日本政策金融公庫の金利は高い? 融資を受ける際の金利を解説
2023-10-05更新
2025/07/04
個人事業主として起業する場合、資金調達は大きな課題です。確実な資金調達のためには、個人事業主に適した有利な条件の創業融資を活用することが重要です。本記事では、個人事業主が利用できる創業融資制度を3つ紹介します。融資額や返済期間などの融資内容から審査のポイントまで、資金調達に役立つ情報をまとめました。
個人事業主が事業を始める際に、資金調達に活用しやすい創業融資は次の3つです。
これらの融資制度は地域経済の発展や地域貢献を目的に設立されているため、銀行より有利な金利や条件で融資を受けられる利点があります。資金面での悩みが多い創業期にぜひ検討したい融資制度です。以下では、各融資の内容について詳しく解説します。
日本政策金融公庫(JFC /日本公庫)は、民間の金融機関が提供する融資を補完するために設立された政府系の政策金融機関です。主に、個人事業主や小規模企業、中小企業など、資金調達が難しい事業者への支援を行っています。
融資実績の約8割は1,000万円以下の小口融資であり、無担保・無保証の融資制度を原則としています。また、年齢や性別など条件に応じていくつかの特別金利を設けている点も特徴です。
日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金(旧:新規開業資金)」では、事業を始める方や開業後約7年以内の方を対象にしています。最大7,200万円までの融資を提供しており、融資限度額が高いのが大きな特徴の1つです。返済期間は、設備資金には最長20年、運転資金には最長10年が設定されています。
特に以下のような方々には特別金利が適用され、資金調達の負担を軽減し、事業をスムーズにスタートできるよう支援しています。
創業期の方には、無担保・無保証人で融資を行うことを原則としています。また創業2年以内の場合金利が一律で0.65%引き下げられる特典があります。民間の金融機関では無担保・無保証人の融資は高リスクと見なされ、特に業務実績がない個人事業主に対しての融資は認められないことがほとんどです。そういった現状を踏まえても、新規開業・スタートアップ支援資金(旧:新規開業資金)は非常に魅力的な融資制度の1つです。
参照:日本政策金融公庫「令和6年度版 融資のご案内」
参照:日本政策金融公庫「創業融資のご案内」
新規開業・スタートアップ支援資金(旧:新規開業資金)の申し込みは、インターネットでの受付後、面談・審査という流れで進みます。受付時には以下のような書類が必要です。
創業計画書は日本政策金融公庫の公式サイトから書式をダウンロードできますが、必要事項が記載されていれば独自に作成した資料でも構いません。融資審査では、申込者の自己資金や信用情報に加え、この創業計画書が重視されます。特に面談時には、創業計画書を基に事業の実現可能性が判断されるため、具体的な数値を用いて作成する必要があります。また、融資額が適正かどうかを判断するために、設備投資に関する見積書を用意することも重要です。
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地域経済の発展を支援するため、多くの地方自治体は、中小企業・小規模事業者向けに独自の「制度融資」を設けています。この融資制度は、都道府県や市区町村が、民間金融機関や信用保証協会と連携して実施しています。地域の事業者が資金調達を行いやすくするための制度です。
融資を希望する事業者は、信用保証協会に直接申請するか、民間の金融機関を経由して申し込みます。取扱金融機関については、自治体のホームページや相談窓口などで確認可能です。
申請後に審査を通過すると金融機関から融資を受けられます。信用保証協会に支払う保証料が必要ですが、自治体によっては保証料や利子の一部を負担する支援制度が設けられています。自治体の支援が入ることで無担保・無保証人での融資や長期間の借り入れが可能なので、特に創業時の資金繰りには非常に有効です。また、自治体によってはスタートアップ支援に特化した融資制度が設けられています。
自治体の補助が受けられる制度融資は、審査期間が長いことに注意が必要です。一般的な融資では金融機関の審査のみですが、この制度では金融機関と信用保証協会の両者による審査があります。
