ファクタリングの活用(3)

~ファクタリング利用の注意点~

2022/12/09

近年、2社間ファクタリング会社が増加しており、それと同時に悪質なファクタリング会社も増加しているといわれています。実際に日本貸金業協会や金融庁からも注意喚起されており、最悪の場合、活用の仕方を間違えると倒産につながるようなケースもあります。ここでは、悪質ファクタリング会社の見分け方などについて解説いたします。

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悪質ファクタリング業者に注意!

近年、悪質な2社間ファクタリング会社が増加していると言われています。そのため、ファクタリングのイメージが悪化しており、ファクタリング会社=闇金業者のように思われている方もいると思われます。

日本においては、譲渡禁止契約を前提としている大手企業等が多いため、3社間ファクタリングが普及してきませんでした。つまり、中小事業者からすると、大手の取引先企業から「ファクタリングを利用するほど業績が悪化しているのではないか?」と思われるのは取引上よくないとの判断で、ファクタリングの利用が促進されなかったという経緯があります。

そういう状況を突くかのように表れたのが2社間ファクタリングです。売掛先に知られずに早期現金化が可能となるので利用が急増したのは理解できます。さらに、長期にわたる日本経済の不況、天災、パンデミック等の影響もあると思われます。

以下に悪質なファクタリング業者の見分け方についてまとめておきました。

悪質なファクタリング業者の見分け方

  • 事務所実態がない。
  • 会社電話番号が携帯番号である。
  • 質問に対して丁寧ではない。回答が遅い。総じて対応等に誠意がない。
  • 最終的に法外な手数料等を要求する(HPなどでは低い手数料を提示している)。
  • 意味不明な“手数料、諸経費”等を要求する。
  • 法外な登記手数料を要求する。
  • 会社の印鑑や通帳、法人カード等を提出するように要求する。
  • 株式譲渡や公正証書を要求する。
  • 契約書などを提示しない(取引証拠を残さない)。各種書類提出を求めない。
  • 最終的に前金や担保、第三者保証などを要求してくる。

など

列挙すればキリがありません。最悪の場合、「入金がされない」というような詐欺的なケースもあるようです。ファクタリング業者を見分けるために、「相見積もりを取る」というのも一案です。また、利用する際には、「契約書」をしっかりと確認してください。分からないことはファクタリング会社に確認することです。

人はお金に困ると冷静な判断ができなくなる傾向があります。冷静に判断すれば、悪質業者だと理解できても、資金に困ると冷静な判断ができなくなるのが人です。

ファクタリングを利用する際には、できる限り顧問税理士や専門家に相談してください。

金融庁からも注意喚起

ファクタリングによる被害は社会問題化しており、日本貸金業協会や金融庁から注意喚起が出されています。

日本貸金業協会からは、「偽装ファクタリング」に関する注意喚起が出されています。偽装ファクタリングとは、高額な手数料を差し引き、売掛債権の買い取り代金を支払うものの、正規の債権売買でないことから、買主が回収リスクを負わず、債権回収できない場合は買戻しを行わせるもので、実態は貸付けであり、貸金業の登録がされていない無登録業者のヤミ金融です(日本貸金業協会より)。

〈日本貸金業協会〉ファクタリングを装ったヤミ金融である可能性が高いケース

  • 売掛債権譲渡契約に償還請求権が付いている。
  • 売掛債権譲渡契約を結んだことを取引先に通知しない。
  • 申込人の(売掛金振込予定の)通帳、銀行印、キャッシュカードを預かる。
  • 金銭消費貸借契約を締結し、代表者や家族に保証人になることを求める。
  • 小切手、手形を担保に入れさせる。
  • 申込人の発行済み株式を譲渡担保とし、印鑑証明書、役員変更に関する登記委任状を提出するよう求められる。
  • 売掛金(現金)の受け取りが、銀行等からの送金ではなく手渡しでされる。
  • 契約書の写し、領収書などの書類が渡されない。
  • 手数料(債権額と買取額の差)が年率換算にすると、事実上、利息制限法の制限を超えた高金利になっている。
出典

日本貸金業協会
【注意喚起】悪質な金融業者にご注意! 新しいウィンドウで開く

金融庁からは、「ファクタリングに関する注意喚起」が出されており、「ファクタリングについて」「給与ファクタリング」「事業者向けファクタリング」「貸金業者検索」「相談窓口」などについて公表されています。

〈金融庁〉ファクタリングに関する注意喚起 ポイント

  • ファクタリングとは、債権を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス。
  • 個人が勤務先に対して有する給与(賃金債権)を対象とした「給与ファクタリング」を業として行うことは、貸金業に該当(貸金業登録が必要)。貸金業登録を受けていないヤミ金融業者を利用すると、様々な被害や生活破綻につながるおそれ。
  • 事業者が保有している売掛債権等を対象とする「事業者向けファクタリング」においては、ファクタリングを装って貸付けを行うヤミ金融業者が存在。また、ファクタリングであっても、経済的に貸付けと同様の機能を有していると思われるようなものについては、貸金業に該当するおそれ。
  • 高額な手数料のファクタリングを利用すると、かえって資金繰りが悪化する可能性。
  • 新型コロナウイルス感染症に便乗して、ヤミ金融業者による違法な貸付け等が行われる懸念もあるため、十分注意が必要。
出典

金融庁
ファクタリングに関する注意喚起 新しいウィンドウで開く

ファクタリングは取引先金融機関にもバレてしまう?!

「ファクタリングはオフバランス化に適して、貸借対照表の適正化に適している」と言われています。確かに「融資」の場合は、貸借対照表の「借入金」に計上されます。それに対して「ファクタリング」は負債に計上されませんので、貸借対照表のスリム化が可能だといえます(オフバランス化)。

よって、「ファクタリングは金融機関にもバレにくい」という意見もありますが、手数料については「売掛債権売却損」や「手数料」等と仕訳されます。つまり、損益計算書に計上されますので、金融機関としては、やはり確認するでしょう。よって、金融機関にはファクタリングを利用したことは分かってしまうと理解しておいた方が無難だと思われます。

ファクタリング活用の失敗事例

悪質な2社間ファクタリング業者に嵌ってしまうと、初回の手数料は低かったのに、二回目、三回目の利用を促し、最終的には50%の手数料を要求されて、結局、資金繰りがさらに悪化して倒産してしまったという事例もあります。また悪質業者の間で回され、吸い尽くされて、最終的には倒産してしまうというケースもあるようです。

法外な手数料を支払いながら事業を継続することは不可能です。既出の「悪質なファクタリング業者の見分け方」を理解していただき、悪質なファクタリング業者に引っかからないように十分に注意してください。繰り返しになりますが、資金繰りが悪化すると事業者は冷静な判断ができなくなります。その際は、第三者の意見を聞いてみることです。できれば顧問税理士又は資金調達の専門家に相談するようにしてください。

なお、「ファクタリング=悪」ではありません。海外ではごく当たり前に利用されているスキームです。日本においても、民間金融機関も実施しつつありますし、中小企業白書でも「今後のニーズが高まると考えられる」と記載されているスキームの一つです(ファクタリング(1)を参照)。

正しく利用することができれば、事業拡大に貢献できる資金調達の補完スキームだと思われます。その利用方法が分かりにくいかもしれませんので、繰り返しになりますが、専門家などに相談をしながら最適な利用方法を探って頂きたいと思います。

著者:吉田 学(財務・資金調達コンサルタント)

株式会社MBSコンサルティング代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。
主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。

また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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