同様、決算書などが必要。購入型や寄付型と比べると審査項目が多かったり、審査基準が厳しかったりする分、動くお金が大きい傾向があります。 |
株式型 | リターンは主に配当。実施できる条件は株式会社であること。融資型と同様、審査項目が多い傾向などがあります。 |
実施条件に当てはまるのであれば、大きなお金が動くのは融資型です。しかし、個人・法人かかわらず、誰でも挑戦できるのは、購入型です。購入型は「インターネット上で商品やサービスを販売する」という点が、ネットショップと似ているので、皆さん取り組みやすいのではないでしょうか?
クラウドファンディングは、インターネットを通じて、不特定多数の人々から少額ずつ資金を調達できる仕組みです。
――誰でも挑戦できる購入型を前提として、クラウドファンディングを成功させるために大事なことは何でしょうか?
加賀美:「どれだけ支援者に共感してもらえるか」が大事になってきます。
クラウドファンディングを初めて行う方は、「インターネット上で、いったい誰に向かってメッセージを書けばいいんだろう?」と悩み、広く共感されるメッセージとか、トレンドワードをとりあえず使うことが多いのですが、どちらかというとまずは身近な方や友人知人、普段接しているお客様に伝えたいことを発信していくのがいいでしょう。
まずは一人でも多くの方にプロジェクトを知ってもらう努力が必要です。SNSやブログ、口コミなどで身近な方々に「今、こういうプロジェクトに挑戦しているので、活動を一緒に応援してください」と積極的に伝えていくことが、一番重要なコツといえますね。
プロジェクトにお金を支援してくれた人へモノやサービスをリターンするのが購入型クラウドファンディングの仕組みです。商品やグッズ、サービスなどを購入するような気軽な感覚で支援できます。
――CAMPFIREさんという大きなプラットフォームなどに掲載さえすれば、知らない人がたくさん賛同してくれて、目標金額が集まるとは限らないということですね。
加賀美:CAMPFIREのプロジェクトを、こまめにチェックされているユーザーさんもいらっしゃるので、プロジェクトを見つけてくださることはあるかもしれません。しかし、そこから支援につなげられるのかという点では、やはり事業者さんがプロジェクトに対する想いを発信することが必要になってきますね。
――また、クラウドファンディングには、All-in方式と、All-or-Nothing方式の2種類がありますね。それぞれの特長や違いを教えてください。
加賀美:例えば、「この製品を開発するためには、資金が〇〇万円必要!」というように、必要な全額が集まらないと目的が実施できない場合には、All-or-Nothing方式をお勧めします。All-in方式だと、目的が実施できないにもかかわらず、支援してくださった方全員にリターンを送る必要があるので。
ある程度の資金や製作物がすでに手元にある場合は、All-in方式で集まった金額の分だけ、製品やサービスをお届けするのがいいでしょう。ほとんどの方がAll-in方式を選ばれていますね。
All-in方式 | 手数料を除いて集まった金額のすべてがもらえる |
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All-or-Nothing方式 | 設定した目標金額がすべて集まらないとお金が受け取れず、集まらなかった場合は支援者さんに全額返金する |
コロナ禍関連のプロジェクトでは、飲食店さんや食品関係のご商売の方が、もともと販売しようと思っていた在庫の賞味期限が切れてしまう前に皆さんにお届けしたいということで、クラウドファンディングをご活用いただいたパターンが多かったです。また、状況が落ち着いてからお店やイベント会場に行ける事前予約チケットや、YouTubeの生配信が見られるチケットのようなリターンも増えました。このような場合もAll-in方式が向いていると思います。目的によって、方式を使い分けていただければと思います。
――これからは、withコロナを踏まえた社会になっていきますが、そういった点で効果的だと思われる活用法を教えてください。
加賀美:今までオフラインで事業をされていた方が、今後はオンラインで価値を提供したい場合、新商品の開発資金などを集めるという活用法もあります。クラウドファンディングに出すことで、「この商品だったらどのくらい売れるんだろう」という手ごたえがわかりますし、リスクがない状態で新商品の開発ができるので、テストマーケティングで利用される方もとても多いです。
実際、もともとはデパートなどの大型店に日本酒を納品していた日本酒業者さんが、今後は個人にインターネットで納品していくスタイルが現実的ではないかという考えのもと、新商品の開発費を調達された事例もあります。新業態や新商品がうまくいくかどうかを試すのも使い方の1つといえますね。
――なるほど。コロナ禍で業態変更などを検討する人も多いと思うので、テストマーケティングという活用法はとても役立ちそうですね。他にも事業者側にメリットはありますか?
加賀美:購入型を前提として、当社が考える6つのメリットを以下に挙げます。
PR効果に関しては、給食用の牛乳を納品していた生産者さんが、学校が休校になって行き場を失ってしまった牛乳を加工して、支援者の皆さんにお届けしたいというプロジェクトの取材が実際にありました。
学校が休校になったことや、飲食店のお客様が減ってしまったことはニュースで話題になっていましたが、給食用に牛乳を納品している生産者さんが困っているということは知られていませんでした。そこにメディアが注目して、「実は生産者サイドにまでコロナの影響は広がっている」というニュースにつながったのです。
――クラウドファンディングのプラットフォームに、さまざまな業種や地域のリアルな状況が集まっているからこそですね。
加賀美:そうなんです。皆さん、「今すぐ誰かに支援してほしい」という気持ちでプロジェクトを始められるので、なかなか表に出てこなかった社会問題が浮上してきやすいという一面があると思います。
――プロジェクト開始までのスピードや、入金速度が速いとのことですが、平均的にはどのくらいの期間でプロジェクトを実施されるのでしょうか?
