日本政策金融公庫について知る

日本政策金融公庫とは(3)

2021/02/19(2021/9/15更新)

国民生活事業の申請の流れや提出資料、利率などについて説明いたします。また、あまり聞きなれない生活衛生関連事業者向けの「生活衛生貸付」や日本公庫の「ソーシャルビジネス支援」「協調融資」などの実態についても説明いたします。

申請の手続きの流れについて

国民生活事業の融資申請の流れについてですが、以下にまとめしたのでご確認ください。

申請の流れ

内容
相談・申し込み
  • 融資制度、申込手続き等お問い合わせは電話でも可能です。事業資金相談ダイヤルが利用可能です。

    相談ダイヤル
    お問合せ新しいウィンドウで開く
  • 現在、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するため、一部の支店については、来店による相談は予約制となっています。
  • 商工会議所、商工会、生活衛生同業組合、都道府県の生活衛生営業指導センターなどでも相談することができます。
  • 所定の借入申込書を提出します。郵送可能です。
  • 日本公庫のホームページからでも申し込みの受付ができます。書類については、後日、提出することになります。
面談
  • 資金使途や事業の状況(計画)などについて質問されます。準備する書類は、営業状況(計画)や資産・負債などが分かる書類等になります。
  • 店舗や工場などを訪問することもあります。
融資
  • 融資が決まりますと、借用証書などの契約に必要な書類を契約センター又は支店から郵送されます。
  • 契約手続きが完了しますと、融資金は、希望の金融機関の口座へ送金されます。
返済
  • 返済は原則として月賦払いです。
  • 返済方法は、元金均等返済、元利均等返済、ステップ返済などを用意されています。

書類の提出から融資実行までは2~3週間から1か月くらいになりますので、余裕を持って申請手続きをするようにして下さい。特に、年末年始や年度末、又はゴールデンウィークなどのように連休がある時期は窓口が混む可能性があります。なお、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、窓口が混雑する場合もあります。よって余裕をもって手続きするようにしてください。

提出書類について

基本的な提出書類に関しては、以下の通りですが、創業融資の場合は、創業計画書が必要になります。

基本的な提出書類

内容
共通書類
  • 借入申込書
個人
  • 最近2期分の申告決算書
法人
  • 最近2期分の確定申告書・決算書(勘定科目明細書含む)
  • 最近の試算表(決算後6ヵ月以上経過している場合または事業を始めたばかりで決算を終えていない方)
設備資金
  • 見積書
はじめて利用する場合
  • 創業計画書(新たに事業を始める方または事業を開始して間もない方)
  • 企業概要書
  • 法人の履歴事項全部証明書または登記簿謄本(法人営業の方)
  • 創業計画書を提出する場合、企業概要書の提出は不要です。

以上の書類以外にも、必要に応じて、事業計画書や損益計画書、資金繰り表などを提出する場合もあります。また、制度によっては指定の書類などがありますので、その都度、日本公庫に確認するようにしてください。

以下のWEBページから国民生活事業の「提出書類一覧」をダウンロードすることができますので、ご確認ください。

なお、「金融機関への融資申請時の際に提出する書類創業融資の際に必要な資料について」も参考にしてください。

利率について

日本公庫の利率は、融資制度、資金使途、融資期間、担保の有無などによって異なる利率が適用されています。また、現時点においては、以下のように7つ分けられて利率体系が組まれています(令和3年8月2日現在)。

  • 1.
    担保を不要とする融資を希望される方
  • 2.
    新創業融資制度(無担保・無保証人)を希望される方(税務申告を2期終えていない方)
  • 3.
    担保を提供する融資を希望される方(1~2より低い金利となります)
  • 4.
    災害貸付、東日本大震災復興特別貸付(震災セーフティネット関連を除く)、令和元年台風第19号等特別貸付(その他被害者を除く)、新型コロナウイルス感染症特別貸付、令和2年7月豪雨特別貸付(その他被害者を除く)をご利用される方
  • 5.
    経営者の保証を不要とする融資(「経営者保証免除特例制度」など)を希望される方
  • 6.
    マル経融資(小規模事業者経営改善資金)、生活衛生改善貸付を希望される方
  • 7.
    その他

以下に、一部の利率をご紹介いたします。

無担保で融資を借りる場合は以下のような利率体系になっています。

担保を不要とする融資を希望される方

(令和3年8月2日現在、年利%)