例えば、日本政策金融公庫での審査が1〜2カ月ほどであるのに対し、自治体の制度融資における審査期間は2〜3カ月が目安です。自治体の制度融資を利用する際は、この点を考慮して早めに計画を立てましょう。
また、融資申請の際は自治体ごとに異なる利用条件や審査基準があるため、お住まいの自治体の情報を事前に確認することが必要です。地域に合わせた支援制度を利用することで、事業のスタートアップを円滑に進められます。
地方の信用金庫や信用組合にも、資金調達に有効な融資があります。融資対象は会員や組合員に限られますが、その地域に住居を構えている、もしくは就労する人なら利用できます。事業者に関しては資本金や従業員数による条件はありますが、主に中小企業や小規模事業者を対象としており、個人事業主の創業融資にも適しています。
信用金庫や信用組合は地域振興を目的として設立されており、利益よりも地域への貢献が重視されています。そのため、銀行よりも審査が柔軟で、融資が受けやすい傾向があるのが特徴です。
信用金庫や信用組合で融資を希望する場合も、基本的には信用保証協会を利用した無担保・無保証人での融資となります。その場合、審査期間は2〜3カ月かかることがあるため、余裕を持って計画しましょう。
信用金庫や信用組合は審査が通りやすい反面、金利は銀行よりも高く設定されている場合がある点に注意が必要です。また、信用金庫は組合員からの出資が財源の中心であることから、融資限度額が銀行よりも低い場合があります。希望する融資額を明確にしたうえで、制度を利用するようにしましょう。
融資を受ける際に重要なのが、審査ポイントを押さえた準備をすることです。個人事業主の創業融資では、特に以下の点が重視されます。
審査の過程で重要視される項目の1つに、事業計画書(創業計画書)があります。事業計画書には、売上予測、必要資金、取引先名などの具体的な情報を記載し、説得力を持たせましょう。
審査では特に事業の将来性や返済能力がチェックされます。例えば、新たに開業する飲食店の場合、競合店との差別化要素や、ターゲット顧客層、立地の選定理由などを明確に示すことで、事業の成功可能性をアピールできます。また、具体的な集客方法やマーケティング戦略を明記することも重要なポイントです。主観的な予測ではなく、客観的なデータに基づいて事業計画書を作成するように心がけましょう。
創業融資では、自己資金の額も審査の重要なポイントです。自己資金が少ないと返済能力が不足しているとみなされる可能性があるため、自己資金なしでの申し込みは審査が通りにくくなります。
実際の審査では、申請者の過去半年から1年ほどの口座取引履歴が参照されます。自己資金がどのように形成されたか、入金のすべてに根拠が示せるかが焦点です。例えば人から借りたお金は、肉親からの借入であっても自己資金として認められないため注意が必要です。給与明細や退職金明細など、根拠となる書類も求められます。
また、融資制度によっては、融資希望金額に対する自己資金の割合を条件とする場合があるため、計画的に自己資金を貯めることが重要です。条件がない場合でも、一般的に自己資金の額が多いほど審査に通る可能性が高まります。
審査では、融資希望金額がどのように算出されたのか、使途(資金の使い道)についても具体的に提示する必要があります。事業資金は、初期投資としてかかる設備資金と、事業の継続的な運営に必要な運転資金に分けて計算され、それぞれに根拠が求められます。設備資金および運転資金として計算される項目については次のとおりです。
設備資金に関しては、見積書を根拠に金額を設定します。運転資金については、必要経費を計算し、その2~3カ月分を目安に算出することが一般的です。このようにして算出した「設備資金+運転資金」を融資希望額として申請します。
個人事業主の経験や能力もまた、審査における重要項目の1つです。創業融資では過去の事業実績を見られないため、個人の経験や能力が事業の成功を大きく左右します。
具体的には、同じ業界での就業経験や人脈の有無、保有資格、面談での振る舞いや熱意、責任感などがチェックされます。説得力のある受け答えができるように、面談の際は事前準備を怠らないようにしましょう。
