年次予算計画作成の基本(新規事業と資金計画、策定後の管理)

2022/11/02

新規事業の予算策定とその組み入れ

新規事業の性質とその確度

年次予算計画を組む際に、新規事業を検討する場合もあるでしょう。その場合、その事業の性質によって予算として組み込む、組み込まないと言う観点があります。
費用は記載する方針で良いですが、問題は売上ではないでしょうか?
例えば、新規事業でも既に受注があり、その準備期間が短いものであれば売上を組み込むことができますが、開発期間などがあり時間のかかるものや、機械設備等が必要で先に資金だけはでる事業の売上を組み込むのは難しいでしょう。
受注が決まっている、また自信のある場合は別ですが、あまりに新規事業の売上を予算計上すると、会社全体の予算計画達成に狂いが生じますので注意が必要です。売上は、既存事業よりも一層調査が必要といえます。

新規事業の予算策定と年次予算計画へ組み込み

実際に新規事業を予算化し、年次予算計画に組み込むケースをご紹介します。新規事業ですから、最低限以下の点は整理・検討した上で新規事業として実施するかを決定したいものです。

(例)新規事業検討の例

1.新規事業・企画コンセプト 2.座組み・権利関係
企画目的 著作権対象物
市場規模 著作権所有者
競合と市場 交渉状況・実現可能性
企画のウリ・差別化 3.販売時期・ターゲット
座組み・権利関係 販売時期
将来性 ターゲット
課題 ベンチマーク事業・企画
課題改善のための取り組み 1Y目予想売上・利益
4.スタッフィング(社内) 5.外注・パートナー
責任者 ○○
担当者 ○○
担当者 ○○

ファイルダウンロード(.xlsx)

上記を元に新規事業の予算計画を作成します。

(例)Ⅾ事業予算計画

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1Y目合計
3ケ月前 2ケ月前 1ケ月前 リリース 1ケ月後 2ケ月後 3か月後 4ケ月後 5ケ月後 6ケ月後 7ケ月後 8ケ月後
売上構成 a商品 500 500 500 700 700 700 1,000 1,000 5,600
b商品 100 100 100 200 200 200 500 500 1,900
売上合計 0 0 0 0 600 600 600 900 900 900 1,500 1,500 7,500
変動費 a商品 200 200 200 280 280 280 400 400 2,240
b商品 30 30 30 60 60 60 150 150 570
変動費合計 0 0 0 0 230 230 230 340 340 340 550 550 2,810
限界利益 0 0 0 0 370 370 370 560 560 560 950 950 4,690
固定費 人件費 300 300 300 300 300 300 300 300 300 300 3,000
法定福利費 0 45 45 45 45 45 45 45 45 45 45 450
広告宣伝費 100 100 100 100 100 100 100 100 100 900
販売手数料 0
減価償却費 17 17 17 17 17 17 17 17 17 17 17 183
通信・交通費 0
光熱費 0
支払手数料 0
固定費合計 0 17 362 462 462 462 462 462 462 462 462 462 4,533
営業利益 0 -17 -362 -462 -92 -92 -92 98 98 98 488 488 157
営業累計 0 -17 -378 -840 -932 -1,023 -1,115 -1,017 -918 -820 -332 157 157
人員数 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
  • 金額単位:千円

ファイルダウンロード(.xlsx)

上記のケースでは、4ケ月目に商品をリリースして売上計上をしています。そのため、人員を1名増員。広告宣伝費も利用して営業展開します。
また、減価償却費が2ケ月目から計上されています。これは、1,000千円の販売管理をするシステムを導入し、5年間(60回)で償却するため、「1,000千円÷60回=17千円」を費用計上しています。
仮に、このような新規事業を全体の年次予算計画に組み込む場合、計画は以下のようになります。

