借入金、減価償却の節税効果と注意点

2022/07/14

借入金には節税効果(節税が行えるメリット)があります。しかし、借り入れを行う際には、節税効果のみに注目するのではなく、利率や自己資本利益率への影響を考えることが重要です。減価償却にも借入金と同様に節税効果がありますが、耐用年数、減価償却方法、設備の購入時期などを考える必要があります。

今回は、借入金と減価償却の節税効果と注意点を解説するとともに、その他、節税効果のある私募債、特別償却、税額控除についても紹介します。

借入金の節税効果

借入金の節税効果とは

お金を借りただけでは、節税効果はありません。また、借りたお金を返済することにも、節税効果はありません。借入金の支払利息を費用に計上することで利益を少なくでき、結果として節税効果を上げることができます。

節税効果と利率、借り入れのしやすさ

借入金の節税効果は、利率が高いほど大きくなります。しかし、利率が低い方が利用しやすいため、節税効果と利率は反比例の関係と考えてください。

借入金のメリット

借入金のメリットは、スピーディに資金調達できる点にあります。自己資本だけで事業を大きくしようとするには、限界があります。もちろん、自己資本で事業を展開する姿勢は大切ですが、必要なときにスピーディに資金調達できる借入金も、重要な選択肢として考えましょう。

借入金のデメリット

借入金の利用には、デメリットもあります。

まず、借入金が多くなると支払う利息が増えるため、資金繰りを圧迫することにつながります。借入金は、支払利息を費用に計上することで節税効果を生みますが、使う予定のない資金を借り入れたり、利率の高い借入金を利用するのはかえって逆効果となることを理解しておきましょう。

また、借入金が多いと貸借対照表上、自己資本が減少するため、自己資本比率(総資産に占める自己資本の比率)が低い企業と判断されるリスクもあります。自己資本はおおよその企業価値としてみなされる場合があるため、この意味において企業価値が低いと判断される可能性があります。その影響により金融機関のランク付けが低下し、借り入れができなかったり、利率が高くなったりするケースもあり、これは大きなデメリットといえるでしょう。自己資本比率については、以下「借入金と自己資本比率」で具体的に説明します。

借入金と自己資本比率

借入金が多くなると、自己資本比率の低下を招きます。各業種によって適正な自己資本比率というものがあり、これを大きく下回ると取引先の金融機関から「自己資本だけで会社を切り盛りできない、倒産のリスクがある企業」と判断されてしまいます。

適正な自己資本比率は業界や会社の規模、会社が安定期にあるのか、成長期にあるのかによって異なります。

中小企業庁では業種別の黒字企業の統計を出しており、例えば小売業では自己資本比率の平均値は35~40%程度、飲食業だと20%程度です。このことから小売業は30~40%、飲食業では20%の自己資本比率を確保すると、健全な会社と見られるでしょう。会社が安定期にある場合や、コロナ禍においてもこれまでの地盤を守る必要がある状況においては、20~40%の自己資本比率の確保を1つの目安としてください。

創業したばかりで自己資本はないものの、今後成長の可能性がある場合は20~40%以下の自己資本比率になるとしても借り入れをして、積極的に投資した方が良いケースもあります。金融機関も、自己資本比率が低くても成長性がある企業には貸してくれる可能性もあります。

自己資本比率についてより詳しく知りたい方は、資金調達ナビの「資金調達の知識」「中小企業が美しい決算書を作る意味(2)~貸借対照表を美しく見せるポイント~」でご確認ください。

参考:資金調達ナビ「中小企業が美しい決算書を作る意味(2)~貸借対照表を美しく見せるポイント~

減価償却の節税効果

減価償却では「時間の経過により、その資産価値は減少する」という考え方に基づき、購入代金を一度に費用とせず、定められた耐用年数で分割し毎年費用として計上します。費用として計上することで利益を少なくし、節税につなげることが可能です。

