日本政策金融公庫の融資申込手続きの流れ|必要書類や期間を解説

2025/08/04

多くの事業者が利用している日本政策金融公庫ですが、申請手続きの煩雑さから申し込みをためらっている方も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、日本政策金融公庫の事業のうち、個人事業主や小規模事業者を対象とした「国民生活事業」の融資手続きの流れや必要書類について、わかりやすく解説します。

なお、日本政策金融公庫や国民生活事業の概要を詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

日本政策金融公庫について知る 日本政策金融公庫とは(1) 新しいウィンドウで開く

日本政策金融公庫の融資申請手続きの流れ

日本政策金融公庫(国民生活事業)の融資申請手続きは、以下のように進みます。まずは全体像を把握し、手続きの概要を確認しましょう。

手順 内容
(1)相談
  • 融資制度や申込手続きなどについては、電話で相談できます。
    • 事業資金相談ダイヤル:0120-154-505(2025年2月現在)
  • 事前予約をすれば支店窓口やオンラインでの相談も可能です。
    • Microsoft Teamsアプリを活用したオンライン相談も受け付けています。事前にアプリのダウンロードが必要です。
  • 商工会議所や商工会、生活衛生同業組合、各都道府県の生活衛生営業指導センターなどでも相談できます。
(2)申し込み
(3)面談
  • 担当者から資金使途、事業計画などについて聴取されます。
  • 担当者が、事務所、店舗、工場などに訪問する場合もあります。
(4)融資
  • 融資決定後、日本政策金融公庫から借用証書などの契約に必要な書類が郵送されてきます。
  • 契約手続きの完了後、融資金が指定の金融機関の口座に送金されます。
(5)返済

なお、マル経融資(小規模事業者経営改善資金)、生活衛生改善貸付など、融資制度によっては手続きや提出書類が異なる場合があります。その点については、相談窓口や支店に確認してください。

以下では、「相談」から「返済」まで、手続きの詳しい内容について解説していきます。

1.融資の相談をする

「(1)相談」は、電話・支店窓口・オンラインで行えます。制度の概要説明から事業計画の書き方まで、幅広い内容の相談が可能です。「融資を受けられる可能性はあるか」「どのような点を改善すれば審査に通りやすいか」といった相談もできます。

なお、なかには「事前相談で情報を伝えると、審査に不利になるのではないか」と懸念される事業者もいます。そういった場合は、税理士やコンサルタントなどの民間専門家に相談するのも選択肢の1つです。民間専門家への相談内容が日本政策金融公庫に伝わることはありませんので、安心してご相談いただけます。

日本政策金融公庫(国民生活事業)への相談

▼電話での相談(平日9時~19時まで受付)

事業資金相談ダイヤル:0120-154-505(2025年2月現在)

▼支店・オンラインでの相談(事前予約制)

相談申込はこちら 新しいウィンドウで開く

2.融資の申し込みを行う

「(2)申し込み」に関しては、インターネットや郵送、直接来店にて手続きを行えます。特にインターネット申し込みは、郵送や来店の手間を省けるため便利です。ただし、インターネット申し込みの場合は、必要書類をPDF形式などの電子データにして事前に準備しておく必要があります。電子化した資料は、専用画面からアップロードして提出する形式です。

ここでは、インターネット申し込みの方法について簡潔に解説します。

手順 内容
(1) 登録
(2)登録完了
  • 登録メールに届いたURLから申込情報入力フォームにアクセスします。
(3) 入力
  • 申請者の氏名・住所、申込金額などを入力します。
  • (公庫との取引がある場合)支払額明細書などを確認し、取引番号を入力、支店名を選択します。
(4) 提出書類
  • 必要書類の電子データを用意します。
  • 資料アップロード画面にアクセスして、提出資料をアップロードします。
(5) 確認
  • チェックボックスで提出書類のチェックをします。
  • 必要書類のアップロードとチェックボックスのチェック後「確認画面へ」をクリックします(提出が必要な書類にチェックがついていない状態では、確認画面に進めません)。
(6)送信完了
  • 最終的な確認をして「申込む」をクリックすれば申し込みは終了です。
  • 申込内容を事後確認したい場合は、「印刷する」をクリックして控えを保存してください。
  • 申込完了後、「お申し込みデータ受付完了メール」が送られてきます。

