ファクタリングの活用(4)
~ファクタリング会社の選び方~
2023-11-02更新
2025/12/12

企業間取引における課題の1つとして挙げられるのが、売掛金の未回収リスクです。取引先の支払遅延や倒産によって発生する損失は、資金繰りや経営に大きな影響を及ぼすことがあります。そこで注目されているのが「売掛保証」サービスです。売掛保証を利用すれば、与信管理の負担を軽減しながら、安心して新規取引や販路拡大に取り組めます。
本記事では、売掛保証の概要やメリット・デメリット、売掛保証がおすすめな企業の特徴などをわかりやすく解説します。
売掛保証とは、取引先が資金不足や倒産などにより売掛金を回収できなくなった場合に、保証会社がその損失を保証するサービスです。
多くの企業間取引で一般的に行われている請求書払い(掛/掛け売り)などの後払い取引では、商品やサービスの納品後に売掛金を回収しなければなりません。スムーズに入金されれば問題ありませんが、取引先の信用状況が悪化した場合には未入金が発生するリスクもあります。
このようなリスクを軽減するため、多くの企業では取引先の信用力を評価・管理する「与信管理」を実施しています。しかし、与信管理だけではリスクをカバーしきれないこともあります。経営状況は常に変化しており、すべての取引先を継続的にモニタリング・分析することは容易ではないためです。
その点、売掛保証サービスでは、定められた手数料を支払うことで売掛金が保証されます。保証額は全額や8割、9割など、サービスやプランにより異なります。
売掛保証と混同されやすいサービスに、「ファクタリング」があります。売掛保証とファクタリングの主な違いは、サービスの目的や現金化のタイミングです。
売掛保証は、取引先の倒産などによる売掛金の未回収リスクを保証するサービスであり、未入金が発生した際に保証会社へ申請し、審査・手続きを経て保証金が支払われます。そのため、現金化までには一定の時間を要します。
一方、ファクタリングは、支払期日を待たずに売掛債権(入金待ちの売掛金)を譲渡して早期に資金を得るサービスであり、取引完了後すぐに利用でき、手続きが完了すれば売掛金の入金期日を待たずして資金を受け取ることが可能です。
つまり、売掛保証は「未回収リスクへの備え」、ファクタリングは「早期の資金調達」を目的としたしくみです。
売掛保証と似たサービスとして、「請求代行」もあります。両者の違いは主にサービスの内容です。
請求代行は「請求業務の効率化」を目的としたサービスです。請求書の発行・発送、入金確認、入金遅延時の督促などの業務を代行します。これにより、経理部門の事務負担を軽減でき、ヒューマンエラーの防止にもつながります。
請求代行には与信管理や審査業務を行うものもあり、売掛保証が含まれるサービスもあります。
売掛保証を導入することで、売掛金の未回収リスクを軽減でき、より安定した経営基盤を築けます。与信管理の効率化やリスク対策の一環として売掛保証の利用を検討しているなら、ぜひそのメリットを押さえておきましょう。以下では、売掛保証を利用することで得られる主なメリットを解説します。
売掛保証の大きなメリットは、売掛金未回収のリスクに備えられることです。売掛保証を利用すると、売掛金が支払われなかったり取引先が倒産したりしても、保証会社から売掛金を受け取れます。
売掛金を回収できない場合、資金繰りが悪化したり連鎖倒産したりするなどのリスクがあります。売掛金を回収できれば、このようなリスクを回避し、安定して事業を継続できます。
近年、原材料価格の高騰や為替の変動、インフレなど、ビジネスを取り巻く環境が不安定になっています。これまで安定した取引を継続してきた企業が、支払不能に陥る可能性も十分考えられます。売掛保証を利用すれば、このような不測の事態に備え、取引先の経済状況に影響を受けることなく安定して事業を続けられます。
売掛保証を利用する場合、契約前に与信審査が実施されるので、それによって取引先の信頼性を判断できます。
自社で与信管理をする場合、専門的な知識が必要とされ、業務負担も大きくなる傾向にあります。情報収集や判断が難しい、客観的な視点が持てないなど、適正な審査ができないケースも珍しくありません。しかし売掛保証を利用するなら、保証会社によって与信審査が行われます。
審査は保証会社が行うため、取引先の信用力や財務状況などを自社でリサーチする必要はありません。自社のリソースを奪われることなく、本業に集中することで業務効率や生産性が向上するケースもあります。
与信管理についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
売掛保証サービスは基本的に、保証会社が調査のために取引先へ赴いたり、直接連絡したりすることはありません。そのためほとんどの場合、取引先に知られずに保証契約を結べます。
