日本政策金融公庫の創業融資は自己資金50万円でも受けられる?注意点も解説
2025-08-04更新
2025/08/04

個人事業主で融資を検討している場合、「日本政策金融公庫を利用できないだろうか」と考える人もいるかもしれません。この記事では、個人事業主が日本政策金融公庫の融資を受けられるのかについて詳しく解説します。審査を通過するためのポイントや手続きの流れ、必要な書類も取り上げているのでぜひ参考にしてください。
結論として、個人事業主であっても、日本政策金融公庫から融資を受けることは可能です。一般的に創業したばかりの個人事業主は、事業実績の少なさや信用度の低さから銀行からの融資審査に通りにくいのが実情です。しかし、日本政策金融公庫は政府系の金融機関であり、創業期の法人やこれから事業に取り組む人を支援することを目的としています。創業支援に特化した融資制度が用意されており、個人事業主も審査に通れば融資を受けられる可能性があります。
ただし、金融業や保険業、娯楽業など一部の業種は融資の対象外です。これらの業種に携わっている場合、個人事業主だけでなく法人であっても融資を受けられません。また、融資を受けられるかどうかは、申込内容や担当者の判断などにより決定されることも覚えておきましょう。
日本政策金融公庫の融資を受けるには、法人・個人事業主を問わず審査を受ける必要があります。審査には、創業計画書などの書類の提出が必要で、審査に通過すれば融資を受けられます。
創業計画書に決まった様式はありませんが、日本政策金融公庫では創業計画書のテンプレートが用意されているため、それに沿って必要事項を書き込めば要件を満たせます。とはいえ、初心者にとって創業計画書の作成は、ややハードルの高い作業です。
創業計画書の作成に不安がある場合は、ツールや専門サービスを活用するのもおすすめです。「資金調達ナビ」の「創業計画をつくる」なら、フォーマットに沿って記入するだけで、簡単に創業計画書を作成できます。通常、コンサルタントや税理士に依頼すると費用がかかりますが、このツールを使えばWeb上で無料で作成できるため、創業時の資金負担を抑えられます。
日本政策金融公庫の融資を申し込む際には、希望する融資制度に申し込めるとは限らない点に注意が必要です。個人事業主が利用できる融資は、主に「新規開業・スタートアップ支援資金(旧:新規開業資金)」と「一般貸付」の2つがあります。新規開業・スタートアップ支援資金(旧:新規開業資金)は、新たに事業を始める人または事業開始後おおむね7年以内の人が対象とされており、事業年数が8年以上の場合は、新規開業・スタートアップ支援資金(旧:新規開業資金)に申し込めない恐れがあります。
各融資制度では一定の限度額が定められています。新規開業・スタートアップ支援資金(旧:新規開業資金)は7,200万円、そのうち運転資金が4,800万円。一般貸付は運転資金と設備資金が4,800万円、特定設備資金が7,200万円です。
なお、審査に通過できなければ融資は受けられません。申請すれば必ず融資を受けられるわけではないため注意しましょう。
参照:日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」 ![]()
参照:日本政策金融公庫「一般貸付」
個人事業主が日本政策金融公庫の融資審査に通過するためには、いくつか知っておきたいポイントがあります。
日本政策金融公庫の融資審査では、創業計画書の内容が重視されるため、入念に準備しましょう。特に現実的で説得力があることが求められます。担当者は、記載された内容を基に、その事業が実現可能かどうか、どの程度の収益が見込めるか、成長の余地があるかなどを判断しています。計画書の根拠があいまいだと、事業の実現可能性が乏しいと判断され、融資が受けられない可能性もあります。そのため、具体的な売上目標や事業戦略、資金計画など、根拠のある数字やデータを提示し、融資担当者が納得するような創業計画書を作成することが重要です。
市場分析や競合調査、外部環境に関する分析やリサーチ結果などを引き合いに出しながら、自社の計画の優位性を明確にすると、説得力のある創業計画書を作成できます。机上の空論ではなくしっかりとした分析に基づいた記述であることが担当者に伝われば、希望に沿った融資を受けられる可能性が高まります。
自己資金は、事業に対する熱意や本気度を示す大事な指標となります。自己資金の割合が高いほど、創業後の資金繰りが安定しやすく、事業を継続していくための体力があると判断され、融資を受けられる可能性も高まります。
参考として、旧制度の「新創業融資制度」では、創業資金総額の10分の1以上の自己資金を用意することが申請要件の1つとして挙げられていました。2024年3月31日にこの制度は廃止され、自己資金に関する要件もなくなりましたが、この数字を1つの目安にできます。
なお、第三者からお金を借りて一時的に自己資金があるように見せかける行為は通用しません。日本政策金融公庫の融資審査では、過去6か月分ほどの入出金が記帳された通帳がチェックされ、不審な現金の流れがないかどうかを調べられます。事業資金は定期的に口座に預金して準備し、生活資金と区別してしっかりと管理しておきましょう。
審査に通過するためには、過去の信用情報に傷がないことも重要なチェックポイントです。これまでの借入金の返済状況やクレジットカードの利用状況を振り返り、未払いや滞納がないことを確認しておきましょう。
携帯電話料金や公共料金、家賃、税金の未払いや滞納は、どれも信用情報に悪影響を及ぼします。過去に支払いに関するトラブルがあると審査でマイナス評価となってしまうため、信用情報に傷が付く行為は避けましょう。
