認定支援機関とは(2)
2021-09-15更新
2025/08/04

多くの事業者が利用している日本政策金融公庫ですが、申請手続きの煩雑さから申し込みをためらっている方も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、日本政策金融公庫の事業のうち、個人事業主や小規模事業者を対象とした「国民生活事業」の融資手続きの流れや必要書類について、わかりやすく解説します。
なお、日本政策金融公庫や国民生活事業の概要を詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
日本政策金融公庫(国民生活事業)の融資申請手続きは、以下のように進みます。まずは全体像を把握し、手続きの概要を確認しましょう。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| (1)相談 |
|
| (2)申し込み |
|
| (3)面談 |
|
| (4)融資 |
|
| (5)返済 |
|
なお、マル経融資(小規模事業者経営改善資金)、生活衛生改善貸付など、融資制度によっては手続きや提出書類が異なる場合があります。その点については、相談窓口や支店に確認してください。
以下では、「相談」から「返済」まで、手続きの詳しい内容について解説していきます。
「(1)相談」は、電話・支店窓口・オンラインで行えます。制度の概要説明から事業計画の書き方まで、幅広い内容の相談が可能です。「融資を受けられる可能性はあるか」「どのような点を改善すれば審査に通りやすいか」といった相談もできます。
なお、なかには「事前相談で情報を伝えると、審査に不利になるのではないか」と懸念される事業者もいます。そういった場合は、税理士やコンサルタントなどの民間専門家に相談するのも選択肢の1つです。民間専門家への相談内容が日本政策金融公庫に伝わることはありませんので、安心してご相談いただけます。
日本政策金融公庫(国民生活事業)への相談
▼電話での相談(平日9時~19時まで受付)
事業資金相談ダイヤル:0120-154-505(2025年2月現在)
▼支店・オンラインでの相談(事前予約制)
「(2)申し込み」に関しては、インターネットや郵送、直接来店にて手続きを行えます。特にインターネット申し込みは、郵送や来店の手間を省けるため便利です。ただし、インターネット申し込みの場合は、必要書類をPDF形式などの電子データにして事前に準備しておく必要があります。電子化した資料は、専用画面からアップロードして提出する形式です。
ここでは、インターネット申し込みの方法について簡潔に解説します。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| (1) 登録 |
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| (2)登録完了 |
|
| (3) 入力 |
|
| (4) 提出書類 |
|
| (5) 確認 |
|
| (6)送信完了 |
|
日本政策金融公庫の融資申込時には、個人事業主・法人を問わず共通して必要な書類があります。具体的には以下のとおりです。
初めて日本政策金融公庫と取引する場合:
設備投資の融資を申し込む場合:
電子契約サービスを利用する場合:
「創業計画書」は、主に開業の際に融資を申し込みたい方が提出する書類です。創業計画書のテンプレートは、日本政策金融公庫のWebページでダウンロードできます。
創業計画書の内容は融資審査に大きく影響します。作成時には資金調達ナビのコンテンツ「創業計画をつくる」を活用すると便利です。「日本公庫 創業計画書を作成」を利用すれば、項目ごとの解説を参照しながら記入できるため、充実した創業計画書を作成できます。
個人事業主が融資を申し込む際に必要な書類は以下のとおりです。
必要書類
確定申告書は事業開始後に税務申告を行っている方が対象です。青色申告事業者は青色申告決算書、白色申告事業者は収支内訳書を併せて提出します。税務申告が1期分しかない場合はその分のみ提出すれば問題ありません。開業前や開業直後で税務申告がまだの場合、提出は不要です。
法人の場合、必要書類は以下のとおりです。
法人の場合も、確定申告書の提出が必要となる点個人事業主と同様です。事業を開始したばかりで決算を終えていない場合は、直近の試算表の提出が求められます。また、決算後6か月以上経過している場合も試算表が必要です。
上記の提出資料は、「(2)申し込み」時点で必要な書類です。審査過程で日本政策金融公庫から事業計画書、損益計画書、資金繰り表などの追加書類を求められることがあります。案内に従って速やかに対応しましょう。
「(3)面談」では、どの事業者も必ず担当者との面談を経てから融資の可否が判断されます。面談日時は日本政策金融公庫との調整で決定します。日程は支店の混雑状況によって異なりますが、申し込みから数日〜数週間後に設定されるのが一般的です。面談時間はおよそ30〜60分程度ですが、場合によっては複数回に渡ることもあります。
面談には原則として申請者本人(法人の場合は代表者)が出席する必要があります。認定支援機関である顧問税理士の同行も可能ですが、事前に担当者の許可を得ておきましょう。ただし、借入をするのはあくまで申請者本人です。質問には自分の言葉でしっかり答えられるよう準備しておきましょう。
面談では主に資金の使途や事業計画の内容などについて確認されます。特に開業の場合、創業計画書に沿って具体的な質問を受けることが多いです。場合によっては担当者が事務所や店舗、工場などを訪問することもあります。面談時に持参する必要書類は事前の通知書に記載されていますので、漏れのないよう準備しましょう。
服装については普段通りで問題ありません。特別にスーツを用意する必要はありませんが、清潔感のある服装を心掛けましょう。だらしない格好は避け、経営者としての誠実さが伝わることが大切です。
