個人事業主の事業計画書の書き方|テンプレートや作成方法を解説
2025-07-04更新
2025/07/04
事業計画書は、事業の方向性を明確にし、資金調達や経営判断の基盤となる重要な書類です。特に新規事業の立ち上げや事業拡大を進めるうえで、具体的なビジョンや戦略を示すために役立ちます。しかし、何をどのように書けばよいのか、具体的な作成方法がわからず困ってしまう方も少なくありません。
本記事では、事業計画書を作成する目的やメリット、作成のポイント、具体的な項目や書き方をわかりやすく解説します。新規事業や事業拡大を検討している方、金融機関や投資家への提出を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
事業計画とは、企業が事業の目標を達成するために作成する行動計画のことです。事業の方向性や具体的な戦略を明確にすることで、将来的な事業展開の道筋を示し、計画の精度を高められます。
また、事業計画を立てることで現在の状況と目標とのギャップを把握し、課題を明確にできるため、事業の推進がスムーズになります。しっかりとした計画を立てることで、経営判断がしやすくなり、成功への確率を高められます。
事業計画書とは、事業内容や成長戦略、費用計画や収益見込みなどを整理し、事業の方向性を明確にするための書類です。経営の指針として重要な役割を果たすと共に、金融機関や投資家への説明資料としても機能します。単なるアイデアや漠然とした目標ではなく、どのように事業を展開していくのかを中長期的な視点で具体的にまとめます。
事業計画書を作成することで、市場環境の分析を深め、競争優位性を明確に整理できます。また、資金調達の際の説得力を高め、事業の成長戦略を具体化するための指針としても活用可能です。さらに、計画を可視化することで、関係者との共有がスムーズになり、目標達成に向けた行動を統一しやすくなるメリットもあります。
事業計画書は、事業の運営指針や戦略を立案する際に役立つだけでなく、事業者が金融機関に融資を申し込む際に必要な書類です。新たに融資を受けるときや、補助金の申請、出資者への情報共有を行う際に作成します。事業の方向性や費用計画、収益見込みを具体的に示し、資金調達の判断材料として活用されます。
一方で、創業計画書は起業・開業前に作成する書類で、特に創業融資を受ける際に求められます。創業計画書には、これから始める事業の見込みや計画を記入します。これに対し、事業計画書は、実際に事業を行った実績や今後の成長戦略も含めて作成できる点が大きな違いです。
事業計画書は主に事業が進んでからの計画や成長戦略を示すのに対し、創業計画書は起業時点のビジョンや見込みを示すものです。
また、「資金調達ナビ」の「創業計画をつくる」機能を利用すれば、解説やポイントを参考にしながら、日本政策金融公庫の創業計画書を作成することが可能です。初めて創業計画書を作成する方にもわかりやすく、スムーズに進められるのでおすすめです。
関連記事:創業計画書とは?テンプレートの入手方法や資金調達のための書き方
事業計画書を作成する際、日本政策金融公庫が提供するテンプレートを活用すると便利です。事業計画書の書き方に迷ったときや、融資申請のために適切なテンプレートを使いたいときなどに役立ちます。
事業計画を立てることは事業の方向性や戦略を明確にするために重要ですが、単に頭の中で考えているだけでは具体的な行動に落とし込みにくい面があります。
計画を資料としてまとめることで、事業の全体像を整理し、課題や改善点を明確にできます。また、事業方針を明文化して事業関係者へと共有することで、組織全体の方向性を統一し、目標達成に向かって効率的に取り組むことが可能です。
以下、事業計画書の作成メリットを解説します。
事業計画書を作成する過程で、経営理念やビジョン、事業戦略を見つめ直し、事業の方向性や目標を明確にできます。単なるアイデアや漠然とした目標ではなく、具体的な数値目標や行動計画を盛り込むことで、より実現可能な戦略へと落とし込むことが可能です。
また、明文化された事業方針は、社内外に企業の姿勢を示す役割を果たします。 経営者の考えが明確になり、従業員の共通認識を形成するうえでも役立ちます。
