災害・疾病等、環境変化による緊急時の資金調達(3)
2021-09-15更新
2022/04/19
金融機関のビジネスマッチングは販売先や仕入先、ビジネスパートナーを、それぞれの金融機関の取引先から探して結び付けてくれる、中小企業が利用しやすい代表的なサービスです。近年では、複数の金融機関が連携してビジネスマッチングサービスを行っているケースもあります。ここでは、ビジネスマッチングで販路開拓をした具体的な事例をご紹介します。
また、金融機関ではビジネスマッチング以外にも、各種セミナーやビジネスクラブなどのサービスを提供している場合がありますので、主なものをご紹介します。
金融機関のビジネスマッチングを利用し、販路拡大できた事例をご紹介します。
A社は、無線機(トランシーバー)の販売やレンタルを行っています。主たる顧客は、建設会社やイベント会社、警備会社であり、それぞれの建設現場などで利用されています。
A社の社長は同業界出身で、独立後順調に業績をのばしてきました。
A社の主力商品は高性能な無線機で高額な商品で、そのメンテナンスやアフターフォローにも評価を得てきました。
既存顧客から「利用シーンに応じて、低価格な商品ラインナップが欲しい」という要望があり、低価格で使用する距離が短い「特定小電力無線機」の取引を開始しました。
仕入価格を下げるためには大量にメーカーから仕入れる必要があります。しかし、既存顧客である建設業者やイベント会社からは「こんなに利用距離が短いの?」と言われてしまい、販売先の確保に問題が生じました。
A社は、利用距離の短い仕様でもよい業種などへアプローチしたいと考え「新規販路を探したい」と取引金融機関に相談しました。
上記の経緯について事情を聞いた金融機関の担当者は、無線機の利用距離の短さから「店舗内での利用が考えられるのではないか」と提案してくれました。
A社で実際に調べてみると、パチンコ店やカラオケ店などでは、顧客対応や施設内での業務連絡などで特定小電力無線機を使っていることが分かりました。
その旨を金融機関担当者に伝えると、取引先に「パチンコ・チェーン店」「カラオケ・チェーン店」があるということでした。
早速マッチングを依頼し、面談することになりました。その結果、B社から「現在の無線機よりも安価で、かつメンテナンスや代替機を提供してくれれば、徐々に入れ替えても良い」という話をしてもらうことができました。
A社は早速、メーカーと仕入価格の交渉をし、大量に仕入れることで低価格での仕入れが実現することができました。また、従来からA社が評価を得ていたメンテナンスやアフターフォローを提供することで、パチンコ店やカラオケ店という新たな販路が開拓できました。
A社はその後、金融機関に売上拡大に伴う仕入れの増加や、メンテナンスなどの人員増加に伴う増加運転資金の相談もし、無事に融資も実行され新たな販路を獲得することができました。
このように金融機関担当者とコミュニケーションを取り、アイデアをもらい、マッチングをして販路拡大に結び付いたケースは少なくありません。その場合、金融機関に自社の商品やサービスを説明し、具体的に何に困っているかを理解してもらう努力をすることが重要でしょう。金融機関もビジネスとしてマッチングサービスを提供していますので、金融機関自身の業績になることであれば前向きに取り組んでくれる可能性があります。
金融機関ではビジネスマッチング以外にも取引顧客同士を交流させ、ビジネスになるようなサービス提供を行っていますが、その取り組みは、金融機関によって異なりますので取引金融機関に確認すると良いでしょう。
以下、主なものをご紹介します。
金融機関では、取引先中小企業に向けたセミナーを定期的に実施している場合があります。
テーマにはさまざまなものがあり、具体的には以下のようなテーマが例としてあげられます。
その金融機関と取り引きがあれば、無料で参加することができるセミナーも多く存在しますので、取引先金融機関のホームページを確認したり担当者がいれば直接、聞いてみたりすると良いでしょう。
金融機関が取引先の製品や商品の展示会を実施することがあります。目的は、展示会を通じてのニーズのある企業同士のマッチングをすることです。
本格的に金融機関で会場を用意し、ブースで製品・商品を展示しスタッフを置くケースから、単に製品・商品のみを展示するだけのケースまで、その規模もさまざまです。そこに金融機関の取引企業などが来場し、興味のある製品・商品について商談ブースで商談する形式が多いようです。
また、複数の金融機関合同開催の展示会や、「食」「環境」「医療」などのテーマで行政と連携した展示会、商談会などもあります。それぞれの企業の目的に合わせて出展を検討したり、来場したりすると良いでしょう。
金融機関が取引先同士のマッチングを目的として専用のホームページを設け、希望する企業の紹介ページを作成し、そのニーズを元にマッチングするサービスを提供しているケースもあり、無料で利用できる金融機関も多いです。
このサービスを利用するうえで、事前に金融機関に登録が必要となります。主に以下のような内容を登録します。
専用のID・PASSWORDを与えられ、他の登録企業などを閲覧することも可能です。ホームページに掲載してある利用方法に沿って、希望する企業にコンタクトすると良いでしょう。
金融機関では取引先企業に、会員制の「ビジネスクラブ」をサービス提供しているケースもあります。「ビジネスクラブ」は、経営者、若手経営者、次世代の経営者を対象に運営しているものが多く、サービスが充実しているものは有料のケースが多いです。
具体的なサービスとしては、上記の「セミナー」「展示会」「ホームページでの企業紹介・マッチングサービス」をより充実させた内容です。各金融機関でそのサービス内容は異なりますが、例として以下のようなものがあります。
フォーラム、セミナー、視察・見学会、会員同士の交流会
情報誌の提供、インターネットでのセミナーや講座提供
経営課題、事業展開の検討などについて各種専門家のコンサルティングを提供
販売・仕入先や共同研究開発先などのビジネスパートナーの紹介
何か不明点があった場合などの問い合せ専用窓口もあり、利用しやすいサービスと言えるのではないでしょうか。
株式会社アスタリスク代表取締役。金融機関、コンサルタント企業、IT企業を経て、2000年代表取締役就任。IT企業、不動産業、商社等の経営戦略、財務戦略、管理会計支援等
を行う。
これまで、銀行等の金融機関の研修・講演講師を70行庫以上務める。主な著書は「渉外マンの現場力/近代セールス社」金融商品取引法・各種業法に基づく「金融商品セールス対応話法集/銀行研修社」等でありその他金融機関向け、雑誌連載実績等多数。
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