公的なSDGsファイナンス(融資制度)

2022/08/18

金融機関はSDGsを推進している企業に対してさまざまな支援を実施しています。具体的な金融機関としては、日本政策金融公庫や商工組合中央金庫といった政府系金融機関や、銀行や信用金庫、信用協同組合などの民間金融機関、信用保証協会などが積極的に推進・実施しています。

ここでは公的なSDGsファイナンスについて、解説いたします。

政府系金融機関のSDGsファイナンス

2022年3月時点では、日本政策金融公庫、商工組合中央金庫などの政府系金融機関において「SDGs〇〇融資制度」といった、SDGsやESGなどの言葉を使用した融資制度はありません。しかしこのような言葉こそついていませんが、SDGsを推進している企業に対してさまざまな支援を実施しています。主な支援概要について説明いたします。

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫では中小企業基盤整備機構(中小機構)などと連携して、SDGs相談窓口を設置している支店があります。例えば2021年12月16日に、北陸3県の日本政策金融公庫の6支店に窓口を開設し、SDGsの観点から企業の価値向上・競争力の強化に取り組む事業者からの相談に対応しています。

また日本政策金融公庫は、既にソーシャルビジネス支援を積極的に行っています。これは、SDGsにつながる活動の1つと言えるでしょう。「ソーシャルビジネスステーション 新しいウィンドウで開く」や「社会的企業・NPO向けソーシャルビジネスお役立ち情報 新しいウィンドウで開く」などのWebサイトも公開されており、積極的な情報公開や支援などを展開しています。

ファイナンス支援については、2022年3月時点においてSDGsに特化した融資制度はありませんが「地域活性化・雇用促進資金」や「ソーシャルビジネス資金」、その他諸々の資金制度を活用して、全国の自治体や民間金融機関との連携により事業者支援を実施しています。

「地域活性化・雇用促進資金」や「ソーシャルビジネス資金」の概要

対象者 融資限度額 融資期間
(うち据置期間)
ソーシャルビジネス支援資金 新しいウィンドウで開く 社会的課題の解決を目的とする事業を営む方など 別枠7,200万円(うち運転資金4,800万円) 設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金: 7年以内(2年以内)
地域活性化・雇用促進資金 新しいウィンドウで開く 承認地域経済牽引事業計画などに従って事業を行う方または雇用創出効果が見込まれる設備投資を行う方など 7,200万円(うち運転資金4,800万円) 設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金: 7年以内(2年以内)

出典:日本政策金融公庫「地域活性化・雇用促進資金」 新しいウィンドウで開く
出典:日本政策金融公庫「ソーシャルビジネス資金」 新しいウィンドウで開く

具体例として「静岡市SDGs宣言」に関した融資制度などがありますので、参考にしてください。

参考

日本政策金融公庫の融資・手続きなどは、資金調達ナビ「日本政策金融公庫について知る」をご覧ください。

商工組合中央金庫の場合

商工組合中央金庫におけるファイナンス支援は、2022年3月時点、SDGsに特化した融資制度はありません。

しかし、こちらも持続可能な社会の実現に向けて事業者のSDGsに貢献する取り組みを継続的にサポートしています。商工中金のホームページには、SDGsに積極的に取り組んでいる支援企業が紹介されていますので、参考にしてください。

参考

自治体や信用保証協会のSDGsファイナンス

2022年3月現在、すべての自治体や信用保証協会がSDGsに関する融資制度や保証制度を用意しているわけではありません。各自治体や信用保証協会においては、SDGsに取り組む姿勢を示していますが、まだまだ一般的には浸透していないのが現状です。

このような現状ではありますが、一部の自治体や信用保証協会などでは、融資・保証制度を実施しています。

まずは、お住いの自治体や信用保証協会にSDGsに関連する融資制度があるかを調べてみましょう。また、今後の政府系金融機関や各自治体、信用保証協会などの動向にも注視してください。

信用保証協会については、資金調達ナビ「信用保証協会について知る」をご覧ください。

自治体や信用保証協会におけるSDGsへの取り組み例

一部の自治体や信用保証協会など実施している融資・保証制度の一例をご紹介いたします。

神奈川県/神奈川県信用保証協会

神奈川県にある神奈川県信用保証協会では「かながわSDGsパートナー」に登録している中小企業者を対象に「SDGsパートナー支援融資」を実施しています。

SDGsパートナー支援融資の概要

内容
対象者 ア:かながわSDGsパートナーに登録している中小企業者(NPO法人を含む)および協同組合など
イ:アに該当する方のうち、SDGsの取り組みに関する事業計画を策定し、計画を実行する中小企業者(NPO法人を含む)および協同組合など
資金使途 運転資金・設備資金
融資限度額 ア:2,000万円
イ:4,000万円
ただし、アにより融資を受けたパートナー登録企業がイにより融資を受ける場合、合計4,000万円まで
融資利率 ア:年1.8%以内
イ:年1.6%以内
融資期間 運転資金:1年超10年以内
設備資金:1年超15年以内
返済方法 分割返済(1年以内の据え置き可)
担保 必要に応じて
保証人 原則として法人の代表者は連帯保証人となります
信用保証料 0.45%から1.52%

出典:かながわSDGsパートナー|神奈川県 新しいウィンドウで開く

「かながわSDGsパートナー」とは、SDGs推進に資する事業を展開する県内企業を審査のうえ「かながわSDGsパートナー」として登録し、さまざまな機会や媒体を通じて登録企業などと県が連携してSDGs推進をPRするというものです。なお、登録企業には本制度のような中小企業制度融資による支援が実施されます。

滋賀県/滋賀県信用保証協会

滋賀県にある滋賀県信用保証協会では、SDGsの達成や地域社会の形成に向けた取り組みを行う事業者を支援する「SDGsステップアップ保証」を実施しています。

SDGsステップアップ保証の概要

内容
対象者 SDGsの達成や地域社会の形成に向けた取り組みを行っている事業者
資金使途 運転資金、設備資金
保証限度額 3,000万円
融資利率 金融機関所定
保証期間 運転資金 10年(据置期間5年以内)
設備資金 15年(据置期間5年以内)
担保 必要に応じて
保証人 原則、法人代表者以外は不要
信用保証料 0.25~1.70%
  • 基準保証料率から0.2%の保証料割引を適用

出典:SDGsステップアップ保証|滋賀県信用保証協会 新しいウィンドウで開く

著者:吉田 学(財務・資金調達コンサルタント)

株式会社MBSコンサルティング代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。
主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。

また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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