ファクタリングの活用(4)

~ファクタリング会社の選び方~

2023/11/02

どういうファクタリング会社を利用すればよいのか? 自社に合うファクタリング会社とは?

国内には多くのファクタリング会社があり、自社に合ったファクタリング会社を選ぶのは相当骨の折れる作業だと思われます。本記事ではファクタリング会社の選び方・注意点について解説します。
インターネットで検索すると「おすすめのファクタリング会社ランキング」のようなサイトもあり参考にはなりますが、顧問税理士や専門家等の意見なども参考にしながら最終的に選択判断するようにしてください。

選別基準の例

  • 1.
    2社間又は3社間(金融機関系、独立系など)
  • 2.
    業種別(医療、建設業など)
  • 3.
    個人事業主向け
  • 4.
    請求書カード活用

ファクタリング会社は、大きく2社間ファクタリングと3社間ファクタリングに分かれます。一般的には3社間ファクタリングは審査基準が厳しいので、小規模・中小事業者にとっては2社間ファクタリングの方が利用しやすいといえるでしょう。

3社間ファクタリングを実施している企業は、金融機関系の大手ファクタリング会社と独立系の中小ファクタリング会社があります。

金融機関系の大手3社間ファクタリング会社については、ある程度実績があり規模の大きい中小企業等が利用するケースが多いので、原則として、小規模・中小事業者は対象になりません。しかし、業績のよい事業者の方は、念のため取引先の金融機関にグループ会社でファクタリングを実施しているかどうかについて確認してみましょう。

2社間ファクタリング会社の多くは、大手金融グループに属さない独立系会社です。2社間ファクタリング会社の中には3社間ファクタリングも実施しているとこもありますので、確認するようにしてください。条件が合致すれば3社間ファクタリングを利用できる場合もあります。また、2社間ファクタリングにおいては、金融庁などが注意喚起しているように悪質なファクタリング会社もありますので慎重に選択してください。

次に、特定の業種を得意するファクタリング会社から選ぶ方法もあります。典型的なのは、診療・介護報酬などを得意とするファクタリング会社です。こういう業種の事業者の方は、実績のあるファクタリング会社を選ぶのも一案です。その他、建設業や運送業などを得意するファクタリング会社もあります。

個人事業主の方には、主に2社間ファクタリング会社の中から選ぶことになりますが、個人事業主を対象としていないファクタリング会社も多々ありますので、個人事業主やフリーランスも対象としているファクタリング会社を選ぶ必要があります。ネット検索やファクタリング会社のホームページ、ランキングサイトなどから確認してみましょう。

2社間ファクタリング会社の与信・審査について

2社間ファクタリング会社の数は多く、それぞれ独自の基準がありますが、ここでは一般的、平均的な審査方法などについて解説いたします。

審査方法・基準

内容
必要資料
  • 決算書、確定申告書
  • 入出金の明細(通帳)
  • 売掛金に関する資料(請求書、発注書、納品書、契約書など)
  • 資金繰り表
など
申込企業の審査
  • 上記書類による審査
  • 信用調査会社による信用調査
  • ホームページ、SNSなどによる信用調査
売掛先の審査
  • 信用調査会社による信用調査
  • ホームページ、SNSなどによる信用調査

まず、必要書類としては、一般的には、「決算書、確定申告書」「入出金の明細(通帳)」「売掛金に関する資料(請求書など)」などが必要になります。その他、履歴事項全部証明書(法人の場合)、印鑑証明書、代表者の身分証明書など、各種書類が必要になる場合もありますので、各ファクタリング会社に確認するようにしてください。中には、通帳のコピー及び請求書などだけで審査をする会社もあります。

「申込企業の審査」は、まず決算書などで基本的な財務状況を把握します。そして、通帳から入手金の状況を確認して資金繰り状況を把握します。また、売却希望の売掛先との取引実績なども確認することができます。さらに、ファクタリング会社によっては資金繰り表などの提出を求めるところもあります。加えて信用調査会社(帝国データバンクなど)を利用したり、ホームページやSNSなどを確認するファクタリング会社もあります。

次に「売掛先の審査」ですが、申請企業との取引実績を確認して、信用調査会社を利用して信用状況を確認します。信用調査会社の調査データがない場合は、状況に応じて調査依頼をする場合もあるようです。また、売掛先企業のホームページやSNSなどを確認するファクタリング会社もあります。

2社間ファクタリング会社の審査方法や基準については、それぞれの会社ごとに異なり、基本的には極秘事項です。会社によって、厳密に審査するところもあれば緩いところもあり、闇ファクタリングなどは事実上審査をしていないところもあります。

3社間ファクタリング会社の与信審査について

3社間ファクタリングは、従来は大手ファクタリング会社が実施していました。そのようなファクタリング会社においては、既出の「3社間ファクタリング会社の与信審査について 」を参考にしてください。基本的な必要書類については同じですが、ファクタリング会社によって異なりますので、確認するようにしてください。

以下、大手ファクタリング会社の審査方法・基準について簡潔に解説いたします。

審査方法・基準

内容
必要資料
  • 決算書
  • 請求書など
申込企業の審査
  • 上記書類による審査
  • 信用調査会社による信用調査
売掛先の審査
  • 有価証券報告書など

大手3社間ファクタリング会社の審査基準とは、原則として、売掛先の信用調査が中心になります。申込企業は、そもそも業績の悪い企業を対象にはしていないので、一般的には売掛先企業の審査が中心になります。売掛先企業については、有価証券報告書などから審査をすることが多いようです。
つまり、大手ファクタリング会社の場合は申込企業についても売掛先企業についても、原則として業績の良い企業であったり、大手企業であるため、2社間ファクタリングの審査方法とは根本的に異なっています。

売掛先からの支払いがなかった場合はどうなるのか?

基本的にファクタリングはノンリコース契約が原則となります。ノンリコースにおいて利用者は債務の返済責任を負うことはありません。簡潔に説明しますと“償還請求権なし”という意味です。

ファクタリングの審査は、売掛先の倒産や売掛先からの不払い等のリスクを審査して手数料が設定されていますので、売掛先の倒産リスクはファクタリング業者が負います。原則として、売掛先からの不払い、遅延についても、ファクタリング業者が負担することが基本的なルールとなっています。

しかしながら、「償還請求権あり」のファクタリングを実施している会社もあります。特に2社間ファクタリングを利用する際には、償還請求について必ず確認するようにしてください。契約書なども必ず目を通してください。

なお、金融庁や日本貸金業協会などは、「償還請求権」についての注意喚起を発信しています。債権回収できない場合に買戻しを行わせるようなファクタリング事業者においては貸金業の登録がされていない無登録業者のヤミ金融である可能性もあるかもしれません。

参考
ファクタリングの活用(3)金融庁からも注意喚起

著者:吉田 学(財務・資金調達コンサルタント)

株式会社MBSコンサルティング代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。
主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。

また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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