(例)新規事業を組み込んだ年次予算計画

n(現在) n+1(年次予算計画) 前年比
金額 % 金額 % 金額 %
売上構成 A商品 45,125 41.7% 40,613 27.8% -4,513 -13.9%
B商品 27,075 25.0% 25,721 17.6% -1,354 -7.4%
C商品 36,000 33.3% 72,000 49.4% 36,000 16.1%
新事業 7,500 5.1% 7,500 5.1%
売上合計 108,200 100.0% 145,834 100.0% 37,634 0.0%
変動費 A商品 22,563 20.9% 20,306 13.9% -2,256 -6.9%
B商品 13,538 12.5% 12,861 8.8% -677 -3.7%
C商品 18,000 16.6% 28,800 19.7% 10,800 3.1%
新事業 2,810 1.9% 2,810 1.9%
変動費合計 54,100 50.0% 64,777 44.4% 10,677 -5.6%
限界利益 54,100 50.0% 81,057 55.6% 26,957 5.6%
固定費 人件費 26,400 24.4% 42,600 29.2% 16,200 4.8%
法定福利費 3,432 3.2% 5,598 3.8% 2,166 0.7%
地代 5,000 4.6% 5,000 3.4% 0 -1.2%
広告費 10,000 9.2% 13,900 9.5% 3,900 0.3%
販売手数料 500 0.5% 600 0.4% 100 -0.1%
減価償却費 500 0.5% 583 0.4% 83 -0.1%
通信・交通費 2,000 1.8% 2,000 1.4% 0 -0.5%
光熱費 200 0.2% 300 0.2% 100 0.0%
支払手数料 100 0.1% 100 0.1% 0 0.0%
固定費合計 48,132 44.5% 70,681 48.5% 22,549 4.0%
営業利益 5,968 5.5% 10,376 7.1% 4,408 1.6%
営業外収益 100 0.1% 100 0.1% 0 0.0%
営業外損益 200 0.2% 200 0.1% 0 0.0%
経常利益 5,868 5.4% 10,276 7.0% 4,408 1.6%
特別利益 0.0% 0.0% 0 0.0%
特別損失 0.0% 0.0% 0 0.0%
税引前当期利益 5,868 5.4% 10,276 7.0% 4,408 1.6%
法人税等 1,174 1.1% 2,055 1.4% 882 0.3%
税引後当期利益 4,694 4.3% 8,220 5.6% 3,526 1.3%
人員数 8名 11名 3名
  • 金額単位:千円

色の塗っている箇所に新事業の予算が反映されています。
重ねてになりますが、新事業の売上を予算計上する場合は慎重に検討する必要があります。月次予算計画まで落とし込むと、以下のようになります。

(例)新規事業を組み込んだ月次予算計画

n+1(月次予算計画) 合計
○月 ○月 ○月 ○月 ○月 ○月 ○月 ○月 ○月 ○月 ○月 ○月 金額 %
売上構成 A商品 3,249 2,843 4,061 3,249 3,249 3,655 3,655 2,843 3,249 3,249 3,655 3,655 40,613 200.0%
B商品 2,058 1,800 2,572 2,058 2,058 2,315 2,315 1,800 2,058 2,058 2,315 2,315 25,721 126.7%
C商品 5,760 5,040 7,200 5,760 5,760 6,480 6,480 5,040 5,760 5,760 6,480 6,480 72,000 354.6%
新事業 0 0 0 0 600 600 600 900 900 900 1,500 1,500 7,500 36.9%
合計 11,067 9,683 13,833 11,067 11,667 13,050 13,050 10,583 11,967 11,967 13,950 13,950 145,834 718.2%
変動費 A商品 1,625 1,421 2,031 1,625 1,625 1,828 1,828 1,421 1,625 1,625 1,828 1,828 20,306 100.0%
B商品 1,029 900 1,286 1,029 1,029 1,157 1,157 900 1,029 1,029 1,157 1,157 12,861 63.3%
C商品 2,304 2,016 2,880 2,304 2,304 2,592 2,592 2,016 2,304 2,304 2,592 2,592 28,800 141.8%
新事業 0 0 0 0 230 230 230 340 340 340 550 550 2,810 13.8%
変動費合計 4,957 4,338 6,197 4,957 5,187 5,807 5,807 4,678 5,297 5,297 6,127 6,127 64,777 319.0%
限界利益 6,109 5,346 7,637 6,109 6,479 7,243 7,243 5,906 6,669 6,669 7,823 7,823 81,057 399.2%
固定費 人件費 3,000 3,000 3,300 3,300 3,300 3,300 3,900 3,900 3,900 3,900 3,900 3,900 42,600 209.8%
法定福利費 390 390 435 435 435 435 513 513 513 513 513 513 5,598 27.6%
地代 417 417 417 417 417 417 417 417 417 417 417 417 5,000 24.6%
広告費 1,000 1,000 1,000 1,100 1,200 1,200 1,200 1,200 1,200 1,200 1,300 1,300 13,900 68.5%
販売手数料 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 600 3.0%
減価償却費 33 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 583 2.9%
通信・交通費 154 154 154 154 154 154 180 180 180 180 180 180 2,000 9.8%
光熱費 25 25 25 25 25 25 25 25 25 25 25 25 300 1.5%
支払手数料 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 100 0.5%
固定費合計 5,077 5,094 5,439 5,539 5,639 5,639 6,343 6,343 6,343 6,343 6,443 6,443 70,681 348.1%
営業利益 1,032 252 2,198 571 841 1,604 901 -437 327 327 1,381 1,381 10,375 51.1%
営業外収益 50 50 100 0.5%
営業外損益 17 17 17 17 17 17 17 17 17 17 17 17 200 1.0%
経常利益 1,016 285 2,181 554 824 1,588 934 -453 310 310 1,364 1,364 10,275 50.6%
特別利益 0 0.0%
特別損失 0 0.0%
税引前当期利益 1,016 285 2,181 554 824 1,588 934 -453 310 310 1,364 1,364 10,275 50.6%
法人税等 2,024 2,024 10.0%
税引後当期利益 1,016 -1,739 2,181 554 824 1,588 934 -453 310 310 1,364 1,364 8,252 40.6%
人員数 8名 8名 9名 9名 9名 9名 11名 11名 11名 11名 11名 11名 11名
  • 金額単位:千円