融資は返済が前提のお金なので、審査では返済能力の有無がチェックされます。事業開始から半年以降の月次収支予測を基に返済計画が立てられているかが判断のポイントです。半年以降を参考にするのは、一般的にその時期が支出や売上が安定するタイミングだからです。
返済額の目安は、月ごとの「税引後利益+減価償却費」が返済額を上回る金額に設定されていることが理想です。この数値は事業計画書を基に算出するため、同じ業界の売上データと比較し、実現可能な内容であるかを確認しましょう。売上予想を過大に設定して返済計画を立てている場合は融資を受けられない可能性が高くなります。
信用情報は社会的信用度を客観的に判断するための有効な指標です。融資の審査では、過去の信用情報が金銭管理能力として重視されます。過去1年ほどで公共料金の滞納や税金滞納、クレジットカードの支払滞納などがある場合は、将来的な返済リスクが高いとみなされ、融資を受けられない可能性が高まります。個人事業主の場合は少ないですが、仮に従業員がいる場合は従業員の信用情報も重要です。
日本政策金融公庫で創業時の融資を受ける際の一般的な流れは以下のとおりです。
インターネット申込時の提出書類は、電子データとしてアップロードします。法人と個人とでは提出書類が異なるので、注意が必要です。申込後に担当者から連絡があり、面談が実施されます。面談時には、申込時に提出した書類の原本や、説明に必要な書類を用意する必要があります。
紹介した3つの融資制度の中でも、融資内容と審査スピードの点で特におすすめなのが日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金(旧:新規開業資金)です。
日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金(旧:新規開業資金)は、原則として無担保・無保証で融資が受けられます。一般的な銀行の融資では、事業実績のない融資希望者に対して、基本的に無担保・無保証での融資は実施していません。しかし日本政策金融公庫は起業や開業する方を対象に融資を行っているため、個人事業主が創業時に資金を調達する手段として非常に有効です。
自治体や信用金庫/信用組合の融資制度でも信用保証協会を通せば無担保・無保証での融資が可能な場合がありますが、日本政策金融公庫では信用保証協会を通さなくてもよいという違いがあります。
日本政策金融公庫の融資は、申し込みから融資実行まで約1〜2カ月が目安です。書類提出後、約1週間で面談日が決定し、その後面談を経て、提出書類に基づいた審査が行われます。約1〜2週間の審査の後、結果が通知されます。自治体の制度融資や信用金庫・信用組合では、申し込みから審査まで約2〜3カ月かかるため、融資実行までの期間が短い点は大きなメリットです。タイミングを逃すことなく事業を開始できます。
スムーズな審査通過のためには、将来性を評価されるような創業計画書が必要ですが、事業経験のない個人事業主にはハードルが高いのも事実です。作成に不安がある場合は、ツールや専門サービスを活用するのもおすすめです。
「資金調達ナビ」の「創業計画をつくる」なら、フォーマットに沿って記入するだけで、簡単に創業計画書を作成できます。通常、コンサルタントや税理士に依頼すると費用がかかりますが、このツールを使えばWeb上で無料で作成できるため、創業時の資金負担を抑えられます。
経験や資金が少ない個人事業主の創業には、低金利で融資が受けやすい融資制度が適しています。審査をスムーズに通過するためには、売上予測や資金計画を明確に示した創業計画書が重要です。無料で作成できる資金調達ナビの「創業計画をつくる」をうまく活用し、事業のスタートに必要な資金を確実に調達しましょう。
高崎文秀税理士事務所 代表税理士/株式会社マネーリンク 代表取締役。早稲田大学理工学部応用化学科卒。都内税理士事務所に税理士として勤務し、さまざまな規模の法人・個人のお客様を幅広く担当。2019年に独立開業。現在は法人・個人事業者の税務顧問・節税サポート、個人の税務相談・サポート、企業買収支援、税務記事の監修など幅広く活動中。また一般社団法人CSVOICE協会の認定経営支援責任者として、業績に悩む顧問先の経営改善を積極的に行う。
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