民間金融機関等による少額融資のポイント

2022/10/07

小規模・中小事業者が少額融資(300万円以下)で資金を調達する際は、スピーディーに調達したいという要望が強いと思います。比較的スピーディーに調達が可能な「民間金融機関」及び「ノンバンク等」からの少額融資による調達についてポイントを解説します。

民間金融機関による少額融資の調達方法

公的融資による少額融資のポイント」でも説明いたしましたが、民間金融機関は、信用保証付き融資の窓口となっています。よって、信用保証付き融資の利用が、第一に検討する制度になると思われます。しかし、借入の実績を重ねることによって、小規模・中小事業者においても、プロパー融資による少額融資の可能性も十分にあります。実際に地道に実績を積み重ねることによって、信用金庫などから100万円~300万円のプロパー融資を受けている小規模・中小事業者は珍しくありません。

また、業績や実績が重視されがちなプロパー融資以外の方法で民間金融機関から少額融資を調達する方法もあります。ビジネスローンやカードローン、オンラインレンディングなどです。この中には100万円以下の少額融資が可能な制度もあります。
生命保険や共済などの「経営者貸付」なども少額融資の調達には向いているといえるでしょう。

ビジネスローン

やや定義があいまいになりつつありますが、ビジネスローンとは、金融機関がプロパー又は民間保証会社の保証を付けて、独自の審査方法により事業性融資を行うスキームのことをいいます。最近はビジネスローンという名称で、審査にAIを用いてオンライン上で手続きが終了するというスキームも増えています。従来型のビジネスローンと後述するオンラインレンディングとの区別がつきにくくなっているかもしれません。

ビジネスローンは、全ての金融機関が実施しているわけではありませんので、取引先金融機関に確認してみてください。名称については、金融機関によっては、たとえば「ビジネスフリーローン」などと表現の仕方が異なりますのでご留意ください。もし、実施しているようであれば、審査要件などについて確認しておきましょう。

参考までに、ビジネスローンとして最も古い、きらぼし銀行(旧東京都民銀行)のスモールビジネスローンをご紹介いたします。

きらぼし銀行:スモールビジネスローン

概要
対象者
  • 従業員数30名未満の法人および個人事業主の方
  • 原則 設立および営業2年以上の方
  • 青色申告をされている方
  • 当行と融資取引のない方またはスモールビジネスローン取扱窓口(兼 資金調達サポートデスク)と取引のある方
資金使途 運転資金
融資限度額

100万円以上1000万円以内(10万円単位)

  • 原則 月商の範囲内
返済期間 7日以上6ヵ月以内
利率 年4.0%~9.0%(固定金利)
担保・保証人
  • 担保:原則不要
  • 保証人:第三者保証不要

スモールビジネスローンは、短期融資やつなぎ融資などに利用でき、原則として翌日回答になります。決算書も1期分で大丈夫です。このようなビジネスローンを利用できれば、小規模事業者にとってはとてもありがたいです。

カードローン

カードローンとは、金融機関等が提供する融資サービスのひとつです。ローン専用のカード等を使って、契約した契約限度額の範囲内で必要な金額の借り入れをすることができます。
カードローンは個人向けのイメージが強いと思いますが、事業者向けのカードローンも実施している金融機関もあります。原則として事業性資金として利用できますが、必ず確認するようにしてください。

また、カードローンによっては、あらかじめ設けた枠の範囲で、随時借入、返済を行うことができるものもあります。

事業者向けのカードローンは、どの金融機関でも実施しているわけではありません。まずは取引先の金融機関に確認してみましょう。取り扱いがなければ、取引先以外の最寄りの金融機関が実施しているかどうか、確認してみましょう。

オンラインレンディング(オンライン融資)

オンラインレンディングとは、「オンライン上(インターネット上)ですべての手続きが完結する融資サービス」のことをいいます。
従来の金融機関の融資は、書類が多く、手続きも面倒であり、さらに審査に関しては数週間を要する場合もあります。これに対して、オンライン融資は、最短で即日~数日内で融資を受けることが可能です。少額融資をスピーディーに調達するには最適だといえるでしょう。

現在、多くの民間の金融機関がオンラインレンディングを開始しています。まずは取引先の金融機関がオンラインレンディングを実施しているかどうか確認してみましょう。実施していなければ、新たな金融機関と取引を開始してもよいかもしれません。

参考のために住信SBIネット銀行の「Dayta」をご紹介いたします。

住信SBIネット銀行:Dayta

概要
対象者 当社所定の条件を満たしたお客さまにお知らせしている「借入条件のお知らせ」をお受け取りいただいている法人
資金使途 運転資金
融資限度額 50万円~3,000万円(10万円単位)
返済期間
  • 返済回数3回(最長4か月未満)
  • 返済回数6回(最長7か月未満)
  • 返済回数12回(最長13か月未満)
利率 借入利率については、お客さま毎に通知いたします。
担保・保証人 不要

