融資の種類と特徴(1)

2021/12/15

ほとんどの事業者や中小企業は、民間金融機関(銀行、信金、信用金庫)から融資を受けていると思われます。しかしながら、民間金融機関がどのような融資体系になっているのかについて、理解されている事業者の方は少ないと思われます。民間金融機関の融資の種類と特徴、その全体像について理解しておきましょう。

民間金融機関の融資の種類

民間金融機関の融資商品については、主に以下のように分類されますが、金融機関によって扱っている融資商品は異なります。あくまでもイメージであって、あらゆる民間金融機関が横並びで画一的な融資商品を揃えているわけではありません。

〈主な融資商品の分類〉

  • 信用保証付き融資
  • 創業者向け融資
  • プロパー融資、事業性評価融資
  • 独自に企画した融資商品
  • ビジネスローン
  • その他(オンラインレンディング、事業者向けカードローンなど)

以下に簡潔に解説していきます。

信用保証付き融資

信用保証付き融資とは「信用保証協会の信用保証(債務保証)が下りて初めて融資することができる商品」です。

信用保証付き融資は、国の制度(セーフティネット保証など)や自治体制度融資(都道府県および市区町村)などに分かれます。自治体制度融資の中には、創業融資制度などもあります。また、金融機関と信用保証協会との連携による独自の制度(一例:商店街向けローン、新エネルギー導入対応ローン、メディカルローンなど)を実施していたりもします。

特に、地元密着型である規模の小さい信用金庫や信用組合などは、大手銀行などと比べると信用保証付き融資に力を入れています。

創業者向け融資

創業者向け融資に関しては原則として、信用保証付きである自治体の創業融資制度を中心に取り扱っています。さまざまな理由で自治体の創業融資制度の利用が難しい場合、その金融機関がどうしても支援をしたいときには、下記に説明するプロパー融資など独自の創業融資制度などで支援する場合もあります。

プロパー融資、事業性評価融資について

プロパー融資とは「信用保証協会を活用しない金融機関独自の融資」のことをいいます。つまり、それだけ金融機関のリスクが大きいということになります。よって、業績が安定していて信頼できる企業を対象としています。創業したばかりや規模の小さい零細・中小事業者向けとは言い難いでしょう。しかしながら小規模(年商1億円以下)でも実績と信頼を重ねていけば、信用金庫や信用組合などからプロパー融資を受けることは可能です。信用金庫の中には地元の起業家育成に力を入れ、プロパーによる独自の創業融資制度を実施しているところもあります。

事業性評価融資は、基本的にはプロパー融資のカテゴリーに含まれます(一部の信用保証協会では、信用保証付きの事業性評価の保証制度を実施しています)。

つまりプロパー融資とは、信用保証協会を利用せずに金融機関が独自の審査基準に基づいて融資をする仕組みの総称のようなものです。

例えば、政府系金融機関や信用保証協会が支援しなくても、金融機関が独自の判断でリスクを取ってプロパー融資をする場合もあります。また信用力の高い企業に対しては、あえて信用保証協会に頼らずに、メインバンクとして積極的にプロパー融資をしていきます。

独自に企画した融資商品

民間金融機関の融資商品とは、信用保証協会を利用せずに独自の設計に基づいて企画された融資商品のようなイメージです。「信用保証付き融資」にて、金融機関と信用保証協会との連携による独自の制度(一例:商店街向けローン、新エネルギー導入対応ローン、メディカルローン)についてご案内しましたが、これをプロパー融資として支援するような場合を指します。

また会計ソフトと連携した融資商品や、大手ノンバンクの債務保証による融資商品もあります。こういった独自の企画商品を積極的に実施できる金融機関は、ある程度の規模のあり、事業者向け融資に力を入れているところになります。あらゆる金融機関が実施しているわけではありませんので注意してください。

ビジネスローン

ビジネスローンとは、主に「自動審査での判断に基づいて行われる融資」のことをいいます。これも基本的には、プロパー融資の範疇に含まれます。(一部、ノンバンクなどの債務保証などを付けている金融機関もあります。)

ビジネスローンの始まりは、1998年に開始された東京都民銀行(現きらばし銀行)のスモールビジネスローンだと言われています(諸説あり)。その後、2002年に三井住友銀行がビジネスセレクトローンを開始して隆盛を極めました。

なお近年においては、多様な融資商品をビジネスローンと称している金融機関もあり、その定義もあいまいになっています。

その他(事業者向けカードローン、オンラインレンディングなど)

上記に説明した融資商品以外にも、事業者向けカードローンやオンラインレンディングなどがあります。

経営者向けにカードを発行して融資をするのも、事業者向け融資の一つといえるでしょう。

事業者向けカードローンに関しては、資金調達ナビ「資金繰り改善に役立つ法人クレジットカード活用法」の「法人カードのキャッシングについて」で解説していますので、参考にしてください。

また、近年はAI審査によるオンラインレンディングなどが徐々に増えつつあります。民間の金融機関においては大手を中心に導入されていますが、中小の金融機関では、まだ導入されていないところが多いです。

オンラインレンディングは、会計ソフトや法人口座情報からAIによるスピーディーな審査が行われるのが主な特徴です。実施している各金融機関によって、要件などは異なりますのでその都度、確認するようにしてください。

オンラインレンディングの詳細な説明は、資金調達ナビ「オンライン融資について知る」にありますので、参考にしてください。

著者:吉田 学(財務・資金調達コンサルタント)

株式会社MBSコンサルティング代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。
主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。

また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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