ファイルダウンロード(.xlsx)

資金計画の策定

新規事業を含む全社合計月次予算計画を元に、資金計画を策定します。資金計画策定には、まず以下のようなお金の出入りとなる回収・支払条件おさえます。

(例)資金回収・支出条件

売掛代金回収 月末締め、翌月末回収
買掛金支払 月末締め、翌月末支払
人件費等、その他経費支払 当月支払
新規事業におけるシステム代金支払 年次計画1ケ月目での支払

上記をもとに、整理すると以下のようになったとします。

(例)年次資金計画

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
繰り越し残高 20,000 17,483 18,032 17,817 19,548 19,652 20,026 21,163 21,597 20,694 20,554 20,414
経常収支 収入
売掛金 9,000 11,067 9,683 13,833 11,067 11,667 13,050 13,050 10,583 11,967 11,967 13,950
収入合計 9,000 11,067 9,683 13,833 11,067 11,667 13,050 13,050 10,583 11,967 11,967 13,950
支出
買掛金支払 5,000 4,957 4,338 6,197 4,957 5,187 5,807 5,807 4,678 5,297 5,297 6,127
人件費 3,000 3,000 3,000 3,300 3,300 3,300 3,300 3,900 3,900 3,900 3,900 3,900
その他経費 3,000 2,044 2,044 2,089 2,189 2,289 2,289 2,393 2,393 2,393 2,393 2,493
借入金利息 17 17 17 17 17 17 17 17 17 17 17 17
支出合計 11,017 10,018 9,398 11,602 10,463 10,793 11,413 12,116 10,987 11,607 11,607 12,536
経常収支合計 -2,017 1,049 285 2,231 604 874 1,638 934 -403 360 360 1,414
財務収支 収入
借入金
増資
収入合計 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
支出
借入金返済 500 500 500 500 500 500 500 500 500 500 500 500
支出合計 500 500 500 500 500 500 500 500 500 500 500 500
財務収支合計 -500 -500 -500 -500 -500 -500 -500 -500 -500 -500 -500 -500
翌繰り越し残高 17,483 18,032 17,817 19,548 19,652 20,026 21,163 21,597 20,694 20,554 20,414 21,328
  • 金額単位:千円

ファイルダウンロード(.xlsx)