住信SBIネット銀行のDaytaは、まずは法人口座を開設して、「Dayta」にログインをして申し込み、手続きをします。「借入条件のお知らせ」は、法人口座を一定期間利用することによって、所定の条件を満たすと連絡が届く仕組みになっています。

生命保険会社の契約者貸付

これまでにご紹介してきた方法は銀行、信用金庫、信用組合などですが、生命保険会社などが実施している「経営者貸付」などもスピーディーに少額融資を調達する場合には適しているといえます。また、小規模企業共済や経営セーフティ共済などにも「契約者貸付」があります。

これからの最大の特徴は、解約返戻金内で「原則として、審査なしで、手続きをすればスピーディーに貸付を受けることができる」ということです。少額融資に向いている調達方法だといえます。自社が購入している保険や共済があれば、契約者貸付が利用できるかどうかについて是非確認しておきましょう。

1.生命保険

生命保険の解約返戻金の一定範囲内で、貸し付けを受けることができることが多いです。原則として、契約者貸付を受けている間は、保障も変わりなく継続します。また配当金を受け取る権利も継続します。ただし、保険種類などによっては、利用できない場合がありますので生命保険会社に確認してください。

資金使途は「原則自由」、貸付限度額は「解約払戻金の80%~90%」となっています。自社で購入している生命保険について、契約者貸付制度を利用できるかどうかについて確認しておきましょう。

2.小規模企業共済(一般貸付等)

小規模個人事業主等が事業を廃止、退職した際に受け取れる共済制度です。急な資金が必要な時に借入できる一時貸付制度があります。

一般貸付については、掛金の範囲内(掛金納付月数により掛金の7~9割)で、10万円以上2,000万円以内(5万円単位)で借入れをすることができます。利率は年1.5%(令和4年8月時点)、また、借入期間内に借入金を返済できないような事態が生じた場合、新たな借入れに必要な約定利子を支払うことで、借り換えを行うことも可能です。

3.経営セーフティ共済

経営セーフティ共済とは、取引先企業の倒産等による連鎖倒産等を防止するための共済制度です。取引先の倒産時に、必要な資金を無担保・無保証人・無利子で迅速に借り入れすることができますが、取引先が倒産していなくても、事業資金が必要なときは、掛金総額の範囲内で「一時貸付金」等を利用することもできます。

一時貸付金については、貸付限度額は、解約手当金の95%の範囲内で、30万円以上(5万円単位)となっています。一時貸付金の利率は金融情勢に応じて変動しますので、窓口に確認して下さい。資金使途は「事業資金(設備資金、運転資金)」、無担保・無保証人となっています。また、借入期間内に借入金を返済できないような事態が生じた場合、新たな借り入れに必要な約定利子を支払うことで、借り換えを行うことも可能です。

民間金融機関(銀行、信金、信組等)のポイント、注意点

まずは取引先の金融機関が、信用保証付き融資および通常のプロパー融資以外で、小規模事業者向けにどのような融資制度・スキームを実施しているかを確認してください。やはり担当者とのコミュニケーションがとても重要になります。小規模事業者ですと、担当者の定期訪問などはないかもしれませんが、事業者側から積極的に質問、相談などをしてみましょう。

特にオンラインレンディングについては、近い将来、ごく当たり前のスキームになっている可能性もあります。よって、早い段階から“経験しておく”“慣れておく”というも一つの考え方です。取引先の金融機関が実施していない場合は他行のサービスを利用してみる価値はあると思われます。

なお、民間金融機関による少額融資の注意点として、これまでに案内してきた制度に頼り切らないことです。なぜなら、信用保証付き融資やプロパー融資と比較すると、やや高金利になる傾向があるからです。あくまでもメイン融資は、信用保証付き融資とプロパー融資であり、補完的に利用されることをお勧めいたします。

ノンバンク等による少額融資の調達方法

これまで民間金融機関からの少額融資について説明してきましたが、その他、ノンバンクなどの利用について解説いたします。ノンバンクとは、「銀行ではない金融会社/貸金業者」のことをいいます。つまり、「預金業務を行わずに融資などを行う金融会社」と定義してもよいでしょう。一般的には、“消費者金融”のイメージが強いと思われますが、事業性資金の貸し付けも行っています。

ノンバンクにおいても、民間金融機関と同様に、ビジネスローンやカードローン、オンラインレンディング等を実施しています。また、不動産担保融資、ファクタリング等も実施しています。