仮にこれが取引先への報告や承諾が必要であれば、取引先から「財務状況を問題視されているのでは」と思われ、せっかく築いた信頼関係に悪影響を及ぼすことも懸念されます。長年取引している得意先などであれば特に、余計な不安を与えるようなことは避けたいものです。売掛保証なら、売掛金が未回収になったときの自社の不利益を回避しつつ、取引先との信頼関係もこれまで通り維持しやすくなります。
売掛保証を利用して未払いリスクに備えることは、新規顧客の開拓にもつながります。
新規の顧客と取引をする際は、入念な与信審査が必要です。相手の信用力や経営状況が不透明な場合、取引量を調整しなければならないケースもあります。 しかし売掛保証を利用すれば、新規顧客に対する与信管理の負担を大幅に軽減できます。さらに、売掛金の未回収が発生した場合の対策もできるため、新規顧客との取引で慎重になりすぎる必要がなくなります。
また、業歴が浅い企業や新規の顧客には、前払いで取引するのが一般的です。しかし、売掛保証を利用していれば後払いでの取引もしやすくなり、取引先の選択肢を増やせます。柔軟な取引ができることで新規顧客の開拓が進み、売上アップやビジネスの成長にもつなげられます。
売掛保証はメリットが多いサービスであるものの、留意すべきデメリットも存在します。契約を締結してから「想像と違った」といった事態が生じないよう、事前にリスクや注意点を正しく理解しておくことが大切です。
売掛保証を利用するうえでのデメリットの1つは、手数料がかかることです。
手数料は、取引先の与信審査の結果に基づく回収リスクによって決定されるのが一般的です。手数料の金額はサービスによって幅があり、取引先のリスク評価の結果によっては、想定より高くなる可能性もあります。また、取引先が個人事業主や小規模事業者の場合は、売掛金未回収リスクが高いと判断され、手数料が割高になることが多いです。
月額基本料金が存在する場合や、オプションサービスにより追加料金が発生するケースもあります。事前に料金体系をよく確認して、コストを計算しながらサービスを比較検討することが大切です。
売掛保証は、すべての取引において利用できるわけではありません。取引先が保証会社の与信審査を通過できない場合は、売掛保証の対象外となります。
審査に影響する要素は、取引先の信用力や財務状況、売掛期日までの日数や金額などです。取引先の業歴や実績なども詳しく調査されます。審査に通過しても、与信力が低いと判断された取引先は、希望した保証限度額よりも低い保証金額が設定されるケースもあります。
その他、基本的には既に未払いが発生している取引は保証の対象外です。支払いに遅れがある企業は、そもそも保証会社への登録が不可なケースもあるので注意しましょう。
スピーディーに入金されるファクタリングとは異なり、売掛保証は入金までに日数がかかることもデメリットです。売掛保証は、支払期日になって入金が確認できなかった場合に、一定の手続きを行うと支払われるサービスです。保証会社に支払いを依頼する際は、発注書や納品書、取引先元帳など債権を特定する書類と、入金されていないことが照明できる資料を保証会社に提出し、審査を受けなければなりません。
入金までの期間はサービスにより異なるものの、多くの場合は一定の期間を要します。売掛金の未払いが発生してすぐに支払われるわけではないので、急いで資金を調達したい場合には不向きといえます。
売掛保証サービスを検討する際に、ファクタリングなど他の資金調達手段や、保証サービスと迷う場合もあるでしょう。どのような企業・事業者に売掛保証の活用が適しているかを理解しておけば、自社・自事業の状況に合った最適な選択が可能になります。そこで以下では、売掛保証サービスの利用が特におすすめな企業の特徴を紹介します。
取引先数が少ない、または少数の会社への依存度が高い企業・事業者は、売掛保証の利用を検討する価値があります。売上の大きい取引先からの支払いに遅れがあると、売上の大部分を回収できず、資金繰りに苦労する可能性があります。取引先が倒産した場合には、共倒れになるリスクも否めません。 売掛保証を利用することによって、少数の会社に頼っている場合でも売掛金未回収による影響を軽減できます。
売掛保証は、与信管理の業務が負担になっている企業・事業者にも向いています。
企業間取引では与信管理が重要となりますが、与信管理には専門的なノウハウが必要です。時間もコストもかかる作業であり、特に中小企業や個人事業主は、専門の部署や担当者を設ける余裕がないケースもあります。
売掛保証では、多くの場合保証会社が与信審査を行うため、自社で与信管理を担当する必要はありません。評価基準の選定や継続的な信用調査など、与信管理に関連する業務負担を大きく軽減し、本業に集中できます。
売掛保証を利用すれば、未回収が発生した後の交渉は保証会社が行うため、督促業務の負担を大幅に軽減できます。