個人事業主・法人共通の必要書類

日本政策金融公庫の融資申込時には、個人事業主・法人を問わず共通して必要な書類があります。具体的には以下のとおりです。

初めて日本政策金融公庫と取引する場合:

  • 創業計画書(創業予定の方、創業間もない方)または企業概要書※1
  • 申請者(法人の場合は代表者)の運転免許証またはパスポート※2
  • 許認可証(飲食業など許可や届出が必要な事業の場合)
  • ※1
    創業計画書を提出する場合、企業概要書の提出は不要です。
  • ※2
    運転免許証は両面、パスポートは顔写真のあるページが必要です。

設備投資の融資を申し込む場合:

  • 見積書

電子契約サービスを利用する場合:

  • 日本公庫電子契約サービス(国民生活事業)利用申込書
  • 送金先口座の預金通帳の写し

「創業計画書」は、主に開業の際に融資を申し込みたい方が提出する書類です。創業計画書のテンプレートは、日本政策金融公庫のWebページでダウンロードできます。

参照:日本政策金融「国民生活事業」 新しいウィンドウで開く

創業計画書の内容は融資審査に大きく影響します。作成時には資金調達ナビのコンテンツ「創業計画をつくる」を活用すると便利です。「日本公庫 創業計画書を作成」を利用すれば、項目ごとの解説を参照しながら記入できるため、充実した創業計画書を作成できます。

個人事業主の必要書類

個人事業主が融資を申し込む際に必要な書類は以下のとおりです。

必要書類

  • 創業計画書または企業概要書
  • 申請者の運転免許証またはパスポート
  • 直近2期分の確定申告書(既に税務申告をしている場合)
  • 許認可証(許可や届出が必要な事業の場合)
  • 見積書(設備投資用の融資を希望する場合)

確定申告書は事業開始後に税務申告を行っている方が対象です。青色申告事業者は青色申告決算書、白色申告事業者は収支内訳書を併せて提出します。税務申告が1期分しかない場合はその分のみ提出すれば問題ありません。開業前や開業直後で税務申告がまだの場合、提出は不要です。

法人の必要書類

法人の場合、必要書類は以下のとおりです。

  • 法人の履歴事項全部証明書または登記簿謄本
  • 創業計画書または企業概要書
  • 代表者の運転免許証またはパスポート
  • 直近2期分の確定申告書・決算書(勘定科目明細書を含む)
  • 直近の試算表
  • 許認可証(許可や届出が必要な事業の場合)
  • 見積書(設備投資用の融資を希望する場合)

法人の場合も、確定申告書の提出が必要となる点個人事業主と同様です。事業を開始したばかりで決算を終えていない場合は、直近の試算表の提出が求められます。また、決算後6か月以上経過している場合も試算表が必要です。

上記の提出資料は、「(2)申し込み」時点で必要な書類です。審査過程で日本政策金融公庫から事業計画書、損益計画書、資金繰り表などの追加書類を求められることがあります。案内に従って速やかに対応しましょう。

3.担当者と面談を行う

「(3)面談」では、どの事業者も必ず担当者との面談を経てから融資の可否が判断されます。面談日時は日本政策金融公庫との調整で決定します。日程は支店の混雑状況によって異なりますが、申し込みから数日〜数週間後に設定されるのが一般的です。面談時間はおよそ30〜60分程度ですが、場合によっては複数回に渡ることもあります。

面談には原則として申請者本人(法人の場合は代表者)が出席する必要があります。認定支援機関である顧問税理士の同行も可能ですが、事前に担当者の許可を得ておきましょう。ただし、借入をするのはあくまで申請者本人です。質問には自分の言葉でしっかり答えられるよう準備しておきましょう。