基準利率 特別利率A 特別利率B 特別利率C 特別利率D 特別利率E 特別利率J 特別利率N 特別利率O 特別利率P 特別利率Q 特別利率R 特別利率U
2.06~2.45 1.66~2.05 1.41~1.80 1.16~1.55 1.41~1.80 0.66~1.05 1.01~1.40 1.76~1.83 1.16~1.35 1.86~2.05 1.66~2.05 1.86~1.93 1.56~1.63

次に担保を提供する場合を見てみます。

担保を提供する融資を希望される方

(令和3年8月2日現在、年利%)

基準利率 特別利率A 特別利率B 特別利率C 特別利率D 特別利率E 特別利率J 特別利率N 特別利率P 特別利率O 特別利率Q 特別利率R 特別利率U
1.11~2.10 0.71~1.70 0.46~1.45 0.30~1.20 0.46~1.45 0.30~0.70 0.30~1.05 0.81~1.48 0.30~1.00 0.91~1.70 0.71~1.70 0.91~1.58 0.61~1.28

「基準金利」を比較してみますと、担保を提供しない場合は利率が下がります。

次に、無担保・無保証人である新創業融資制度においては以下のようになっています。

新創業融資制度

(令和3年8月2日現在、年利%)

基準利率 特別利率A 特別利率B 特別利率C 特別利率D 特別利率E 特別利率J 特別利率P 特別利率Q
2.41~2.80 2.01~2.40 1.76~2.15 1.51~1.90 1.76~2.15 1.01~1.40 1.36~1.75 2.21~2.40 2.01~2.40

基準金利が「2.41%~2.80%」とやや高くなっています。たとえ高くても「無担保・無保証人」制度はとても有難いものです。

また、災害貸付や新型コロナウイルス感染症特別貸付などの場合は、以下の通りです。

災害貸付、新型コロナウイルス感染症特別貸付など

(令和3年8月2日現在、年利%)

基準利率 特別利率A 特別利率B 特別利率C 特別利率D 特別利率E 特別利率J 特別利率0 特別利率P 特別利率Q
1.26~1.65 0.86~1.25 0.61~1.00 0.36~0.75 0.61~1.00 0.05~0.25 0.21~0.60 0.36~0.55 1.06~1.25 0.86~1.25

やはり災害を受けている事業者向けの融資制度においては、低く設定されているのが分かります。

このように少々複雑に思われるかもしれませんが、利率についてはその都度、日本公庫のホームページなどで確認するようにしてください。また、頻繁に利率が変わりますのでご注意ください。

生活衛生貸付とは?

生活衛生貸付とは、生活衛生関係の事業を営む事業者を対象とした制度です。ちなみに、本貸付制度は「環境衛生金融公庫」の名残として継続されている制度になります。

なお、「生活衛生関係の事業」とは、以下のような業種のことをいいます。

生活衛生関係事業者

  • 1.
    飲食店営業(そば・うどん店、中華料理店、すし店、料理、風俗営業許可飲食店など)
  • 2.
    喫茶店営業(喫茶店、フルーツパーラー、音楽喫茶、純喫茶、喫茶を主とするスナック等)
  • 3.
    食肉販売業(食肉販売業、食鳥肉販売業)
  • 4.
    氷雪販売業(主として氷を小売・卸売する営業)
  • 5.
    理容業(理髪店、床屋、理容所、理容院、バーバー)
  • 6.
    美容業(美容室・院、結髪業、ビューティーサロン)
  • 7.
    興行場営業(映画館、劇場、シアター、寄席、演芸場)
  • 8.
    旅館業(山小屋、スキー小屋、下宿営業なども含む)
  • 9.
    浴場業(一般公衆浴場業、サウナ営業、その他公衆浴場業)
  • 10.
    クリーニング業(貸おむつ業、貸タオル業、リネンサプライ業、取次業)
  • 11.
    理容師養成施設・美容師養成施設(理容学校、美容学校)

飲食業や理美容業が最も分かりやすいでしょう。また、生活衛生関係事業者は、「生活衛生貸付」だけしか利用できないということではありません。たとえば、飲食業で創業される方は「新創業融資制度」の対象にもなります。

また、生活衛生貸付には、一般貸付(生活衛生貸付)、振興事業貸付、生活衛生改善貸付、生活衛生特別貸付などの制度があります。ここでは一般貸付(生活衛生貸付)について説明いたします。

一般貸付(生活衛生貸付)