事業計画書を作成することで、事業の全体像や各部門の役割、事業間の関連性を整理し、明確に把握できます。 事業の構造を可視化することで、各部門がどのように連携するべきか、それぞれが果たすべき役割は何かを明確にできるため、組織全体の動きが最適化されます。
また、事業内容を可視化することで経営資源を効率的に配分でき、業務プロセスの改善にもつながります。 無駄を削減し、より効果的な事業運営を実現するためにも、事業計画書の作成は重要な工程です。
事業計画書は、従業員や取引先、金融機関、投資家など、さまざまな利害関係者(ステークホルダー)と共有できる重要な資料です。
計画を関係者と共有することで、事業への理解が深まり共通の認識を持てるため、協力体制を築きやすくなります。 従業員にとっては企業の方針や目標が明確化することで、自身の役割や業務の意義を具体的に認識できます。これにより、モチベーション向上や業務の効率化、方向性の統一につながります。
また、取引先や投資家にとっても、事業の将来性や成長戦略を把握する重要な資料となり、信頼関係の構築につながります。
金融機関は、融資審査の際に企業の事業計画や財務状況を詳しく確認します。
そのため、事業計画書は企業の将来性や返済能力を具体的に示す重要な資料となり、融資判断に大きな影響を与えます。明確で実現可能な計画を示すことで金融機関からの信頼を得やすくなり、資金調達の成功につながる可能性が高まります。
事業計画書に決まった様式はありませんが、事業の方向性や成長戦略を明確に伝えるために、一般的に書くべき項目は決まっています。
以下では、事業計画書に記載すべき主な項目と、それぞれの書き方の例を紹介します。
創業目的・動機の項目では、なぜこの事業を始めようと思ったのか、その具体的な理由や背景を記述することが重要です。ただ単に「儲けたい」という動機ではなく、これまでの経験やスキルをどのように活かし、それを社会貢献につなげたいのかを明確に示すことが求められます。
例えば、これまでの職務経験や業界での知識、解決したい社会課題などを具体的に記載すると、事業への熱意や信念が伝わりやすくなります。創業のきっかけとなった出来事や、目指すビジョンをしっかりと整理し、説得力のある内容にすることが大切です。
創業者のこれまでの職務経験や実績を具体的に記述します。特に、事業内容に関連する経験や資格、スキルがある場合は積極的に記載することが重要です。
例えば、同じ業界での勤務経験や過去の事業実績、専門知識を活かした取り組みなどを明確に示します。事業の成功可能性を高める要素として評価されやすくなり、信頼性を強化できます。
また、融資を受ける際の審査においても、創業者のスキルや実績はプラス材料とみなされます。信頼性を高めるためにも具体的なエピソードや数値を交えて記載しましょう。
提供する商品やサービスの内容、特徴、ターゲットとする顧客層を明確に記述します。具体的にどのような価値を提供するのか、だれを対象としたビジネスなのかを示すことで、事業の方向性が伝わりやすくなります。
また、競合他社との差別化ポイントや、自社の強みを具体的に示すことが重要です。価格、品質、サービスの提供方法、技術力、独自のノウハウなど、競争優位性を持つ要素を明確にしましょう。事業の魅力を的確に伝えられます。
事業を支える役員や従業員の構成、それぞれの役割を明確に記述します。だれがどの業務を担当し、どのように事業を運営していくのかを示すことで、組織の体制を明確にできます。
また、社内向けの事業計画書として作成する場合は、各役員・従業員の責任範囲や権限を一覧にし、指示系統を明確にしておくことが重要です。これにより、業務の効率的な運営が可能となり、従業員が自分の役割をスムーズに理解できます。さらに、経営陣の経験や専門性を明確に示すことで、組織内での信頼関係が深まり、事業の推進力が強化されます。
事業の運営にかかわる主要な取引先や仕入先、販売ルートなどを具体的に記述します。安定した取引関係の存在を示すことで、信頼性の向上が期待できます。