売掛保証を利用しない場合、営業担当者や経理担当者が入金の督促を行うのが一般的です。互いに売掛金・買掛金がある場合は相殺を持ちかけたり、分割払いを提案したりすることもあります。取引先がなかなか支払いに応じなかったり、連絡が取れなかったりすることもありますし、未払いの取引先が複数ある場合はさらに負担が大きくなります。 売掛保証を利用することで、その負担が軽減される可能性があります。
ただし既に未払いが発生している取引先は売掛保証の審査に通らないこともあるので、その点は留意する必要があります。
売掛保証を利用すれば与信管理の負担が減るため、業歴が浅い企業や新規顧客とも取引しやすくなります。先述したように、新規顧客に対する与信管理の負担を減らしたり、新規顧客とも後払いでの取引を始められたりといったメリットがあります。新規顧客を開拓し、売上を伸ばしたい企業にも適したサービスといえます。
売掛保証は、サービス提供会社によって保証範囲や料金体系、審査基準などが異なるため、比較検討しながら自社に合うものを選ぶことが大切です。ここでは、売掛保証サービスを選ぶ際に押さえておきたいポイントを解説します。
売掛保証の保証額は、サービスやプランによりさまざまです。保証するタイミングも、「入金遅延から対応」「倒産時のみ対応」など、サービスにより異なります。特定の取引に対して請求書単位で保証がかけられるサービスもあり、単発の取引や新規顧客が多い企業に向いています。
保証内容は、自社の取引内容を踏まえてニーズに合ったものを選ぶのがポイントです。
売掛保証の料金体系は、毎月固定料金を支払う「月額制」や、保証額の利率によって算出される「変動制」など、サービスによって異なります。どの料金体系が適しているかは、取引規模や売掛金額などによって変わるため、一概には判断できません。さらに、保証対象となる売掛債権の上限額や、登録できる取引先の数などでも料金が変動します。一般的には、保証内容が充実しているサービスほど手数料が高くなる傾向にあります。
料金を比較する際は、各サービスの条件や手数料体系をしっかり比較し、見積もりを依頼するなどして、自社の取引状況に適したサービスを選ぶことが大切です。自社の予算に合わせて、無理なく利用できるサービスを選びましょう。
保証会社そのものの信頼性も、売掛保証サービスを選ぶ際の重要なポイントです。利用した保証会社が経営難に陥り、倒産する可能性もあるからです。
万一の事態が発生したときにどのような対応をしてもらえるのか、保証体制を確認しておきましょう。
すぐに入金してほしい場合は、保証履行(支払い審査)にかかる日数も考慮に入れましょう。審査に多くの日数がかかるサービスだと、売掛保証を利用しても、入金されるまでの間に資金繰りが苦しくなってしまうかもしれません。
保証会社によっては保証履行にかかる日数の目途を公表している場合もあるので、利用前に確認しておきましょう。すぐに保証を利用したい場合は、最短即日で審査が可能など、スピーディーな審査を売りにしているサービスを選ぶのがおすすめです。
売掛保証サービスをスムーズに利用するためには、申し込みから保証開始までの手順を正しく理解しておく必要があります。以下では、申し込みから売掛先の審査、契約締結、保証開始後の運用まで、実際の利用の流れをわかりやすく紹介します。
まずは、保証会社を比較して見積もりを取り、内容を確認して自社に合ったサービスがどこかを検討します。利用するサービスが決まったら、自社のアカウントを作成して申し込みを行います。ほとんどの保証会社では、ホームページから無料で会員登録が可能です。
アカウントを作成したら、次は保証サービスを利用したい取引先を登録して、与信審査を依頼します。売掛債権の内容(取引内容)、決済方法などの情報が求められます。
審査日数はサービスにより異なりますが、最短即日審査のサービスもあります。急いでいる場合は、審査に要する日数を事前に確認しておきましょう。
取引先のリスクが高いと判断された場合は、審査に通過できない、もしくは保証限度額が減額されることがあります。審査結果が取引先に通知されることは基本的にはありません。
審査に通過すると、保証期間や保証内容、手数料などの契約条件が提示されます。内容に同意ができれば、申し込みに進むことができます。
多くの場合、審査には有効期限が設定されています。保証申し込みは有効期限内に完了させる必要があるため、注意が必要です。
保証対象の取引先で未払いや倒産など売掛保証が適用される事態が発生した場合、保証会社に報告します。このとき、発注書やメール履歴などの取引内容を確認できる書類や、通帳の写しなどの入金履歴を確認できる書類を提出する必要があります。
必要書類を提出すると、所定の審査を経た後、保証金が指定した口座に振り込まれるという流れです。未払いの報告から入金までは多くの場合一定の日数を要します。
弥生のグループ会社アラームボックス
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