中小企業が美しい決算書を作る意味(1)

2021/12/22

法人の場合、1年間の経営実績を反映させた決算書を作成する必要がありますが、税理士に丸投げしている経営者も少なくないでしょう。しかし、決算書の役割は納税のためだけではありません。金融機関の融資を受ける際にはもちろん、経営者自身が会社経営の舵取りをするための重要な指標の一つだといえます。

今回はそんな決算書を正確にかつ「美しく」作るメリットを紹介しつつ、中小企業が決算書を経営にどう活かすべきかについて解説します。

中小企業における決算書の重要性

中小企業における決算書は「企業の現状を把握するため」と「企業の将来を見極めるため」に重要な資料といえます。

企業を評価する際は「定性」と「定量」の2つの視点でチェックします。定性評価とは、サービス内容や経営者の人柄・実績などの情報による評価です。一方、定量評価はデータ化した実績で、どのような経営状態にあるかを評価します。したがって、定量評価をする際には決算書が必要です。

定量評価において決算書は以下の3つの観点で利用されます。

  • 1:
    経営者の意思決定のツール
  • 2:
    ステークホルダーの信用を得る
  • 3:
    納税(税務申告)

ほとんどの経営者は決算書を活用できておらず、納税と金融機関へ提出するだけで終わっています。しかし決算書を活用して、未来の経営方針を決めていくことが大切です。

決算書を確認する目的

決算書は企業経営の過去の状況を表す資料です。ただし利用者(税務署・金融機関・取引先)によって見る視点が異なります。

税務署の視点

税務署は正しく納税されているかどうかという視点から決算書を見ます。会社法などに従って正しく会計処理がなされているかどうかが重要なポイントです。なお、法律に基づいて行う会計を制度会計と呼び、税務会計にもとづき、課税の繰り延べや、脱税などがないか確認します。

金融機関の視点

金融機関は融資をした後、返済してもらえる見込みがあるかどうかという視点で決算書を確認する点が特徴です。金融機関は過去の実績を重んじるため、営業利益ベースで赤字が続いた場合は、新規の融資が受けられません。また過去会計を重視しますが、過去の決算書の状況から企業の将来性も読み解きます。

取引先の視点

取引先は売掛金を回収できるか、安定して商品を供給できるか、破綻しない会社かという視点で確認します。取引先も基本的には過去会計で取引の可否を決めるでしょう。

経営者は将来を見据えるために決算書を活用すべき

上述の通り、税務署・金融機関・取引先は過去の実績で企業を見ます。しかし、経営者は株主や従業員のためにも、経営状況を過去より良い状態にする必要があるのです。

したがって、経営者は決算書を見て過去を振り返るだけでは不十分で、決算書から過去の企業の状態を分析したうえで、経営の舵取りのために有効活用するべきでしょう。このように未来の方針を決めていくための会計を、管理会計や未来会計と呼びます。なお管理会計や未来会計は、おもに社内向けの資料です。

例えば、車両を購入する場合には「自己資金で購入するか」「借入金で購入するか」「リースにするか」など、経営者が意思決定をし、その結果が貸借対照表に反映されます。同じ業種でも、貸借対照表のバランスが異なる場合があるのはこのためです。つまり、貸借対照表には経営者の方針が反映されやすいため、お金の使い方は慎重に決める必要があります。

まとめ

企業は、株主・取引先・従業員のために継続的な経営をする必要があります。外部から評価されやすいように、決算書を整えることは非常に大切です。

決算書を活用してどうしたら安定した経営ができるのか、収益性が上がるのかを考えるようにしていきましょう。

著書:プロ・ビジョン株式会社

弥生会計と連動して月次決算書や分析帳票を作成できるアプリケーションソフト「参謀役シリーズ」を開発。「会計参謀」「決算参謀」は全国2000を超える会計事務所で導入されており顧問先の経営指導に活用されている。
2002~2005年:弥生会計AEの開発顧問として仕様検討(主にキャッシュフロー計算書)を請負う。2006年:弥生株式会社の経営診断サービスを開発。著書:弥生会計オフィシャルハンドブック 「あなたの会社の実力、信用力がわかります!」中経出版

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