資金調達とは?
2022-08-03更新
2020/03/24(2021/9/1更新)
資本による調達により、創業した後に資金を調達することを増資と言います。この際、どのような人に増資を依頼すればよいのでしょうか。増資をすると、会社の株の保有割合が変わるため、依頼先を間違えてしまうと、会社経営に悪い影響を与えてしまうこともあります。
そのため、増資を考える上で「誰に依頼をするのか」は最も重要なポイントになります。
今回はこの点を中心に見ていきましょう。
株式会社の経営を行う上で、最も重要な決定権を持つのが「株主総会」です。日常的な会社の経営は経営者に委ねられていますので、「どういった会社と取引するか?」「本社の場所をどこに移転するか?」といったことは、取締役が集まった取締役会だけで決めることができます。しかし、取締役の選任や会社の解散・合併などのいくつかの重要な項目は、株主総会で決めなければなりません。
株主総会の決定事項は、株主の投票により決めるのですが、この投票権は1人1票ではなく1株につき1票になります。そのため、株を多く持っている人の意見が採用されやすいのです。
増資を行うには、基本的に会社の株を新しく発行しなければなりません。そのため、新規の株を発行することを株主総会で決め、出資者を募集する手続きを行うことになります。
募集には3つの方法があります。
株主割当増資 | 既存の株主から新規の出資を受け付ける方法 |
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第三者割当増資 | 取引先など、株主以外の第三者から出資を受ける方法 |
公募増資 | 証券会社などを通じて不特定多数の者から出資を受ける方法
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公募増資は難しいので、残る主要な2つの方法のうち、どちらを選択するかは増資の目的によります。
そのため「何のために増資を行うのか?」をまず明確にしなければなりません。
中小企業では、会社の所有者である株主と会社の経営者である取締役が一致しているケースが多いです。そのため、自己資本比率(※第2回リンク)を上げるために増資を行う場合には、オーナー社長などが自分のお金を会社に出資する「株主割当増資」を行うことが一般的です。特に家族経営の会社では、誰が何株持つのかを家族の中で話し合えるので、大きな問題もなく増資できる場合がほとんどです。
ただし、売買が難しい中小企業の株であっても、家族が亡くなってしまったときには相続の対象になります。そのため、経営者が引退を考え、将来的に事業承継を考えなければならない予定がある場合には、「家族内で誰が事業を引き継ぐのか?」という点を含めて増資を考えることが重要です。
次に、「第三者割当増資」について考えていきましょう。
取締役などの会社の役員の選任は株主総会の承認が必要であるため、外部の出資者が会社の株の半数以上を持っていると、オーナー社長であっても解任され、追い出されてしまうという事態が生じることもあります。こうした事態が起きないようにするため、増資の依頼先は友好的な関係を持てる相手を選ぶ必要があります。
そのため、一般的に下記のような人にお願いする傾向があります。
相手先 | 特 徴 |
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親族や友人など |
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大口顧客などの取引先 |
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従業員や従業員持株会 |
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このように、出資を受ける影響は今後の会社の経営方針にも関わってきます。出資を行う人は何かメリットが得られなければ、出資をしたいと思わないからです。
そのため、増資は一時的なお金の不足を補うためというよりも、新たな事業を始めるタイミングや、その取引先と共同で事業を行うタイミングで出資を求めるという使い方が望ましいと考えられます。つまり、今後どのような事業を行っていきたいのかという計画と一緒に検討していく必要があります。
一度増資を行ってしまうと、さまざまな手続きが必要となり、簡単に関係を解消することはできません。短期的な計画ではなく、長期的な展開を見据えた事業計画を考える必要があります。
今は中小企業であっても、将来的には株の上場をしたいと計画しているケースもあるでしょう。自社の株を証券取引所に上場し、増資により発行する株を証券会社を通じて一般の人に広く買ってもらう方法をIPO(Initial Public Offering, 新規株式公開)といい、これを目指している会社を一般にベンチャー企業とよびます。
証券会社に株式を上場するためには、証券取引所の定める、事業規模や会社の管理体制等の基準をクリアしたうえで、会計監査を通っていることが求められます。
そのため、ベンチャーキャピタル(ベンチャー企業に出資を行う投資会社)や個人投資家から増資を受けながら事業規模を拡大し、上場できる社内の体制を整えていくことが一般的です。(詳細はベンチャー企業と資金調達をご覧ください)
上場を行うには、長期に渡る準備期間が必要なため、事業計画もより長期的に考えていく必要があります。
このように、増資を行うには「将来的に会社をどうしたいのか?」という大きなビジョンを描いたうえで、そのための事業計画と一緒に考えていく必要があります。
早稲田大学 社会科学部,青山学院大学 会計プロフェッション研究科卒。
大学在学中から地元会計事務所に勤務し、その後、都内税理士法人、大手税理士受験対策校講師、大手企業経理部に勤務したのち2010年に小島孝子税理士事務所を設立。会計事務所、経理職員向け税務・経理に関するセミナー多数担当。
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