なお、1(1ケ月目)は、前期の最終月からの数値とします。その他経費には1,000千円、新規事業のシステム費用が計上されています。ここでは、減価償却費は計上しません。減価償却費は予算計画上、費用に計上されていても現実にはキャッシュアウト(支払)しないからです。
借入金返済は、毎月500千円の元金返済をしているものとします。
ここで見るべき点は、まず「翌繰り越し残高」がプラスであるかです。ここがマイナスだと資金不足ですので、金融機関からの借入等、いずれかの手段でお金を入れなければなりません。
次に、経常収支合計です。ここは本業での営業活動でキャッシュがいくら増えているかを示しますので、ここがマイナスだとその月は本業でのキャッシュは不足していると言うことになります。資金計画上、上記観点から「資金は回るのか?」「もし不足する場合、いついくら不足するのか?」を把握し、資金不足にならないよう融資などの資金調達のアクションプランを事前入れ込む必要があります。

年次予算計画策定後の管理

予実管理のポイント(差異分析、絵にかいた餅にしない)

年次予算計画が出来たら、その実現可能性を具体的に検討するため、部門などに落として「部門年次予算計画」などにより個別に売上見通しを積み上げたり、実現のための課題抽出・改善を検討します。
その後、実際に予算計画の期がスタートした後、重要になるのが「予実管理(予算・実績・差異の管理)」です。
通常月次ごとに、予算に対し何が出来ていて、どこに課題があったかを認識し、そしてその差異について今後どのように埋めていくかを検討します。以下に例を記載します。

(例)予実管理表

n+1(月次予算計画) 年間合計 備考
○月
予算 実績 差異 金額 実績 差異 達成率 実施内容 課題・改善
売上構成 A商品 3,249 3,087 -162 40,613 3,087 -37,526 7.6%

A・B商品の販売強化を営業員へ指示

  • 差異は少額のため、現行営業手法を継続・強化
B商品 2,058 2,017 -41 25,721 2,017 -23,705 7.8%
C商品 5,760 6,912 1,152 72,000 6,912 -65,088 9.6%
D事業 0 0 7,500 0 -7,500 0.0%
合計 11,067 12,015 948 145,834 12,015 -133,819 8.2%
変動費 A商品 1,625 1,543 -81 20,306 1,543 -18,763 7.6%

C商品仕入単価上昇のため、+1,843千円

  • 年間販売計画からグロスでの仕入を実施することで単価交渉
B商品 1,029 977 -51 12,861 977 -11,883 7.6%
C商品 2,304 4,147 1,843 28,800 4,147 -24,653 14.4%
D事業 0 0 2,810 0 -2,810 0.0%
変動費合計 4,957 6,668 1,711 64,777 6,668 -58,109 10.3%
限界利益 6,109 5,347 -762 81,057 5,347 -75,710 6.6% 限界利益率-10.7%、C商品仕入改善
固定費 人件費 3,000 3,000 0 42,600 3,000 -39,600 7.0% ほぼ、予算通りの実績C商品のa媒体の広告効果想定以上であり継続実施D事業のシステム導入実施済み

D事業のシステム減価償却、翌月から計上

  • D事業の進捗管理で計画通りの事業スタートの実現
  • D事業人材採用が難攻、採用媒体をb社へ変更検討
法定福利費 390 390 0 5,598 390 -5,208 7.0%
地代 417 417 0 5,000 417 -4,583 8.3%
広告費 1,000 1,000 0 13,900 1,000 -12,900 7.2%
販売手数料 50 50 0 600 50 -550 8.3%
減価償却費 33 33 0 583 33 -550 5.7%
通信・交通費 154 154 0 2,000 154 -1,846 7.7%
光熱費 25 25 0 300 25 -275 8.3%
支払手数料 8 8 0 100 8 -92 8.3%
固定費合計 5,077 5,077 0 70,681 5,077 -65,604 7.2%
営業利益 1,032 270 -762 10,375 270 -10,105 2.6% 営業利益率-7.1%、限界利益率の影響
営業外収益 0 100 0 -100 0.0% 申請した助成金が承認、3ケ月後300千円予定
営業外損益 17 17 0 200 17 -183 8.3% 計画通り
経常利益 1,016 253 -762 10,275 253 -10,022 2.5%
特別利益 0 0 0 0 0.0%
特別損失 0 0 0 0 0.0%
税引前当期利益 1,016 253 -762 10,275 253 -10,022 2.5%
法人税等 0 2,024 0 -2,024 0.0%
税引後当期利益 1,016 253 -762 8,252 253 -7,998 3.1%
人員数 8名 8名 -
限界利益率 55.2% 44.5% -10.7% 55.6% 44.5% -11.1%
経常利益率 9.2% 2.1% -7.1% 7.0% 2.1% -4.9%
税引後当期利益 9.2% 2.1% -7.1% 5.7% 2.1% -3.5%
  • 金額単位:千円