ビジネスローン

現在、ノンバンク業界においてビジネスローンを実施している金融会社はさほど多くはありません。その中でもアイフルビジネスファイナンス株式会社(旧ビジネクスト)が実施しているビジネスローンは利用実績が多く、少額融資に向いていると思われます。

参考までに、アイフルビジネスファイナンスの事業者向けビジネスローンをご紹介いたします。

事業者向けビジネスローン

概要
対象者

法人または個人事業主

  • 法人のお客様:75歳まで
  • 個人事業主のお客様:69歳まで
融資限度額 50万円〜1,000万円
返済期間
  • 元利均等返済:最長5年(60回以内)
  • 元金一括返済:最長1年(12回以内)
利率 3.1%〜18.0%
担保・保証人
  • 担保:不要
  • 保証人:原則不要
  • 法人の場合は代表者様に原則、連帯保証をお願いします。

カードローン

カードローンというと個人向け(消費者金融)のイメージが強いと思われますが、経営者を対象とした事業性資金にも対応できる商品もあります。

参考までに、オリックス・クレジット株式会社の「VIPローンカードBUSINESS」をご紹介いたします。運転資金やつなぎ資金、仕入資金、納税資金などの事業性資金ばかりでなく、プライベートでも利用可能です。スピーディーに少額融資を調達したい場合には最適な方法だといえるでしょう。

事業者向けビジネスローン

概要
対象者 経営者・個人事業主
融資限度額 最高500万円
返済方法
  • 新残高スライドリボルビング返済
  • 元利込定額リボルビング返済
利率 年6.0%~年17.8%

不動産担保

不動産担保融資は、多くのノンバンクが実施しており、それぞれの特徴がありますので、不動産を所有している事業者の方は、調べてみる価値はあると思われます。

大手企業としては、アサックス、三井住友トラスト・ローン&ファイナンス、新生インベストメント&ファイナンス、アイフルビジネスファイナンスなどがあります。また地方都市圏においては、地元に根付いたノンバンクなどが実施している場合もありますので、是非、インターネット等で検索、確認してみてください。

ファクタリング

ファクタリングとは、売掛金をファクタリング会社へ売却し、手数料を差し引かれた代金を受け取って早期現金化する手法です。従来は、金融機関やそのグループ会社が行っていましたが、現在は多くのファクタリング会社が実施しています。少額でのファクタリングを行っているファクタリング会社もありますので、売掛金などを早期現金化して資金調達する際には適している方法といえます。

ノンバンク等のポイント、注意点

ノンバンクの金融商品は高金利ではありますが、とても利用しやすく便利なので、小規模事業者の中には依存してしまう方も少なくありません。ノンバンクを利用する際は「短期で返済して、決して依存しないこと」を心がけてください。

基本的には、できる限り公的融資や取引先金融機関からの少額融資の調達を心がけてください。ノンバンクの利用はあくまでも最終手段及び補完です。繰り返しますが、決して依存してはいけません。顧問税理士がいる事業者の方は、ノンバンクを利用する前に相談をして意見を聞いてみるとよいでしょう。

また、いわゆる「闇金」を利用するなどは論外です。闇金とは思わずに利用してしまって、気が付いたら闇金地獄から脱することができなくなってしまった、というケースも少なくありません。上手い話が転がり込んできても決して乗らないように十分に注意してください。

また、直近の傾向としてファクタリングが流行っていますが、手数料も金利換算すると高く、これに依存すると脱却できなくなることも少なくありません。「ファクタリング」自体は昔からあり、決して悪質な金融手法ではありませんが、現在、悪質な民間ファクタリング会社も多々あるといわれていますので、十分に注意してください。

経営者(代表者等)から自社への貸付(役員借入金)

役員借入金とは、代表者等(経営者や役員)が自身の会社に資金を貸し付けることをいいます。小規模・中小企業においては、代表者等が自分の会社に資金を貸し付けることは珍しくありません。会社側の視点に立つと、会社が代表者等から「借入を行っている(借入金)」ことになります。

表者等からの借入について金融機関は「代表者等からの借入金等については、原則として、(代表者等が返済を要求しない場合)これらを自己資本相当額として判断することができる」とする見方もあります。しかし、最終的に判断するのは金融機関自身です。

たとえ少額でも連続して自社に貸し付けて、結果として大きな貸付額となれば、会社としては負債(借入金)が増大し、金融機関の判断は厳しくなるケースが多いです。代表者等に資力があれば、緊急避難的に活用するのは間違いではありませんが、できる限り早急に解消するように意識してください。過度に頼り切らないように十分に注意してください。

著者:吉田 学(財務・資金調達コンサルタント)

株式会社MBSコンサルティング代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。
主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。

また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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