加賀美:平均的には、40~60日ほどの期間でプロジェクトを行う方が多いですね。期間が長すぎると、リターンの送付が遅くなったり、支援のペースが落ちてしまったりという傾向があるため、そこまで長期間に及ばないのが一般的です。
1か月でプロジェクトが完了した場合、早ければ翌月末には支援金が振り込まれるので、事業者さんは事業が進めやすいです。支援者の方々も早めにリターンが届くワクワク感もあると思いますね。金融機関に融資を申し込んでかかる時間と比べても早いほうかと。
――プロジェクトを進める際のCAMPFIREさんとのやり取りは、だいたいオンライン上で完結するのですか?
加賀美:電話やメールに加え、最近はWeb会議ツールなども使用しています。実際に会って相談したいという方とは、直接お会いすることもありますが、遠方の方などにとっては、オンラインだけでやり取りできることもメリットの1つかもしれません。
――次に、クラウドファンディング初心者に向けて、注意点などありましたら教えてください。
加賀美:購入型を前提として、気をつけていただきたいことを挙げます。
――思ったような金額が集まらなかった場合、事業内容やブランドを傷つけられたように感じてしまうケースはないのでしょうか。
加賀美:当社では基本的に、集まった金額がブランド毀損につながることはないと考えています。ほとんどの場合、目標金額をやみくもに高く設定していたり、経験がなかったりすることで、多くの人にビジョンが伝わらなかったというケースが多いです。
クラウドファンディングに回数制限はありません。一度チャレンジしてみて「ここがよかった」「ここが悪かった」という点を踏まえて、再びチャレンジしても構いません。集まった金額にかかわらず、初回のチャレンジで得たものを次のチャンスに活かしていただければ。
――目標金額の設定も成功の鍵なのですね。
加賀美:はい。初回のプロジェクトでは、希望する全額を目標金額に設定する方もいらっしゃいます。しかし、必ずしもその見せ方がいいとは限りません。最低限の必要額を目標金額として設定し、そこから「150%達成!」「200%達成!」という見せ方をしたほうが、「このプロジェクト、盛り上がっているから自分も支援したい」と思ってもらえることもあるんです。ちなみに、プロジェクトの目標金額は小さいものだと数十万円からで平均額は数百万円程度かと。実際の支援金額では、コロナ禍に関するプロジェクトだけを取り上げると、平均支援金額は約230万円です。支援金額1000万円以上は、全体の1%未満ですね。
――クラウドファンディングに初めてチャレンジする人にとって、目標金額の設定などは難しい部分なのではと思います。そういう点も相談できるのでしょうか?
加賀美:もちろんです。目標金額の相談だけでなく、「どういう文章や写真を掲載したらいいか」「今プロジェクトが伸び悩んでいるけれど、どういう対策を打ったらいいか」など、さまざまなことをプロジェクトを担当するキュレーターに相談しながら一緒に考えていける環境が整っています。
最初に集まりが悪かったからといって、そのプロジェクトに悪いところがあるとは限りません。どこかで注目されたらそこから一気に広がるなど、いろいろな可能性があります。すぐ結果が表れないからと、落ち込まないでください。キュレーターに相談しながら、継続的にSNS発信をするなど支援者さんともコミュニケーションを取っていくことが大事でしょう。
――プロジェクトには審査があるということですが、どのような場合に審査に落ちてしまうのでしょうか?
加賀美:基本的には、公序良俗に反していない限りはOKとしています。ただし審査基準として、リターンの実行可能性がちゃんとあるかどうかは見させていただくことは多いですね。可能性が恐ろしく低そうなものは、「もっと内容を詰めてください」とお願いするのですが、そう返答したら音沙汰がなくなったというパターンは過去にありました。
――いろいろな注意点を教えていただきましたが、裏を返せば、これらをすべて意識してプロジェクトを行えば成功に近づくという、アドバイスやヒントにもなりますね。初めて挑戦する人はどのような心構えで臨むべきなのでしょうか。
加賀美:先ほども申し上げた通り、一度挑戦して失敗したからといって、もう同じことができなくなるわけではありません。
何か実現したいことがあるなら、まずは挑戦してみてください。「自分たちが何に対するお金を集めたいのかよくわからないけれど、とりあえずお金が必要だ!」と言っても、支援者さんは何を応援すればいいのかわかりません。始める場合は、目的とメッセージは明確にしましょう。
CAMPFIREのサイト内のキーワード検索をしていただければ、プロジェクトの中に必ず参考になる目的やメッセージがあると思います。ぜひ見ていただき、失敗を恐れず、クラウドファンディングに挑戦してください!
編集者・ライター。出版社勤務を経てフリーランスに。手がけてきた分野はエンターテインメント(お笑い・音楽)、グルメ、衣料(ファッション)、児童、占い、街ブラ、ライトノベルなど。
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