少人数私募債の発行前と発行後の注意点

2021/11/24

今回は、少人数私募債の手続きの中で、特に発行前と発行後に注意しなければならない事項について、それぞれ解説していきます。

少人数私募債「発行前」の注意点

少人数私募債を発行する前に、もう一度、以下の事項について確認しましょう。

① 発行条件に適合しているかどうか

少人数私募債を発行するためには、「引受人が50人未満」「引受人に適格機関投資家(プロの投資家)がいない」「少人数私募債の総額を最低券面額で除した数が50未満(例えば、最低券面額が100万円の場合には、少人数私募債の総額が5,000万円未満)」などの発行条件を満たすことが必要です。

② 募集要項で以下の事項を決めているかどうか

  • 社債の募集総額
  • 社債の一口の金額
  • 社債の利率
  • 社債の償還期間と償還方法
  • 社債利息の支払方法
  • 中途換金(解約)の方法
  • 社債の第三者譲渡の方法および譲渡制限
など
  • 上記の事項は、取締役会又は株主総会で議決する必要があります。

③ 引受人と信頼関係を継続するための取り組みの準備ができているかどうか

少人数私募債が縁故債であることから、信頼関係を継続するために、以下のような取り組みの準備をしておくと、引受人との関係を良好に保つことができ、会社の事業活動を応援してくれる可能性が高くなります。

積極的な情報開示を行うこと
事業計画や財務諸表などの自社情報を積極的に開示しましょう。良い情報も悪い情報も積極的に開示するなどのルールを決定しておくと良いでしょう。
社債券の管理を徹底すること
少人数私募債は、社債管理会社の設置や官公庁への届け出が必要ないため、発行会社が社債券の管理を行います。管理すべき内容としては、申込証拠金預り証の原本の管理はもちろんですが、台帳を作成し、利払いや償還などを厳格に管理しましょう。
台帳管理する内容は、「引受人名」「住所」「社債申込金額」「口数」「金利」「申込日」「償還日」です。念のため、緊急連絡する場合に備え、電話番号も追記しておきましょう。
少人数私募債の償還に備えて、資金繰りを計画的に行うこと
少人数私募債の償還時には大きな会社資金の流出が発生します。このため、資金計画をきちんと行う必要があります。仮に不測の事態が発生し、償還日に償還できないことが予想された場合は、早期に少人数私募債の引受人に連絡することも重要です。

少人数私募債「発行後」の注意点

少人数私募債発行後には、主に以下の手続きがありますので、発行後の管理にも注意を払う必要があります。

少人数私募債の利息の支払い
少人数私募債の発行会社は、募集要項に記載した日付や利率に従い、原簿の情報をもとに利息を支払います。
少人数私募債の利息支払い時の税務手続き
少人数私募債の利息支払い時には、源泉所得税などの納付が必要です。これを利息の金額から差引き引受人に支払います。詳しい手続きは顧問税理士などに確認しましましょう。
満期償還
満期日(募集要項で定めた期日)には、少人数私募債の元金を返済します。
償還日の1か月くらい前に、少人数私募債の引受人宛に、満期償還のお知らせを発送しましょう。元金返済をした際には、「申込証拠金預り証を返却してもらう」「元金償還確認書に記名押印をもらう」など、書面でのやり取りもしておいたほうが良いでしょう。
満期償還日に返済できない場合
万が一、満期償還日までに返済する資金を用意できない場合は、再度、償還期日を設定し、同じ引受人に少人数私募債を引き受けてもらうなどの検討を行い、引受人の承認を得る必要があります。

少人数私募債の引受人が複数の場合は、償還期日の前に社債権集会を開催し、文書による説明の機会を設け、引受人に理解を得なければなりません。
償還期日に償還できない理由や新たな償還期日を具体的に示し、発行会社は改めて会社の現況や今後の展望について引受人に説明します。引受人の承認を得られるよう、丁寧に粘り強く説明しましょう。そして、最終的に引受人に納得が得られたら、新たな償還日を書面に明記しお渡しすると良いでしょう。

著者:星 武志(経営コンサルタント)

株式会社アスタリスク代表取締役。金融機関、コンサルタント企業、IT企業を経て、2000年代表取締役就任。IT企業、不動産業、商社等の経営戦略、財務戦略、管理会計支援等 を行う。
これまで、銀行等の金融機関の研修・講演講師を70行庫以上務める。主な著書は「渉外マンの現場力/近代セールス社」金融商品取引法・各種業法に基づく「金融商品セールス対応話法集/銀行研修社」等でありその他金融機関向け、雑誌連載実績等多数。

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