面談では主に資金の使途や事業計画の内容などについて確認されます。特に開業の場合、創業計画書に沿って具体的な質問を受けることが多いです。場合によっては担当者が事務所や店舗、工場などを訪問することもあります。面談時に持参する必要書類は事前の通知書に記載されていますので、漏れのないよう準備しましょう。

服装については普段通りで問題ありません。特別にスーツを用意する必要はありませんが、清潔感のある服装を心掛けましょう。だらしない格好は避け、経営者としての誠実さが伝わることが大切です。

4.融資の連絡をもらう

融資の可否の連絡は、一般的に面談終了から数日〜数週間程度で届きます。審査期間は支店の混雑状況や繁忙期・閑散期の影響を受けるため、ばらつきがあります。否決の場合でも必ず結果が通知されます。

契約、融資実行

融資が決定すると、金銭消費貸借契約書などの契約書類が郵送されてきます。契約書類は融資手続きの最終段階となるため、氏名や口座情報に誤りがないか慎重に確認して記入しましょう。不備がある場合は再提出が必要となり、融資実行が遅れる原因になります。

契約書類を返送し、手続きが完了すると、指定の金融機関口座に融資金が入金されます。入金までの期間の目安は、契約書類返送後1週間程度です。

団体保険について

融資契約の際に、日本政策金融公庫の事業資金団体保険(以下、団信) への加入を案内される場合があります。加入は任意であり、加入しなくても融資審査に影響はありません。

日本政策金融公庫の融資利用者のうち、団信に加入する割合は4〜5割程度とされています。加入するかどうかは、顧問税理士などに相談しながら慎重に検討してください。

団信は、被保険者(借主)が補償期間中に死亡したり、高度障がい状態になった場合などに、生命保険会社から支払われる保険金によって、借主の公庫に対する債務の全額が弁済される保険です。

団信は被保険者が死亡した場合のみ適用されるイメージを持たれているかもしれませんが、実際には「傷害または疾病により、以下のいずれかの高度障がい状態に該当した場合」も対象です。

  • 1.
    両眼の視力を全く永久に失ったもの
  • 2.
    言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの (※1)
  • 3.
    中枢神経系または精神に著しい障がいを残し、終身常に介護を要するもの(※2)
  • 4.
    胸腹部臓器に著しい障がいを残し、終身常に介護を要するもの(※2)
  • 5.
    両上肢とも、手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
  • 6.
    両下肢とも、足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
  • 7.
    1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
  • 8.
    1上肢の用を全く永久に失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったもの
  • ※1
    「そしゃくの機能を全く永久に失ったもの」とは、流動食以外のものは摂取できない状態で、その回復の見込のない場合をいいます。
  • ※2
    「常に介護を要するもの」とは、食物の摂取、排便、排尿、その後始末、および衣服着脱・起居・歩行・入浴のいずれもが自分ではできず、常に他人の介護を要する状態をいいます。

引用:公益財団法人公庫団信サービス協会団信保険「団信保険(事業資金融資)」 新しいウィンドウで開く

※ 詳細については、日本政策金融公庫にご相談ください。

団信に加入する場合、特約料(年払い・掛け捨て)を支払う必要があります。この特約料は、返済が進むにつれて負担が軽くなるように計算されています。

〈参考〉特約料の目安(融資金額100万円、元金均等返済)5年払いの場合

返済期間 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 合計
5年払(60回) 2,510円 1,960円 1,410円 850円 300円 7,030円

※ 上記の金額は、融資の翌月から返済を開始した場合の目安です。

※ 特約料は将来変更される可能性があります。

※ 2025年2月時点情報です。

参照:公益財団法人公庫団信サービス協会団信保険「団信保険(事業資金融資)」 新しいウィンドウで開く

5.返済を行う

返済は原則として月払いです。期日一括返済などの方法もありますが、多くの方が「元金均等返済」または「元利均等返済」を選択します。

「元金均等返済」とは、毎月の返済額のうち元金の額が一定となる返済方法です。借入金を返済回数で割って算出した毎回同額の元金に、利息を足した金額を返済します。返済が進むにつれて毎月の返済額が徐々に減少するため、同じ借入期間で比較した場合、元利均等返済よりも返済総額が少なくなるのが特徴です。

