経営者保証ガイドラインの活用(4) 金融機関の対応と経営者保証の代替融資方法

2022/02/22

「経営者保証に関するガイドライン(以下、ガイドライン)」では、経営者から「経営者保証なしで融資を受けたい」「経営者保証を解除したい」という要請があった場合に、「金融機関等はどういう対応をするのか?」についても書かれています。経営者としては「交渉相手について知る」ことは交渉の際に、強い武器になります。ここでは金融機関などの対応について解説し、経営者保証を代替する融資方法についてご紹介いたします。

債権者(金融機関)の5つの要件と対応策を知る!

経営者保証に依存しない融資を促進させるために、ガイドラインにおいては、対象債権者(金融機関など)に対して「経営者保証を求めない可能性」や「経営者保証に代わる融資手法の活用」などの検討が求められています。

ガイドラインでは「対象債権者は、以下の5つの要件が将来にわたって充足すると見込まれるときは、経営者保証を求めない可能性などについて検討する」とされています。

対象債権者における要件【4項(2)】
  • 1.
    法人と経営者個人の資産・経理が明確に分離されている。
  • 2.
    法人と経営者の間の資金のやりとりが、社会通念上適切な範囲を超えない。
  • 3.
    法人のみの資産・収益力で借入返済が可能と判断し得る。
  • 4.
    法人から適時適切に財務情報等が提供されている。
  • 5.
    経営者等から十分な物的担保の提供がある。

金融機関としては1から5のすべてが充足しなくては、ガイドラインに沿った対応をしないというわけではありません。特に、5の「経営者等から十分な物的担保の提供がある」については十分に注意してください。金融機関によっては「ガイドラインには『十分な物的担保の提供がないと経営者保証は外せない』と書かれているから、経営者保証なしで融資する(経営者保証を解除する)ことは無理」と説明をするケースもあるようです。

しかしながらガイドラインでは、以下のように書かれています。

中小企業に経営者保証を求めない可能性等の検討に際しては、1から5までの全ての要件の充足が求められるものではなく、個別の事案ごとに判断されることになります。

例えば、1から5の要件の多くを満たしていない場合でも、債務者とのリレーションを通じて把握した内容や事業性評価の内容を考慮して、総合的な判断として経営者保証を求めない可能性等の検討が考えられます。

また、各要件の判断基準を明確化するために、これらの要件を細かい条件に分割し、当該条件の一部を充足していなくても要件を満たすことが出来るといったような柔軟な運用を行うことも考えられます。

なお、5の要件に関しては、3の要件を補完するものであり、経営者等が十分な物的担保を提供しなければ、経営者保証の提供が求められるという趣旨ではなく、経営者による物的担保の提供を推奨するものではありません。

つまり1から5の全ての要件が充足しなければならない、ということではなく、さらに「十分な物的担保の提供」については「経営者等が十分な物的担保を提供しなければ、経営者保証の提供が求められるという趣旨ではない」と明確に記されています。

万が一、金融機関から「物的担保」がないと「経営者保証なしの対応は無理」「代替的な方法も無理」という断られ方をしたら、ガイドラインに則した対応を求めるようにしてください。

なお、ガイドラインには強制力がありません。よって金融機関に対して「すべき」という表現は使われておらず、「検討をする」「求める」という表現がされています。

経営者保証を代替する融資方法

ガイドラインでは「主たる債務者及び保証人における3つの対応」を実施している経営者から融資の要請を受けた場合に「経営者保証なしの可能性」ばかりでなく「代替的な融資手法の可能性」について検討する、と書かれています。

3つの対応については「経営者保証ガイドラインの活用(3)~経営者保証を外すための3つの対応と交渉ポイント~」にて既に説明していますので、そちらで確認してください。

ガイドラインに示されている代替的な融資方法とは以下の通りです。

経営者保証の機能を代替する融資方法の一例

メニュー 概要
停止条件付保証契約 主たる債務者が特約条項(コベナンツ)に抵触しない限り保証債務の効力が発生しない保証契約
解除条件付保証契約 主たる債務者が特約条項(コベナンツ)を充足する場合は保証債務が効力を失う保証契約
ABL Asset Based Lending 流動資産担保融資
金利の一定の上乗せ 日本政策金融公庫の経営者保証免除特例制度では、保証人免除を受けた貸付については0.2%が上乗せされます。
  • 令和3年(2021年)9月現在

以下、それぞれについて説明していきます。

停止条件付保証契約、解除条件付保証契約

「停止条件付保証契約」「解除条件付保証契約」の「コベナンツ」とは、融資の契約を締結する際に、契約書に記載する特約事項のことをいいます。「このコベナンツに抵触しない限り経営者保証は発生しない、もしくは抵触したら経営者保証は発生する」というものです。なお具体的なコベナンツ内容については、個別案件ごとに当事者間の調整により確定されることになります。

ABL

「ABL(Asset Based Lending)」は、企業が保有する在庫や売掛金などを担保とする融資方法を言います。これまで担保としてあまり活用されてこなかった在庫や、売掛金などを活用することにより資金調達枠が拡大し、円滑な資金調達に資することが債務者に期待されていますが、実際のところはまだまだ実施率が低いのが現状です。

金利の一定の上乗せ

「金利の一定の上乗せ」は、日本政策金融公庫では具体的に制度として実施されています。一定の要件を満たす場合0.2%が上乗せされ、経営者保証が免除されます。全ての金融機関が日本政策金融公庫と同じスキームではありませんが、この制度は参考になりますので、ぜひご確認ください。

著者:吉田 学(財務・資金調達コンサルタント)

株式会社MBSコンサルティング代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。
主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。

また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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