プロパー融資申請の流れ・事業性評価融資やビジネスローンとの違い

2022/03/23

プロパー融資とは金融機関が行う独自の融資のことを言います。そのため日本政策金融公庫や信用保証協会のように、全国共通の定型化された手続きの流れがあるわけではありませんが、およその流れはどの金融機関も同じです。ここでは一般的な流れについて説明いたします。

なお必要な書類については、資金調達ナビ「プロパー融資申請書類の書き方」を参考にしてください。

プロパー融資とは

プロパー融資とは信用保証協会などを利用せずに、金融機関が事業者に対して直接行う融資のことをいいます。よってその手続きに関しても金融機関ごとに異なります。

基本的な手続きの流れは「申し込み→審査→契約・融資実行→返済」となります。プロパー融資を受けることができる事業者は主に、これまでに信用保証付き融資などの実績があり、金融機関からの信用力が高い事業者になります。よって小規模事業者などが、全く取引のない金融機関にいきなりプロパー融資を申し込むというのはレアケースです。

日頃から取引先である金融機関の担当者とコミュニケーションを図っていれば、担当者からプロパー融資に関する提案を受けることもあるでしょう。事業者側からプロパー融資の相談を持ち掛ける場合には、通常は担当者に相談するという流れでプロパー融資の打診をすることになります。

担当者からヒアリングや質問などを受けながら、事業計画や資金使途、損益計画、資金繰り状況などの説明をします。担当者はヒアリングや資料などに基づき、支店に持ち帰って上司などとの相談を重ね、融資審査にかけることになります。

その間、何度も担当者や上司との面談やヒアリングが行われる場合もあります。そして融資が決定すれば、契約をして融資が実行されることになります。このように日頃からのコミュニケーションの流れの中でプロパー融資の相談などをして、手続きに入るのが一般的です。

プロパー融資とビジネスローンの違い

民間金融機関にはビジネスローンという融資商品があります。これも信用保証付き融資ではなく、プロパー融資の一つという見方もできます。なお、ビジネスローンを実施していない金融機関もあります。

ビジネスローンの特徴は「早急な回答」「原則無担保」「決算書中心の審査」などです。申請の条件としては、一般的には「業歴2~3年(期)以上」「債務超過でないこと」「税金の未納がないこと」などですが、金融機関によって異なりますので必ず確認するようにしてください。

一般的な手続きの流れは「相談→申し込み→審査→回答→契約→融資実行→返済」になります。「相談」を飛ばして「申し込み」をする場合が多いかもしれません。「申し込み」に関しては、来店またはインターネットから行います。その後、ほぼ定型化・自動化された審査により、早ければ翌日や3営業日以内に「回答」がきます。その後「契約」をして「融資実行」になります。

また、こういう審査にAIを用いる場合も増えており、オンラインレンディングもプロパー融資の一つという見方もできるのかもしれません。

プロパー融資と事業性評価融資の違い

事業性評価融資とはプロパー融資の1つで、担保や連帯保証にとらわれることなく、企業の事業内容や将来性に注目して融資をする手法のことです。従来は「担保や連帯保証」などを重視していましたが、事業性評価融資では「事業内容や将来性」の評価を重視していると言えるでしょう。

事業性評価融資はプロパー融資の1つですので、その手続きは、プロパー融資とほとんど同じになります。ただし、過去の業績を重視する傾向が強い従来型のプロパー融資に比べ、事業性評価融資は「将来性」を注目して融資をするものです。したがってその審査では、日頃からのコミュニケーションを通して「情報提供をする」という姿勢を継続していることが重要だと思われます。

以下に金融機関が事業性評価融資を戦略的に推進する場合(既存貸出先から選別して事業性評価融資を提案するなど)に、どのような動きを取るのかについて想定してみました。

事業性評価融資の手続きの流れ

金融機関 事業者
1.対象企業を選ぶ 事業計画書の作成、および事業性評価融資の提案、知的財産権の評価など
2.支店内での資料調査
3.訪問・情報整理
4.支店内での検討 追加の情報提供
5.企業へ融資提案 条件の交渉
6.契約・融資実行 融資契約
7.フォロー 情報提供、公開

金融機関は、事業性評価融資を行いたい顧客(対象企業)をリストアップします。そして、支店内にある資料などで対象企業の調査をします。そして対象企業に訪問してヒアリングをかけたりして、支店内で検討することになります。当然ですが事業性評価融資を受けたい事業者側は、積極的に情報公開や資料提供をする必要があります。

そして次に、金融機関は事業者に対して事業性評価融資の条件提案などをして、事業者側がその提案を了承すれば正式な申し込み手続きが行われます。必要な手続きに関しては、金融機関からの指示に従ってください。そして、契約をして融資実行という手続きの流れになります。

金融機関によって異なる点は多々あると思われますが、およそ以上のような手続きの流れになると思われます。

なお必要書類については、資金調達ナビ「金融機関への融資申請の際に必要な書類」を参考にしてください。

プロパー融資のための銀行員とのコミュニケーション

上記の解説からも分かるように、プロパー融資の手続きをスムーズに進めるためには日頃からの金融機関の担当者とのコミュニケーションがとても重要になります。全くコミュニケーションを行わずに、いきなり「プロパーで融資をして欲しい」と言われても、金融機関も困惑してしまいます。

普段、担当者からアプローチしている事業者からの要請でしたら問題はないのかもしれませんが、特に「業績が思わしくない事業者」ほど、積極的に金融機関とのコミュニケーションを図るように行動してください。

定期的に決算報告や経営計画、業績報告、資金繰り状況などの情報提供をすることによって、担当者に深く自社を理解してもらいましょう。たとえ業績が思わしくなくとも、積極的なコミュニケーションを図ることによって、プロパー融資(事業性評価融資)などのチャンスがやってくるかもしれません。

銀行員とのコミュニケーションについて、さらに詳しく知りたい方は、資金調達ナビ「借入の基本」の「金融機関との上手な付き合い方」に解説がありますので、参考にしてください。

著者:吉田 学(財務・資金調達コンサルタント)

株式会社MBSコンサルティング代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。
主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。

また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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