取引先については、企業名だけでなく業界内でのシェアや市場での影響力なども記載すると、より説得力が増します。 仕入先や販売ルートについても、どのような形で安定した供給・販売が可能なのかを示すことで、事業の継続性や成長性をアピールできます。
事業を運営するために必要な資金と、その調達方法を具体的に記述します。どの部分にどの程度の資金が必要なのか、見積もりを基に明確な数値を示すことが重要です。
例えば、設備投資に〇〇万円、人件費に〇〇万円、運転資金として〇〇万円といった形で、資金の用途を具体的に記載します。また、資金調達の方法についても、自己資金、金融機関からの融資、補助金、出資など、どの手段を活用するのかを明確にする必要があります。
必要資金と調達予定の資金には、整合性を持たせることが大切です。資金計画に無理があると、融資審査の際に不安要素とみなされる可能性があります。合理的な計画を立て、資金の確保方法についても具体的に説明しましょう。
現在の借入金の残高や返済状況を正確に記述します。事業の資金繰りや財務状況を明確に示すことで、金融機関や投資家に対して信頼性の高い情報を提供できます。
既に借入がある場合は、その使途や返済計画についても具体的に記載することが重要です。例えば、設備投資のために〇〇万円を借入し、毎月〇〇万円ずつ返済しているといった形で、詳細な内容を示しましょう。
今後の事業の見通しや収支計画を具体的に記述します。事業がどのように成長し、どの程度の収益が見込めるのかを明確に示すことで、金融機関や投資家に対して事業の安定性と成長性をアピールできます。
事業が軌道に乗った後の売上目標を始め、売上高、仕入高(売上原価)、経費、利益などを予測し、数値として提示することが重要です。特に売上予測は、単なる理想ではなく、市場調査や過去の実績、取引先の見込みなど、具体的な根拠を基に計算する必要があります。
事業計画書の作成では、正確なデータや実現可能な計画を基に、わかりやすく記載することが大切です。計画の妥当性や説得力を高め、社内外の関係者に納得感を与えられます。
事業計画書は、社内の従業員や経営陣だけでなく、金融機関や投資家、取引先など、さまざまな関係者が目にする重要な資料です。そのため、だれが読んでも内容を理解できるよう、わかりやすく作成することが大切です。
特に、専門用語や業界特有の難解な表現は避け、できるだけ平易な言葉で記述することが重要です。事業の強みや将来性を正しく伝えるためにも、具体的な数値や事例を交えて説明し、読んだ人がスムーズに理解できるよう意識しましょう。
事業計画書では、売上高や利益といった数値目標を設定する際に、具体的な根拠を示すことが重要です。ただ漠然と目標を掲げるのではなく、客単価やリピート率、市場規模などのデータに基づいた数値を記載することで、計画の信頼性を高められます。
例えば、「1カ月の売上目標〇〇万円」とする場合、「1日当たりの来客数〇人×客単価〇円×営業日数」といった形で計算の根拠を示すと、計画の説得力が増します。
事業計画書は、事業の方向性を明確にし、成功へと導くための重要なツールです。事業の目的や戦略、資金計画を具体的に整理し、金融機関や投資家、関係者に対して信頼性のある計画を示すことが大切です。
また、計画を立てることで、事業の課題や改善点を把握しやすくなり、スムーズな事業運営につながります。根拠のある数値を盛り込み、だれが読んでもわかりやすい内容にすることで、実現可能性を高められます。
初めて事業計画書を作成する方は、「資金調達ナビ」の「創業計画をつくる」機能を活用すると、解説を見ながらスムーズに作成できます。ぜひ、ご活用ください。
高崎文秀税理士事務所 代表税理士/株式会社マネーリンク 代表取締役。早稲田大学理工学部応用化学科卒。都内税理士事務所に税理士として勤務し、さまざまな規模の法人・個人のお客様を幅広く担当。2019年に独立開業。現在は法人・個人事業者の税務顧問・節税サポート、個人の税務相談・サポート、企業買収支援、税務記事の監修など幅広く活動中。また一般社団法人CSVOICE協会の認定経営支援責任者として、業績に悩む顧問先の経営改善を積極的に行う。
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