少人数私募債発行の手順(1)~募集要項決定から発行総額決定まで~

2021/11/24

少人数私募債の基本的な全体の流れは、以下のようになります。

1 募集要項決定・事業計画書の作成 2 取締役会または、株主総会決議 3 少人数私募債の申込証作成・受付・勧誘 4 引受人調査 5 発行総額決定 6  募集決定通知書作成・送付 7 申込証拠金の入金確認 8 申込証拠金預証の作成・送付 9 台帳(原簿)の作成・記帳 10 利息支払い・現況報告 11 満期償還 社債券・利札の印刷・発行は、少人数私募債では実務上行いません

ここでは、募集要項決定・事業計画作成から発行総額決定までの手続きについて、詳細に解説していきます。

① 募集要項決定・事業計画書の作成

1番目の手続きは、会社法で決められている少人数私募債の発行条件の枠内で、内容を決定することです。
その内容は、発行総額、利率・社債償還や利息の支払方法・利払い日、償還期間、振込期日、1口あたりの金額、何口発行するか、募集期間などです。
下記の「募集要項」のように整理すると良いでしょう。

「募集要項」の例

1.会社の商号 株式会社○○
2.社債発行金額 金 10,000,000円
3.社債の種類 利付少人数私募債とする。但し、債券不発行。
4.社債の金額 1口金 ※1,000,000円
5.社債の利率 年 3%
6.発行金額 額面どおり。
7.償還金額 額面どおり。
8.社債償還の方法及び期間 元金は、〇年〇月〇日にその金額を償還する。会社は〇年〇月〇日以降何時でも申出のあった社債権者の所有する社債全部を買入償却することができる。
9.利息の支払方法及び期間 利息は発行日〇年〇月〇日から償還期日または、解約日までにこれをつけ、毎年6月末日と12月末日の年2回に分けて支払う。但し、半年に満たざるときは日割計算とする。償還期日後または解約日後は利息をつけない。
10.中途解約 社債権者は、満期日前に所有する社債全部を取締役会の承諾を受けた上で換金解約をすることができる。但し、〇年〇月〇日以前の解約の場合の利率は年1%とする。また、〇年〇月〇日以降これを経過する間の解約の場合の利率は年2%とし、「9.利息の支払方法及び期間」において支払われた利息との差額は換金される額より控除されるものとする。
11.第三者譲渡方法及び譲渡制限 社債権者は、満期日前に所有の社債全部を第三者に売却譲渡する場合は、取締役会の承諾を受けるものとする。但し、一括譲渡外の譲渡については認められない。譲渡価格は利息の附される経過期間を考慮して当事者間の合意によって決定するものとする。譲渡の際、別途定める名義書換手数料を申し受ける。
12.元金支払方法 当社本社より社債購入者へ現金振込とする。
13.社債元利請求権の時効 社債の償還請求権は10年を経過すると、時効により消滅する。
14.申込期間 〇年〇月〇日より〇年〇月〇日までとする。但し、申込額が募集額に達した時は、期間中であっても申込を締め切ることができる。
15.募集方法 直接募集。共有による申込の場合には、共有者の中から代表者を定めるものとする。
16.社債払込期日 〇年〇月〇日
17.払込銀行 〇〇銀行 〇〇支店 普通預金〇〇〇〇〇〇〇〇 株式会社〇〇
  • 少人数私募債は社債の一種であるため、募集要項は「社債の募集要項」として作成します。

募集をかける際には事業計画書を作成すると良いでしょう。勧誘する方々に対し、会社の情報や計画を開示することにより、信用を得ることも必要となるからです。
少人数私募債による資金調達目的を明確にし、調達した資金を何に利用し、償還する原資となる利益をどのように作り出すのかを事業計画書に入れ込んでおきましょう。

少人数私募債の引受人は、事業計画書で償還についても問題がなさそうだと判断できれば、しっかりした会社であると評価することができます。
少人数私募債を募集する会社にとっても、事業計画書を作成する際には、調達した資金の使途や返済計画を検討でき、さらに、社内での予算実績管理などで活用することもできます。

② 取締役会または、株主総会決議

少人数私募債を発行する2番目の手続きとして、取締役会決議が必要となります。取締役会では、今回の少人数私募債の発行を実施するにあたって、募集要項の内容(必要資金額・償還期間・金利など)や事業計画書の妥当性について協議した上で、決議します。
定款で取締役会非設置会社となっている会社では、株主総会の決議が必要となります。

取締役会議事録の例を掲載いたしますので、参考にしてください。

③ 少人数私募債の申込証作成・受付・勧誘

少人数私募債を発行する3番目の手続きとして、取締役会(または、株主総会)の決議に従い、少人数私募債の申込証を作成し、引受人の申し込みに備えます。

少人数私募債の申込証の例を掲載しますので参考にしてください。

少人数私募債の申込証作成と同時に、申込受付の準備をします。担当部署や担当者を決め、申し込みや問い合わせがあった時にスムーズに対応できるようにします。

準備が整ったら、少人数私募債に申し込んでくれる人を勧誘します。勧誘する際には、募集要項や事業計画書などを渡し、少人数私募債の趣旨や条件などについて説明をすることが一般的で、最低限通知しなければならない事項が会社法でも定められています。

なお、募集要項に必ず記載し通知しなければならない内容は、以下のとおりです。

  • 募集総額
  • 一口あたりの金額
  • 利率
  • 償還の方法と期限
  • 利息の支払方法と期限

④ 少人数私募債の引受人調査

4番目の手続きとして、少人数私募債の引受人調査を行います。少人数私募債では知人や取引先など特定の人を勧誘することが一般的ですが、その他に予定外の方から申し込みを受けることもあります。このため、募集会社は申込者が適格であるかどうかの審査を行い、申し込みの承認をするかどうかの決定をします。

なお引受人調査は、少人数私募債が基本的には「縁故債」であることから、「経営者個人」「経営者の親族・友人」「従業員やその親族」「取引先やその知人」などが中心となります。これらの引受人の中に、銀行や証券会社、投資顧問業者といった機関投資家(プロ)がいないことや、反社会的勢力でないことの調査が必要です。

⑤ 少人数私募債の発行総額の決定

申込証作成・受付・勧誘と引受人調査の結果、少人数私募債を購入してもらう相手が決定したら、申込証を引受者から受け取り、最終的な発行総額を決定します。

ここで、応募金額が募集金額に満たないことがあります。申込期間内であれば、新たな引受人を探すことになりますし、期間外であれば、その応募金額での少人数私募債の発行となります。
逆に、応募金額が募集金額を超えた場合は、超過した金額の引受人に辞退してもらいます。ただし、少人数私募債が縁故債であることから、辞退してもらう場合には、「次回の少人数私募債発行の際には真っ先に声をかけます」といった内容を文書で通知するなど、丁寧な対応を心がけましょう。

著者:星 武志(経営コンサルタント)

株式会社アスタリスク代表取締役。金融機関、コンサルタント企業、IT企業を経て、2000年代表取締役就任。IT企業、不動産業、商社等の経営戦略、財務戦略、管理会計支援等 を行う。
これまで、銀行等の金融機関の研修・講演講師を70行庫以上務める。主な著書は「渉外マンの現場力/近代セールス社」金融商品取引法・各種業法に基づく「金融商品セールス対応話法集/銀行研修社」等でありその他金融機関向け、雑誌連載実績等多数。

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