ご利用いただける方 生活衛生関係の事業を営む方および理容学校・美容学校を経営する方
融資限度額 飲食店営業、喫茶店営業、食肉販売業、食鳥肉販売業、氷雪販売業、理容業、美容業、その他公衆浴場業 7,200万円
一般公衆浴場業 3億円(2施設以上の場合 4億8,000万円)
旅館業 4億円
興行場営業、サウナ営業 2億円
クリーニング業 1億2,000万円
ご返済期間
(うち据置期間)
13年以内(1年以内、返済期間が7年超の場合2年以内)
[一般公衆浴場業は30年以内]
利率(年)

基準利率新しいウィンドウで開く][特別利率A新しいウィンドウで開く][特別利率B新しいウィンドウで開く][特別利率C新しいウィンドウで開く][特別利率Q新しいウィンドウで開く

担保・保証人 お客さまのご希望を伺いながらご相談させていただきます。
  • 詳細は日本政策金融公庫のページでご確認ください。

一般貸付(生活衛生貸付)の特徴は、「設備資金」のみを対象としているということと、日本公庫に申請する前に、都道府県生活衛生主管部(局)や生活衛生営業指導センターを通して、都道府県知事あてに「推せん書の交付申請」をする必要があるという点です。しかしながら、500万円以下でしたら「推せん書の交付申請」の必要はありません。

ソーシャルビジネス支援について

ソーシャルビジネスとは、高齢者や障がい者の介護・福祉、子育て支援、地域活性化、環境保護など、地域や社会が抱える課題の解決に取り組む事業のことをいいます。

日本公庫はソーシャルビジネス支援に力をいれています。国民生活事業の令和2年度のソーシャルビジネス関連融資実績は、15,037 件(前年度比 126.8%)、1,845 億円(同 212.4%)となっています。

29年度:818億円、10,819件 30年度:834億円、11,328件 元年度:869億円、11,863件 2年度:1,845(212.4%)億円、15,037(126.8%)件 ソーシャルビジネス関連融資実績

ソーシャルビジネス=NPOや一般社団法人というイメージを抱く方もいますが、日本公庫は、決してNPO法人に限定して融資をしているわけではありません。以下の図表から、「ソーシャルビジネス関連融資の全実績=NPOへの融資」というわけではない、ということが分かります。

[ソーシャルビジネス関連融資※]
件数 平成29年度:10,819、 平成30年度:11,328件、令和元年度:11,863件、令和2年度:15,037件、前年度比:126.8%、
金額  平成29年度:818億円、平成30年度:834億円、令和元年度:869億円、令和2年度:1,845億円、前年度比:212.4% 
[①NPO法人]
件数 平成29年度:1,552件、平成30年度:1,381件、令和元年度:1,155件、平成30年度:1,803件、前年度比:156.1%、
金額 平成29年度:97億円、平成30年度:87億円、令和元年度:71億円、令和2年度:196億円、前年度比:273.5% 
[②介護・福祉事業者]
件数 平成29年度:8,375件、平成30年度:8,440件、令和元年度:8,095件、令和2年度:13,741件、前年度比:169.7%、
金額 平成29年度:655億円、平成30年度:646億円、令和元年度:592億円、令和2年度:1,723億円、前年度比:290.7% 
[③社会的課題の解決を目的とする事業者]
件数 平成29年度:2,021件、平成30年度:2,527件、令和元年度:3,447件、令和2年度:560件、前年度比:16.2%、
金額 平成29年度:142億円、平成30年度:170億円、令和元年度:262億円、令和2年度:50億円、前年度比:19.2%
  • 表中の①、②、③に対する融資実績の合計(①と②の重複分を除く)です。

ソーシャルビジネス事業者は融資を受けにくいと感じている方もいると思われますが、日本政策金融公庫では確実に実績を出していることが分かります。

協調融資について

日本公庫は、民間金融機関との協調融資に力を入れています。協調融資とは、日本公庫と民間金融機関とで連携して行う融資のことをいいます。日本公庫と民間金融機関は、創業や事業再生、事業承継、ソーシャルビジネスなどのさまざまな分野で、協調融資商品を創設しています。

さらに、日本公庫と民間金融機関は、協調関係を強化するために、融資先企業の紹介、職員の合同研修、企業への周知活動なども行っています。

2020年度の協調融資実績についてですが、24,467件(前年同期比85%)、16,847億円(同134%)と、コロナ禍においても民間金融機関と連携し、4期連続で2万件を超える実績となりました。

協調融資実績の推移

2015年度:15,130件 2016年度:19,671件 2017年度:23,080件 2018年度:30,768件 2019年度:28,736件 2020年度:24,467件