耐用年数は資産の種類によって異なり国税庁のホームページに詳細が掲載されていますので、購入検討時には確認してください。

参考:国税局「No.2100 減価償却のあらまし」

減価償却の節税効果を考える際の注意点

減価償却は「耐用年数を考えて資産を購入すること」「償却方法の変更を検討すること」「購入・事業供用のタイミングを考えること」で、より高い節税効果が得られます。

耐用年数

節税効果を上げるために、資産購入時には耐用年数の長さに注意してください。

耐用年数は、資産の種類によって異なります。例えば事務所用建物なら鉄筋造りは50年、木造は22年、社用車なら一般車両は5年、購入から一定期間を経過した中古車は2年などです。

減価償却費以上に利益が出るのであれば、短い期間で多くの減価償却費を計上したほうが節税につながります。具体的には、購入の際、同じ用途の資産でも車であれば中古車、建物であれば木造を選択することで減価償却期間が短くなります。

減価償却方法を変更する場合

減価償却の方法には「定額法」と「定率法」があります。

定額法は、毎期、同じ金額で減価償却していく方法です。定率法は、逓減的な減価償却を行う方法で、初期に多くの減価償却費を計上することができます。

原則として個人事業主は定額法、法人には定率法が適用されます。原則と異なる方法で減価償却を行う場合には、事業年度が始まる前に税務署に「減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」を提出し、減価償却方法の変更を申請する必要があります。

参考:国税局「[手続名]減価償却資産の償却方法の変更の承認の申請」

短い期間で多くの減価償却費を計上したい場合は、初期に多くの減価償却費を計上できる定率法を選択するのも1つの方法です。

購入・事業供用のタイミング

減価償却開始日は事業供用の日、つまり使い始めた日になります。購入日が事業供用日のことが多いですが、購入日と事業供用日が違っていても問題ありません。

事業年度の途中から事業供用した場合には、その月から月割りで計算します。年度末に購入した場合、1~2か月分しか減価償却費を計上できませんが、年度始めに購入すれば11~12か月分の減価償却費の計上が可能になります。

その他、節税に役立つ私募債、特別償却、税額控除

私募債

私募債も借り入れの一種ですから、借入金と同様に利息の支払いを行う必要があります。その利息は、借入金と同様に、費用として計上可能です。

なお私募債を引受人が引き受け、受け取る利息の税率は、同族会社の役員は通常の所得税率(最高45%)ですが、同族会社の役員以外は利子所得の税率(約15%)となります。

私募債を発行するメリットは、スピーディな資金調達が可能で、多くの場合、保証人や担保が必要ないことです。また、返済方法を任意に設定できます。改正により同族会社の役員は節税効果が少なくなったとはいえ、資金調達の手段としては優れた方法と言えるでしょう。

私募債についての詳細は、資金調達ナビの「資金調達の知識」「さまざまな資金調達」をご確認ください。

参考:資金調達ナビ「さまざまな資金調達

特別償却と税額控除

特別償却と税額控除は、設備投資などの優遇措置の一種で節税を行うものです。現段階では、中小企業が機械などを取得した場合に、中小企業投資促進税制により特別償却または税額控除を利用することができます。

参考:国税局「No.5433 中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却または税額控除)」

特別償却は、例えば30%の特別償却の適用が可能な場合、減価償却費に上乗せして30%を償却して費用に計上できる制度で、費用を多く計上可能です。

特別償却をはじめ前述の多くの節税策が、費用を計上して利益を少なくする方法であるのに対し、税額控除は課税所得金額(収益から費用を差し引いたもの)に税率を掛けて算出した税額から、直接控除する制度をいいます。税額控除は上限が設けられているケースが多くあります。

特別償却と税額控除は選択して適用できるので、それぞれ税額を計算し、どちらか有利な方を選択すると良いでしょう。

赤塚 法生(公認会計士 税理士)

三重県津市出身
神戸大学大学院経営学研究科 卒業 修士(経営学)
経営コンサルティング会社、監査法人を経て、赤塚公認会計士事務所を設立し、現在に至る。
クライアントは製造業、建設業、卸・小売業、飲食業等の一般事業会社および個人事業主のほか、医療法人、社会福祉法人、一般社団法人、土地改良区など多岐にわたる。
三重県津市内の曹洞宗寺院で住職を務める僧侶でもある。

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