面談では、内容を丸暗記するのではなく、質問に対して自分の言葉で答えられるようにしておくことが大切です。事業についてしっかり説明できるように練習することはもちろん、売上目標などの数字に関しては、根拠に基づいた回答ができるように準備しておく必要があります。起業の動機や事業を通じてどのように社会に貢献していきたいかなど、創業に向けた熱意を伝えることもアピール要素となります。
この他、事業内容によっては事前に職員による訪問があります。個人事業主では想定しにくいですが、工場や店舗、事務所などに職員が訪ねて来ることがあるので、準備しておきましょう。
個人事業主が日本政策金融公庫から融資を受ける流れは、以下のとおりです。
申請は、郵送・来店またはインターネットで行います。手続きをスムーズに進めるために創業計画書などの必要書類は事前に準備しておきましょう。必要書類の一覧はこの後、詳しく説明します。
融資制度や申請手続きに関して不安がある人は、事前に日本政策金融公庫の専用相談ダイヤルに問い合わせをして疑問を解消しておきましょう。事前に予約すれば、支店窓口やオンラインでの相談も可能です。商工会議所や商工会などでも相談を受け付けています。
申請の流れについては、以下の関連記事で解説しています。
申請が完了したら、担当者との面談の日程を調整します。面談可能な日時は、平日の営業時間内のみで、日本政策金融公庫の支店で実施される場合が多いです。代理人が面談を受けることは認められていません。面談は審査に欠かせないステップであり、やむを得ない事情があっても原則として省略することはできません。
面談当日には、本人確認書類や通帳原本の他、オンライン申請の場合に不足している資料などを持参します。必要書類は日本政策金融公庫から事前に送付される郵便物に記載されているため、漏れのないように準備しておきましょう。
面談では、創業の目的や過去の職歴、事業内容、事業計画、融資の使途、資金調達方法などについて質問されます。質問には正確に偽りなく真摯な態度で回答することが大切です。
面談後、日本政策金融公庫が審査を行い、融資の可否や融資金額、適用利率などを決定します。審査では、申請書類の内容や面談内容、個人事業主の信用情報などを基に、事業計画の妥当性や返済能力などが評価されます。
審査にかかる期間は、2週間~1か月程度です。初めての申し込みの場合は審査期間がやや長めで、二度目以降はやや短縮される傾向にあります。審査の過程で追加書類を提出するよう求められるケースもあるため、要請があればなるべく速やかに提出しましょう。
審査に通ると、日本政策金融公庫から融資の契約手続きに関する案内が届きます。金利や返済方法などの融資条件が記載されているので、再度確認してください。記載内容に問題がなければ、必要書類を準備して契約手続きに入ります。必要書類は、郵送もしくは日本政策金融公庫への来店での提出が可能です。
なお、審査落ちした場合でも連絡が来ます。再度申し込むことは可能ですが、審査落ちした原因が解消されていなければ通過することは難しいので、しっかり原因を究明して問題を解決してから再チャレンジしましょう。
契約手続きが完了すると、指定の口座に融資金額が振り込まれます。融資が実行される時期は、それぞれの契約内容によって異なります。
融資を受けた資金は、事業計画に基づいて使用します。融資の使い道が調査されることもあるので、特別な事情がない限り必ず申請したとおりに使用してください。
融資を受けたら、事業計画に基づいて事業を開始または継続します。返済は、契約内容に従って毎月または毎年行いましょう。資金繰りには余裕を持ち、合意した計画どおりにきちんと返済していくことが大切です。
なお返済期間中は、事業の状況について報告を求められることがあります。
日本政策金融公庫から融資を受ける際には、多くの書類の提出が求められます。スムーズに手続きを進められるよう、必要書類をひととおり把握しておきましょう。
基本書類として、「創業計画書」と「借入申込書」が必要です。創業計画書は先に説明したとおり、日本政策金融公庫のテンプレートを利用するか、自分で用意します。
借入申込書は、日本政策金融公庫の支店窓口で直接入手するか、ホームページからダウンロードします。記載する内容は、申込金額や借り入れ希望日、返済金の支払方法などです。なお、インターネットから申し込む場合は、必要事項を入力することになるため、借入申込書を提出する必要はありません。
この他、必須ではありませんが、「月別の損益計画書」や、業種によっては「資金繰り計画表」も一緒に提出するのがおすすめです。これらの書類を作成することで収支計画を客観視でき、担当者に創業計画書の説得力をアピールする効果もあります。
必要書類は申請者によって異なるため、日本政策金融公庫からの案内に従い、必要に応じて窓口などで確認しながら準備しましょう。
日本政策金融公庫の融資は、創業初期でも融資を受けられる可能性があり、民間の金融機関よりも金利が低めであるなど、さまざまなメリットがあります。条件を満たしていれば、法人だけでなく個人事業主も利用できます。ぜひこの記事を参考にしながら手続きを進めて、事業成功への一歩を踏み出しましょう。
融資の審査では創業計画が重視されるため、事前の対策が必要です。ぜひ資金調達ナビを活用して、起業アイデアをブラッシュアップしてみてください。
高崎文秀税理士事務所 代表税理士/株式会社マネーリンク 代表取締役。早稲田大学理工学部応用化学科卒。都内税理士事務所に税理士として勤務し、さまざまな規模の法人・個人のお客様を幅広く担当。2019年に独立開業。現在は法人・個人事業者の税務顧問・節税サポート、個人の税務相談・サポート、企業買収支援、税務記事の監修など幅広く活動中。また一般社団法人CSVOICE協会の認定経営支援責任者として、業績に悩む顧問先の経営改善を積極的に行う。

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