業態別協調融資実績


都市銀行:2,185件(うち国民生活事業: 171件)、3,595億円 (うち国民生活事業: 32億円)
地方銀行:9,232件(うち国民生活事業: 3,369件)、7,873億円(うち国民生活事業: 475億円)
第二地方銀行:3,175件(うち国民生活事業: 1,592件)、2,016億円(うち国民生活事業: 218億円)
信用金庫:8,640件(うち国民生活事業: 5,995件)、3,458億円(うち国民生活事業: 774億円)
信用組合:1,269件(うち国民生活事業: 984件)、411億円(うち国民生活事業: 113億円)
その他:572件(うち国民生活事業: 23件)、612億円(うち国民生活事業: 3億円)
合計:24,467件 対前同月比:85%(うち国民生活事業: 12,134件、対前同月比:60%) 、16,847億円 対前同月比:134%(うち国民生活事業: 1,618億円、対前同月比:76%)
参考 令和元年度実績:28,736件(うち国民生活事業: 20,225件)、12,556億円(うち国民生活事業: 2,122億円)

注目!資本性劣後ローンとは?

現在(令和2年12月時点)、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、多くの事業者が影響を受けています。日本公庫は新型コロナウイルス感染症特別貸付など、様々な融資制度で事業者の支援をしていますが、タイムリー情報として、新型コロナ対策資本性劣後ローンの説明をさせていただきます。

新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付(新型コロナ対策資本性劣後ローン)

ご利用いただける方

新型コロナウイルス感染症の影響を受けた法人または個人企業の方であって、次のいずれかに該当する方

  • 1.
    J-Startupプログラムに選定された方)または独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資する投資事業有限責任組合から出資を受けた方
  • 2.
    中小企業再生支援協議会の支援を受けて事業の再生を行う方または独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資する投資事業有限責任組合の関与のもとで事業の再生を行う方
  • 3.
    上記1および2に該当しない方であって、事業計画書を策定し、民間金融機関等による支援を受けられる等の支援体制が構築されている方
資金のお使いみち 事業を行うために必要な設備資金および運転資金
融資限度額 7,200万円(別枠)
ご返済期間 5年1ヵ月、7年、10年、15年、20年のいずれか
ご返済方法 期限一括返済(利息は毎月払)
利率(年)

ご融資後3年間は0.50%
ご融資後3年経過後は、毎年直近決算の業績に応じて、2区分の利率が適用されます。

税引後当期純利益額 期間5年1ヵ月 期間7年 期間10年 期間15年 期間20年
0円以上 2.60% 2.60% 2.60% 2.70% 2.95%
0円未満 0.50% 0.50% 0.50% 0.50% 0.50%
担保・保証人 無担保・無保証人
  • 詳細は日本政策金融公庫のページでご確認ください。

資本性劣後ローンとは、一般の債権より返済の順位が劣る借入のことをいいます。資本性劣後ローンの最大の特徴は、「一定期間、借入金の返済をしなくてよい」という点です。また同時に、原則として融資後5年間は期限前返済をすることはできません。

特徴

内容
担保・保証人 無担保・無保証人
返済方法 期限一括償還
償還順位 法的倒産手続きの開始決定が裁判所によってなされた場合、全ての債務に劣後する。
その他 金融機関は資産査定上、自己資本とみなすことができる。

コロナ禍で資金繰りが悪化している事業者においては、無担保・無保証人であり、一定期間の元本返済がないということは、とても有難いと思われます。ただ、期限一括償還であるという点がデメリットかもしれません。

償還順位に関しては、もし万が一、「破産」などをした場合には、全ての債務に劣後することになっています。よって、資本性ローンが、“呼び水”となって、他の金融機関から融資支援などが受けやすくなると考えられています。
また、直ぐに返済の必要のない資本性劣後ローンは、融資でありながら資本的な側面も有しているため、自己資本と“みなす”ことができる、とされています。

なお、資本性劣後ローンは、コロナ禍以前から実施されており、利用するのが非常に難しいとされていた制度の一つです。コロナ禍においては、新型コロナ対策として実施されており、従来の資本性劣後ローンと比較すると利用しやくなっております。しかしながら、それでもハードルが相当高い状態ですが、日本公庫としては積極的な利用を促しています。
もし、利用を検討される場合は顧問税理士や専門家などに相談することをお勧めいたします。すでに新型コロナウイルス感染症特別貸付の融資限度額まで利用している事業者であっても申し込みすることができます。

著者:吉田 学(財務・資金調達コンサルタント)

株式会社MBSコンサルティング代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。
主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。

また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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