融資以外の金融機関の活用(1) ~ビジネスマッチングとは~

2022/04/19

事業を運営していくうえで金融機関と取引を行うことは必須と言えますが、決済口座や融資取引以外のサービスも上手に活用したいものです。企業と金融機関、双方がWin-Winの関係になれば、金融機関もその企業を支援してくれるでしょう。ここでは、その企業規模や取引内容に関わらず活用できる、金融機関の代表的なサービスである「ビジネスマッチング」について説明します。

金融機関を活用したビジネスマッチングとは

ビジネスマッチングとは、新規事業立ち上げを検討する場合などに、販売先や仕入先、ビジネスパートナーを、それぞれの金融機関の取引先から探して結び付けてくれるサービスです。

大まかなモデルは以下のようになります。

例えば、まず金融機関に「販売先を探してほしい」といった目的などを具体的に伝え「1.申し込み」します。その後、内容に応じて金融機関は、取引先の中にそのようなニーズがあるかどうかを「2.調査」し、その取引先に打診をします。ここで取引先A社から「会っても良い」という返事があれば「3.引き合せ」となり実際の商談に進みます。最初の商談は、金融機関の担当者が同席してくれる場合が多いようです。

金融機関では、上記のように個々の企業をマッチングしてくれるという流れが一般的ですが、金融機関によってはさまざまなイベントを開催している場合もあります。

例えば「企業を一同に集めての商談会や展示会、交流イベントを開催し、そこでマッチングしてくれる」「インターネット上に自社の希望を掲載してAIなどを駆使し、より双方のニーズに合致するようなマッチングしてくれる」といったサービスなどがあります。

いずれの場合も、実際の登録時にそれぞれの金融機関に指定用紙(インターネット上であれば指定の登録フォーム)に必要事項を記入のうえ、エントリーすることとなります。

そのエントリーシートの基本的な内容は、通常は以下のような内容です。

エントリーシートの項目は、企業名、業種、代表者、企業URL、担当者、電話番号、住所、E-mail、直近の年商、業歴、主要取扱商品・サービス主要取扱商品、サービス内容です。また、希望するマッチング内容(具体的な希望)を記載する項目として、販路拡大、仕入れ強化、コスト削減・合理化、生産・技術・販売等の業務提携、IT化、事業多角化があります。

こうした基本情報をもとに、金融機関内のデータと照らし合わせ、マッチングを検討する流れとなります。

参加する企業側のメリット

金融機関によるビジネスマッチングは、企業にとって「金融機関からの紹介である」というメリットがあります。金融機関の取引先同士の引き合わせなので、企業からすると全く知らない企業と新規取引をするよりも「安心」です。

また「多種多様な取引先企業の紹介の可能性がある」「金融機関が、ある程度取引先企業の実態を把握している」という点もメリットです。

金融機関側のメリット

金融機関によるビジネスマッチングは参加する企業にとってメリットがありますが、金融機関では、なぜビジネスマッチングをするのでしょうか。その主な目的は以下のとおりです。

企業の成長支援

企業の成長を支援し、事業拡大やコスト削減などを企業に実施してもらい、融資取引など金融機関との取引を拡大するという狙いがあります。

企業のサービスや商品への理解を深める

企業が提供しているサービスや商品への理解が深まることで、今後、金融機関が取引拡大や支援を検討しやすくなるためです。

手数料収入の獲得

長期低金利環境が続く中で収益構造が厳しくなってきた金融機関は、さまざまな手数料収入を獲得しようという動きがあり、ビジネスマッチングで手数料をとる金融機関も存在します。例えば希望企業との面談実現時の「紹介手数料」、紹介後の商取引などの成立時の「成約手数料」などです。手数料無料でビジネスマッチングを提供する金融機関も多くありますので、取引金融機関に確認すると良いでしょう。

中には「金融機関に相談しづらい」という経営者もいるかも知れません。しかし、上記のように金融機関もあくまで「ビジネス」として、ビジネスマッチングを提供しています。

例えば、A社が今の仕入先よりも安い仕入先を探している場合に、金融機関を介してメーカーB社の紹介を受けたとします。

商談がまとまり取引が始まれば、A社はその仕入れを行うために仕入資金が必要となります。一方、B社もこれまでよりも生産量を増加しなければなりませんので、原材料を多く仕入れたり、人員の増加、場合によっては生産ラインの増設などが必要となり、資金需要が発生します。

つまりA社もB社もこのビジネスマッチングを通じて、融資取引が発生する可能性がありますし、金融機関はこの商談を通じそれぞれのビジネスの理解度が深まりますので、今後の提案もしやすくなりますね。
結果、金融機関も融資取引などを拡大することで、A社−B社間でWin-Winの関係になることができるのです。

著者:星 武志(経営コンサルタント)

株式会社アスタリスク代表取締役。金融機関、コンサルタント企業、IT企業を経て、2000年代表取締役就任。IT企業、不動産業、商社等の経営戦略、財務戦略、管理会計支援等 を行う。
これまで、銀行等の金融機関の研修・講演講師を70行庫以上務める。主な著書は「渉外マンの現場力/近代セールス社」金融商品取引法・各種業法に基づく「金融商品セールス対応話法集/銀行研修社」等でありその他金融機関向け、雑誌連載実績等多数。

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