会計システムで予算を入力しておくと、実績との差異を作成してくれる機能もありますので活用しましょう。利用できなければExcelでも結構です。
ここでは商品Cは売上好調も、商品Cの仕入原価の上昇で各利益が予算より下ブレしています。商品Cの広告宣伝も好調であるので、今後商品Cの売上は拡大する可能性がありますが、現在の仕入原価だと年次予算の売上は達成出来ても、利益は達成出来ない可能性がでてきます。
そこで、早めに商品Cの仕入原価をおさえることを検討すると良いでしょう。
重要なことは、単に差異を確認するだけでなく取組内容や差異から見た課題・改善も整理し、次のアクションに繋げられるようにすることです。
商品Cの仕入原価の件が改善出来ず、売上構成も現在の傾向が続くようでしたら、更に商品Cの売上目標を上方修正するなどしなければ、年次予算計画の限界利益81,057千円の達成が難しくなるかも知れません。
その場合、例えば上期(6ヶ月)実績や見込みなどを見た上で修正年次予算計画の検討も必要になるでしょう。いったん決めた予算ですので一定期間は状況見る必要があります。そうでなければ、せっかく決めた予算の意味や意義がなくなってしまいます。
しかしながら、全く現実と乖離するようであれば、早々に修正する必要も出ますので、例えば「売上・限界利益・営業利益で○%、上ブレ・下ブレした場合は修正予算の検討」などと社内ルールを決めておくのも1つの手です。
このような点からも、毎月月次決算をきちんと締め、この予実管理を実施すること重要です。

新規事業、赤字事業等の撤退判断

予実管理に関連し、新規事業、赤字事業等の撤退判断について触れます。新規事業や赤字事業の撤退は、非常に判断に迷うところでしょう。せっかく立ち上げた事業を撤退する訳ですから尚更です。もちろん、事業だけではなく営業所や部門、商品を撤退・取りやめることも同様です。
判断は経営者が行うことになりますが、一つの目安として「この状況になったら検討しよう」「この状況が続くのであれば撤退しよう」と決めておくことが重要です。
その視点としては、「定量的判断=数字を持っての判断」を入れ込むことが必要です。
例えば以下のようなものです。

  • 売上計画が3ケ月連続で○%以上、下まわった
  • 営業利益計画が3ケ月連続で○%以上、下まわった

このような場合、いったん会議にて課題・改善や今後継続するかの検討を行い、その後の3ヶ月で改善出来なければ撤退を判断するなどのモノサシが必要でしょう。
もちろん、それでも継続すると言う経営判断もあるでしょうが、いずれにしても運営上のルールを決めておくことが、決定した年次予算計画を遂行する上でも重要です。
逆に、売上・利益が3ヶ月連続で○%を上回ったなどと言うケースもあるでしょう。その場合、上回った要因にもよりますが、会議にあげ、より一層広告費をかける、人員増強を図る、生産を増やす等、更に売上を伸ばすための施策を検討することも大切です。

著者:星 武志(経営コンサルタント)

株式会社アスタリスク代表取締役。金融機関、コンサルタント企業、IT企業を経て、2000年代表取締役就任。IT企業、不動産業、商社等の経営戦略、財務戦略、管理会計支援等を行う。
これまで、銀行等の金融機関の研修・講演講師を70行庫以上務める。主な著書は「渉外マンの現場力/近代セールス社」金融商品取引法・各種業法に基づく「金融商品セールス対応話法集/銀行研修社」等でありその他金融機関向け、雑誌連載実績等多数。

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