融資の可否の連絡は、一般的に面談終了から数日〜数週間程度で届きます。審査期間は支店の混雑状況や繁忙期・閑散期の影響を受けるため、ばらつきがあります。否決の場合でも必ず結果が通知されます。
融資が決定すると、金銭消費貸借契約書などの契約書類が郵送されてきます。契約書類は融資手続きの最終段階となるため、氏名や口座情報に誤りがないか慎重に確認して記入しましょう。不備がある場合は再提出が必要となり、融資実行が遅れる原因になります。
契約書類を返送し、手続きが完了すると、指定の金融機関口座に融資金が入金されます。入金までの期間の目安は、契約書類返送後1週間程度です。
融資契約の際に、日本政策金融公庫の事業資金団体保険(以下、団信) への加入を案内される場合があります。加入は任意であり、加入しなくても融資審査に影響はありません。
日本政策金融公庫の融資利用者のうち、団信に加入する割合は4〜5割程度とされています。加入するかどうかは、顧問税理士などに相談しながら慎重に検討してください。
団信は、被保険者(借主)が補償期間中に死亡したり、高度障がい状態になった場合などに、生命保険会社から支払われる保険金によって、借主の公庫に対する債務の全額が弁済される保険です。
団信は被保険者が死亡した場合のみ適用されるイメージを持たれているかもしれませんが、実際には「傷害または疾病により、以下のいずれかの高度障がい状態に該当した場合」も対象です。
引用:公益財団法人公庫団信サービス協会団信保険「団信保険(事業資金融資)」 ![]()
※ 詳細については、日本政策金融公庫にご相談ください。
団信に加入する場合、特約料(年払い・掛け捨て)を支払う必要があります。この特約料は、返済が進むにつれて負担が軽くなるように計算されています。
| 返済期間 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 5年払(60回) | 2,510円 | 1,960円 | 1,410円 | 850円 | 300円 | 7,030円 |
※ 上記の金額は、融資の翌月から返済を開始した場合の目安です。
※ 特約料は将来変更される可能性があります。
※ 2025年2月時点情報です。
参照:公益財団法人公庫団信サービス協会団信保険「団信保険(事業資金融資)」 ![]()
返済は原則として月払いです。期日一括返済などの方法もありますが、多くの方が「元金均等返済」または「元利均等返済」を選択します。
「元金均等返済」とは、毎月の返済額のうち元金の額が一定となる返済方法です。借入金を返済回数で割って算出した毎回同額の元金に、利息を足した金額を返済します。返済が進むにつれて毎月の返済額が徐々に減少するため、同じ借入期間で比較した場合、元利均等返済よりも返済総額が少なくなるのが特徴です。
元利均等返済とは、毎月の返済額が一定となる返済方法です。返済額(元金+利息)が変わらないため、返済計画が立てやすくなります。ただし、同じ借入期間の場合、元金均等返済よりも返済総額が多くなる点に注意が必要です。
日本政策金融公庫のWebページでは、返済計画の見通しを立てるための「返済シミュレーション」が利用できます。融資申込の際は、事前にシミュレーションを行い、無理のない返済計画を立てることをおすすめします。
既に事業を開始している場合とは異なり、開業前は売上などの実績がありません。そのため、公庫の担当者は創業計画書の内容が具体的かつ実現可能かどうかを重点的に審査し、融資の可否を判断します。
創業計画書のテンプレートは、日本政策金融公庫の公式Webサイトからダウンロードできます。しかし、創業計画書の作成は、多くの方にとって難しい作業です。税理士などの専門家に依頼するのも1つの方法ですが、創業前はできるだけ費用を抑えたいという方が多いでしょう。
そのような方には、資金調達ナビの「創業計画をつくる」の活用がおすすめです。「日本公庫 創業計画書を作成」では、各項目の解説や作成のポイントを確認しながら、無料で効率的に創業計画書を作成できます。開業資金の融資を検討している方は、ぜひ活用してみてください。
日本政策金融公庫の融資では、申し込みから入金までにおよそ1か月程度かかるのが一般的です。大まかな流れと期間の目安は以下のとおりです。
ただし、これはあくまで目安であり、実際の期間は申込内容や状況によって異なります。提出書類に不備があった場合や、追加書類の提出が求められた場合には、その分手続きが遅れるため注意が必要です。スムーズに融資を受けるためには、必要書類を正確にそろえてから申し込みましょう。
日本政策金融公庫に融資を申し込む際は、創業計画書をはじめとする必要書類の準備が重要です。手続き全体の流れを事前に把握し、余裕を持って、各ステップで求められる書類を用意しましょう。
特に創業計画書は、融資の可否を左右する重要な書類です。審査では計画の内容が具体的で実現可能かどうかがチェックされるため、しっかりと時間をかけて作成する必要があります。面談でも創業計画書を基に質問が行われるため、内容を整理し自分の言葉で説明できるように準備しておきましょう。
創業計画書の作成には、資金調達ナビの「創業計画をつくる」がおすすめです。「日本公庫 創業計画書を作成」では、各項目の記載ポイントを確認しながら作成できるため、初めての方でも効率的に作成できます。会員登録は無料ですので、ぜひ活用してください。
高崎文秀税理士事務所 代表税理士/株式会社マネーリンク 代表取締役。早稲田大学理工学部応用化学科卒。都内税理士事務所に税理士として勤務し、さまざまな規模の法人・個人のお客様を幅広く担当。2019年に独立開業。現在は法人・個人事業者の税務顧問・節税サポート、個人の税務相談・サポート、企業買収支援、税務記事の監修など幅広く活動中。また一般社団法人CSVOICE協会の認定経営支援責任者として、業績に悩む顧問先の経営改善を積極的に行う。

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