元利均等返済とは、毎月の返済額が一定となる返済方法です。返済額(元金+利息)が変わらないため、返済計画が立てやすくなります。ただし、同じ借入期間の場合、元金均等返済よりも返済総額が多くなる点に注意が必要です。

日本政策金融公庫のWebページでは、返済計画の見通しを立てるための「返済シミュレーション」が利用できます。融資申込の際は、事前にシミュレーションを行い、無理のない返済計画を立てることをおすすめします。

参照:日本政策金融公庫「事業資金用 返済シミュレーション」 新しいウィンドウで開く

日本政策金融公庫での融資申込で最も重要なのは「創業計画書」

既に事業を開始している場合とは異なり、開業前は売上などの実績がありません。そのため、公庫の担当者は創業計画書の内容が具体的かつ実現可能かどうかを重点的に審査し、融資の可否を判断します。

創業計画書のテンプレートは、日本政策金融公庫の公式Webサイトからダウンロードできます。しかし、創業計画書の作成は、多くの方にとって難しい作業です。税理士などの専門家に依頼するのも1つの方法ですが、創業前はできるだけ費用を抑えたいという方が多いでしょう。

そのような方には、資金調達ナビの「創業計画をつくる」の活用がおすすめです。「日本公庫 創業計画書を作成」では、各項目の解説や作成のポイントを確認しながら、無料で効率的に創業計画書を作成できます。開業資金の融資を検討している方は、ぜひ活用してみてください。

融資を受けるまでの期間はどのくらいかかる?

日本政策金融公庫の融資では、申し込みから入金までにおよそ1か月程度かかるのが一般的です。大まかな流れと期間の目安は以下のとおりです。

  • 申し込みから面談まで:1~2週間
  • 面談から審査結果の通知まで:1~2週間
  • 借用証書などの契約書返送から入金まで:約1週間

ただし、これはあくまで目安であり、実際の期間は申込内容や状況によって異なります。提出書類に不備があった場合や、追加書類の提出が求められた場合には、その分手続きが遅れるため注意が必要です。スムーズに融資を受けるためには、必要書類を正確にそろえてから申し込みましょう。

日本政策金融公庫の融資申込の流れを把握して準備を整えよう

日本政策金融公庫に融資を申し込む際は、創業計画書をはじめとする必要書類の準備が重要です。手続き全体の流れを事前に把握し、余裕を持って、各ステップで求められる書類を用意しましょう。

特に創業計画書は、融資の可否を左右する重要な書類です。審査では計画の内容が具体的で実現可能かどうかがチェックされるため、しっかりと時間をかけて作成する必要があります。面談でも創業計画書を基に質問が行われるため、内容を整理し自分の言葉で説明できるように準備しておきましょう。

創業計画書の作成には、資金調達ナビの「創業計画をつくる」がおすすめです。「日本公庫 創業計画書を作成」では、各項目の記載ポイントを確認しながら作成できるため、初めての方でも効率的に作成できます。会員登録は無料ですので、ぜひ活用してください。

監修者:高崎文秀

高崎文秀税理士事務所 代表税理士/株式会社マネーリンク 代表取締役。早稲田大学理工学部応用化学科卒。都内税理士事務所に税理士として勤務し、さまざまな規模の法人・個人のお客様を幅広く担当。2019年に独立開業。現在は法人・個人事業者の税務顧問・節税サポート、個人の税務相談・サポート、企業買収支援、税務記事の監修など幅広く活動中。また一般社団法人CSVOICE協会の認定経営支援責任者として、業績に悩む顧問先の経営改善を積極的に行う。

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